昔ながらの「氷屋さん」、大人気の「天然氷」……読めばひんやり? 氷にまつわるお話

2015/07/15 19:00

皆さんは「氷」と聞いてどんなイメージを連想しますか? 冷たくて固いもの、いずれは溶けてなくなってしまうもの……。冷蔵庫や冷凍庫を思い浮かべる方も多いかもしれません。 そう、現代に生きる私たちにとって、氷はいつでも手に入るもの。でも電気がなかった時代、氷は「保管」も「運搬」も大変な、とても貴重なものでした。冬の間に得られた雪や氷を貯蔵し、お酒や食料を冷温で保存する「氷室」は、世界中に残っているほどです。今回は、そんな氷にまつわるお話をお届けします!

清冽な輝きを放つ氷に、私たちはさまざまなイメージを喚起させられます
清冽な輝きを放つ氷に、私たちはさまざまなイメージを喚起させられます
たくさんの「情報」を含んだ、太古の昔の氷 古代中国では、清廉潔白な人柄を「氷雪」と表現したそうです。 また、無色透明な輝きが魅力の「水晶」を英語で「crystal」(クリスタル)と言いますが、これはギリシャ語で「氷」を意味する「krustallos」が語源とされています。 昔の人びとは、氷を「清らかなもの」「混じりけのないもの」と考えていたのですね。 その一方で、氷はさまざまなものを「封じ込め」、凍らせることができます。 レストランやパーティー会場で、お花やフルーツ、ハーブなどを閉じ込めた氷を見かけることがありますね。料理好きな人たちの間で「エノキ氷」が話題になったこともありました。 さらに、地球規模のスケールと時間軸でさまざまなものを「封じ込め」、私たちに有益な情報を伝えてくれる氷もあります。それは、地表のほとんどが「氷床」と呼ばれる巨大な氷の塊で覆われた「南極大陸」の氷。 南極の氷は、地球が現在の気候になってからは溶けたことがないため、太古の昔の環境がタイムカプセルのように保存されているのです。 氷にも「熱」があるってホント? 皆さんのご近所には「氷屋さん」がありますか? 都会に住む方なら、飲食店街や繁華街の近くで、バーやレストラン向けに氷を届ける氷屋さんの姿を目にする機会があるかもしれません。電気冷蔵庫が普及する1950年代までは、町のあちこちに氷屋さんがありました。当時の冷蔵庫(冷蔵箱)は、氷を入れて食べ物を冷やしていたため、氷屋さんの存在が不可欠だったのです。 夏祭りの会場などに登場する「氷柱」。そばに近づくとひんやりした空気が伝わってきます。実は、あれこそが氷の「熱」。空気中の熱が氷に吸収されるために感じる、冷たい「熱」です。氷を使う旧式の冷蔵庫では、この現象を使って食材を冷やしていたというわけです。一部のレストランや寿司店などでは、今でもこうした旧式の冷蔵庫を使っているそうですよ。氷を使った冷蔵庫は匂いがつきにくく、高級食材の保存に適しているのだそうです。 大人気の「天然氷」、どこで、どうやって作られているんだろう? ここ数年話題の、冬の寒さを利用して自然に凍らせた氷=「天然氷」を使ったかき氷。氷自体がほんのり甘く、やさしい口当たりが魅力です。この天然氷、いったいどんな手順で作られているのでしょうか? まず大切なのは、きれいな水が得られること。日の当たらない、風通しのよい場所であること。さらに、冬の気候が寒冷で、かつ雪が降らない(少ない)気候であること。雪に埋もれ風に当たらなくなると、氷の表面温度が下がらず分厚くなりにくいのだそうです。 上記のような条件を備えた場所に専用の採氷池を作り、気温が十分に下がったのを見計らって、玉砂利でろ過した水を流し込みます。ポイントは、一晩のうちに池の全面が結氷するくらいの寒い日に行うこと。部分的に凍ると、凍っていない部分から落ち葉やほこりが入り、水や氷が汚れてしまうのです。 池の全面が凍ってからは、氷の表面の掃除をしたり、もしも雪が降ってしまったら雪かきをしたり。 そうして氷の厚さが15センチぐらいになったら、いよいよ切り出し作業です。切り出された氷は、おがくず(木材の切り屑)で覆って氷室に貯蔵。おがくずは空気をたくさん含むことができるので、断熱効果が高く氷の保存には欠かせないのだとか。 これほど手間ひまかけて作られた天然氷を、都会に居ながらにしていただけるのは、本当に幸せなことですね。 電気がなかった昔は、氷を見たことがないまま一生を終える人も珍しくなかったはず。この時代に生まれたことに感謝しつつ、美味しいお酒やかき氷を楽しみましょう! 参考:前野紀一/監修「ひんやり氷の本」、田邊優貴子「すてきな地球の果て」

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