日本列島が梅雨空に覆われていますが、「気分はもう夏!」という人も多いのではないでしょうか。
この時季にあちこちで耳にする、夏の空気を涼やかにしてくれるボサノヴァですが、最近ではボサノヴァをテーマにしたコンピレーション・アルバムのラインナップも豊富になり、手軽にさまざまなアーティストの楽曲を楽しめるように……。
そこで、夏本番を前にもう少し踏み込んでボサノヴァを聴いてみませんか。

ボサノヴァ発祥の地、リオ・デ・ジャイネイロのシンボル・コルコヴァード像
ボサノヴァ発祥の地、リオ・デ・ジャイネイロのシンボル・コルコヴァード像

カフェのBGM

近年、カフェなどに入ると「ボサノヴァ」がかかっていることが多いですね。
静かにつぶやくような歌とギターの伴奏が特徴です。会話や考えごとを邪魔することがないので、BGMとしてよく使われるようです。耳ざわりにならない音楽、といってしまえばそれまでですが、実際はとても複雑で繊細な音楽なのです。
「ボサ・ノヴァ」。これはブラジルの旧宗主国であったポルトガルの言葉で、日本語にすると「新しい傾向」といった意味です。もともと1950年代のリオ・デ・ジャイネイロの大学生たちのグループで生まれたとされ、アントニオ・カルロス・ジョビン、ジョアン・ジルベルト、ヴィニシウス・ヂ・モライスたちが、その中心人物。
都会的で、いわゆるアンビエント音楽的な要素もありますが、代表的な「想いあふれて」「イパネマの娘」は、さまざまなミュージシャンが取り上げていますから、この2曲は知っているという方も多いでしょう。

繊細な音楽

一般的に日本では、ラテン音楽が1950年代からよく聞かれてきたという傾向もあるようです。歌謡曲のモチーフとしてもラテン音楽は欠かせない要素でした。
ボサ・ノヴァもそのひとつで、もともと日本人に親しみやすい音楽ともいえるのですが、単なるイージー・リスニングとして聞いてしまうのには、もったいない音楽です。
たとえばジョアン・ジルベルトがアメリカのジャズサックス奏者・スタン・ゲッツと共演した「ゲッツ/ジルベルト」をちょっと注意ぶかく聞いてみるとすぐわかるように、複雑なコード進行、楽器同士の微妙な関係、パーカッションのタイミング、抑制されたメロディーなど、むしろ緊張感がある、細やかな音楽です。
そこで、ボサノヴァの代表的なCDを3枚をご紹介。
アントニオ・カルロス・ジョビン「イパネマの娘」
ジョアン・ジルベルト「三月の水」
カエターノ・ヴェローゾ&ガル・コスタ「ドミンゴ」
その豊かな細部と独特の情感「サウダーヂ」(なつかしさ・切なさといった意味)をゆっくりと味わってください。ちょうどタイミングよく「Brasil 1000 BEST COLLECTION ~2015~〈全120タイトル〉」という廉価盤(1000円+税)の限定シリーズが6月10日より発売開始!
ボサノヴァに馴染みがない方も、この辺りからチャレンジしてみるとよいかもしれません。
※発売元のHPは、下記リンク先参照