天気予報がなかった時代、人々は空の色や風向き、地形、動物の様子などから天気を予想し、生活に役立てていました。「月に笠がかかると雨」「夕焼けの次の日は晴れ」など、皆さんも耳にしたことがあるのではないでしょうか。
天気にまつわる、このようなことわざは「天気俚諺(てんきりげん)」と呼ばれています。
気象学の見地からは説明のつかないものがほとんどですが、現代に生きる私たちにとって参考になるものが少なくありません。
アウトドアなど、天候が気になる時の豆知識として役立つかもしれませんよ。

スズメが朝早くからさえずる日は「晴れ」!なんです
スズメが朝早くからさえずる日は「晴れ」!なんです

スズメが朝早くからさえずる時は「晴れ」

スズメは、日の出の少し前に目覚める習性があります。日の出前に、雲が少ない(晴れている)場合、スズメは太陽光の刺激をたくさん受けることに。そのため、曇りや雨の日よりも早い時間帯から、盛んに鳴き始めるのです。また、太陽がきれいに見えることで日が昇ったことがハッキリわかり、スズメが一斉にさえずり始めるのだともいわれます。
雨が止むかどうかを判断するのにも、スズメの習性が役立つようです。雨が小降りに(または止みそうに)なると、スズメはいち早く行動を開始するからです。スズメのさえずりが聞こえたら、もうすぐ雨が止むと思ってよいでしょう。
●類似のことわざ
太鼓の音が遠くでも聞こえると「晴れ」
太鼓に使われている革は、湿度によって収縮します。晴れて乾燥すると革の張りがよくなり、音も冴えわたって遠くからでもよく聞こえるようになるといわれます。近所のお祭り、運動会の太鼓……、「そういえば」と思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

トンボが低く飛ぶ時は「雨」

トンボのえさとなる小さな虫たちは、雨が降りそうになるといつもとは違う場所に身を隠したり、羽根が湿気を含んで高く飛べなくなったりします。それにつられて、トンボもいつもより低い位置を飛ぶようになるのだそうです。同じ理由で「ツバメが低く飛ぶ時は雨」ともいわれます。
●類似のことわざ
カモメが人里に飛んでくると「天気(海)が荒れる」
いつもは沖合いで小魚を狙っているカモメ。それが港の周辺や、時には人里に飛来してえさ探しをしているとなると、天気は下り坂。海が荒れる予兆であるとされています。

ごはん粒がお茶碗からきれいにとれると「雨」

ごはんを食べた後、茶碗を放っておくとごはん粒がこびりついてしまいますよね。同じ水加減で、同じ分量のごはんを炊いているのに、日によってこびりつき方が違うと感じることはありませんか? これは、湿度の変化によるものです。湿度が低いとごはん粒はすぐ乾燥し、こびりつきやすくなります。逆に、低気圧が近づき湿度が高くなると、ごはん粒は乾燥しづらく、茶碗から洗い流しやすくなるというわけです。
●類似のことわざ
炭に火がつきやすいと「晴れ」
炭を使って煮炊きしていた時代のことわざです。着火しやすいのは、乾燥しているということ。逆に火がおこりにくければ、炭が湿気ている、つまり雨が近づいている証拠とされました。
●類似のことわざ
髪に櫛が通りにくいと「雨の予兆」
空気中の湿度が高くなると、髪の毛が水分を吸収してふくらみます。ふくらんだ髪はうねりを生じるため、櫛が通りにくくなるのです。「梅雨どきは髪型が決まらない」と悩む方が多いのも、髪が水分を多く含むのが理由です。このほかにも、気候や地形など、その土地の事情に合った「天気俚諺」が世界中にたくさんあります。
皆さんの身近な場所でも、きっと「なるほど」と思えることわざが言い伝えられているはず。これを機に、地元ならではのことわざを探してみてはいかがでしょうか? 生活がもっと豊かに、楽しくなるかもしれません!
●参考
青木孝『図解雑学 よくわかる気象のしくみ』(ナツメ社)
天達武史『知ってとくする天気のことわざ』(徳間書店)