「4月1日はウソをついてもOK!」ということで、毎年エイプリルフールには知恵を絞って楽しいいたずらを展開する企業やネットユーザーが、世界各地に出没するようです。なぜこの日になったのでしょう? またちょうどその頃、お花見にでかけたところ「あれ?ウソみたいに桜の花が・・・少なすぎ!!」という事件が、日本各地で発生する年もあるそうです。誰かがいたずらしているのでしょうか。

本当に好きだから
本当に好きだから

「お花見を食べる野鳥」は、ウソ

満開で見頃のはずの桜の木に、なぜか花が少ない・・・それもそのはず、花芽じたいが無くなっているのでした。犯人は、野鳥。その名も『ウソ』!
スズメよりちょっとだけ大きくて、コロンとした体格の渡り鳥です。茶色がかったグレーの羽根で、雄は喉元がきれいなバラ色をしています。「フィ〜フィ〜」という口笛を吹くような美しい鳴き声が名の由来で、『ウソ』とは「口笛」の古語なのだそうです。歌いながら左右の脚を交互に持ち上げる仕草から『弾琴鳥』とも呼ばれる、日本人に古くから愛されてきた趣き深い鳥なんですね。
ところが、お花見にとっては「天敵」といわれています。
冬になると、ウソは集団で山から平地に下りて来て桜などの花芽を食べるのです。花芽の殻を盛大に落としながら、「大食い選手権」並みの食べっぷりで むしゃむしゃいきます!
飛来してくる数が多い年は、食害が発生。咲く前に花が無くなってしまうので、お花見の季節が来ると写真で見てもわかるくらい寂しい木になってしまうのですね。2013年には、東北地方で地元シンボルの桜など人気のお花見スポットが大打撃を受けました。
今年も食害が心配される地域では、 毎年楽しみに訪れる人たちをがっかりさせないよう、ウソが飛来する冬からさまざまな方法で桜を守っています。
ウソに目を付けられる前に風船の目玉を取り付けたり、薬を塗って嫌いな匂いの枝にしたり、展着剤で花芽をコーティングして食べにくくしたり、鷹の鳴き声や鳥の警戒する悲鳴などを録音して流したり、 ロケット花火を使用したり・・・けれど、ウソは賢いので、いちど追い払っても「ウソの危険」だとわかればまた同じ枝に戻ってくるのだそうです。 観光業の死活問題でもあるため、 ウソを害鳥として駆除の対象にせざるを得ない自治体もあるのです。

じつは神事も支えているウソ

とはいえ、ウソにしてみれば5月〜7月の繁殖期のための自然な行為。「体つくっておかなくちゃ!」という野生の使命感に燃えて栄養をチャージしているのですね。それにしても「いちばんの好物はソメイヨシノ」というのが、桜を愛する日本人としては悩ましいところ・・・人とウソのお目当ての枝が、どうかかぶりませんように。
ところで、「お花見を食べられた」ニュースによって初めてウソという野鳥を知ったという方も多いようです。良くも悪くも人の暮らしに影響することが起きると、その生きものの存在を知る機会になりますよね。お花見に行く私たちも「今年の桜、よっぽど美味しかったんだね」なんて、鳥目線でちょっとおおらかになれたりするのかもしれません。
一方、漢字のウソ『鷽』が『学』の旧字体に似ていることから、 太宰府天満宮などの神社では、ウソは「天神様(菅原道真)の使い」とされ神聖な鳥として扱われています。
1月7日の夜、『ウソ替え神事』といって、暗闇の中で参拝者が掛け声とともに木彫りの鷽(ウソ)鳥を互いに交換しあいます。知らず知らずのうちに口にした一年間のウソを誠心に替え、悪い事もウソにして吉に取り替える、という意味があるのだそうです。

2019年4月1日は、ウソ禁止?

エイプリルフールがなぜ4月1日なのかには、諸説あります。
もっとも有力とされるのが、「暦が変わったことに反発して今までどおり新年を祝った」というフランス発祥説。当時ヨーロッパでは3月25日から新年が始まり、4月1日まで春のお祭りをしていました。ところが、1564年にシャルル9世が「1月1日から始まる暦」を採用します。そこで市民たちが4月1日を『ウソの新年』として祝い、馬鹿騒ぎをしたところ、なんと次々に処刑されてしまったのです。その中には13歳の少女も含まれていました。人々は抗議をこめてその後も『ウソの新年』を祝い続け、さらに13年ごとに『ウソのウソの新年』として「真実しか言ってはいけない日」にしたのだそうです。
インド発祥説では、「修行期間の3月末までは悟りの境地にいるが、4月1日にはもう迷いの境地にいる僧をからかった」という『揶揄節』が始まりだといわれます。
また、聖書のエピソードからも「弟子のユダに裏切られてキリストが死んだ命日」「ユダヤ人に愚弄されたのを忘れないため」「『ノアの方舟』で鳩を最初に放したとき、まだ水が引いておらず戻ってきたという無駄骨を表す日」などといわれています。
春の「がっかりする虚しい出来事」をおぼえて生まれた日、なのでしょうか。
日本では、『四月馬鹿』(シンプルに直訳です)『万愚節』(漢語的表現です)などと呼ばれ、大正時代に「ウソをついてもOK」の風習が浸透しました。けれど江戸時代は、『不義理の日』として「義理を欠いている人にお詫びする日」だったのだそうです。「人を騙すのは、ちょっとね」という方は江戸式に、ご無沙汰の方に挨拶する日にしてみるのはいかがでしょう。
ウソをついていいのは正午まで、などさまざまな「ルール」も存在するようですが、何にせよクスッと笑えるウソでハッピーな日にしたいですね。「エイプリルフールについたウソは実現しない」というジンクスもあるとか・・・うっかり願望を口にしない方が安全かもしれません。
ちなみに『ウソのウソの新年』ルールによれば、つぎの「真実しか言ってはいけない」エイプリルフールは2019年だそうです。4月1日、今年の桜の状態は・・・