批判にさらされても居座る全日本柔道連盟(以下、全柔連)の上村春樹会長(62)に公然と異を唱えたのが、千葉県柔道連盟の了徳寺健二会長(65)だ。体制刷新はできるのか。柔道界に根深く残る問題点を聞いた。

 代表選手に対する暴力やパワハラ、助成金の不正受給問題などが取りざたされているにもかかわらず、会長で居続けている上村氏。その背後には、嘉納家という後ろ盾がある。

 講道館館長および全柔連会長は、2009年まで創始者である嘉納治五郎の親族が務めてきた。一族以外の上村氏が初めて両団体のトップに就いた経緯には、前会長の嘉納行光氏の庇護があったのは当然であり、今回の騒動でも82歳と高齢の嘉納氏が評議員らに自ら電話し、「上村を頼む」と根回ししたと報じられている。柔道界に根深いパワハラの気質は、こんなところまで及ぶのである。

 柔道宗家である嘉納家は、いわば柔道界における天皇家のような存在であり、アンタッチャブルな存在だ。だが、前館長の嘉納氏の後ろ盾なくして、上村氏の独裁・強権体制は生まれ得なかった。了徳寺氏の批判の矛先は、嘉納前館長ら嘉納家にも向けられる。

「私はおふたりと食事したことがありますが、とにかく2人の相性は抜群で、前館長は上村氏を溺愛している雰囲気でした。上村氏は頭が良く、機を見るに敏なところがある。前館長や上村氏が恐れているのは、上村氏が解任されることによって講道館が受けるダメージも大きいからでしょう」

 上村氏が全柔連の会長を解任されれば、講道館館長としての立場も危うくなるはずだ。全柔連だけでなく、講道館のクリーン化も、了徳寺氏は求めている。

「講道館の収入源の大半は、柔道を志す人々から集めている入門料が占めています。青少年のご両親らが捻出された浄財が年間5億円近くあるわけですが、講道館の事業報告や予算・決算の報告を見ると、上村氏ら役員への給与が手厚く支払われていることがうかがえます。外部からの新たな人間が講道館の役員に加わることで、給与の明細が明らかになることもおふたりは危惧されているのではないでしょうか。私は全柔連の会長職だけでなく講道館の館長職も辞してもらう必要があると思っています」

AERA  2013年7月22日号