警視庁の片桐裕長官は10月18日、一連のパソコン遠隔操作による「なりすまし」ウイルス事件で、大阪や三重など4都府県警が逮捕した4人は誤認逮捕だったと認めた。

 これまで、警察は多発するネット犯罪に対応するため、システムエンジニアなどコンピューターの専門知識を持った人を「サイバー犯罪捜査官」「コンピューター犯罪捜査官」として中途採用してきた。ネット犯罪に対する捜査能力もそれなりに向上してきたという。

「ただ、強い悪意を持った、今回のような特殊な手口による犯行にはまだ対応しきれていない。直球やカーブは打てるようになったが、もっと難しい変化球は打てないという感じです」(ネット上のトラブルに詳しい落合洋司弁護士)

〈今回はこのぐらいにしておくけれど、またいつかあそびましょうね――〉(真犯人のメールの一文)

 完全にコケにされてしまった警察だが、果たして真犯人にたどり着けるのか。

 情報セキュリティー会社ネットエージェントの杉浦隆幸社長はその可能性は低いと見ている。

「犯人につながる痕跡を一部残してはいますが、いくつかの海外サーバーを経由して、それをたどれるようなログ(通信記録)は残していません。候補を500~1千人程度に絞り込むことぐらいはできるかもしれませんが…」

 警察の威信をかけた捜査が続くことだけは間違いない。

週刊朝日 2012年11月2日号