どんな国でも、文字の存在するところには文字遊びは存在します。
その中でもやはり漢字は、一つの漢字が一つの言葉の意味を担っているという性格が、文字遊びを複雑そしてユニークなものにしています。ただしこれも昔と現在では変化しています。

西安碑林に残る「魁星点斗図」 ※Google無料写真共有サイト「Panoramio」より
西安碑林に残る「魁星点斗図」 ※Google無料写真共有サイト「Panoramio」より

ネットで流行の漢字顔文字

コンピューターやスマホの辞書にも標準搭載されるようになって、いわゆる顔文字はすっかり当たり前のものになりました。(-_-;)とか(^O^)などは主にアルファベットの要素が組み合わされています。ただ、顔文字もアルファベット圏と漢字圏ではその性格が少し異なっています。
たとえば人が失敗してがっかりしているようすのorzは、漢字圏ではアレンジされて「冏rz」「囧rz」などとなって流行しました。「冏」「囧」は「光り輝く」という意味の漢字ですが、ここでは意味がすっかり抜け落ちて漢字一文字がビジュアルとして、「とほほ…」のような人間の顔に見立てられています。

漢字のビジュアル性

もともと漢字はその出発点となった象形文字の性格を現在でも強く残しており、その意味では顔文字的な性格を強く持っています。
漢字を絵文字として遊ぶことは昔からさかんに行われていて、たとえば下は200年ほど前に中国で流行した「魁星点斗図」と呼ばれるものです。石碑が中国・西安碑林に残っています。
画像の出典/Google社の運営する地域情報が付加された無料写真共有サイト「Panoramio」(リンク先参照)

官僚試験合格を願う絵文字

この筆を持って一本足で立っている鬼の姿は、漢字でできています。「正・心・修・身・克・己・复・礼」が鬼の姿、そして「鳌」を踏んで「斗」を蹴りあげているのがわかるでしょうか?
これは「心を正しくし、身を修め、自分を抑制して礼儀を保てば」「鳌斗」なんてへいちゃらだ!ということを表していて、「鳌斗」は科挙でトップ合格、ということを意味していますから、つまり全体でしっかり勉強すれば科挙合格間違いなし、という文字遊び・試験合格を願うお守りの絵になっているのです。19世紀末まで中国で行われていた「科挙」は官僚の登用試験として、絶大な権威を持っていました。
この漢字遊びは、漢字の意味もしっかり保ちながらその形で自由に遊んでいることになります。
現在の「冏」から意味が抜け落ちているのとはちょっと違いますね。
漢字は今も昔も民衆たちの遊び道具なのです。