梅雨前線が日本列島を縦断しております。雨の日が続くと、ジメジメとしていやだなぁ~…と思ってしまいますね…しかし!季語には「梅雨」にまつわる言葉のなんと多いことでしょう…。「梅雨」の季語をご紹介しながら、日本人の季節感を一緒に見つけてゆきましょう。

梅雨の季語…時期を表わす言葉

「梅雨」の季語と言えばまず、「梅雨(つゆ・ばいう)」がありますね。これに付随して、長梅雨、走り梅雨、迎え梅雨、送り梅雨、戻り梅雨、といった時期を表わす言葉があります。「梅雨」は梅の実が熟すころの雨だから、という説と湿気が多く黴(かび)が発生しやすいから「黴雨(ばいう)」を季節の植物に読み替えて「梅雨」となった説があります。どちらが先かはわかりませんが、どちらも当てはまるところに昔の人の知恵を感じますね。
このほか梅にちなんで、「青梅雨」という季語もあります。
また、「梅の雨」という言い方が芭蕉の句に残っています。
『降る音や耳も酸うなる梅の雨(ふるおとやみみもすうなるうめのあめ)』 芭蕉
降る音を聞いて梅の酸っぱさを耳で感じる…五感と季語のブレンド具合が絶妙です。見るではなく、聞く。口の中ではなく、耳で「梅雨」という季節を表わすとは、さすが巨匠です。

梅雨の季語…一日の中で見つける言葉

朝から晩まで、一日の空に見る季語に、「梅雨夕焼け」、「梅雨の雲」、「梅雨の月」、「梅雨の星」などがあります。
例えば「梅雨夕焼け」…夕焼けは夏の季語です。立夏を過ぎ夏に入ったこの時期なら単に「夕焼け」でも通じるのですが、頭に「梅雨」をつけるだけで雨上がりの、または梅雨の晴れ間の夕方の雰囲気が伝わってきますね。雲も、梅雨の…とつくことで今にも雨が降り出しそうな厚い湿った雲が連想されますし、月や星にも空気中の湿気により、しっとりとした佇まいが漂います。
また、梅雨時の夜空を表わす「梅雨の闇」という季語には、より濃い夜が感じられますし、「梅雨晴れ」には幾日も続いた雨から覚めたような嬉しさが表れていますね。しかし、梅雨晴れも長く続くと「旱梅雨(ひでりづゆ)」と、湿気はおろか乾燥しきった状態に…こんな日が続いたあとの雨はまさに「喜雨(きう)」と呼ばれています。

四季と雨は仲良し? 梅雨はグローバル?

このように、夏の中でも梅雨は特別なものとして扱われてきました。梅雨入り・梅雨明けなどの言葉もその時期を重要に考えていたからこそ、生まれたのではないか…とさえ思えてきます。実際、四季を彩るさまざまな草花や景色は、太陽と雨のバランスがあってこその自然美です。
さて、この微妙な季節…海外の方にどう説明しましょうか?実は「baiu」と言うのがいちばん通じやすいのだそうです。「rainy season」は雨季であって、梅雨とは異なる季節感であることを私たち日本人がまず認識しておきたいものですね…その一方で、昨今の雨の降り方には雨季に近い激しさがあるのが心配です。とりあえず今は、この季節を楽しみながら過ごしたいものですね。
『軒先のあまつぶ愛し梅雨晴れ間』 柊花
《参考文献》
現代俳句データベース
俳句歳時記・夏
今はじめる人のための俳句歳時記