原発ゼロに向けたエネルギー戦略がようやく発表された。しかし、期待される再生可能エネルギーは、穀物の価格が跳ね上がり、太陽光・風力も問題点が見えてきた。そんななか、日本発の新たなバイオエネルギーが海外でデビューする。

 種をまいたら、雨水だけで4カ月後には高さ5メートルにも育つ。あまりに成長が早すぎて、雑草が生える間もない。地面から15センチほど残して茎を切ると、3、4カ月で再び4メートルに伸びる。もう一度切っても3メートルに――。

 これだけ生命力が強い植物でバイオ燃料をつくる。バイオ燃料は、原料となる植物が光合成によって二酸化炭素(CO2)を吸い込むことから、地球環境にやさしいとされる。

 この植物を使った新エネルギーの実用化計画が9月20日に始まった。正体はイネ科のソルガムを掛け合わせて品種改良されたもの。「スーパーソルガム」と名付けられた。沖縄県の農業ベンチャー、アースノートと東京大学、名古屋大学、東京農工大学が共同で開発した。アースノートが種を生産する。

 ソルガムは、古くはコーリャンと呼ばれた穀物だ。茎を搾った液体に含まれる糖分を発酵させ、蒸留してアルコールの一種であるエタノールをつくる。焼酎のような製造工程だ。現状では主にトウモロコシやサトウキビが原料で、多くは自動車の燃料となる。

 スーパーソルガムの活躍の舞台はインドネシア。日本ソルガム、シスウェーブホールディングスという日本勢2社が今年7月、大統領直轄のインドネシア科学院と契約を結んだ。スーパーソルガムの栽培と、そこからエタノールを生産する計画になっている。日本発の新たなバイオエネルギーが海外でデビューするのだ。

週刊朝日 2012年10月5日号