2011年3月11日に発生した東日本大震災から、まもなく4年を迎えます。
これを機に、あらためて一人ひとりが防災意識を高めるとともに、各家庭でも災害時への備えを万全にしておきたいものです。
そのひとつとして、意外に見落とされがちなのが「薬の備え」。高血圧や糖尿病などで薬が欠かせない人には、命にもかかわる問題です。
そこで今回は「災害と薬」をテーマに、災害医療現場での問題・課題をふまえ、日頃から心がけておきたいポイントについてまとめてみました。

東日本大震災の教訓をもとに、災害時に備え、数日分の薬は携行しておきたいもの
東日本大震災の教訓をもとに、災害時に備え、数日分の薬は携行しておきたいもの

東日本大震災で不足した“ある薬” とは?

東日本大震災発生後、被災地の医療現場では想定外の問題が浮上しました。それは“ある薬”の不足です。
多くの医療機関では災害時のケガの治療に備えて、相当数の消毒薬や麻酔薬を備蓄していたそうです。ところが、震災後に最も必要とされた薬は、降圧剤やインスリンなど慢性疾患用の処方薬だったのです。
実際に岩手・宮城の病院では、持病や慢性疾患用の薬を求める被災者が相次ぎ、それらの薬はまたたく間に在庫がゼロに。電話やネットが途絶え、追加支援を求める手段もなく、必要な薬がいつ入ってくるのかわからない緊急事態に陥ったといいます。
こうした問題を受けて、備蓄する薬の種類の見直しや、医療機関の情報交換システムを導入するなど、全国各地でさまざまな対策・検討が始まっています。
しかし、いつ起こるかわからない大災害時に薬をどう確保するのか、まだまだ万全といえないのが現状のようです。

災害時の薬不足に備えるために

では、災害時の薬不足に備えて、私たちは日頃からどんなことを心がけておけばいいのでしょう。 とくに、慢性疾患などで処方薬を常用している人は、以下のポイントを再確認しておきましょう。
● 薬は常に1週間程度の予備をカバンの中などに入れ、外出時に数日分の薬を持ち歩く。あわせて、自宅のすぐ持ち出せる場所に保管しておく。
●有効期限が短い処方薬は、保管箱や非常用持ち出し袋に入れたままにせず、毎回処方してもらうたびに予備薬を入れ替える。市販薬も有効期限をチェックしておく。
●「お薬手帳」をすぐに持ち出せる場所に保管し、外出時も予備薬と一緒に持ち歩く。避難生活が長引いて手持ちの薬がなくなった場合や、自分が服用していた薬の名前・種類がわからない場合、手帳があると薬の処方・入手もスムーズに。
そして、もうひとつ大切なことがあります。
それは、避難時に薬を持ち出すのを忘れても、「安全が確認できるまで、家へ薬を取りに帰らない」こと。ちょっとの時間だからと、安易に家へ戻るのは危険です。

東日本大震災でも避難所から自宅へ薬を取りに戻り、津波に遭って亡くなった方がおられるそうです。薬も大事かもしれませんが、迫りくる災害から自分の身を守ることが最優先です。日頃からの備えと心がけ、そして、万が一の際もあわてずに行動することを忘れないでくださいね。