奥深い中国茶の世界──2夜目は、「シャンパンウーロン」とも称されるウーロン茶(青茶)「東方美人(とうほうびじん)茶」をご紹介します。
19世紀から台湾で生産・輸出されている東方美人は、最高級の大変希少なウーロン茶(青茶)として知られています。古くからイギリス王室や貴族の間でも珍重され、「オリエンタルビューティー」の名でヨーロッパに広まり人気となりました。
今も昔も、セレブや多くの人を魅了してやまない東方美人……その甘い魅惑の風味には、驚くべき大自然の奇跡と神秘が隠されています。
「シャンパンウーロン」とも呼ばれる東方美人茶で、心華やぐティータイムを
紅茶を思わせる、甘く華やかな風味のウーロン茶
青茶の中でもやや発酵度が高い(60~70%) 東方美人は、ダージリンの紅茶を思わせるフルーティーな味わいが特徴です。
淹れたお茶は淡い琥珀色で、成熟した果実を思わせる華やかな香りと、花蜜のような甘みが感じられます。その美しい色合いと優雅な香り・味わいから、「シャンパンウーロン」と称されるのもうなずけます。
また、お湯を注ぎ足して1煎・2煎・3煎と飲み進めるうちに、紅茶に近かった芳醇な風味が、次第にウーロン茶の清涼な風味に……。1煎ごとに味と香りの変化を楽しむことができます。
害虫の力(!?)を利用した独特の製法
主に台湾北部の新竹(しんちく)という山地で生産される東方美人は、生産量が極めて少ないため、日本でも毎年多くのファンが入荷を待ちわびています。
このお茶が大量生産できない理由は、ちょっと意外な独特の製法にあります。
東方美人は毎年6~7月頃、ウンカ(チャノヒドリトメヨコバイという小さな虫)に樹液を吸われた茶葉を摘んで製茶されます。本来、ウンカは害虫として駆除されるのですが、19世紀にウンカの被害に遭った茶葉を製茶したところ、甘く芳しい風味のお茶ができたことから、このような独特の製法が生まれました。
ウンカの分泌物質によって多彩な色に変色した茶葉は、茶葉そのものの生体反応によって、独特の甘いフルーツ香を作り出します。そのメカニズムについては諸説ありますが、科学的な真相はいまだに解明されていません。
さまざまな色彩が混じり合った東方美人の茶葉
大自然の奇跡が生み出す神秘の銘茶
いずれにせよ、茶葉にウンカが付かなければ東方美人茶にはなりませんから、茶畑は農薬や除草剤などを使わない「オーガニック」が原則となります。
さらに、ウンカの飛来する時期が限られている、その年によってウンカの飛来・発生にもばらつきがあるなど、その生産には多様な自然条件が大きくかかわっているのです。
こうして大自然の奇跡から生み出される、どこか神秘的なオリエンタルビューティー。
ぜひ一度、皆さんも味わってみてはいかがですか?