進学や就職、異動などで、引っ越しが増える3月に入りましたが、引っ越しの際にわりとトラブルになりやすいのが敷金ですね。
「敷金」とはいわゆる貸主に対する保証金で、家賃の滞納が続いた際の補てんや、室内を破損した場合の修繕費用に充てられます。そのため、これらの問題がなければ退去時に返金されるはずのお金です。
しかし、長く住んでいれば破損や劣化は避けられないもの。そこで、退去後に貸主が修繕費用を見積もるのですが、その際に貸主と借主の間にトラブルが生じるケースが少なくありません。

転居、新生活をスタートする前に「敷金」に関する正しい知識を身につけておこう!
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通常生活に伴うやむないキズや汚れは、借主に負担義務なし

室内の破損や汚れは、借主の不注意や怠慢によって発生したものか?
もしくは経年劣化によるものなのか? または、生活するうえで常識的に劣化するものなのか?
理由によって負担は変わってきますが、前者であれば借主、後者であれば貸主に負担の義務が生じます。ですが、どこまでが経年劣化と認められるのか、その見極めが難しいところです。
そこで、東京都が定める「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」などを参考に、いくつか具体的な例を挙げてみました。
■貸主の負担と認められるもの
・ 日焼けによる床や壁紙の色あせ
・ テレビや冷蔵庫の後ろの壁紙の黒ずみ
・ 大型家具を長く置いたことでできる床のへこみ
・ ポスターなどの掲示で生じた画びょうの穴など
また、事前に貸主にことわれば、「家具転倒防止器具の取り付けの跡なども、借主の修繕負担にはなりません。

お手入れをサボってできた汚れは貸主の責任に!

では、どのような場合に借主の負担が発生するのでしょう。
例えば飲み物などをこぼしてしまってできた床のシミ、釘やねじによって開いた壁の穴、キッチンの壁や換気扇の油汚れ、水まわりのカビやサビは借主の負担になります。また、椅子などのキャスターによるフローリングのキズも、使用による破損が予測できるため、借主の負担となります。
タバコによる天井や壁紙の黄ばみは程度にもよりますが、ヘビースモーカーの場合は借主の修繕負担になるケースが多いよう。ただし、減価償却が考慮されるので、居住年数により負担割合が減り、6年以上住めば壁紙に対する負担義務はほぼなくなります。
ちなみに、借主の責任で壁紙や畳、床板の一部を破損してしまった場合、一部のみ張り替えると色やデザインが変わり違和感が出るという理由で、貸主の判断で全体を張替えた際には、借主に負担義務が生じるのは該当する一部(一枚分)のみ。しかし、現実には全体分の張替え費用を請求する貸主も少なくないので注意が必要です。

入居時と退去時は、きちんと立ち会って貸主と交渉を

貸主とのトラブルを避けるには、入居時の室内の状態を、貸主としっかり共有しておくことが大切です。そのため、入居前に貸主立ち合いの元で壁や床のキズがないか、水まわりにカビやサビがついていないかなど確認し、もし、瑕疵(汚れや破損など)を発見した場合は、それが入居時にすでにあったものであることを書面など残るカタチで共有しておく必要があります(瑕疵部分を日付入りで写真撮影しておくことが◎)。もちろん、退去時もきちんと立ち会い、貸主との交渉に臨みましょう。
最後に、トラブルが生じやすいのがハウスクリーニングの費用です。これは、次の入居者を誘致するために行われるものなので、もちろん貸主の負担になります。
しかし、場合によっては、契約書の中に「退去時のハウスクリーニング費用は全額借主が負担する」など記載されていることがあるので、まず、契約内容を事前にしっかり確認しておくことが大切です。万が一それを怠ってしまった場合も、専門機関の協力を仰いで、不当な負担を免れる方法もあるので、受け入れる前に各都道府県にある不動産相談窓口や国民生活センターなどに相談するのがよいでしょう。
そもそも、引っ越しには大きな費用がかかるものですから、不当な請求によるムダな出費を避けられるよう、「敷金」に関する知識を身につけておきたいものですね。