「霧の摩周湖」というけれど、摩周湖はいつも、そんなに霧深いのか !? 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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「霧の摩周湖」というけれど、摩周湖はいつも、そんなに霧深いのか !?

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霧が晴れた摩周湖。「摩周ブルー」 が美しい !!

霧が晴れた摩周湖。「摩周ブルー」 が美しい !!

霧に覆われた朝焼けの摩周湖。湖面はまったく見えない。

霧に覆われた朝焼けの摩周湖。湖面はまったく見えない。

北海道の東部、阿寒国立公園にある摩周湖は、ロシアのバイカル湖に続き、世界で2番目に透明度が高い湖です。1966年に発売された布施明の「霧の摩周湖」がヒットするまでは、ほとんど知られていないマイナーな湖でしたが、この歌がきっかけで、「摩周湖=霧」 「神秘の湖」というイメージが定着したといわれています。「霧が晴れた摩周湖を見ると婚期が遅れる」などの“伝説”もある摩周湖ですが、歌のイメージの通り、摩周湖は1年中、いつも霧に覆われているのでしょうか。

霧にもいろいろな種類がある。湖に流れ込む神秘の 「滝霧」 は夏に数回だけ!!

1年のうち100日以上も霧に包まれているといわれている摩周湖ですが、特に6月から8月にかけては、霧が多く発生します。摩周湖の霧は場所や時刻によって、さまざまな種類があります。
・「放射霧」…夜の放射冷却によって湖面の空気が冷やされるときに発生する霧で、湖面から立ち昇ります。摩周湖はカルデラ湖で、湖の周りは130m以上の急なカルデラ壁に囲まれているため、霧がたまりやすい地形です。放射霧の多くは明け方に発生し、午前9時までにはだいたい消えてしまいます。
・「滑昇霧」…水蒸気を含んだ空気が山の斜面に沿って上昇する時に、上の方で冷えて発生する霧です。摩周湖展望台は標高857mにあります。6~9月は、湖だけでなく、摩周湖周辺の山も霧で覆われます。
・「移入霧」…夏、釧路沖で、暖流の黒潮が寒流の親潮によって冷やされ、海霧となり、この霧が暖かい場所を求めて内陸へと流れ込み、摩周湖にまで達します。それまで晴れていた摩周湖も、サーッと霧が入り込み、1時間もしないうちに湖面が見えなくなってしまうこともあります。
・「滝霧」…移入霧の中でも、この滝霧は圧巻です。摩周湖を囲む崖から、霧が白い滝のように一気に流れ込む、夏に数回だけしか見られない“幻”の現象です。この霧は、東北の三陸沖から500kmの距離を北上し、釧路湿原や広い牧場を飲み込みながら、摩周湖にまで達します。この幻想的な光景は、2011年7月にNHKスペシャルで放送され、話題を呼びました(下記のリンク先参照)。

霧が多いのは6月から7月。「晴れた湖が見えたら晩婚…」 など、ウワサが絶えない。

摩周湖の観光シーズンは5月から10月の半年間、およそ180日間です。この間、湖が1日中見えるのは100日、時々しか見えない日は50日、まったく見えない日は25日もあります(昭和61年~平成7年の平均値)。
さらに、6月から7月にかけて、霧が特に多く発生しますが、この2ヵ月間で、湖が1日中見える日は30日ほどしかありません。時々しか見えない日は20日、まったく見えない日は10日もあります。夏に摩周湖を訪れるとしたら、湖面が見えるかどうかは五分五分、といったところです。
霧が流れ込み、湖が一気に見えなくなることもあれば、急変してパッと晴れ上がり、美しい摩周ブルーが見えることもあるという、まさに神秘的な摩周湖ですが、それゆえに、いろいろな“ウワサ話”があります。
・未婚者が、霧のかからない晴れた摩周湖を見ると、婚期が遅くなる。
・カップルで摩周湖を訪れて、霧で湖面が見えなければ、関係が長く続く。
・お金持ちの人が摩周湖を訪れると湖面は霧に閉ざされ、貧乏な人が訪れると湖面は晴れる。
・晴れた摩周湖を見ると、出世できない。
これらは単なるウワサ話なので、信憑性のほどは保障できません…。

注ぎ込む川も、出ていく川もないのに、水位が一定。法的には巨大な「水たまり」 !?

摩周湖の魅力は、霧とともに、その透明度にあります。
湖に注ぎ込む川もなければ、湖から出ていく川もない「閉鎖湖」で、生活排水や不純物が運び込まれることがありません。ゆえに、プランクトンや粘土などの浮遊物が極めて少ないので、透明度が高いのです。
では、川の流出入がないのに、1000年もの間、水位が変わらないのはなぜなのでしょう。
摩周湖の水源のほとんどは雨です。雨で増加した水は、自らの水圧で地下にしみて地下水となり、それが湧き出してまた、湖へと流れ込んでいるのです。降水量などから計算すると、摩周湖から地下へしみ込む水の量は、1秒あたり約0.7トン。それらは3~5ヶ月をかけて地下を通り、湖へとわき出しています。一説によると、湖には100年分の雨水がたまっているともいわれています。自然に存在する水としては限りなく純粋に近い水が、美しい摩周ブルーを作り出しているのです。
ちなみに、摩周湖は川の流出入がないので、国土交通省が管理する「湖」ではありません。また、湖には樹木が生えていないので、農林水産省の管轄でもありません。法律的にいうと、単なる「水たまり」という扱いです。現在では所有省庁のない無登記のまま、国が管理しています。

地球の環境変化を知るためにモニタリングされている摩周湖。世界的にも貴重な湖。

摩周湖は1931年に透明度41.6mを記録し、これは今までに破られたことのない世界記録です。しかしその後、透明度はどんどん低下し、1980年代前半には20m台後半、それ以降は20m台前半となってしまいました。
国立環境研究所の調査によると、摩周湖の透明度は、夏に低下し、冬に上昇することがわかりました(摩周湖の調査はまさに命がけで、夏でも冬でも、道なき道を行き、急な崖を降りて水にもぐって調査するというものです。下記リンク先参照)。
川が流れ込まない摩周湖は、1年を通して植物プランクトンが少ないので光合成が少なく、ゆえに、あの独特なブルーを誇っています。ところが、夏にはやはりプランクトンの量が増えるので光合成が活発になり、青い色がやや緑色がかってしまい、透明度が低下してしまうのです。とはいえ、環境研の調査で、2009年の5月には、32.5mという透明度を観測しました。この値は、過去25年間で最大の数値です。
摩周湖は1994年、国際機関の環境モニタリングステーションとして登録され、環境研では長期にわたり摩周湖を調査しています。そのデータは、地球単位での大気汚染などを調査するために利用されています。さらに、摩周湖の貴重な自然環境を維持するために、国土交通省などでは、展望台への車の乗り入れの規制ついても検討しています。
観光シーズンの半分くらいが霧に覆われている摩周湖。訪れたときに晴れているか霧で覆われているか、一喜一憂することもまた観光の楽しみです。夏は霧が多く、冬は摩周ブルーが美しい。自然遺産としても世界的に貴重な摩周湖、梅雨のない北海道は、これからが観光シーズン本番です。
〈参考:国土交通省北海道運輸局「北海道遺産・摩周湖におけるエコ交通整備検討に関する調査」報告書概要版、平成19年3月〉


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