「まさか高橋の現役時代に、彼を超える選手が現れるとは思われていなかった。それまでのライバルだった小塚や織田信成は、『大ちゃんには勝てなくて仕方ない』という世代でしたが、まるで違う世代が現れた」(前出のフィギュア関係者)

 12年、フリーで会心の演技をみせた高橋を抑えて全日本選手権を制したのは羽生だった。翌年の全日本も羽生が優勝し、ソチ五輪で金メダリストとなった。

 高橋自身は、引退の理由を「モチベーション」としか語っていないが、この夏のアイスショーの練習で、こんな光景があったという。スポーツ記者が言う。

「大ちゃんはけがの影響でなかなかジャンプが決まらない。その横で羽生君が4回転、それも難易度の高いルッツやフリップをバンバン跳んでいたんです。その光景は切ないもので、関係者の間でひそかに話題になりました。こうしたことも、引退を決意するきっかけの一つになったのかもしれません」

 引退会見の場所は生まれ育った地元・岡山。フィギュアシーズンが本格化する前の会見は、これから試合に向かう後輩たちへの配慮。周囲を気遣う高橋らしい「引退宣言」だったのかもしれない。

週刊朝日 2014年10月31日号より抜粋