朝の連続ドラマで話題の石川県能登(のと)地方。「祭りの宝庫」とも呼ばれる能登ですが、年一番のイベントと言えば、やはり「キリコ祭り」でしょう。7月~9月の間に300を超える地区でキリコ祭りが繰り広げられます。2015年4月には文化庁によって、「灯(あか)り舞う半島 能登~熱狂のキリコ祭り~」が日本遺産に認定されました。担ぎ手の減少に伴って、キリコの本数は年々減ってきているそうですが、現在も700基以上のキリコが祭りに出ています。この夏は、能登まで足を伸ばしてみませんか?

キリコって何?

能登地方の夏祭りの特徴は、神輿(みこし)のお供として担ぎ出される「キリコ」と呼ばれる大きな灯籠(とうろう)にあります。キリコとは「切子灯籠(きりことうろう)」を縮めた略称。直方体の木枠に、白い和紙を張ったキリコは、夕方になると中に電灯がつき、描かれた文字や絵がダイナミックに浮かび上がります。キリコの大きさは、幼児がかつぐ小さいものもありますが、高さ5メートルほどのものが主流です。一番大きなものは、七尾市(ななおし)の石崎奉燈祭(いっさきほうとうまつり)のキリコ。高さ12~15メートル、重さ約2トンのキリコが町を練り歩く様は、怖いくらいの迫力です。

旧暦の七夕に開催される「宝立(ほうりゅう)七夕キリコ祭り」は能登最大級
旧暦の七夕に開催される「宝立(ほうりゅう)七夕キリコ祭り」は能登最大級

毎日どこかでキリコ祭り?

悲しい恋の物語が伝わる、縁結びのスポット「恋路(こいじ)海岸」。「恋路火祭り」では、夜になると沖の弁天島に向かって2基のキリコが海に入って行きます。弁天島の松明((たいまつ)に火がつき、仕掛け花火が点火し、炎に照らされる弁天島と鳥居の周囲をキリコが乱舞します。
輪島市の「輪島大祭(わじまたいさい)」では、神輿の「入水神事」や、火の粉を浴びながら神輿を担ぎ、松明のてっぺんにつけられている御幣(ごへい)を若者たちが奪い合う「松明神事」が行われます。
もっとも激しい祭りとして知られる、能登町(のとちょう)の「あばれ祭り」では、神輿を海や川に投げ込み、引き上げた神輿を神社の境内で松明に投げ込んで大暴れ!
キリコが1基だけの小さなお祭りから、40基以上のキリコが出るお祭りまで規模も趣向も様々。
毎年は開催されない小さな地区のお祭りもありますから、毎年違うキリコ祭りを見に行くのも楽しいですね。

「能登には行きたい。けれど祭りには行けない」という方は・・・

お子様連れのご旅行など、夜の激しいお祭りはちょっと・・・という方は、今年3月に移転・リニューアルオープンしたばかりの輪島キリコ会館へどうぞ。能登地方独特の大小さまざまな約30基のキリコの実物が展示されており、館内には祭り囃子(まつりばやし)が流れ、いながらにしてキリコ祭りの雰囲気が楽しめます。スクリーンシアターでキリコ祭りを見ることができますし、2Fの空中回廊では、普段は見上げることしかできないキリコを、上から見下ろすことができるんです。熱気では本物の祭りに負けますが、キリコをじっくり鑑賞できるこちらの会館も捨てがたいですね。

キリコの実物は「輪島キリコ会館」でも見ることができる
キリコの実物は「輪島キリコ会館」でも見ることができる

参考文献
『日本の祭り』編集室・編 『日本の祭り ③中部編』 理論社 2015
芳賀日出男・著 『日本の祭り事典』 汐文社 2008