リーダーシップがあり、研究熱心。ただ、熱血漢で、時に気性が激しいとの指摘も。選手時代は86年、W杯メキシコ大会で8強入りに貢献(写真:gettyimages)
リーダーシップがあり、研究熱心。ただ、熱血漢で、時に気性が激しいとの指摘も。選手時代は86年、W杯メキシコ大会で8強入りに貢献(写真:gettyimages)

 サッカー日本代表の新監督に、メキシコ人のアギーレ氏が決定。長所を生かす路線はそのままに、W杯でみえた課題を克服できるか。

「W杯ブラジル大会を総括してから、誰が監督にふさわしいか、議論すべきではないか」

 Jリーグ関係者から批判の声があがった。しかし、大会が終わってから動きだしたのでは、いい人材を獲得できない。そんな事情が、サッカー界には現実としてある。

 大会終了から10日ほど過ぎた7月24日、日本サッカー協会の記者会見。原博実・専務理事兼技術委員長は、短期決戦の難しさと、日本の試合運びのつたなさについてひとしきり説明した後、その課題克服に向けて打ってつけの人物と言わんばかりに、次期監督の名を明かした。メキシコ人のハビエル・アギーレ氏(55)だ。

 協会はこの日を迎えるまで、W杯の日本の戦いぶりを検証してから、次期監督の選考に乗り出したわけではない。冒頭のような事情があるので、協会は大会前から接触を試みた。4年前、協会は初めて広く世界に人材を求めたが、複数の候補者との交渉は難航。ザッケローニ氏の監督就任は8月末までずれ込んだ。その反省があるからだ。

 協会の技術委員会は2011年末、代表監督選考のコンセプトを作成している。内容は次のようなものだ。

 外国人監督の場合、日本よりも強豪国の出身であること。W杯や欧州チャンピオンズリーグ(CL)、リベルタドーレス杯など高いレベルでの指導経験があること。育成年代の指導への意欲があること。東西に広いアジアの地域性や日本の特性、文化への理解があること。そして人間としての魅力があり、健康であること、などだ。

 実は、こうした条件をほぼクリアするアギーレ氏とは、4年前にも接触した経緯がある。

 アギーレ氏の監督としての経歴をみると、脚光を浴びたのは02~06年、スペインで率いたオサスナの時代だ。残留争いの常連を05~06年に過去最高タイの4位に導いた。02年と10 年のW杯には、母国メキシコを率いて16強入り。W杯での代表監督経験がある点に関しては、ザッケローニ氏よりもポイントが高い。

 また、技術委は、代表監督が交代するたびに代表チームの強化方針がぶつ切りになってきた反省を踏まえ、今回は日本の長所を生かす方向性を継続させることで、早々に一致していた。長所とは、スピードや技術、持久力、組織力。そんな周到な準備を経て次期監督の発表にこぎつけたのだ。

AERA 2014年8月18日号より抜粋