暦の上では春…というフレーズ、毎年聞きますね。
当たり前に使っている、この表現はとても日本的なものだなぁ…と、思います。
なぜ日本的なのか、と言いますと…

歳時記・二十四節気そして…

歳時記には、二十四節気があり、その一つ一つが三つの期間に分かれる「七十二候」があります。
これは、太陽陰陽暦という月と太陽両方の移り変わりに基づいています。この考え方は中国から伝来し、二十四節気はそのままに、七十二候については日本独自の風土に合わせて読み替えられています。そして、自然との共生を大切にしていたであろう、先人はこれに雑節(ざっせつ)を加えて天候や植物・食物の生育に役立ててきました。その暦は飛鳥時代から明治初期まで続いていました。いわゆる「旧暦」ですね。
その後、明治に西洋文化を取り入れてから暦も太陽暦=新暦で数えるようになりました。
でも…長い年月に渡り、自然とのつながりを大切にしてきた「旧暦」を手放すことをせずに、こちらとも「共生」したのが私たち日本人です。
新暦で多くの人と時間を共有し、旧暦で自然と共有している…暦にも日本らしい調和を感じます。

「立春」は旧暦の始まりの日

そんな風にして二つの暦を生きている私たちにとって、自然との始まりの日は「立春」です。
春立つこの日、私たちは命の芽吹きがいよいよ強く息づいていることに耳を澄まして、春の兆しを感じ取って来たのです。ロマンティックだと思いませんか?
季語では「寒明け(かんあけ)」とも言い、この日以降の寒さを「春寒(しゅんかん・はるさむ)」、「余寒(よかん)」などと言います。
そして、始まりのこの日はお祝いの日でもあります。日本各地で、この日の朝に搾った日本酒をいただく「立春朝搾り(りっしゅんあさしぼり)」というお酒が造られています。
暦の春、初めの朝の一滴(ひとしずく)に宿る美味を味わう…夜通し搾り、立春の朝に神社で祈祷していただいてから出荷するので当日に届けられる場所にしか出荷しないのが原則…という素敵な習慣です。
節分に厄を払い、立春を言祝ぐ(ことほぐ)…
長い間、脈々と続いてきた日本ならではの春の迎え方、ほかにも探したくなりますね。
みなさんの近くにある、春の迎え方振り返ってみませんか?

参考文献
・俳句歳時記 春 角川学芸出版編
・web 日本文化いろは辞典