春を告げる花を愛でに行く「梅見」 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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春を告げる花を愛でに行く「梅見」

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わたしは誰でしょう? ちゃんと目を見て答えてね

わたしは誰でしょう? ちゃんと目を見て答えてね

2月上旬の植物園を訪れると、みぞれが降るなか咲いていたのは、梅だけでした! 現代ではお花見といえば桜ですが、昔は「花」という言葉が指すのは桜ではなく梅だったのです。一輪咲くごとに春が近づいてくる・・・日本人のDNAが「梅を愛でよ」と誘います。お花見の季節、もう来ています!

植物男子を虜にする、梅の400の個性

神代植物公園所蔵の『韻勝園梅譜』という江戸時代の梅図鑑は、屋敷の庭の梅100品種の写生図に解説文を添え、室内でも梅の鑑賞を楽しめるように制作されました。作者の春田氏は、旗本として将軍の警護を務めながら梅を育てた人。じつは当時、バリバリの現役武士の間で園芸がブームになっていて、「江戸の園芸は旗本・御家人(それも次男か三男)が発展させた」といわれています。現在国内では、花を観賞する「花ウメ」が少なくとも約400種確認されているそうです。
広重の浮世絵で知られる『亀戸梅屋敷』 など数々の名所もできて、梅見は江戸っ子たちの早春のお楽しみでした。青空に映える梅の花を愛でながら歩くのは、春が来た実感もわいてきてとても気分が上がりますよね。旧暦ではまさに新春、新しい1年が始まったんだなというワクワク感もひとしおだったのではないでしょうか。
梅には種類によって豊かな個性があります。『韻勝園梅譜』の解説文を見ると、「潔白色でこの花の右に出るものはない」「はなはだ上品である」「梅花中の奇品(自然にできた希少な美)である」「つぼみをまことにめでるべきであるためにこの名がある」といった、植物男子ならではの思い入れがひしひしと伝わってきます。梅園で名札のイメージと照らし合わせながら、好みの梅を探すのも楽しいですね。

梅は、体温も意志も根性もある「兄貴」

「梅一輪 一輪ほどの暖かさ」  服部嵐雪
梅は百花に先駆けて咲くので「花の兄」( 男性でしたか !)と呼ばれます。色彩のない冬の野に、ぽつんと灯りを点す梅の花。まるで発熱しているかのようにそこだけ暖かく感じます。厳しく辛い季節に希望でふくらみ、開花する強い蕾・・・雪をかぶって咲く梅の姿は、清少納言にも絶賛されています。
一斉に咲いて散る桜とちがい、梅は一輪ずつ意志を持ってそこにいるような気がしませんか? 満開になるまでにひと月もかかる木には、咲ききった花と蕾が家族のように共にいます。
初めは薬として中国から渡来した梅は、弥生時代後期にはすでに全国的に栽培されていたことが『魏志倭人伝』に記されています。卑弥呼さんも梅見していたかもしれませんね。奈良時代には宮廷貴族の庭園に植えられ、鑑賞されました。『万葉集』では約120首もの和歌に詠まれ、平安時代以前は「桜より断然梅」だったようです。
困難を乗り越えて咲く花と、年月を経て味わい深く曲がっていく枝。梅の清廉高潔さは武士のハートをつかみました。
「東風(こち)ふかば にほひおこせよ梅の花 主なしとて春なわすれそ」   菅原道真
道真さんが太宰府に左遷されたとき、可愛がっていた梅が主人を慕ってぴゅーと空を飛び主人の元へきた、という有名な『飛梅伝説』。人と梅が強い絆で結ばれていたことがうかがえます。ちなみにこのとき松も一緒に飛んだのですが、途中で力尽き、梅だけが九州にたどり着いたのだとか・・・やはり梅の兄貴には根性があったようです。
「東風」とは、春をつれてくる風のこと。その風を待って咲く梅は、別名『風待草』とも『春告草』とも呼ばれます。

梅とともに春を告げるのは・・・

『春告鳥』と呼ばれるウグイス。「梅に鶯」は「春の理想的な取り合わせ」という意味の成句です。けれど梅の木にこの記事写真のような鶯色の鳥がいたら、それはウグイスではなくメジロなのですね。
ウグイスはこの季節にさえずり始めて春を告げるのですが、じつは用心深くてなかなか人の目にはつかないのです。しかも茶色がかった鶯色をしています。逆にメジロの方は、鮮やかで明るい鶯色。そのうえ梅の蜜が大好物で警戒心もユルいという、まさに春らしいキャラ! そのため、よくウグイスだと間違われるようです。
繊細な昔の人ですから、メジロをウグイスとは間違えないでしょう。「梅に鶯」は、「美しくて良い香りの梅と、ウグイスの澄んだ声・・・春を感じる最高の組み合わせだね!」という、五感全開で春を堪能しようとする日本人の研ぎ澄まされた美意識の表れかと思います。
『春告魚』と呼ばれていたのが、鰊(にしん)です。朝の連続テレビ小説で「鰊御殿」のエピソードを知ったという方も多いのでは。昭和のある時期から鰊は産卵期に日本に来なくなり「幻の魚」と呼ばれていますが、そろそろまた春を告げに戻ってきてくれるといいですね。

春を分かち合うなら「梅まつり」へ

梅は時間をかけて満開になり、場所や木によって見頃は違いますが、東京以西では3月上旬くらいまで「梅まつり」開催のところが多いようです。梅の加工品などのお土産や模擬店、野点・ゲーム・演芸など多彩なイベントが楽しめる会場も!
ひと足早いお花見には、どうぞ暖かくしておでかけくださいね。


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