メガネ姿で引退会見に臨んだ高橋大輔 (c)朝日新聞社 @@写禁
メガネ姿で引退会見に臨んだ高橋大輔 (c)朝日新聞社 @@写禁

 10月14日、突然の引退会見を開いた高橋大輔(28)からは笑みが漏れ、悲愴感はうかがえなかった。「最後のシーズン」と決意して臨んだソチ五輪は6位、直後の世界選手権はけがで欠場して休養中だった。

 それでも、高橋の人気は圧倒的だった。斬新な髪形とヒゲのワイルドなビジュアルに、セクシーな演技。高橋がポーズをとっただけで、観客席にため息が渦巻いた。女子に比べて注目度の低かった男子フィギュアが、彼の活躍で多くのファンを獲得。今や女子をしのぐ人気だ。アイスショーでは、高橋への花やプレゼントの量が多く、他の選手の倍以上の時間をかけてリンクを往復することもある。

 そして高橋は人柄も愛された。後輩たちやメディア関係者は、親しみを込めて「大ちゃん」と呼ぶ。

 こんなこともあった。史上初めて、3人の日本男子が進出して注目を集めた10年のGPファイナル。試合前日の公式練習で、ジャンプをした小塚崇彦が高橋に激突するアクシデントがあった。小塚側のミスで周囲が凍りつく中、高橋は「気にしないで。大丈夫」と小塚を気遣った。結果は小塚が3位、高橋は精彩を欠き4位。身体的に影響はあったはずだが、高橋は言い訳も口にしなかった。

 今年8月には、「週刊文春」に日本スケート連盟会長の橋本聖子氏からの「セクハラキス」写真が報じられたが、高橋が先に橋本氏をかばうような発言で謝罪し、騒動をおさめた。

「元はヤンチャで調子のいい男の子でしたが、実力に比例して、周囲への気遣いを欠かさないデキる男になりました」(知人)

 高橋に憧れ、影響を受けた後輩スケーターの層が厚くなり、日本男子フィギュアは世界屈指のレベルになった。その中から、突出する存在となったのが、羽生結弦(19)だ。

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