もうすぐ3月! 「春眠暁を覚えず」の季節がやってきますね。
春になって、授業中、会議中、寝てはいけない場面でついウトウトしてしまうと、思わず言い訳のように口にしてしまう「春眠暁を覚えず」のフレーズ。あなたも身に覚えがありませんか?
陽気のよい春はつい眠くなってしまう……。そんな意味で使われている方も多いようですが、実際は昼寝のことを詠ったものではないのです。
そこで今回は、意外に知らない「春眠暁を覚えず」の意味と、「春」と「睡眠」の関係について解説します。

昼間の眠気は家事や仕事の大敵! 睡眠は「どれだけ眠るか」より「リズム」が大切なのです
昼間の眠気は家事や仕事の大敵! 睡眠は「どれだけ眠るか」より「リズム」が大切なのです

「春眠」=昼間のウトウトうたた寝は間違い

実は「春眠暁を覚えず」には続きがあります。
全文は、「春眠暁を覚えず、処処啼鳥を聞く、夜来風雨の音、花落つること知る多少」。
この詩は、中国の唐の時代の詩人・孟 浩然(もう こうねん)によって詠われたもので、「春の夜は気候もよく心地よいので、夜明けも知らず鳥のさえずりが聞こえる。昨晩は嵐の吹く音がしたが、おそらく花がたくさん散ったことだろう」と訳されます。
春は気候が良く寝やすいということもありますが、また日照時間が短くなり始めていることもあり、同じ睡眠時間でも、目覚める頃にはすっかり明るくなっているということを意味しているのです。つまり、昼寝ではなく夜の睡眠について詠った詩なんですね。

※参照 「故事ことわざ辞典」http://kotowaza-allguide.com/si/syunminakatsuki.html

春は体に変化を及ぼし、実際に「暁を覚えず」になりやすい季節

では、春の日中についウトウトしやすくなるのは気のせいかというと、そういうわけではありません。
春になると皮膚の表面血流量が増え、交感神経系が活発になり、日中の活動量が増えるという生理現象が起きやすくなります。その結果、疲労感やだるさが出やすく、夜はもちろん、昼間も強い眠気に襲われることが増えるようです。
また、入学、入社、異動など、生活環境にもいろいろ変化がある時期なので、寝つきが悪くなったり、熟睡できなかったりして、目覚ましが鳴っても「暁を覚えず」ということになりがちです。

睡眠は「どれだけ眠るか」より「リズム」が大切

それでは、正しく日々の睡眠をキープするにはどうすればよいか。それは、規則正しい睡眠生活を送ることです。
よく、平日が仕事で忙しく、思うように睡眠がとれなくなると、休日に「寝貯め」を試みる人がいますが、そうしたからといって、頭や体がすっきり快調になるわけではありませんよね? 人の体には体内時計というものがあり、一定のリズムに合わせて生活をすると、体はそれに合わせて順調に動いてくれるようになります。
ですから、前日の就寝が遅くなっても、朝はいつもと同じ時間に起床するのが◎
眠くなる時間は早いかもしれませんが、夜は体が睡眠を取り戻そうと深い眠りを導き、体をしっかりと休めてくれるはずです。

ナポレオンは本当に3時間の睡眠で足りていたの?

話はかわりますが、睡眠にまつわる逸話を持つのが19世紀のフランスの皇帝、ナポレオン。
現在、理想的な成人の睡眠時間は7時間といわれていますが、ナポレオンはわずか3時間に抑え、活動時間を増やしていたというのは有名な話です。
しかし、彼の側近が残した記録によると、ナポレオンは会議中、馬での移動中など、とてもこまめに睡眠をとっていたそう。つまり、まとまった睡眠時間が3時間だったということです。
このように長い睡眠時間をとらずに、短い睡眠をこまめにとる人は「ショートスリーパー」と呼ばれ、ナポレオンのみならず現代の日本にもそういった睡眠習慣を持つ人が結構いるそう。
これも、ある意味規則正しい睡眠生活と言えますが、多くの人にとって昼間の眠気は大敵なはず!
やはり、夜はしっかり眠って規則正しい生活リズムをつくり、気持ちのよい暁を迎えましょう。