精霊の供養、豊作祈願、さらには娯楽や観光資源として……「盆踊り」にこめられた人びとの想い

2015/08/15 16:30

夏休み真っただ中。お盆休みで、旅行や帰省をしている方もそうでない方も、この時期ならではの行事を目にすることが多い季節ではないでしょうか。 その代表格が「盆踊り」。もともとは亡くなった人びとの魂を送るために始まった行事ですが、近年ではコミュニティの親睦や観光資源など、新たな役割を担うケースが多いよう。 そして、ひと口に「盆踊り」といってもその形態は地方によって大きく異なります。 今回は、そんな盆踊りの成り立ちに迫ってみました。

人びとのさまざまな想いをのせて、踊りの輪は広がります
人びとのさまざまな想いをのせて、踊りの輪は広がります
「厳しい夏をぶじに乗り越えたい」そんな切実な願いから始まった お供えものを盛る器の名前に由来するとも、仏教のお経である「仏説盂蘭盆経」に由来するとも言われる「お盆」。防疫対策が徹底した現代と異なり、昔は夏になると病気が流行することが多く、疫病退散を願う行事や亡くなった人の魂を送る行事が盛んに行われていました。仏教の伝来以前からあったこうした行事が、仏教と結びついて現在のような「お盆」になっていったと言われています。 「日本書紀」によると、7世紀にはすでに「盂蘭盆」と呼ばれる行事が行われていたとか。 平安時代になると貴族の年中行事として定着し、室町時代ごろからは戦乱や天災などで命を落とした人の魂を救済する行事として、人びとの間に広まっていきました。 「盆踊り」がいつ頃から始まったのかは定かではありませんが、その目的は先祖の霊をはじめとする精霊を供養し、踊りに「巻き込んで」あの世へと送り出すためとされています。 また、豊作祈願や雨乞い、共同体の娯楽、男女の出会いの場としての性格もあわせ持つことが多かったようです。 明治維新後、いわゆる近代的な倫理観が西欧から輸入されると、人びとの生活や意識に変化が生まれ、行事の役割も変わっていきました。それでも、今も多くの地域で伝統的な「盆踊り」が守られています。 いにしえの人びとの想いを今に伝える各地の「盆踊り」 ◆真っ黒な頭巾で顔を覆う「西馬音内の盆踊り」(秋田県) 有名な「阿波踊り」「郡上踊り」と並ぶ「日本三大盆踊り」と称されるのが、秋田県の「西馬音内(にしもない)の盆踊り」。人びとは目だけを出した真っ黒な頭巾で顔を覆って踊ります。これは、死者が踊っている姿を表現していると言われ、盆踊りの古い姿を今に伝えています。 ◆楽器を使わない「新野の盆踊り」(長野県) 長野県下伊那郡の「新野の盆踊り」は、なんと楽器を使わない盆踊りです。盆踊りにつきものの太鼓や笛、三味線などはまったく使われず、歌い手と踊り手の掛け合いによる歌だけで進行します。朝まで夜通し踊り続けるのも特徴で、やはり盆踊りの古い形態を伝えるものとされています。 ◆変装した一団が登場する「大宮踊り」(岡山県) 岡山県の蒜山に伝わる「大宮踊り」は、踊りの途中で「まねき」「てんこ」と呼ばれる、編み笠や頬かむりなどで変装した一団が闖入してくるユニークな盆踊りです。すり鉢、すりこぎなどの小道具を使って、ちょっと色っぽい所作が繰り広げられるのだとか。子孫繁栄や豊作を祈願して行われる、いにしえの祭りの面影を今に残す盆踊りです。
真っ黒な頭巾で顔を覆って踊る「西馬音内の盆踊り」
真っ黒な頭巾で顔を覆って踊る「西馬音内の盆踊り」
世界各国で誕生中!?  「進化系」盆踊り 近年は、海外にルーツを持つ人びとによる、民族色ゆたかなお祭りを目にする機会も増えました。 日本から海外へ移住した人びとによるお祭りも、世界中で開催されています。また、日本の伝統文化やポップカルチャーに興味を持つ外国人も、最近とても増えていると言われます。 そんな時代の流れと関連しているのでしょうか。 東南アジアやブラジルなどで、日本と各国の文化が結びついた新しいカタチの「盆踊り」が生まれているのだとか。人びとの想いをのせ、さらには時代の空気を取り込んで……「伝統的」といわれる盆踊りも、そうした進化の過程を経てきたのかもしれません。 見学するのも、参加するのも楽しい「盆踊り」ですが、立ち入りや撮影に一定のルールがあるところも。当 事者の方々にとって大切な行事であることを忘れずに、マナーを守って楽しみましょうね! 参考:「知っておきたい日本の年中行事事典」福田アジオ・菊池健策・山崎祐子・常光徹・福原敏男著 「民俗芸能探訪ガイドブック」星野紘・宮田繁幸・久保田裕道・城井智子・公益社団法人全日本郷土芸能協会編

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