真冬のイベント、クリスマス会に降誕劇をする幼稚園も多いのでは。マリヤが夫と旅先の馬小屋で神の子キリストを出産、飼い葉おけに寝かせていると、3人の博士が贈り物をもってお祝いに来る、というお話。絵画でもおなじみのシーンが、現実とはだいぶ様子が違っていた!?
聖書に詳しい教会音楽家の遠山じゅごんさんに聞きました。

『受胎告知』の天使は普通の大人だった?

処女マリヤが、突然あらわれた天使ガブリエルに「あなたは神によってみごもり、救い主キリストを産みます」と告げられる『受胎告知』。天使の背中にはもちろん羽根がありますが、じゅごんさんいわく
「聖書によると、天使は『すばやく飛んで』来たりはしますが『翼がある』とは書かれてないのです。むしろ無いと思われます」。
えっ?! じゃ、あの有名なラファエロのエンジェルたちも羽根の生えた赤ちゃんじゃなかったってことですか?
「聖書には『ケルビム』という 翼のある(ついでに顔も4つある)者もいるのでイメージが混同したのかもしれませんね。ちなみに『羽根の生えた裸の赤ちゃん』は、ローマ神話のキューピッドです」
聖書のこの部分を見ると、まず天使がマリヤに「おめでとう、恵まれた方。主があなたとともにおられます」とあいさつし、これを聞いたマリヤは、そのあいさつの意味にとまどって考え込んだ、とあります。もし目の前にあらわれた人(天使)の背中に羽根が生えてたなら、そっちにビックリして「はて?これは何のあいさつか」なんて考え込んでる場合じゃないような気もします。
「聖書の別の箇所には『ある人々は御使い(天使)たちを、それとは知らずにもてなしました』とあります。天使には、ある種の神々しさがあるようですが、聖書を読むかぎり見た目は人間と変わらないようです」

『東方の博士たち』は3人ではなかった?

クリスマス・ツリーのてっぺんに付いている大きな星は、聖書に書かれている「キリストの降誕を知らせた星」。クリスマスの絵本や音楽には、生まれたばかりのキリストを3人の『東方の博士たち』が星をたよりにさがしあて、馬小屋で贈り物をするという場面が。
「聖書には、博士はただ複数形で書いてあるだけなんです。携えてきた贈り物が『黄金、乳香、没薬』と3種類記されているので、3人に持たせると絵になるということでしょう。けれど、救い主を表敬訪問しようというのですし、長旅だったはずですから、実際はかなりの大所帯だったのではないでしょうか。しかも聖書によると、彼らがやってきたときにはすでに『みどりご』だったキリストは『幼子』になっており、『飼い葉おけ』ではなく『家』に移っていました」

『飼い葉おけのキリスト』のそばに馬はいなかった?

聖書にはマリヤがキリストを「布にくるんで、飼い葉おけに寝かせた」とありますが、「馬小屋で生まれた」とは書いてありません。
「当時は家畜を岩穴や石造りの家で飼うことが多かったので、少なくとも木造ではなかったでしょう。その家畜も、聖書には牛や羊のほうが多く登場してくるので、馬ではなかった可能性大です。キリスト誕生の時『羊飼いが野宿していた』と書いてありますから、もしかしたら羊を飼っている場所がその時カラだったからこそ、そこに泊まることができ、飼い葉おけも使えたのかもしれません」
う~んたしかに、絵に描かれてるように家畜のすぐそばに置いたエサ箱に新生児を寝かせるって、母親的にはありえないかも? ちなみに当時の飼い葉おけ、石製だったようです。
聖書は 、2千年も続く超ロング・ベストセラー! キリストが誕生する前の『旧約聖書』と誕生後の『新約聖書』の2部構成で、クリスマスについては『新約聖書』の最初のほうに書かれていますよ。
欧米の芸術を理解するのにも必須といわれる書物。読破したら、クリスマスを深~く味わえそうですね。