気温が下がり、吐く息が白くなってくると手袋やマフラーが恋しくなりますね。
そんな季節だからこそ、外出せずに自宅でぬくぬくしていたい寒い冬の日は、温かい飲み物を用意して、ゆっくり絵本を読んでみませんか?
幼い頃に読んだ絵本を読み返すと、懐かしさがよみがえるだけでなく、ときに新しい発見も!
しんしんと雪の降る日や、冷たい雨が降り続く日だけでなく、小春日和の日はテラスや縁側で、じっくり絵本に癒されて、心からほっこり温かくなりましょう。

絵本に癒されて、ほっこり心温まろう
絵本に癒されて、ほっこり心温まろう

プレゼントにも最適の楽しい絵本

世界中で大人気の『ぐりとぐら』のシリーズからご紹介したいのは、この季節にぴったりの絵本『ぐりとぐらのおきゃくさま』(福音館書店)。
野ねずみのぐりとぐらは雪の上に大きな足跡を見つけます。足跡が続いている先は、ぐりとぐらのおうち! 中に入ってみると玄関には真っ赤なコートがありました。一体だれ?
ページをめくるたびにわくわくドキドキ……。
クリスマスのお話なので、小さなお子さんへの贈り物にいかが? 中川李枝子さんの軽快な文章と山脇百合子さんの優しさあふれるイラストは、姉妹らしく息の合ったコンビぶり。
大人でも思わず引き込まれて子どもの頃を思い出してしまう、とても楽しい絵本です。

けなげな毛糸の夢がかわいらしい絵本

セーターになることに憧れていた10個の赤い毛糸玉たち。おばあさんに編んでもらって喜んでいたら、セーターは9玉でできあがってしまい、残された毛糸玉は小さな手袋になりました。不本意な毛糸玉でしたが、男の子に気に入られ幸せに暮らします。ところが……。
『セーターになりたかった毛玉』(ブロンズ新社)は、はがゆい思いをしながらも、夢をあきらめない毛糸玉を応援したくなったり、ほろっとさせられたりする素敵な絵本。
作者である津田直美さんの丁寧に描かれたイラストがソフトなイメージで、童話の世界をふんわり広げてくれます。文字数がちょっと多いので、お子さんが読む場合は小学生以上にオススメ。

侮るなかれ! 深く考えさせられる絵本

最後にご紹介するのは、哀愁を感じさせられる大人向けの絵本。
安野光雅さん作『きつねのざんげ』(岩崎書店)。
イソップ物語で悪者にされたきつねが目指したのは「偉大な偽善者」でした。親狐に疑うことを教わり、外の世界へと旅立ちます。狩人や獅子を欺き、白木蓮の木までも騙すきつね。雪の中で出会った女狐に恋をし「森中で一番の偽善者」になることを誓うのですが……。
独特の世界観に魅了されるだけでなく、哲学のような奥深さにとらえられ、しばし考えさせられてしまう絵本です。〈文字がない絵本〉などでの数々の受賞歴のほか、紫綬褒章を受章している安野さんの美しいイラストはもちろん、ぜひ「あとがき」を読んでみてください。

--------大人になってもクリスマスが近づくとわくわく、ソワソワしてしまうのはなぜでしょうか?
それはきっと、子どもの頃の純粋な心に宿った素敵な思い出のなせる業。
前述のあとがきで安野さんは、人間にとってついたほうがいい嘘のひとつとして、サンタクロースの存在を挙げています。サンタクロースを信じられる時を大切にすることが、豊かな心を育むのです。それは絵本も同じこと。絵本でじんわり、心から温かくなりましょう。