去年の12月は、普段、雪が降らない四国地方などで大雪が降りました。また、今年に入ってからは道東で、玄関も窓もふさがるほどの大雪が降りました。雪で家から出られない、猛吹雪で車が立ち往生する、停電で暖房が使えないなど、命にかかわるような事態があちこちで起きました。一方、今年は雪不足で「困った」という地方も多々あります。
「雪が多くて困った」、「雪が少なくて困った」…。今年の冬は地方によって雪の降り方が極端だったといえます。

身の危険を感じる猛吹雪に見舞われた地方も多かった
身の危険を感じる猛吹雪に見舞われた地方も多かった

いつもは雪が降らない地方で大雪の被害が多かった。命にかかわる被害も

今年の冬は、ふだん雪が降らない地域にも大雪をもたらしました。
去年の12月上旬、冬に入ったとたんに徳島県では突然の大雪に見舞われ、国道で100台以上の車が立ち往生したほか、倒木などで大規模な停電が起きました。雪で町が孤立化し、災害派遣要請を受けた陸上自衛隊などが雪や倒木の除去にあたりました。また、同じく12月、岐阜県の東海北陸自動車道では一時、大雪で車両70台以上が立ち往生しました。
京都では今年の1月、22cmの積雪を観測し、61年ぶりに記録を更新しました。
北海道の知床半島にある羅臼町(らうすちょう)では2月、179cmという記録的な大雪で町が孤立化し、自衛隊に派遣が要請されました。「朝起きたら真っ暗で窓の上まで雪で埋もれていた」と話す住民もいたほどの大雪でした。このときは風速も30mに達し、歩くことが困難なほどの暴風雪となりました。食料品を運ぶトラックが吹雪のため町に入ってくることができず、スーパーなどの食料品も底をつき、市民生活に大きな影響を及ぼしました。
福井県では2月、国道8号が大雪により立ち往生する車が相次ぎ、一時は200台に上りました。このため国道が通行止めになる事態が起きました。
同じく2月、寝台特急トワイライトエクスプレスが大雪のため、青森県と秋田県の県境付近で12時間以上も立ち往生したというニュースは記憶に新しいところです。

農業ではハウスの倒壊、道東では観光客が激減、臨時休校の穴埋めで土曜授業

農業では、大雪のために多くのビニールハウスの支柱が折れ曲がり、倒壊しました。北国のハウスは、屋根に積もった雪を熱で溶かすように作られていますが、今年は記録的な大雪のため、屋根の雪を溶かしきれず、倒壊したという例もあります。
滋賀県では昨年12月、羽衣伝説で有名な「天女の衣掛柳(きぬかけやなぎ)」が、雪の重さと老朽化により、大きな枝が折れてしまいました。このヤナギは地元の大切な観光資源なので、現在、地域と行政が一体となって、保存の取り組みがなされています。
北海道の釧路湿原を走る観光列車「冬の湿原号」は、度重なる暴風雪の影響で約3割が運休しました。また、知床などを走る「流氷ノロッコ号」も悪天候のため、18日間が運休となり、利用者は約4割減となりました。
同じく北海道のウトロ(斜里町)では積雪が2mにも達し、暴風雪により鉄道の運休や空の便の欠航が相次いだほか、吹きだまりにバスが乗り上げ、負傷者が出る事故も発生しました。
今年の暴風雪は、子どもたちの生活にも影響を及ぼしました。悪天候のため臨時休校が多発した地方が多く、北海道では合計10日間以上も臨時休校になった学校が多数あります。このため、平日の7時限めや土曜日に振り替え授業を行ったり、学校行事を中止して授業に当てたりして、標準授業時数を確保しています。

積雪量は平年の2倍、東北や北陸で雪が多かった

tenki.jp、1月12日の日直予報士の記事によると、北陸や東北、長野や岐阜では、今年の冬の積雪は平年の2倍以上のところがほとんどでした。
主な地点の積雪量は、以下の通りです。
1月12日午後3時での最深積雪量、( )内は平年値
青森市     122センチ(47センチ 2.6倍)
秋田県横手  106センチ(50センチ 2.1倍)
山形県米沢  101センチ(41センチ 2.5倍)
福井県九頭竜 169センチ(69センチ 2.4倍)
長野県信濃町 120センチ(50センチ 2.4倍)
岐阜県長滝  117センチ(46センチ 2.5倍)
参考:tenki/jp「今冬の雪は平年の倍 雪の事故に要注意」(きむら貴之・気象予報士)
http://www.tenki.jp/forecaster/diary/kimutaka1003/2015/01/12/19871.html

一方で 「雪不足」 「暖冬」 の地方も。スキー場の閉鎖、越冬野菜が腐るなど…

各地で大雪の被害が起きている一方で、積雪が少なくて頭を抱えた地方もあります。
北海道では今年は東側が大雪に見舞われ大きな被害を受けましたが、同じ北海道の南側では積雪量が平年の5割ほどしかありませんでした。
北海道の南側、七飯町(ななえちょう)のニヤマ高原スキー場では、1月の下旬、雪が少ないだけでなく気温も4月並みに上がったので、3日間、臨時休業しました。「1月にスキー場が閉鎖するのははじめて」と、スキー場関係者は頭を抱えていました。
同じく北海道の旭川市では、1月下旬に最高気温が3.6℃にも達し、2月上旬に行われるイベントの雪像作りが難航しました。
また、雪不足と暖冬の影響で、道南では畑の雪がなくなり、今の時期、農家の重要な収入源となる越冬野菜がすっかり顔を出してしまったため、野菜が腐る前に早々に出荷しました。平年は3月いっぱいは越冬野菜を出荷できていましたが、今年は3月に入ってからは、スーパーなどであまり見かけなくなりました。
除雪費用を見てみると、積雪の多かった地域では、1月にすでに除雪予算を使い果たしてしまった自治体もありますが、雪が少なかった地方では、除雪費は前年同期の半分以下で済みました。
今年は各地で雪が降るたびに、「南岸低気圧」という言葉をよく耳にした冬でした。そして、この耳慣れない言葉を聞くたびに、大雪の被害が報じられ、大雪の際の備えの必要性についても痛感した冬でした。
「雪が多くて困った」地域が多かった一方で、「雪が少なくて困った」という地域もあり、「今年の冬は○○だった」とは、一口では言えない天候でしたが、万一のための備えだけは万全にしておきたいものですね。
(参考:「北海道新聞」1月27日朝刊)