春一番の吹く頃…
その年により時期は異なりますが、立春から春分の間に初めて吹く、強い南風というのが基準となっています。
この言葉、今では気象用語であり、季語となっていますが、元々は壱岐(いき)の漁師言葉に由来します。
関連する季語と一緒に、時節と装いから季節を感じてみませんか。

「春」という軽やかな言葉の強さ

春一番だけでなく、春の風を表わす言葉はいろいろあります。
例えば…
『春風(はるかぜ)』は、暖かで穏やかな風を表わします。
『春疾風(はるはやて)』は、台風並みの暴風になる関東に多い春の嵐をいいます。
また、これらの風と春の日差しのコラボレーションが『風光る(かぜひかる)』です。
春の日差しはきらきらと光り、風さえもきらめいてみえる様を言います。
どの言葉も、軽やかな風情を感じるとともに、『春』という一言がつくだけで言葉まで輝くような、存在感の強さがありますね。
春は、綺麗なだけではない。
変わりやすい天候の中命を育むという、『軽やかさ』と『力強さ』を併せ持っているようです。

装いにも春を表わす「季語」がある…

春を表わすのは、風景や気候だけではありません。装いにも春を表わす季語があります。
冬より薄く柔らかな肌触りと色合いのショールを『春ショール』
明るい色合いの薄手のコートは『春コート』
和装でも、春を思わせる色や柄の袷(10月~5月頃に着る裏の付いた着物)のことを『春袷(はるあわせ)』と言います。
どれも、日常ではわざわざ『春~』と呼ぶことはありませんが、呼び方一つで気分まで浮き立つような気がしますね。
また、気を付けたい事に…
春の装いには、ふんわり・ひらひらとした風合いのデザインが多いのも特徴ですが、春一番や春疾風の際、女性はスカートの裾が気になって歩きにくいことも…。
お出かけ前に風の予報も調べて服装を考えることをお勧めします。(下記参照)

春風に吹かれて楽しむ遊び

季語には時に面白いものがあります。
この季節ですと、『しゃぼん玉』、『風車(かざぐるま)』などの小さなお子さんの遊びもその一つです。
春風に乗って、空中を漂うしゃぼん玉は陽射しに透けて七色に見えるのが面白いものです。
風車も、春風にそよそよと、また時に勢いよく回るのが楽しくて、何度も回した覚えがある方も多いのではないでしょうか?
春と言う季節は、ゆっくりやって来ますが、ひと時も同じ表情ではない、という季節でもあります。
春一番が吹いたら…
今年は、時節を味わい、装い、懐かしい遊びに興じてみましょうか。