サケの旬は9~11月の秋ですが、「トキシラズ」と呼ばれるサケは、春から初夏にかけてが旬です。「時不知」または「時鮭」と書いて「トキシラズ」と読み、サケの中でも高級品として知られています。見た目は“銀ピカ”で美しく、味は秋のサケとはひと味もふた味も違うおいしさです。価格は秋のサケの3倍と値が張りますが、お中元にも人気です。この「トキシラズ」、どうしてこんなにおいしいのでしょうか。
生まれはロシア。産卵用に栄養がとられない、若いサケ。銀鱗が美しい !!
サケは北海道の川でふ化した後、海で4年過ごし、産卵のために生まれた川へ再び戻ってきます。その季節は秋。川へ戻る途中に北海道の沿岸などで獲られたものは秋鮭と呼ばれ、これが一般的なサケです。
それに対し「トキシラズ」は、ロシア北部のアムール川の生まれで、回遊の途中に北海道の沿岸で漁獲されたものです。
春、産卵の準備がまだ整っていない状態で漁獲されるので、脂や栄養分が卵巣や精巣に消費されず、身のほうに広がっています。そのため、身は脂がのっておいしいと言われています。
また、若いサケなのでウロコや皮が薄くて柔らかく、見た目は光沢のある美しい銀色です。尾びれには黒い点がほとんどなく、銀色の放射状の紋があります。
ハラスが最高に美味 !! 脂の量は秋鮭の3倍以上。サケ界の “霜ふり”。
トキシラズは、なんといっても脂がのったハラスが最高においしいと言われています。ハラスは内臓の周りの脂がのった身のことで、マグロでいえば大トロにあたる部分です。サケの場合、体と平行にハラス部分を細長く切り、ハラスを味わいますが、トキシラズに限らず、この部位はとてもおいしくて人気があります。
トキシラズのハラスの脂は秋鮭の3倍以上。焼くと脂がしたたり落ちるほどジューシーですが、決してしつこくなく、あえて言うならば、サケ界の“霜ふり”肉です。
皮はパリパリ、身はトロトロのハラスの塩焼きがあれば、ご飯が何杯も進んでしまいそうです。
脂がのったハラスは特においしい !! ご飯が何杯でも食べられそう。
産地は道東や三陸。序盤は出足が悪かったが、旬の今、大漁です!!
トキシラズはこの時期、産卵のためではなく、エサを求めてカムチャッカ半島から南下します。秋になってロシアのアムール川に帰るのですが、その回遊中のトキシラズが、北海道の東部や三陸沖で漁獲されます。主に北海道の日高、広尾、根室、釧路、厚岸、士別などの沿岸の定置網に入ります。ちなみに、日本の川から旅立ったサケはこの時期、北太平洋の沖合いを回遊しているので、漁獲されることはないそうです。
今年の序盤は、トキシラズの水揚げが例年よりも少なかったのですが、6月中旬には回復し、10日には広尾町で、過去最高の1350匹が水揚げされ、町では大漁に沸きました。釧路市の和商市場では、6月13日、トキシラズをPRする催しが開かれ、トキシラズの重さを予想するゲームで、見事、重さをあてた人には、トキシラズが1匹まるごと贈られました。
道東沖では今、トキシラズ漁の最盛期で、秋鮭の3倍以上の値で、東京などにも出荷されています。この時期しかお目にかかることのできない高級なサケ、「トキシラズ」。一度、味わってみたいものですね。