年末の風物詩、と言うと…みなさんは何を思い浮かべますか?
芝居好きの方なら『顔見世(かおみせ)』は外せないのではないでしょうか?花形役者がそろい踏みとなる公演であり、歌舞伎初心者にとっても、馴染みやすい演目が上演されますので、お勧めの『顔見世歌舞伎』…
歌舞伎発祥の地、京都四条から始まった『顔見世』について、お話しましょう。

「顔見世歌舞伎」の歴史を遡ると…江戸時代の歌舞伎役者は、芝居小屋と11月から翌年10月までの契約を結んでいました。11月の公演は言わば、新メンバーのお披露目です。
豪華な顔ぶれで上演し、観客の人気を呼びました。前日から徹夜待ちの観客もいたとか…。
上演前の二週間の間は、各芝居小屋で一座の顔合わせ『寄初め(よりぞめ)』をはじめ、看板の差し替え、番付発表、絵看板を飾る…などの儀式があり、1日に初日を迎えました。
初日、関係者は裃(かみしも)を着て「おめでとう」とあいさつを交わし、まるでお正月のようなにぎわいで、上演作品に『暫(しばらく)』と言う定番を取り入れていました。
ただ、『顔見世興行』自体は10日間ほどで終わり…その後改めて、新メンバーによる芝居が上演されました。今で言う、プレ公演と本公演のような感じですね。
幕末以降一時行われていませんでしたが、現在は、南座(12月)で『まねき』(役者の名前を白木に書いたもの)を掲げる儀式と共に上演され、歌舞伎座(11月)と御園座(10月)でも『顔見世』興行が上演されています。
11月(新暦)に東京・歌舞伎座で、12月(旧暦11月)に京都・南座で上演されているというのも、今昔の風情を感じますね。今年の顔見世の見どころはと言うと…先月、東京・歌舞伎座では、市川染五郎さんが41歳にして初めて『弁慶(べんけい)』を演じたことが話題になりました。
初役の染五郎さんを支えるのは、父・幸四郎さんと叔父・吉衛門さん。それぞれのお役について暖かな劇評が目を引きました。
そして12月、京都・南座においては、『東西合同 吉例顔見世大歌舞伎』(千秋楽12月26日)が上演中です。
今年は、一昨年の12月に早逝された、十八世中村勘三郎さん追善公演として、昼の部の『仮名手本忠臣蔵』には、ご子息の勘九郎さんと七之助さんが出演されています。
夜の部では、片岡仁左衛門さんが『お祭り』に出演し、明るく華やかに追善の舞台を彩ります。
またこの度、南座の舞台は、平成3年の新装開場以来はじめての張り替えを行い、この公演が『新檜舞台開き』です。役者さんにとっても、感慨深いひと月になることでしょう。
この時期の京都は、比叡おろしと呼ばれる北風が吹きます。しっかり防寒して、冬の風物詩を楽しんでください。