関東地方も梅雨入りし、梅雨前線は北上中! とはいえ、住んでいる所がいつ梅雨入りするのか、予報でははっきりした日にちがわかりませんよね。それどころか、かなり経ってから「あの日に梅雨入りしたようです」と事後報告される年もあるようです。ところが、ふとカレンダーを見ると6月11日の欄に『入梅』と書かれているではありませんか! この日に梅雨入りすることが去年から予言されていたのでしょうか?

入梅の候
入梅の候

『入梅』と『梅雨入り』は、同じ日とはかぎらない!

節分・土用・彼岸・八十八夜・・・季節の移り変わりをより的確につかむため設けられた暦日が「雑節」です。『入梅(にゅうばい)』もそのひとつ。今年の6月11日は、暦の上で梅雨が始まる日だったのですね。
太陽の黄径(こうけい)が80度に達する日とされ、「芒種」から数えて6日め頃の最初の「壬(みずのえ)」の日にあたります。その日を境に約30日間、「梅雨」になるのです。
現在のように詳しい気象予報が得られなかった江戸時代、『入梅』が田植えの日を決める目安でした。お米は主要な税収源。梅雨がいつ来るかを把握しておくことは、今以上に重要だったのです。
実際に梅雨に入る日は地域や年により異なるので、私たちは気象庁の『梅雨入り』発表で始まりを知ることになります。その判定には、・・・じつは明確な決まりはないのだそうです。
雨や曇りの日が数日続き、週間予報でその後も続くことが予想されるとき『梅雨入り』として発表されることが多いようです。梅雨の始まりは5日間ぐらいかけて移り変わるので、現在の予報では特定の1日に無理にこだわらないのですね。それならわざわざ発表しなくても?とも思えますが、始まりを知ることで雨の季節特有の危険に備えることができるよう、毎年おこなわれているそうです。日にちで例年の状態とも比べやすくなりますね。
『梅雨明け』も、晴れが続いた数日を目安に判定されます。
暦上の梅雨の終わりは、『出梅(しゅつばい)』。陰暦で「夏至」 のあとの最初の「庚 (かのえ) 」の日とも「小暑」のあとの最初の「壬」の日ともいわれています。
ちなみに放送の世界では、気象用語として『入梅』・『出梅』は使いません(リンク先参照)。

雨のバイカラー? せめぎあう「黴」と「梅」!

『梅雨』は、東アジア特有の雨季。北海道と小笠原諸島を除く日本のほか、中国・韓国にもみられます。
語源は、「梅の実が熟す頃に降る雨」という意味の『梅雨(めいゆ)』が中国から江戸時代に伝わったという説や「雨でジメジメしていてカビが生えやすい」という意味の『黴雨(ばいう)』だったものが語感が良くないので『梅雨』に転じたという説があります。たしかに、上に付く言葉で雨の印象はだいぶ変わりますね。
「つゆ」という日本の呼び名は、水滴の「露」、梅の実が熟す頃という意味の「つはる」、梅の実が熟して潰れる時の「潰ゆ(つゆ)」、カビで物が損なわれる「費ゆ(つひゆ)」などから連想されたものと考えられています。
つまり・・・梅雨の主役は、カビと梅!
これから湿度と気温が高くなり、カビは元気に繁殖します。吸い込むとアレルギーや肺疾患の原因にも。食品の保管に注意するのはもちろんのこと、家具や部屋の扉を少し開けて風を通したり、カビの栄養となるホコリをためないようにするなど、こまめな対策が不可欠です。
梅に含まれるクエン酸の疲労回復効果や殺菌作用は、昔から「その日の難逃れ(朝に食べれば、その日一日災難から逃れることができる)」といわれるほど、病気の予防や健康増進に用いられてきました。憂鬱なカビの季節に実る梅は、自然からのプレゼント。梅干し・梅酒・ジャム・シロップ・・・梅雨の手仕事に、保存食作りなどいかがでしょう。
思わぬ肌寒さ・室内での熱中症など、大気だけでなく体調も不安定になりがちなこの季節。
一方、多くのお店では季節限定の「雨の日サービス」なども始まるようですよ。旬のお楽しみとともに、これからのひと月を爽やかに過ごしたいですね。