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    浅村&田中将はWBC出場志願も叶わず…「侍ジャパン落選」の理由

     WBCに向け、侍ジャパンの選考は大きな話題になった。野手では山川穂高が内定。2019年秋のプレミア12でアキレス腱に不安を抱えていたことから出場を断念すると、日の丸から遠ざかっていた。昨季は本塁打、打点の2冠に輝くなど長距離砲としての実力は疑う余地がない。本大会での活躍が楽しみだ。  投手でサプライズ選出は、オリックスの宇田川優希だ。昨年7月下旬に育成枠から支配下登録されると、セットアッパーとして奮闘。最速159キロの直球に落差の鋭いフォークで三振の山を築いた。19試合登板で2勝1敗、防御率0.81と抜群の安定感を誇り、CS、日本シリーズでも快投を続け、26年ぶり日本一の原動力となった。 「出場辞退」を決断した選手たちも話題を呼んだ。柳田悠岐、今宮健太(ソフトバンク)、坂本勇人(巨人)、森友哉(オリックス)はコンディションに不安があったり、シーズンに集中したいという理由で代表入りを見送った。  スポーツ紙デスクは、「柳田、坂本は今年35歳を迎えるシーズンで、もう若くない。昨年はチームとしても個人としても思うような結果を残せず、悔しい思いをしている。2人は侍ジャパンの常連でしたが、遊撃は源田壮亮(西武)、外野も選手がそろっているので、彼らに託せるという思いもあったのでは。森も西武からFAで新天地のオリックスに移籍し、投手の特徴を把握するなど、やらなければいけないことがたくさんある。WBC出場に迷いはあったと思いますが、リーグ3連覇に向けて中心選手として期待が大きい。この決断は致し方ないと思います」と理解を示す。  一方で、侍ジャパン入りを熱望したが落選した選手たちがいる。楽天の田中将大、浅村栄斗だ。田中の実績は語るまでもないだろう。日米通算190勝をマークし、WBC、五輪と共に2度出場。ヤンキースでは6年連続2桁勝利をマークするなどメジャーの強打者を抑える術を熟知している。昨年10月には自身のツイッターで、「来年開催されるWBCについて自分の気持ちをお話する機会がなかったので、ここで言わせていただきます。良い選手が沢山居ますし、なかなか簡単なことではないのは重々承知の上ですが、出場したいです!この気持ちを持ってオフシーズンのトレーニングにも取り組んでいきます」と出場を志願。昨オフの契約更改の席でも侍ジャパンで先発にこだわらず、どの役割でも全うすることを望んでいたが、朗報は届かなかった。  球界を代表する強打者として長年活躍している浅村も、代表から漏れた。21年の東京五輪では金メダル獲得に大きく貢献し、日の丸への思いは強い。2度目のFA権を取得し、去就が注目された22年オフに4年契約で楽天に残留を発表。WBC出場に向けても意欲を示していた。  侍ジャパンを取材するスポーツ紙記者は、「田中、浅村はメンバー入りしても不思議ではなかったし、栗山英樹監督は迷ったと思います。田中の場合は全盛期に比べて球速が落ちたのがネックになったと思います。投球術はさすがですが、不慣れな救援で投げさせるのはリスクがある。先発陣は枠が埋まっていますしね。浅村は牧秀悟(DeNA)とタイプが重なる。勝負強さに定評がある中距離砲で、浅村と同様に牧も本職の二塁だけでなく一塁を守れる。二塁は激戦区で山田哲人(ヤクルト)、菊池涼介(広島)もいる。それぞれ持ち味は違いますが、栗山監督は国際舞台に強い山田をチョイスした。こればかりは仕方ないですね」と振り返る。  田中、浅村が日の丸をつけるにふさわしい実力者であることは間違いない。テレビ関係者は「実績を残している2人が代表入りを熱望してメディアに発信した姿に敬意を表したい。落選しましたが、彼らの侍ジャパンへの思いは野球ファンに十分に伝わっていると思います」と評価する。  2人の目標は、楽天の10年ぶりのリーグ優勝に切り替わっているだろう。投打の両輪として活躍を期待したい。(今川秀悟)

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    4月から「NHK受信料」未払いだと“3倍”の金額の請求が来る? 未払い者はどうなるのか

     NHKとの放送受信契約に正当な理由がないにもかかわらず応じない人に、割増金を請求できる制度が4月に導入される。過去には受信料支払いの督促に応じない人や事業者にNHKが裁判を起こすこともあったが、新たな制度の創設で、支払いを拒んできた人たちは、より“痛い思い”をすることになるのか。 *  *  *  NHKの放送受信規約が改正され、4月1日に施行される。新たな規約では、受信契約書の提出期限を明確にし、従来の「遅滞なく」から「受信機の設置の月の翌々月の末日まで」と規定された。  この期限内に受信契約書を提出しなかった場合と、受信契約の解約や受信料免除について、ウソなどの不正があった場合に、受信料の2倍に当たる額を割増金として「請求することができる」とした。未払いの受信料を入れると、3倍の金額を支払う羽目になる。  現在の受信料は振込払いの場合、一般的に1世帯あたり地上契約(地上放送のみ受信)が月額1275円で、衛星契約(衛星放送も受信)が同2220円。このため、未払いの場合は、地上契約だと1カ月あたり3825円、衛星契約だと6660円の請求が来る可能性がある(事業者の場合は、受信機のある部屋数などによって異なる)。  実は、受信料には5年の消滅時効があるが、NHKは「受信料のお支払いが滞っている分については、これまでどおり全額請求させていただき、時効の申し出があった場合には、時効を5年として取り扱います」としている。もし時効の申し出をしなかったら、一体いくらになってしまうのか……。長く支払って来なかった人は気が気でないだろう。  そもそも、NHKとの契約は放送法64条で「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、(略)受信契約を締結しなければならない」と定められている。  NHKのホームページには、「未契約の世帯や事業所に対しても、訪問や文書などを通じて受信料制度の意義を誠心誠意丁寧にご説明し、ご契約とお支払いをお願いしていきますが、こうした努力を重ねてもなお、ご契約いただけない場合の最後の方法として、受信契約の締結や受信料の支払いを求める民事訴訟を実施しています」とある。  過去には大手ホテルチェーンに対し、客室に設置されたテレビの受信料を支払うようNHKが裁判を起こし、19億円超の支払い命令が確定したケースもあった。  新たな規約によって、未払いを続けてきた個人や事業者はこれまで以上に“痛い思い”をすることになるのだろうか。  村松由紀子弁護士は、「受信契約書の提出期限というルールが明確になったことで、訴訟を起こした場合、今までより短期間で判決が出ると予想されます。裁判にかかる費用や労力も軽減されるため、NHKにとっては、訴訟手続きに移行しやすくなる面があるでしょう」と指摘する。  ただ、訴訟が増えるかどうかは定かでない。  新たな規約には割増金を「請求する」、ではなく「請求することができる」と、やや遠回しな文言が用いられている。このため、訴訟を起こす前に、割増金は請求しないことにして受信料を任意で支払うように促す、という運用をしていくことも考えられるという。 「いずれにしても、嫌々でも支払う判断をする個人や事業者が増える可能性が高いと思います」(村松弁護士)  最近では「チューナーレステレビ」と呼ばれる、地上波や衛星放送を受信するためのチューナーがないテレビが「NHK受信料を払わなくていい」と話題になった。ただ、テレビをチューナーレステレビに買い替えれば100%支払いを免れることができる、という単純な話ではないようだ。村松弁護士はこう注意を促す。 「放送法の『協会の放送を受信することのできる受信設備』には、ワンセグ機能付き携帯電話やテレビチューナー付きのカーナビ、テレビチューナー付きのパソコンも該当するとあり、受信契約の対象となります」  NHKの稲葉延雄会長は1月の就任会見で割増金について、「一律に条件に該当するからといって請求するわけではない。お客さまの個別の事情を総合的に勘案しながら運用していく姿勢にあると聞いている」と話した。  「割増金」の効果やいかに。 (AERA dot.編集部・國府田英之) 【訂正】 当初の記事では、地上契約と衛星契約を加算して「両方未払いの場合は未納分と割増金で1カ月当たり1万485円を支払わなくてはならない。年間で約12万6000円もの額になる。」と記載しましたが、個人(世帯)契約の場合は、衛星契約をすれば地上放送も受信できるため、地上契約と衛星契約を加算する必要はありませんでした。訂正します。

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    宇野昌磨「成長する感覚味わっていたい」 勝利を重ねて思う“今すべきこと”

     グランプリシリーズスケートカナダ、NHK杯、グランプリファイナルと勝利を積み重ねてきた宇野昌磨選手。3月にさいたまスーパーアリーナで開幕する世界選手権に挑む。AERA 2023年3月27日号から。 *  *  * ――今季のフィギュアスケート男子の主役は、間違いなく彼だ。宇野昌磨(25)。グランプリ(GP)シリーズのスケートカナダとNHK杯を2連勝し、昨年12月のGPファイナル(イタリア)で初優勝。全日本選手権では5度目の優勝を果たした。  3月22日にさいたまスーパーアリーナで開幕する世界選手権では、日本勢初となる連覇がかかる。彼を阻むものは、今のところ見当たらない。「孤高」の王者が挑むのは、自分自身だ。 宇野昌磨(以下、宇野):もちろん、(連覇を)期待されていることに応えられる演技をしたいと思っています。けど、まず一番はケガをしないことだと思っています。万全な状態で試合に挑みたい。  日々の練習は絶対におろそかにせずやると思うので、そこはあまり心配はしていないです。気合を入れすぎてケガをしないように。それ以外は、何も考えなくても僕は絶対にやると思っています。 ――今季は10月のジャパンオープンから「無敗」で走り続ける。  宇野:それは偶然でもあり、偶然じゃない部分もあります。「偶然」というものを日々の練習で偶然じゃないものにしているのは、自分の成果だと思うんです。けど、フィギュアスケートは一発なんです。本当に一発勝負で、どれだけすごい選手でも失敗したら順位は落ちてしまう。いかに失敗しないパーセンテージを上げていくのかが、日々の練習からつながってくると思います。 ■失敗を恐れない理由  その一方で、あまり失敗というものを恐れていないのも事実です。今25歳で、20年間もスケートをやっているからなのか、あまり失敗を恐れなくなりました。実際に失敗しても、皆さんが思っているほど、大きなものを失うことはないと思う。  それは、周囲の方やファンの方々が、これまで僕が失敗してきた中でも応援してくださったり支えてくださったりして、それを経験したからこそ言えることだと思うんです。 ――「失敗」を恐れない。その意味で、5度目の優勝を果たした全日本が象徴的だった。フリーの前半に予定していた2本の4回転ジャンプに失敗し、後半にギアを上げた。宇野の顔つきが引き締まり、三つの連続ジャンプを今季初めて決めてみせた。 宇野:前半二つの失敗は、僕の気持ちを変えました。サルコーは仕方ないなと思っていましたけど、フリップは練習からずっとできていたので、気をつける部分が曖昧(あいまい)だったというか。ジャンプを跳びにいく時に気をつけないといけない部分が、成功しているのをいいことにちょっとおろそかになりました。 ■レベルを上げる感覚  僕の良くないところではあるんですけど、自分の番が来る前に全員の演技を見るんです。そして、「どんな演技をしたら優勝する」とか、演技中にもだいたい考えながら演技をしてしまうところがあるんです。前半二つ失敗したからこそ、「後半頑張らないといけない」と思っていました。前半にジャンプを成功していたら、後半は絶対に連続ジャンプは跳んでいなかっただろうなと思います。僕の良くないところだなと思いますけど……。 ――逆境を力に変える能力もある一方で、慎重な面も。一見相反するようだが、頂点に近づくための流儀。まじめに真摯(しんし)にスケートと向き合ってきた宇野だからこそなせることだろう。 宇野:何をもってまじめかはわからないですけど、僕は別にまじめな性格ではないですよ(笑)。もともと人の目を見計らってさぼったりするタイプだと思いますし。ただ、怖くてそういう度胸がないから、してこなかっただけです。今となっては、本当にゲームでいう“レベルを上げる”感覚で、その感覚がすごく楽しくてスケートをやっています。  だから、フィギュアスケートの魅力というものを僕自身がまだ言語化できないんです。もっともっとやっていく中で、フィギュアスケートの魅力が自分の中で見つかりそうな気もします。でも、まだまだ今はトップで争うことだったり、日々自分が成長する感触を味わったりしていたいんです。  自分の体と向き合って、練習したことがしっかり結果に反映されるのがスポーツのあり方だと思います。フィギュアスケートは技術や表現力、芸術性もありますし、求めるものによって考え方は変わると思います。  ただ、僕は競技者である以上、今はジャンプを頑張らないといけないという気持ちですね。もっと表現面を頑張りたいという思いもありますけど、それは競技者をやめてからなのかなとか考えてしまいます。 ■まだやれることある ――北京五輪金メダルのネーサン・チェン(米国)を筆頭に、時代は4回転の全盛期とも言える。頂点に立つためにジャンプを追究する日々はこれからも続く。 宇野:今できているジャンプでも、練習していく中でいろいろな発見があったり、成長したりしている部分があります。この1年でも明らかにジャンプの成功率が上がったりもする。昨季のジャンプと今のジャンプを比べても跳び方がどんどん良くなっているのが、動画を見ていてもわかる。いま跳べているジャンプの中にも、まだまだやれることがたくさんあると感じています。  4回転の種類を増やすのも視野に入れながら、練習はしていきたいなと思います。何をめざして今スケートをしているのかというと、毎日課題を見つけてそれをクリアにする日々を送って、その先に大会というものがあるという感じです。だから、僕にモチベーションのアップダウンはないんです。 ――25歳。頂点を極めた王者なりの悩みも最近出てきたという。  宇野:僕は何をめざしているんだろうな、と思う時もありますね。まったく悲観的なものではなくて、純粋な疑問というか、何をめざしているんだろう?というのはありますね。  絶対いつかは競技生活を終える時が来ると思うんです。大きなケガをするとか、トップにかなわないくらい周囲の成長が著しくなるとか、年齢とともに技術力が落ちるとか……。その後に、自分が何をするのかなとか考えてしまうこともあります。 ■自分が何をすべきか  そうした時、今、自分は何をすべきなのかなというのは、ちょっとずつ考えるようになりました。まだ何も行動には移していないんですけど(笑)。僕があまりにもフィギュアスケートという競技だけにしか向き合ってこなかったので、もうちょっと視野を広げて、自分のためにもいろいろな道を考えていくことが必要なのかなと。そういうことを今季、考えることが多くなりました。  それは立場的な問題もあると思います。今まではずっと上を追いかける立場で、ただただ追いかけるだけでよかった。でも今は、自分が引っ張ることができているとは思ってはいないですけど、そういう立場に立たされたからこそ、考えるようになったのかな、と。  でも、僕にはやりたいことがなさすぎるんですよね……。何かしたいというものが。もし見つからないのであれば、せっかく今まで培ってきたフィギュアスケートを無駄にするのはもったいないなと思います。 ――宇野の澄んだ瞳の中には、世界の頂点以上の何か──。無限の可能性が広がっているようだ。(構成/朝日新聞スポーツ部・坂上武司) ※AERA 2023年3月27日号

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    17時間前

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    ryuchell 息子とお出かけ中に「だいぶ成長したな」と感じた出来事とは

     現在4歳になる男の子を育てるpeco(ぺこ)さんとryuchell(りゅうちぇる)さん。昨年8月、婚姻関係を解消しましたが、これまで通り3人で「新しい家族の形」を築いていくことを公表しました。本連載では、お二人の日々の育児や家庭について交互に語ってもらっています。今回はryuchellさんに、最近、息子と過ごした出来事について話を聞きました。 *  *  *  少し前ですが、息子とサンリオピューロランドに行ってきました。息子はポムポムプリンが好きで、私もキティちゃんが好きなんです。  とても盛り上がったのは、歌舞伎とキティちゃんがコラボしたミュージカル(KAWAII KABUKI ~ハローキティ一座の桃太郎~)です。息子はかわいいけど、格好いいというのが好きなんですね。いいところで観たかったので、早く席を取りに行って、前の席で観ることができました。  実は、このミュージカルはもうすでに4、5回くらい見ています(笑) パフォーマンスがとてもすばらしいんです。ダンサーは格好よくて、華やか。キティちゃんやポムポムプリンたちが出てきて、歌舞伎のメイクや着物の姿ですが、かわいらしさもあります。それで鬼退治をするんです。  その他にも、キティちゃんが作ってくれるポップコーンを食べたり、アトラクションに乗ったり、かわいいランチを食べたりと、大満足でした。  サンリオには行く度に、お土産を買っています。大きなお人形とかは家にあるので、「今回はちっちゃいのだよ」と約束したら、ポムポムプリンのついたキーホルダーを持ってきました。とてもかわいかったです。  一緒にお出かけして、改めて息子もだいぶ成長したなと感じることがいくつもありました。  サンリオには電車で行きましたが、最近はどこにいくにも、「抱っこして」とは言わなくなりました。手はつないで一緒に歩いています。抱っこしなくなった分、外出がとても楽になりました。  電車でサンリオに行くと、次第に窓から見える風景が自然いっぱいな感じに変わるんですよね。「お山が見えてきた!」とか窓から見える外の風景について共有して楽しめる年齢になってきました。  私は電車には普段あまり乗らないので、乗り換えを間違えてしまって。それで乗り換えたら、また間違って……。そしたら、息子も優しくて「大丈夫だよー」ってフォローしてくれました。イヤイヤ期もありましたが、頼れるお兄ちゃんになっているんだなと感じました。  最近は、息子と一緒にカラオケにも行きました。息子はカラオケで歌うのも大好きです。  歌うのは、NHKの「おかあさんといっしょ」に出てくるような子どもの曲です。息子が選曲して歌っています。私が好きな曲とかは歌わないです。それはもうちょっと大きくなってからかなと思っています。  カラオケは子どもが喜ぶようなものが多くあって、いいですね。  デンモク(選曲・予約する通信機器)の機能に、お絵かきできるものがあって、息子はそこで恐竜とか、キティちゃんの絵を描いていました。3時くらいにいったので、おやつにスイーツも食べました。キッズルームもあるカラオケ店で、滑り台とかつみ木で遊びました。2時間くらい満喫しました。  息子は肩車が大好きなので、家でよく肩車をして、歩き回っています。身長も大きくなって、体重も重くなってきているので、最近は重くなってきたなぁと思います。まだしばらくはできると思いますが、そのうち難しくなるんですね。できるときまで肩車したいと思います。  私のSNSでは紹介できていませんが、息子との時間も大切に過ごしています。一緒にいると予想外のハプニングも起こりますが、「あぁ、どうしよう」と思うよりも、「なんくるないさー」(なんとかなるさ)の精神で子育てしています。 (構成/AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

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    日本にはびこるシニアたたき シニアの言い分「そのうち私たちのような年代になる」

     3月2日付朝日新聞の「声」欄(読者投稿欄)に、経済学者・成田悠輔氏の「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」という旨の発言に対する投書が掲載された。 「この言動は高齢者に対する若い世代の憎悪や敵意をあおる力を持っていて、私は容認できない」  投書は「世代間の敵意をあおらないで」と題されていた。投書をした北海道の松本美紀子さん(67)は、この発言をTwitterで知って、震えるような恐ろしさを感じた。 「なかなかのインテリなのになぜこんな残酷なこと、前近代的なことを平気で言うのか。弱者を切り捨てていった戦前の歴史をまず思い出しました」  岸田内閣が次々と国益優先の閣議決定をしている最中。そんななかこの発言を聞き、歴史が逆行するような感覚を覚えたという。松本さんの投稿を読んだ昔の同僚からメールも来た。 「わたしたちも諦めているよね、どうしょもないねって。でもやっぱり日本、おかしいよって」  松本さんはこの発言に触れる少し前に、年金の受給開始年齢を現行の62歳から64歳に引き上げる年金制度改革案に反対するフランスの大規模なストライキのニュースを読んでいた。全国で実施された抗議デモに112万人が参加。レピュブリック広場がデモの参加者で埋め尽くされた。 「若者が高齢者と共にプラカードを掲げて歩いていることに感動しました」  年金で生活している松本さんだが、後期高齢者になったときに自分がこのまま生活していけるのかとても不安だ。 「これは私たちの年代だけの問題じゃない。若いエリートたちが弱者を冷笑するような文化がありますが、『あなたたちもそのうち私たちみたいな年代になるんですよ』とまず言いたいです」  高齢者福祉を削り子育てなどの予算を充実させるべきという議論があるが、高齢者福祉を削るとその子ども世代が自己資金で親を支えなければならなくなる。シニア世代と若者世代の利害は、単純に対立しているだけではないのだ。 「今の若者は生まれたときから格差があたりまえに存在していて、大変な世の中で不満がいっぱいたまっている。若者は『自分たちは年金なんかもらえないよ』と言うだろうけど、当然の権利をあきらめてしまっていいんですか。若い人も高齢者も、支えあって生きていくんです」 ◇  命に優劣をつけ選別する「優生思想」。2016年、相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」の入所者ら45人が殺傷された事件の際にも、社会に潜む優生思想について多くの声があがった。  刑法・堕胎罪の撤廃を求めている「SOSHIREN女(わたし)のからだから」での活動を長く続ける大橋由香子さん(63)は、その活動のなかで、中絶を許可した優生保護法の目的に「不良な子孫の出生防止」があることに闇の深さを感じる。強制不妊手術という人権侵害、社会に浸透する優生思想について問い続けてきた。 「優生思想という言葉は、いろいろな意味でつかわれますが、優れた存在と劣った存在、能力がある人とない人に分けること自体に無理があります。その区別は、誰が、どう作るのか。線引きはいくらでも恣意的になりえます」  昨年のカンヌ国際映画祭でカメラドール特別表彰を受けた映画「PLAN 75」(早川千絵監督)は、少子高齢化が進んだ近未来の日本で、満75歳以上の人に自らの生死を決定できる制度のある社会を描いた。大橋さんは、この映画を見た日はよく眠れなかったという。 「安楽死については『したい人が選ぶのだから問題はない』と言う人もいるのでしょうが、実際には自己決定というより、死を選ぶように追い込まれる危険性が高いと思います。これだけ賃金が上がらず、不安定雇用の人も多く、性差別も含めた格差が広がっている世の中ですから」 ◇ 『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?国会議員に聞いてみた。』の著者、フリーランスライターの和田靜香さん(57)は、生活のためにライター業と並行していろいろなバイトを経験してきた。コンビニ、パン屋、スーパー、おにぎり屋……。将来が心配で「地域おこし協力隊」(総務省が行う都市から過疎地域への移住促進事業)に応募したこともある。コロナ禍前はバイトを二つかけもちしていたが、コロナ前・コロナ後で二つともクビになってしまった。 「本当に生活、どうしようかなって。私はフリーランスだから自己責任の部分もあるにはあるんですけど、でもそれだけが理由なのか」  それを知りたくて、国会議員に直接聞いてみることにした。そうしてできたのが前述の本だ。 「これで私のせいばかりではないとやっと思えました。知らないからこそ過激で簡単な言葉にひきよせられてしまう。自分で学ばないと自己責任だけに囚われます」  現行の日本の社会保障制度は「標準的家族(ライフコース)」を前提としている。また、経済問題やケアはすべて家族の中で解決する「家族主義」も強い。標準的ライフコースをとっているうちは守られるが、一度そこから外れるといきおいリスクに晒(さら)される。この間、雇用の流動化など、人びとが標準的ライフコースから外れるような社会の変化はどんどん進んでいるのに、社会保障制度は以前のままだ。 「時代に合わせて社会制度を作り変えてこなかった。つくづく政治が変化できないことや、怠惰さが問題であって。そういう政治を放置してきた私たちの責任でもあるんですけどね」  しかし、声をあげると、見える景色が違ってきたという。 「不安や不満があったら、うまく言えなくていい、戦争したくないよ、軍拡すんな! もっと税金安くしろ! そのとき、自分が思う不安をみんなガンガン叫んだらいい。多分その集合って大きいもので、それこそが力になる気がするんですよね」 (本誌・小柳暁子、佐賀旭/西岡千史)※週刊朝日  2023年3月31日号

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    “かなだい”が自国開催の世界選手権で得た達成感 「スケート人生で一番幸せ」な大会に

    「finally」「やっとできた!」「ありがとう」  世界選手権のアイスダンス・フリーダンス、さいたまスーパーアリーナの最上階まで埋め尽くした観客が拍手を送る中で、高橋大輔と村元哉中はそんな声をかけ合っている。高橋がシングル時代に怪我により出場を辞退した2014年世界選手権の会場で滑り切った、『オペラ座の怪人』だった。 「自国開催の世界選手権でそんな演技が出せるまでになったんだなという喜び、成長というか。哉中ちゃんが(アイスダンスに)誘ってくれなかったら、そんなことはなかったので」(高橋) 「シングル時代の大ちゃんの『オペラ座の怪人』が印象に強く残っていて、それをまさか日本開催の世界選手権で一緒に滑れるとは想像もしていなかったので。ただただ感動と、滑っている一つひとつの瞬間を楽しみました」(村元)  大会開幕前日の21日に行われた公式練習後、高橋はさいたまでの世界選手権に出場することについて問われ、次のように答えている。 「『ここに戻ってくるためにその頃は縁がなかったんだな、そういう意味だったんだな』と思うような世界選手権にしたい」  24日に行われたリズムダンス、村元と高橋はスピード感あふれる滑りで観客を熱狂させたが、ツイズルで高橋が回り過ぎるアクシデントがあった。一瞬動きのずれがあったものの、冷静に対処してレベル4を獲得、目標のトップ10入りまであと一つの11位発進となった。ミックスゾーンで、高橋は「シーズン1年目だったら、多分相当焦って最後までひきずっていたかもしれない」と振り返っている。 「3シーズン目になってから、結構いろんなミスがあるのですが、その中でも動揺しなくなりました」  高橋は「久しぶりに日本で開催される世界選手権に今回カテゴリーを変えて出場することができて、本当に貴重な体験を出来ているなと思います」とも語っている。 「日本で開催される世界選手権は当分この後ないでしょうから、人生としては最後になるのかなと思うので。初めて世界選手権で『オペラ座の怪人』を滑って(シングルの)メダルをとってから、明日『オペラ座の怪人』をまたカテゴリー違いで(滑る)。その時の僕自身は今の自分を想像できていなかったと思うのですが、こういった形でさいたまの、日本の世界選手権で自分が滑れているということに感謝しながら過ごしたい」  25日に行われたフリーで滑る『オペラ座の怪人』では、シーズンを通してミスが多かった最後のコレオリフトを変更している。確実性を重要視して選択し「変えてからは一度も失敗していない」と村元が自信を持って語る、スピンのように見えるコレオリフトだ。  5分間練習から大きな声援を受けていた村元と高橋が、『オペラ座の怪人』を滑り始める。怪人の仮面をはぎ取る振付から始まり、リフトを連続で決めると大歓声が起こった。二人ならではのドラマティックな雰囲気を漂わせながら、一つひとつエレメンツを滑っていく。  最後から二つ目の要素であるダイアゴナルステップで、二人はお互いの顔を見て「いけるぞ」と笑っていた。変更したリフトも美しく成功させて演技を終えた二人は、抱き合って涙を流している。  ミックスゾーンに現れた高橋は、「もう素直に嬉しい」と興奮冷めやらぬ風情だった。 「ミスなく演技をすることができて、最後まで『オペラ座の怪人』の世界観に入り込んで、エネルギーも切れずに。演技の途中ぐらいから「いけるぞ」みたいな感覚で、本当に久々の感覚だったので。しかも今回は自国開催でプレッシャーもすごく大きかったのですが、その中で納得の、満足のいく演技ができたので本当に嬉しく思います」 「僕は最後のコレオリフトでミスをずっと続けてきたので、最後まで緊張がずっと続いてはいたのですが、でも演技に入ってからは本当に『オペラ座の怪人』の世界観に没頭していて。テクニカルをこなしているというよりは『演技をしている』という感覚で最後まで滑ることができたので、これは本当に練習してきた賜物だなと思います」  フリーダンス直後は喜びにあふれていた高橋だが、26日の一夜明け会見では少し違う心境も語っている。祝杯をあげる中で、目標としていたトップ10入りを果たせなかったことに思い至り「(10位と)あと2点差もないぐらいで11位だったので、それが悔しい」という気持ちが湧いてきたという。 「試合終わった瞬間はめちゃくちゃはしゃいでいましたけど、ちょっと落ち着いて、そういった部分で悔しさは出てきたので。『惜しかったな』みたいな反省はちょっとしました」  しかし、「3シーズン目で、ゼロからの新しいチーム、コロナ禍もあって、ここまでこられたのは本当にすごいこと」(村元)、「3シーズン一緒に練習してきて培ってきたからこそ、この自国開催の(世界選手権という)大舞台のプレッシャーの中で力を出し切れた」(高橋)と前向きにとらえる思いが強い。  また、村元はこの世界選手権は「全体的な雰囲気がすごく良くて」と感じていた。 「私にとって初めての日本開催での世界選手権で、改めて大ちゃんと一緒にいい演技で締めくくれて、本当にスケート人生で一番幸せっていうか。達成感じゃないですけど『スケートしていて良かったな』っていうのを改めて思いました」  来シーズンの動向について問われた高橋は「じっくり考えます」と語っている。達成感と幸せに満ちた世界選手権を終えた村元と高橋は、来季に向けてどんな道を選ぶのだろうか。(文・沢田聡子) ●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」

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    天龍さんが語る“プレゼント” ジャイアント馬場からの贈り物はまさかの「年金」! 

     9月に「環軸椎亜脱臼(かんじくつい あだっきゅう)に伴う脊髄症・脊柱管狭窄症」であるということがわかり、現在は入院してリハビリ中の天龍源一郎さん。今回は入院先から主治医の許可をもらいながら、プレゼントにまつわる思い出を語ってもらいました。 * * *  プレゼントと言っても、俺は相撲時代、スポンサーやタニマチにいい顔をしていなかったから、ほかの力士と違って、たいしてプレゼントをもらってないんだよ。  そんな中で、相撲時代にもらったものといえば、化粧まわしに尽きるね。前にも話したことがあると思うが、俺の場合は21歳のときに十両に上がったその場所で、地元・福井の後援会の人達が手配してくれたんだ。  ところが、化粧まわしの代金の支払いが遅れていたらしく、場所が始まっても肝心の化粧まわしがなかなか届かなかったんだ。「代金は自腹で払うしかないのか……」と100~200万円の金の算段をし始めた  13日目にようやく届いてね。そのときは嬉しかったよ! 初めての化粧まわしは、四股名にちなんで登り龍がデザインだ。まあ、当時も“龍”がつく四股名の力士は俺以外にも多かったから、インパクトはそんなに無かったけど(笑)。それ以降もいくつか化粧まわしを作ってもらったけど、デザインはだいたい登り龍だね。  化粧まわしは、引退後は作ってくれた人にお返ししたり、誰かにプレゼントしたりした。俺だけじゃなく、化粧まわしは作ってくれた人にお返しすることは多いんだ。それでもいくつかは倉庫にしまっていたり、少しは手元に残っているものもある。廃業してちゃんこ屋をやっている人とか、自分の店に飾ったりしているだろう。俺も寿司屋をやっていた頃は店に飾っていたよ。やっぱり、普通の人からしたら珍しいから、お客さんも喜んでいたね。  全日本プロレスに入って、最初にジャイアント馬場さんからもらったのは、馬場さんが着なくなった服なんだけど、俺でもサイズが大きくて、どうしようもなかったね(笑)。  そんな馬場さんからのプレゼントで大切にしているのは、モノではなくプロレスラーとしての姿勢を教えられたことだ。直接「プロレスラーとはこうあるべき」というものではなく、馬場さんの何気ない仕草や態度を見て覚えたもんだよ。  例えば、飯を食うときも常にファンに見られていることを意識して、立ち食いそばなんか食べない。ホテルに行ったらレストランできちんとしたものを食べる、ケチらないということだったり。俺も相撲上がりだから馬場さんの考えはカッコいいなと思ってマネするようにしたんだ。だから俺は引退するまでファミレスやコンビニに全くといっていいほど行ったことはない。  実際に行ってみるとファミレスもコンビニもなかなかいいところだし、コンビニのホットスナックは美味しいよね(笑)。馬場さんは「プロレスラーとしてこうしろ」と口うるさく言わないタイプだから、周りのレスラーはそんなことしていなかったけど、威厳を落とさないという姿勢は馬場さんからもらった大切なもののひとつだ。  馬場さんはニューヨークでトップを取ったから、アメリカナイズされていることを匂わせていたと思う。「俺は田舎じゃなくてニューヨークでメインを取っていた」という雰囲気をプンプンさせていたよ。アメリカ時代に培ったトップとしての振る舞い方をしていたね。  そんな馬場さんからもらったもので、一番なのが「年金」なんだ。全日本プロレスのレスラーは俺も含めてみんな知らなかったのだが、実は所属している期間、馬場さんは会社としてみんなの厚生年金を払っていてくれていたんだ。当時は年金のことなんて全然考えていなかったし、そもそも個人事業主としての契約だと思っていたから、そんなことをしているとはまったく思わなかったよ。  俺もほかのレスラーも年金をもらう歳になって初めて気が付くんだ。今でも数万円の年金が入り続けていて、本当にありがたいことだよ。グレート小鹿ともこの年金のことで話をしたことがあって、そのとき小鹿は「そうなるまでいろいろあったんだよ……」となんだか含みを持たせた言い方をしていたが。俺はどんなことがあったのか知る由もないが、今となっては年金が馬場さんからの一番のプレゼントだ。  俺がプレゼントをもらった相手は、昨年亡くなった妻のまき代がやっぱり多いし、印象的なものもすべて彼女からのものだ。思い出深いプレゼントはいくつかあって、ひとつは、まき代が「駐車場まで来て」と言うから行ってみたら、ベンツの300クーペが置いてあったこと。これはさすがにびっくりしたよ。  当時は国産の車に乗っていたんだけど、ジャンボ鶴田がベンツに乗っていたのを見て、プロレスラーとしてはこれくらいのクラスの車に乗らないと、恰好がつかないと考えたんじゃないかな。SWS時代は同じように「駐車場まで来て」と言われて行ってみたら、ベンツ560SECが停まっていたこともあったね。まき代からのプレゼントはいつもサプライズで、彼女は本当に人を驚かせるのが好きなんだ。  車以外で印象的だったのは腕時計。俺がいつも「馬場さんがプラチナのロレックスをしていてさぁ」なんて、ことあるごとにまき代に話していてら、誕生日に「はい、これ」って同じ時計をプレゼントしてくれたこともあった。  馬場さんが買った当時は1000万円くらいしたようだから、かなり高価だよ。本当は1000万円もする腕時計をはめる必要なんてないのに、さすが「天龍源一郎を一等賞にする」と公言した女房だ。そのロレックスも寿司屋の経営が悪くなって手放しちゃったけど、もったいないとは思わなかった。それでまき代の負担が少しでも楽になるといいなという気持ちが強かったからね。  だから、俺がもらった一番のプレゼントはまき代が俺の嫁になってくれたこと。それが最高のプレゼントだ。結婚当初は俺もやんちゃでいい加減だったけど、それでもずっと家庭を守ってくれて、子どもを育ててくれて、本当に俺は幸せだったと思う。まき代の男前さには誰も勝てないよ。  彼女のそんな姿を見ていたからか、娘の紋奈が一度もプロレスラー天龍源一郎のことを嫌うことがなかったことも嬉しいし、俺にとっての大切なプレゼントでもある。紋奈が小学生のころは「プロレスなんて八百長だ」とか、よくイジメられていたんだけど、イジメられても一人で怒って立ち向かっていたんだって。  娘のそんな姿を見ると俺も勇気づけられるし、プロレスなんて八百長といってしまえばそうかもしれないが、娘を見ていると、それ以上のものがプロレスにはあって、彼女たちにも大きな影響を与えてくれているんじゃないかと思うんだ。家族は俺にとっての最高のプレゼント。皆さんもにもそれぞれ思い出のプレゼントがあると思うけど、大切にしてください! (構成・高橋ダイスケ) 天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。

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    【ゲッターズ飯田】今日の運勢は?「これまでの仕事ぶりが認められる日」金のイルカ座

     占いは人生の地図のようなもの。芸能界最強の占い師、ゲッターズ飯田さんの「五星三心占い」が、あなたが自分らしく日々を送るためのお手伝いをします。12タイプ別に、毎週月曜日にその日の運勢、毎月5のつく日(毎月5、15、25日)に開運のつぶやきをお届けします。 【タイプチェッカー】あなたはどのタイプ?自分のタイプを調べる 【金の羅針盤座】 午前中は気合を入れて、何事にも積極的に行動するといいでしょう。自分から挨拶をして、笑顔で楽しく仕事に取り組んでみて。夕方には、疲れて失速するかもしれませんが、勢いで乗り切れそうです。 【銀の羅針盤座】 仕事運がいい日。思った以上に結果を残せたり、満足できる1日になりそう。ちょっとしたものをご馳走してもらえることもありそうです。先輩や上司に甘えてみると楽しい時間を過ごせるでしょう。 【金のインディアン座】電車に乗り遅れたり、大事なものを失くしてしまいそうな日。問題が起きたことを他人のせいにしていると、同じことを繰り返します。しっかり反省をして、次に活かしましょう。 【銀のインディアン座】少し疲れを感じたり、ミスが増えやすいので気をつけましょう。慣れた仕でも気を引き締めておかないと、やり直しなどが発生して、無駄な時間を使うことになってしまいそうです。 【金の鳳凰座】素直に「楽しい」と思えることに挑戦するといい日。自分だけでなく、周囲も笑顔になることを目指してみましょう。話題になっている本や漫画など、あなたの得意分野の情報を周りに提供してみるといいでしょう。 【銀の鳳凰座】デスクやカバンのなかなど、身の回りをきちんと整理整頓しましょう。散らかったままで見て見ぬふりをしていたところも、きれいに掃除しておきましょう。周りにスペースが生まれると、気持ちも楽になります。 【金の時計座】他人のミスのしわ寄せがきたり、あなたの伝え方がうまくいかず、二度手間になってしまうことがありそう。仕事の進め方をよく考えて、もっと工夫してみるといいでしょう。 【銀の時計座】周囲の人をサポートするといい日。いい脇役を演じてみると、楽しく仕事ができたり、恋愛でもいい展開に恵まれそうです。相手のよろこぶ姿を想像して、行動してみましょう。 【金のカメレオン座】相性の悪い人や苦手な人と離れることができそうな日。ソリの合わない上司が不在だったり、面倒な人と関わらなくて、1日楽しく過ごせそう。恋愛でも少し進展がありそうです。 【銀のカメレオン座】朝から体の不調を感じる場合は、思い切って休んだり、早退するといいかも。元気だとしても、今日は、頑張りすぎや無理のしすぎに気をつけて。 【金のイルカ座】これまでの仕事ぶりが認められる日。上司にほめられたり評価される場面では、必要以上に謙遜せず、素直によろこびのリアクションをとりましょう。帰りに自分へのご褒美を購入するのもいいでしょう。 【銀のイルカ座】仕事で失敗したときは、いつまでもクヨクヨせず、原因を冷静に分析しましょう。「なぜこのミスが起きたのか」と振り返って、どうしたらこの経験をプラスに変えられるのか、よく考えてみるといいでしょう。

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    21時間前

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    75歳以上に安楽死を勧める制度ができたら…落合恵子が考えたこと

     昨年公開のフィクション映画「PLAN75」はリアルな現実と架空の近未来が重なって観る人の心をかき乱した。理由は「75歳以上に安楽死を勧める制度ができたら──」という世界を描いていたから。作家で、クレヨンハウス代表の落合恵子さんに「映画のような社会を現実のものとしないために私たちに何ができるのか」について聞いた。 *  *  * ■「年金生活者も立ち上がっていい」  主役の倍賞千恵子さんといえば、私の世代にとって、1963(昭和38)年の映画「下町の太陽」(山田洋次監督が映画化)をまず思い出します。その方が、いま81歳で主役をされている。素敵に年齢を重ねられていますね。自然な老いによる表面的な変化もそのまま見せておられる。  作品を観て、私は「政治や社会から自らの最期を押し付けられることはお断りします」。そう、改めて強く感じました。人は誰もいつかは死を迎えますが、私はそれを国に管理されたくない。可能な限り、自分で自分の最期を決めたい。  私は長年、毎年1月1日に、おおまかに言うと「自然のまま、私を逝かせてください」という内容のリビングウィルを書いています。30代と40代で仲のいい友人を亡くしたときの宿題として、医療従事者や周囲の友人たちが後々「あれでよかったのか」と苦しまなくていいように、私の意思を文書で残しています。  弱者をないがしろにするような政治が続いて、生きにくさを感じる社会ですよ。私が国葬反対、原発反対、改憲反対とデモに参加しているのは、民主主義の基本である、私たちひとりひとりが社会に参加しているのだ、という感覚を確認したいからでもあります。 「パンとサーカス」という言葉があります。権力者は市民にわずかな食料と娯楽を与えておけばいいという意味ですが、私は「パンは自分で作ります、タネから。サーカスも勝手に示さないでください。自分たちで考えます」と。そうしないと、結局は政治や制度にからめとられてしまいます。  若い人たちにもっと声を上げていただきたいし、年金生活者も、もう少し立ち上がってもいいと思うんですよね。社会を変えることは大変ですが、私は「まだ、やってるよ」と言われる一人でいいのです。  昨年、国葬反対のデモの帰りに転んでしまって。医師に「なんて強い骨なんだ!」と褒められるほど、何でもなかったって喜んでいたのですが、寒くなると痛むようになって。老いは日々感じます。  でも、「だから、デモには行かない」というのはできないな。  ただ、ちょっとだけ「体も労わりなさい」って、自分の体から教えてもらう。体からの教えは贈り物と思っています。  最期まで生きていくために必要なことのひとつは、悔しいけど経済力ですよね。でも、大好きだったお年寄り(私も年寄りですが)が言っていました。「棺おけに持っていけるのは、菊の花だけだよ」。最後にプラマイゼロになればいい、と私は考えています。  そのために、みんなが、あるいは、みんなで、分かち合えるかどうか。分かち合うことは奪われることではない。分かち合うことがスムーズに機能しない社会では、すぐに自己責任という言葉が登場し、問われます。  昨年12月、クレヨンハウスの東京店は表参道から吉祥寺に移転しました。47年目を迎えたクレヨンハウスは、子どもも大人も自分であることに疲れた人の居場所になったらいいなって、空間作りをしてきました。次は小さな教室もやりたい。農福連携のような活動、さまざまな古今東西の本を読む、シュタイナーの教育や絵を描く、何でもいい。  血縁だけではなく、結び縁を大切にしたい。どうして、日本は養子が少ないのか。結び縁の家族があってもいいですよね。そんな結び縁を続けていくことが、この映画に対する答えでもあるのかなと思います。 (医療ジャーナリスト/介護福祉士・福原麻希)※週刊朝日  2023年2月10日号

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    賛同の嵐「育休で同僚に10万円」の三井住友海上 ネット記事の「至極真っ当」な書き込みで即改善も

     育休をとりやすい職場環境づくりの一環として三井住友海上火災保険が新設する「育休職場応援手当」が大きな反響を呼んでいる。3月12日、読売新聞オンラインが「育休を取得した社員の同僚に最大10万円の一時金」と配信すると、掲載された「Yahoo!ニュース」や「NewsPicks」などに賛同するコメントが数多く書き込まれた。しかも、驚くべきことに、同社はたった数日でこれらの声を吸い上げ、制度内容を大きく改善したことがわかった。 *   *   * 「読売さんの記事が出たのが日曜でした。月曜の朝、出社すると、ヤフー(ニュース)などのコメントがすごいことになっていると言われた」  そう語るのは、「育休職場応援手当」制度を立案した三井住友海上火災保険人事部部長の丸山剛弘さんだ。  読売新聞の記事には、次のように書かれている。 <13人以下の職場で育休取得者が女性の場合、同僚に各10万円を支給する。取得者が男性の場合、育休期間が女性より短い実態を踏まえ各3万円とする。41人以上の職場で取得者が女性なら各1万円、男性なら各3000円とする>  インターネット上のコメントにとどまらず、「直接、話をしたい」と、人事部にも電話がかかってきた。見知らぬ声の主は、こう訴えた。 「非常に素晴らしい仕組みだと思うし、期待している。ただ、男性と女性のどちらが育休をとったかで支給金額に差があるのは惜しい。ぜひ男女の差をなくしてほしい」 ■社長に見直しを進言  この声に丸山部長は耳を傾けた。 「ヤフーにも同様のコメントがあったのですが、もうおっしゃる通りというか、至極真っ当なご意見でした。制度をよりよいものにしたい、という気持ちがすごく伝わってきた。なので、経営会議にも出し、労組にも提案した内容だけれど、変えちゃえばいいじゃないか、と思った」  この制度案はすでに経営会議に付議され、労使協議の完了を条件に新設することが承認されていた。それをヤフー・ニュースのコメント(ヤフコメ)や直電の意見をもとに大幅に見直そう、というのである。  電話を終えた丸山部長は、すぐに上司の執行役員人事部長と人事担当役員(常務)に相談した。 「『すごい反響です。でも、男女差がないほうがもっといい、というお声もいただきました。私もそう思いますので、修正しませんか』と言ったら、『そうだよな。ぜひ変えよう』という話になった」  丸山部長は一晩考えて、男女で支給金額に差をつけない案に修正し、人事部内のダイバーシティ推進担当者たちにも意見を聞いたうえで、育休取得予定期間が3カ月以上か、3カ月未満かで区切って支給金額を変えるといった修正案を人事担当役員と人事部長に見せた。 「そうしたら、こちらのほうが絶対にいい、と言ってもらえた。翌日、労使協議中の労組に対しても、提案内容を修正したい旨を申し入れると、前向きに受けとめられ、よい感触を得た。そして15日、人事部長から、出張中の社長にも労使協議と内容見直しの動きをお伝えするようにと、私と部内の企画チーム長に対して指示があったので、企画チーム長から修正を進言するメールを社長に送ってもらった。すると、『見直す方向で進めてください』と、社長からすぐに返信があった」  三井住友海上火災保険の社員数は約1万7千人。大企業にもかかわらず、信じられないほどの柔軟性とスピードである。ネット記事の反応から、即座に制度を改善――。筆者はさまざまな企業を取材してきたが、このような事例は聞いたことがない。反響をさらにプラスに変えようとする前向きな意識が形を変えたのだ。 ※記事の後半<<同僚の育休で“まわりの人に一時金”の案に「それ、いいね!」 三井住友海上、背景に「産後うつ」のケア>>に続く (AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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    開成がついに失冠、明大は合格者1千人増 激変した私大入試を分析

     首都圏の難関私大の合格者がほぼ出そろった。今年の私大入試の特徴を、ランキングとともに紹介する。 *  *  *  国公立大学の後期日程の試験が終わり、2023年度入試もいよいよ幕を閉じようとしている。国公立よりも一足早く実施された私大入試では合格者がほぼ出そろった。  今号の大学合格者高校ランキング(4)では、私学の雄である早稲田・慶應を筆頭に、上智、東京理科、GMARCH(学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政)の有名私大編をお届けする。  まずは早大から。ランキングをみると、上位校の顔ぶれは大きく変わらないが、順位に変動があった。東大合格者とともにここ10年以上トップを走ってきた開成(東京)がついに失冠し、渋谷教育学園幕張(千葉)にその座を明け渡した。慶大のランキングでは、開成がトップを死守したものの、2位の横浜翠嵐(神奈川)の躍進が目立った。  私立最難関の早慶に合格者を出す高校の多くは、東大合格者でも上位につける。だが、例外もある。慶大で5位に輝いた頌栄女子学院(東京)は近年、60~80人台をキープしているが、東大は5人と100位以下だ。頌栄女子学院は上智大のランキングではトップに輝いている。有名私大に強い高校と言えるだろう。  私大の場合、大学からの距離によって、上位校の陣容が変わる傾向もある。早大は千葉県や埼玉県、東京都の中心北部から西部にかけて、慶大は日吉や湘南藤沢キャンパスがある神奈川県を中心に、東京都の中心南部から南西部一帯の高校が増える、といった具合だ。  東大と違って1都3県の高校で上位が占められている。自宅からの通いやすさも大きな要因となっているといえそうだ。  ほかの私大はどうか。東京理科は栄東(埼玉)、明治は湘南(神奈川)、青山学院は厚木(神奈川)、立教・中央・法政・学習院の4大学は大宮開成(埼玉)がトップに輝いた。高校によっては、東大をはじめとする国公立大の合格実績よりも、難関私大の合格者を伸ばすことに力を入れているところもある。  そのため、文系の場合は早い段階から数学を必修から外す高校もある。また、早大向けに社会科目は政経に集中したり、慶大向けに小論文指導に力を入れたりしている高校もある。国公立大入試が受験の核となる首都圏以外の高校からすると、驚きかもしれない。  さて、近年の私大入試の動きとして欠かせないのが、16年度入試から文部科学省の主導で段階的に進められてきた入学定員の厳格化だ。  本来の定員よりも多く入学させたら補助金カットの対象とするもので、22年度入試は定員8千人以上の大規模大学は定員の1.1倍、4千人以上8千人未満の中規模校は1.2倍、4千人未満の大学は1.3倍までしか毎年の入学者を取れなかった。学部単位でもこの制約が課されていたため、全国的に私大の合格者数が大きく減り、入試の難化につながったというものだ。  元々は定員割れが続いている地方私大への対策や、若者の東京一極集中を避ける狙いがあっての施策だったが、受験人口の割に国公立大の定員が少ない首都圏では大きな影響となった。特に東京都では大打撃となり、全国的には大学進学率が上がっている一方で、東京都の現役大学進学率は16年から18年にかけて3年連続で下がった。  大学通信で情報調査・編集部部長を務める井沢秀さんが解説する。 「定員厳格化の影響で16年度から19年度にかけて私大の倍率が上がり続けていました。しかし新型コロナウイルスの影響や、21年1月に始まった共通テストの受験を嫌い、受験生の多くが20年度入試で合格した大学に入学した影響で、21年度は私大の一般選抜の志願者が前年比14%減という史上最高ともいわれる減少幅となりました」  こうした問題が生じたことから、文科省は定員厳格化の動きを撤回、23年度入試から緩和する方針を打ち出した。  それまで学年ごとの入学定員で判断されていたものが、全学年の総定員数で判断されることとなり、その年で入学者を出しすぎても、その次の年以降で調整できるようになったのだ。  この新制度1年目となった今年の私大入試はどうだったのか。井沢部長が分析する。 「私大の志願者は去年から増えており、定員管理厳格化の合格者の出し方に大学側が慣れたということと、緩和の影響で今年は合格者が出しやすい状況にありました。実際に明治大では現時点で去年より1千人近く合格者数が増えています。その他の私大も全体的に合格者が増えた傾向にあります。今年の入試は近年で一番私大に受かりやすかったのではないでしょうか」  一方、私大の共通テスト利用入試においては、数学などの「難問対策」に時間を取られたくない私大専願者を中心に、「共通テスト離れ」が起きているとの指摘も出ていた。実際にこうした影響はあったのだろうか。  井沢部長はこう話す。 「確かに私大専願者を中心に共通テストの受験者が大きく減るのではないかという見方があったのですが、蓋を開けてみれば18歳人口の減少分程度にとどまりました。昨年の秋ごろにコロナの第8波の影響も強かったことから、移動が伴わない共通テスト利用で私大を受ける動きも強かったようです。また国公立大受験者も、昨年の難化の影響により共通テスト利用で私大に多く併願する動きもあったようです」  3月13日から「マスク緩和」となり、多くの受験生を苦しめたコロナ禍から、かつての日常に徐々に戻りつつある。キャンパスライフがより活動的になり、海外留学もしやすくなる。有名私大が集まる大都市圏と地方との行き来の障壁も大幅に下がるだろう。  脱コロナと定員厳格化の緩和が重なる24年度の入試では、私大の人気が復活する可能性も十分にありそうだ。(河嶌太郎)※週刊朝日  2023年3月31日号

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    みんな等しく貧しくなる日本「高齢者世代いなくなる時が本当の危機」

    “既得権者”“社会のお荷物”──。シニア世代へのバッシングが止まらない。中央大学の山田昌弘教授は「高齢者世代がいなくなる時が本当の危機」だと警告する。 *  *  *  少子高齢化が進む日本で、若い世代の社会保障負担が重くなっているのは事実です。ただ、それが極端な世代間対立につながっているわけではありません。若い人は「損をしている」とは思っていても、格差是正を求める大きな運動にはなっていません。日本で問題なのは、世代内の格差がそのまま次世代に引き継がれていることです。貧しい親の子どもは貧しいまま。日本はパラサイト(寄生)社会ですから、経済的に豊かな親の恩恵を受けている子どもも多い。  東京都立大教授の宮台真司さんが、大学内で男に切りつけられる事件がありました。容疑者とみられる無職の男は死亡しましたが、親が年金保険料を払っていたそうです。成人した子どもの生活費だけでなく保険料まで親が面倒を見ることは、欧米では考えられないことです。  ただ、これは日本の文化なので、そう簡単には変わりません。だから制度を変える必要があるのですが、日本人は制度が変わるのが嫌なんです。  なぜ、変わるのが嫌なんでしょうか。それは「今の生活を変えたくないから」。たとえば、格差是正のために、高等教育の無償化を目指したとします。そこには財源が必要で、どこかで痛みが出ます。でも、その痛みは自分に降りかかってくるかもしれない。だから制度を変えたくない。  官僚は優秀なので、消費税の税率を上げるのが大変なことはわかっています。代わりに、社会保険料を少しずつ上げていく。気がついたら、昔は年に2回行けていた旅行が1回になる。そうやって、みんなでだんだん貧しくなっているのが今の日本です。  それでも、みんな等しく貧しくなっていくのなら、日本人は気にしないのではないでしょうか。外圧や戦争といったことが起きない限り、この国は変わらないのでしょう。  では、子どもを援助している今の高齢者世代がいなくなるとどうなるのでしょうか。おそらく、その時に日本の本当の危機が訪れます。※週刊朝日  2023年3月31日号

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    22時間前

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    稲垣えみ子「伊丹十三氏と大江健三郎氏から学ぶ “自分は自分”として生き抜く覚悟」

     元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。 *  *  *  ブックカフェで手にした伊丹十三氏のエッセイに魅せられて以来、原稿に行き詰まると伊丹十三を読む。早い話がエッセンスをパクりたいと思っているのだ。氏の自死の理由にも改めて興味が湧き、まさに興味本位で大江健三郎氏の『取り替え子』を購入。伊丹氏は大江氏の義兄で、その死の真相に迫った作品との解説に飛びついたのである。  で、えええーと衝撃。  興味がどう満たされたかという話は置いておく。というか、私が衝撃を受けたのは「そこ」ではなかった。  この小説には確かに両氏がモデルであろう人物が登場し、その心情や行動に両氏を重ねずにはいられないのだが、何はともあれ主人公(大江氏の分身らしき老小説家)の置かれた状況がヒドイ。本は売れず、人々は氏の立派な主張を冷笑し、でも利用しようと近づいてくる。  その不穏さに心落ち着かず、続編があると知り熱に浮かされたように読まずにいられず、すると事態は酷いことになるばかり。なぜかこの小説家はその「売られたケンカ」をいちいち買って出て、その買い方が、空気読めてないというか、イヤその方法はどう考えてもまずいっしょヤバいっしょという方向に走っていき、私は途中からもう涙目になり、でもなぜか本を閉じることができない。もはや笑えぬ喜劇の様相。主人公は大怪我までして、しかもさらにその続編もあるというではないか! なんちゅう人だ。不器用にもほどがある。そして強い。強すぎる。  その大江氏が亡くなった。新聞はノーベル賞をはじめとした数々の受賞歴や平和運動などの社会活動を称えた。だが氏が時代の旗手であった時はとっくに終わり、今や平和運動も化石の如き存在。晩年の氏は時代に取り残される悲惨の中を生き、しかしどんなにズレても踏まれても自分は自分として生き抜いたのではないか。どんな代表作より、そのことの困難さと滑稽さ、しかしだからどうしたという精神を描いた晩年の著作に今の私は我が事として心打たれる。 ◎稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行 ※AERA 2023年3月27日号

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    11時間前

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    なぜ三原舞依はスケートファンに愛されるのか 6年ぶり世界選手権で笑顔、観客も「ありがとう」

     三原舞依が世界選手権に戻ってきた。  勝負のフリープログラム。3月24日午後8時55分。  滑り始める直前、氷の感触を確かめるように、リンクを大きく周回した。観客たちが固唾をのんで見守る。三原の動きにあわせて会場の観客の視線が一斉に動く。前に滑り終えたイザボー・レビトの得点待ちの時間のため、静まる観衆。  レビトの得点(総合207.65点)が出ると、 「マイ、ミハラ」  三原がコールされた。  会場は割れんばかりの声援に包まれ、演技開始のポーズをとる三原の表情は、口角が上がり、落ち着いているようにも見える。そんな三原に、会場からは曲がかかる寸前まで声援が飛ぶ。 「マイちゃーん!」 ◇  6年ぶりの世界選手権での演技だった。  結果は、ショート3位。フリーは6位。総合得点205.70点。メダルも期待されたが、5位に終わった。得点源となるジャンプでミスがあり、点数を伸ばしきれなかった。それでも、会場を魅了し、演技後はスタンディングオベーションで、拍手が鳴りやまなかった。  フリーの曲は「恋は魔術師」。演技はまるでバレエの舞台を見ているようだった。指先までしなやかに美しい動き。その動きに伴って深紅の衣装は炎が燃えているように揺れ、三原の表現する世界観に観客は引き込まれた。音楽が盛り上がると会場も熱を帯び、それを力にして滑っているようだった。  演技後は、一瞬悔しそうな表情を見せた三原だったが、リンクを上がるときは観衆に向かって何度も何度も笑顔を見せた。 「一番上の座席まで見る」。これは毎回の三原の目標でもある。客席から「舞依ちゃんありがとうー!」と声が上がった。  客席からだけでなく、直後ネットでも「心が浄化された」「また応援したくなった」「順位はどうあれ、すばらしかった」など賞賛の声があふれた。  なぜ、これほどまでに三原は愛されるのか――。 ◇  三原はいつも「感謝の思い」を口にする。  会場でファンらが掲げるバナーのこと、ファンから届く手紙のこと。その都度「私は本当に幸せ者だな」と思うという。 「色々なところからお手紙やプレゼントを受け取り読ませていただいています。本当に本当に感謝の思いでいっぱいです」  あるインタビューでは、「イタリア(での大会)の時も来てくださっていた」とファンが掲げたバナーについても触れていた。  いつも健気で一生懸命。中野園子コーチからは「集中力の天才」と称される。  そして浅田真央さんに憧れる23歳でもある。 「いろんな選手の滑りを見て研究するのが好きです」  自分自身の課題を探り、欠点にも向き合い努力する。その姿勢は尊敬する浅田さんに通じるものがあるかもしれない。   シニアデビューは17歳。デビュー戦(2016年10月のGPスケートアメリカ)では3位に輝き、「シンデレラガール」として話題になった。そのシーズン(2016-17)は、全日本選手権で3位。初の世界選手権の切符を手にした。世界選手権ではショートでミスをして15位スタートとなったが、フリーで圧巻の演技で総合5位入賞。  順調なスタートだったと思われたが、実は関節が痛む難病「若年性突発性関節炎」を発症し、2015年12月に入院。一時は歩くこともできなかった。復帰してからも紆余曲折があった。2019-20のシーズンは体調不良で全試合を欠場。翌2020-21シーズン、北京五輪の最終選考会でもある全日本選手権で4位。表彰台にあと一歩及ばず、代表に選ばれなかった。  実力がありながら、チャンスに恵まれない。普通の人ならば、苦しい胸の内が思わず表に出てしまいそうなところだ。しかし三原はかつてテレビのインタビューに次のように答えていた。 「山あり谷ありっていうか、谷の方が多かったかなと思うんですけど、沢山の方がたのサポートのおかげでこうして今はスケートができていると思うので、その感謝を一回でもというか、一瞬でも多く伝えられるように。一瞬、一瞬を大切にして滑れたらいいなと思います」  苦しい時期を経験した三原。それでも「自分を信じて」スケートを諦めなかった。  ◇  トンネルを抜けたように今季は絶好調だった。出場した10の試合すべてで、表彰台に上がった。グランプリシリーズは2戦2勝。ファイナルでは坂本花織をおさえて初優勝。  そして、17歳で出場した世界選手権に、23歳で戻ってきた。 「23年間生きてきた中で一番というか、ほんとに濃い一年だったなと思っています。ここまで帰ってこれたので、去年以上のどん底はほんとにずっともうないと思っています」(テレビのインタビューで)  今季はカナダの名振付師、デイヴィッド・ウィルソンが振り付けた2つのプログラムで、挑んだ。大会前はプログラムのブラッシュアップもしてもらったという。  三原自身も強い思い入れのあるショートプログラムは、三原のスケート人生を表現したものだ。曲は「戦場のメリークリスマス」。 「最初のポーズから最後のポーズまで一瞬一瞬を自分の人生を振り返りながら滑っています。一緒に今シーズン、何十試合も闘ってきたプログラムに感謝の思いを込めて、力強い部分は力強く、優しい部分は優しく、というコントラストをつけながら滑られたら」(ショートプログラム前の取材で)  三原は今大会への思いも強かったが、スケートファンも同じ気持ちだったのだろう。ショートの演技では、中盤、客席から自然と手拍子が起き、最後までリンクは温かい空気に包まれた。  ショートプログラムの演技後、三原はこう語った。 「今シーズンの中でびっくりするぐらい一番緊張して、最後まで滑れるか不安との戦いだったのですが、観客席の声援がすごくて、ぐん!って(背中を)押してくださって、お客さまに感謝しながら滑れたかな、と思います。ショートに今までの人生を込めて滑ってね、と言われた時から、何回も何回も滑ってきて。今日が一番心をマックスで込めきれたかな、と。最後すごいうるうるしながら感謝の思いがこめられたかな、と思います」  ◇  リンクの上では、妖精のような三原、華やかさもある。透明感のある心が洗われるような滑りで見る者を魅了する。リンクから出れば一言ひとことを丁寧に、記者の目をしっかり見ながら誠実に対応する。気負わず、素直で。心根の優しさが伝わってくる。  今大会の結果は残念だったが、演技後のインタビューで中野コーチが三原の体の調子の悪さに触れていた。足の調子が悪かったのだという。10試合以上も戦い続け、足にも相当疲労がきたのだろう。  しかし、そのようなそぶりは記者たちの前ではまったく見せなかった。くやしさをにじませたフリー後の会見でも 「もっと成長した自分をみせられるように。やっぱり練習が大事。練習に耐えうる体っていうのをもっともっと強くしていきたいなと思います」  そして、会見をこう締めくくった。 「本当にたくさんのバナーだったり、日本の国旗を滑る前に見ることができてほんとに幸せだなという思いがいっぱいだったんですけど、演技でお返しするというのができなかったので、もし今後も応援を続けて頂けるのであれば、あの全力で恩返しができるようなスケーターになっていきたいと思いますので、これからも応援よろしくお願いしますって言いたいです」  翌25日の囲み取材。足の状態を聞かれた三原は、 「私からは言わないでおこうと思ってて。コンディション調整も含めてトップアスリート(になっていけるように)。どんな状況でも心配させないようなスケーターになりたいと思ってて。すみません」  と頭を下げた。 ◇  今大会、演技以外のシーンで記者の印象に残ったことがある。  演技後の囲み取材直前、親友でありチームメートの坂本花織の演技が始まるところだった。ミックスゾーンで記者たちの取材に対応する直前、離れたところにあるテレビ映像に目をやり(これから演技が始まる坂本に向けて)三原は小さく、本当に小さな声でつぶやくように、「かおちゃん、がんばれ。かおちゃんがんばれ」と声を出していた。  そして、取材で優勝した坂本について尋ねられると「全力で『おめでとう!!』って言いたいです」と弾んだ声で答えていた。  彼女が愛されるのはこんなところなのかもしれない。(大崎百紀)

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    ヌートバー侍Jでは“低年俸”も今後は安泰? WBCでの活躍がもたらす「巨大な恩恵」

     ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で準決勝(日本時間21日)まで駒を進めた侍ジャパン。大谷翔平(エンゼルス)、ダルビッシュ有(パドレス)の招集などで開幕前から日本中が大騒ぎとなったが、大会が始まって最も注目されるようになったのは、なんといってもラーズ・ヌートバー(カージナルス)だろう。  初戦の中国戦からこれまで5戦全勝を収めている侍ジャパンの1番センターとして全試合に出場。打率.368(19打数7安打)、3打点、7得点とリードオフマンとしての役割を十分に果たし、守備でも好守を披露している。また、試合中やベンチでの“熱い”振舞いでもファンの心をガッチリと掴んだ。 「身体能力の高さや野球へ向き合う真摯な姿勢など、可能性は感じた選手だが未知数の部分も大きかった。カージナルスでは試合の出場数は増えているが、レギュラーポジションが安泰という立場でもない。どこまでやれるのか注目していたが、まさかここまで活躍するとは嬉しい誤算だった」(MLBアジア地区担当スカウト) 「少し前まで国内スポーツ界の話題といえば、(サッカー日本代表・長友佑都の)ブラボー一色だった。3月と時期が早いとはいえ、ペッパーミル・パフォーマンスなど何かしら関係するワードが流行語大賞にノミネートされるのは間違いないでしょう。調理器具専門店ではペッパーミルがバカ売れしているとも聞く。国内の日常風景すら変えてしまった」(大手広告代理店関係者)  一躍スター選手となったヌートバーは、WBCが終わった後も日本から熱い視線がそそがれるのは間違いないだろう。だが、メジャーでは2021年にデビューし、昨年は試合数を増やしたものの、これまで通算の出場試合数は166試合で92安打、19本塁打、55打点、6盗塁と“これから”の選手でもある。  昨年の年俸も53万8625ドル(約7000万円)と大谷やダルビッシュのメジャー組と比べると少なく、NPB組を含めても侍ジャパンでは給料は高いとはいえない部類だ。 「日本での知名度や人気は桁外れとなったが、米国ではまだまだ若手のグリーンボーイ。MLBでの実績がまだ少ないので、現状の年俸は適正価格だといえる」(大手マネージメント会社関係者)  今後の活躍次第では年俸が高騰しているメジャーで大型契約を見込めるだろうが、早くても年俸調停の権利を得るのは2024年のシーズン終了後。フリーエージェント(FA)は2027年のシーズン後と、“高給取り”になるにはこれから数シーズンにわたって結果を残すことが必要とされる。  今季は所属しているカージナルスでライトのレギュラーとして見られているが、同球団は育成上手で、続々と若手の良い選手が出てくるという事情もある。世界から有望な選手が集まる中で定位置を守り続けるのは至難の業だ。  だが今回のWBCでの活躍で日本での株は“急上昇”。仮にメジャーで結果を残さなくても、いずれかのタイミングでNPB球団が獲得に動くというのは間違いないと見られている。 「選手として結果を残せることは証明しつつある。外国人特有の強引さもなく、状況に応じたプレーができるので日本向きといえる。NPB球団に入団しても大外れの心配はないので獲得に動く球団は間違いなくあるだろう。また知名度は日本人トップ選手と比較しても遜色ない。仮に来日した場合には、戦力、営業面の両方で大きな力を発揮するはず」(在京球団編成担当者) 「仮にNPB球団が獲得に動くならば早いに越したことはない。ハードなプレースタイルは身体能力が支えており、またケガと背中合わせの部分もある。また営業面では熱しやすく冷めやすい日本人の国民性を考えても、WBCの記憶が残っているうちでないと意味がない。年俸2億の複数年契約なら今すぐ出す価値がある選手」(大手マネージメント会社関係者)  また、試合で一生懸命プレーする姿や、家族愛が溢れるコメントなどでイメージは抜群。これからはCMなど日本からの仕事が舞い込むことも十分に考えられる。 「ルックスも良く、目の下のアイブラックとペッパーミルという際立った特徴もある。水面下ではすでに複数企業からCM契約出演の打診が来ているらしい。一生懸命で爽やかなイメージがあるのでどのような企業にもマッチする。WBC後も様々な場所で見かけることになりそう」(大手広告代理店関係者)  そして、現在所属しているカージナルスでもWBCで活躍したことにより、恩恵を受けるかもしれないという。 「カージナルスは“おいしい選手”が出てきて喜んでいる。かつては田口壮(現オリックスコーチ)が在籍し、世界一になったこともある。日本との縁は深く、今回の人気をきっかけに広告や放映権などのジャパンマネー獲得を狙っている。実現すればヌートバーとの高額な長期契約を結ぶ可能性もあるかもしれない」(大手マネージメント会社関係者)  ヌートバーはWBCではわずか5試合だけの出場だが、グラウンド内外での価値は想像以上に上がっている。子供の時から夢見た侍ジャパンとしての活躍により、様々な“成功”を手にしたといえそうだ。WBC後も日本人メジャーリーガー以上に注目が集まる存在になるだろう。

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    鶴界にもジェンダーの波? 春風亭一之輔が旅での出会いを実感

     落語家・春風亭一之輔さんが週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「さまざま」。 *  *  *  岸田総理の口癖らしい「さまざま」。国会質問で野党から「それはごまかしだ」と指摘され、NGワード認定されてもなお「さまざま」を連発し、岸田さん冷や汗。まるでコント。平和ですな。  2月末に広島へ仕事に行きました。奇しくも総理の地元です。  同行の三遊亭まんと君は高知県四万十町出身で師匠は三遊亭萬窓師匠。しまんと、まんそう、の「まん」を頂いて『まんと』。「広島は小学校の修学旅行以来です!」だって。高知辺りだと広島はけっこう近いのね。  原爆ドーム近くに新しくビルが建っていた。『おりづるタワー』。地上13階の屋上展望デッキ「ひろしまの丘」からは市内が見渡せるらしい。「行ってみっか」と受付へ。屋上までのチケット、大人1700円也。ちょっとたじろいだが、折しも快晴。そんな日の1700円は250円くらいに感じられるね(付き添いの方が払ってくれた)。エレベーターで屋上へ。「おー!」。ほぼ360度のパノラマに風が吹き抜ける。原爆ドームを上から観たのは初めて。  なるほど……平和記念公園を上空から観ると「景色がいい」だけじゃなく、さまざまな想いが巡ります。  12階は「おりづる広場」。液晶ビジョンで広島の街の移り変わりを観たり、折り鶴になったようにモニター上を飛べるマシンだの(説明下手)があって家族で遊べます。「おりづるの壁」なるモノがありました。鶴を折って12階から落とすと、ガラス張りの壁面に鶴が堆積していき、時を経て、平和を祈る「おりづるの壁」が出来上がるという……。これはやらねば。おりづる代100円(払ってもらった)。何十年ぶりに鶴を折る。不思議なもので指先は覚えている。なかなかよく出来た。 「私も出来ました!」。笑顔のまんとが差し出した。??? なにこれ? 首、みじか! 羽、みじか! そして開かねー! 胴体が異常にふっくらしててなんかカッコわる! 見たことのない自称・鶴。「お前、鶴折れないのかよ?」「これ鶴ですよ」「違うだろ! 鶴はこれだろ」「……あー、それオンヅルですか?」。オンヅル? 「オスですね、それ」。性別? 鶴界にもジェンダーの波? 「僕のはメンヅルですから」。『ですから』って……?  まんと曰く、高知県民の折り鶴はこの『雌鶴(メンヅル)』なるものがスタンダードらしい。「高知以外は基本雄鶴(オンヅル)なんですね……初めて知りました……」だそうです。  早速「おりづるの壁」へ鶴を落とす。私の『オンヅル』は独楽のようにクルクル回りながらゆっくり落ちていき、一方まんとの『メンヅル』は空気抵抗を受けることなく猛スピードで一直線に落下していった。「こういう時、あっけないですね……メンヅルは」。  折り鶴も『さまざま』。まんと、広島、おりづるタワー。この組み合わせがなけりゃ私は生涯『メンヅル』と出会わなかったかもしれません。旅の仕事はいろんな出会いがありますなぁ。  さて、今度はメンヅルの折り方でも覚えてみよか。 春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめたエッセー集の第1弾『いちのすけのまくら』(朝日文庫、850円)が絶賛発売中。ぜひ!※週刊朝日  2023年3月31日号

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    「そんなメールがきたのは初めて」 東大院生も驚いたChatGPTの“効果” 池谷裕二教授の活用法

     人工知能による対話型の自動応答ソフト「ChatGPT」が登場し、大きな反響を呼んでいる。海外では学生たちがAIを使用し試験対策をする動きもある。日本の教育界では、AIの活用をどのように受け止めているのか。AERA 2023年3月20日号の特集「ChatGPTの衝撃」から、ここではすでにGPTを導入している現場を紹介する。 *  *  *  GPTによって激変する業界の一つが、教育現場だ。  脳研究者で東京大学大学院薬学系研究科教授の池谷(いけがや)裕二さんのもとに、この冬、一通のメールが届いた。 「例年と出題傾向が違いますが」  差出人は池谷さんの授業を受けている学生。今年1月に期末テストが終わった後のことだ。  東大に限らず、大学生の多くは過去問をもとに試験対策をしている。だからこそ、池谷さんも偏りが出ないようバランスよく作問しているつもりだった。 「でも、自分でも気づかない脳のクセがあったんです」  そのクセに気がついたのも、GPTがきっかけだった。池谷さんは今年、薬理学の試験問題をGPTで作問。提案された約20題のなかから四つを選び、出題した。  ■GPT力も評価対象に  すると、単位を落とす学生が例年の2倍に増えた。そして、先のメールが届いたという。 「そんな連絡がきたのは初めてですよ」  と池谷さんは笑みを浮かべる。傾向にとらわれることなく、幅広く勉強してほしいという思いだった。そして“2倍”の救済措置として、レポート課題を用意した。 「高血圧の薬についてChatGPTが書いた解説文である。この間違いを説明せよ」  として提示した2千字の文章のなかには、薬の名前やメカニズム、事実関係の微妙な違いがちりばめられた。 「ChatGPTの間違いは絶妙なので、誤りを探すために、薬理学が専門である私でさえ教科書や専門書をあたりながら、30分ほど調べました」  海外ではすでに学生たちがAIを使って試験の対策をする動きも出ている。  米スタンフォード大学の学生新聞の調査によると、昨年秋の宿題や試験で同大の学生の17%が「ChatGPTを活用した」と回答。学生の半数以上が「倫理規定に違反している」と答えるなど、物議を醸した。  こうした波は日本にも広がると見られ、池谷さんは「GPTありきで考えるべき」だと指摘する。 「ChatGPTを禁じても、学生はきっとどこかで使う。そうすれば全員の単位を落とさないといけなくなります。GPTの作る文章にはミスもあるので、それを修正できるかどうかも評価対象にすればいい」  さらに、池谷さんは学生たちにこんな宣言もした。 「ChatGPT、DeepL、グラマリーの“三種の神器”を必ず使うようにと伝えました。人間の生の脳で書いた文章なんて、下手くそですから」 ◯池谷裕二(いけがや・ゆうじ)/脳の健康や老化について探求している。週刊朝日連載をまとめた『脳はすこぶる快楽主義』(朝日新聞出版)、『できない脳ほど自信過剰』(朝日文庫)などが発売中。2013年、日本学士院学術奨励賞を受賞 (編集部・福井しほ) ※AERA 2023年3月20日号より抜粋

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    MEGUMIが語る「思春期」息子の子育て 中学受験を直前で断念も「結果としてやめてよかった」

     タレント、俳優、ドラマのプロデューサーなど、多彩な活躍を見せるMEGUMIさんは、思春期男子のママでもあります。「思春期ですが、“反抗期”ではないですね」と話しますが、その背景には小学生時代から向き合い、話し合ってきた積み重ねがあるようです。プレ思春期ママ、必読のインタビュー。発売中の「AERA with Kids 2023年春号」(朝日新聞出版)から一部抜粋してお届けします。 *    *  * ■イマドキ思春期はテンション低めです  春から中3になる息子は、ここ数年でとても変わりましたね。急激に背が伸びて、声も変わり、同時に天真らんまんさのようなものが薄れました。親子の立場が逆転するような発言もあります。  まさに思春期。といっても、反抗的ではありません。息子の友だちもそう。穏やかで、優しくて、テンションが低いなぁって感じることもあります。  彼らは思春期の入り口でコロナ禍に突入した世代です。おしゃべりしちゃいけない、外出しちゃいけないって言われた影響はあると思います。リアルよりバーチャルが身近で、情報はたくさん知っているんだけど体験が圧倒的に少ない。だから言っていることは大人びて、妙に現実的なんだけど、「それは本当に正しいの?」と問われるとあやふやだったり……。  大人になろうとする息子を尊重はしますけど、リアルを知る大人として教えるべきことは、まだたくさんあると思っています。情報が特に多い世代なので、親もちゃんと考えて、誠実に話さないと信用してもらえません。  彼らが大人になったときは、きっと今よりさらにグローバル化が進むでしょう。だからこそ、誰かの言葉に振り回されるのではなく、自分の頭で理解して、自分の言葉で表現できる人になってほしいんです。  ぶつかることもありますが、高校生になったら親子の時間は物理的にも減りますよね。ここから高校受験までの1年間は、うるさがられてもいいからしっかり向き合っていこうと思っています。 ■中学受験を全力サポート 「やめる」なんて勘弁して!  実を言うと、息子は中学受験をやめているんです。  しかも「やめたい」と言い出したのが6年生になってから。最初は「はあ?」でした。学校の情報を集めて、いい塾やいい家庭教師の情報を集めて……親なら当たり前かもしれないけれど、全力でサポートしてきたつもりでした。それを全部ナシにするなんて勘弁してよ!と、大反対しました。  それから半年間、「やめる・やめない」のせめぎ合いがあり、結局は受験目前になって「やめる」という決断を受け入れました。正直、キツかったです。それでも息子の意見を受け入れたのは、「私が反対しているのは単に、ここまでの私の努力を結果で証明したいだけ」と気づいたからです。息子のためじゃなくて、自分のために反対してるんじゃん……って。  結果としては、やめてよかった。でも高校受験に向けて「これがラストチャンス」という思いはあります。義務教育じゃないので、ここでがんばるしかない。「勉強は苦手。嫌なことはしたくない」という気持ちと闘えるか、見守っていきたいです。 ■プレ思春期に見えた私の知らない息子の顔  振り返れば、彼の個性みたいなものが明確になったのは、小学校4年生ぐらいだったと思います。それまではまだまだかわいくて甘えん坊で、息子のことは全部知っているような気がしていました。  小4のとき、息子は自分で希望してオーディションを受け、映画に出演したことがありました。大人の中に交じって表現する姿を見たとき、「かわいい、幼いと思っているのは自分だけだった」と気づきました。  私の知らない顔で大人と話し、がまんし、努力もできていた。9歳でしたが、精神面では大人に近づいていました。  とても素晴らしい体験をさせてもらった息子ですが、いまのところ俳優業に進む予定はないみたいです。理由を聞くと、「演技は恥ずかしい」って。ええ? そういう理由なの?と、私はけっこう驚きましたけどね(笑)。  小4ぐらいのプレ思春期って、実はものすごく変化の時期だと思います。受験するか決めたり、新しい習い事を始めたり。親はその選択や送迎に時間をとられるし、「やめたい」と言われると「やめさせていいのか」と親も迷います。本人の主体性と親の価値観のせめぎ合いですよね。その始まりの時期がプレ思春期なのかなと思います。 ※「AERA with Kids 2023年春号」から一部抜粋 (取材・文/神 素子) 〇MEGUMI/1981年生まれ。岡山県出身。2008年に結婚。翌年2月に長男誕生。現在は俳優としてドラマや映画などで活躍する。22年にドラマ「完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの」を企画・プロデュース。金沢市では「Cafeたもん」を経営する。母親役で出演した映画『赦(ゆる)し』が公開中。

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    同僚の育休で“まわりの人に一時金”の案に「それ、いいね!」 三井住友海上、背景に「産後うつ」のケア

    「育休を取得した社員の同僚に最大10万円の一時金」。読売新聞オンラインが3月12日、三井住友海上火災保険が新設する「育休職場応援手当」に触れ、冒頭のように題した記事を配信すると、掲載された「Yahoo! ニュース」などで制度に賛同するコメントがあふれかえった。育休をとりやすい職場環境づくりの一環としての新制度だが、驚くべきことに、同社はたった数日でこれらの声を吸い上げ、制度内容を改善。この短期間で大きく動いたのだ。同社人事部部長の丸山剛弘さんに立案に至るまでの経緯と、社内での反応を聞いた。 ※記事の前半<<賛同の嵐「育休で同僚に10万円」の三井住友海上 ネット記事の「至極真っ当」な書き込みで即改善も>>から続く *  *  *  社員が育児休業を取った際に職場の同僚全員に、最大10万円の一時金を給付する「育休職場応援手当」という制度をつくったきっかけは、舩曵真一郎社長が以前から抱いていた課題意識だった。「社会問題の一つとして少子化が大きな課題となっている。その解決に貢献するような、イチ企業としてできる人的投資、制度改定を考えてほしい」という指示が出ており、年明けに人事担当役員と人事部メンバーで、ブレストを行うことにしていた。  丸山さんが言う。 「1月6日、福岡の実家からリモートで会議に参加し、参加メンバー全員で、それぞれが考えたアイデアを持ち寄って論議しました」  リモート会議の出席者は人事担当役員や人事部長ら5人。しかし、これ以上何ができるのか、頭を抱えた。というのも、すでに同社は育児についての支援をかなり充実させていたからだ。 「例えば、男性社員の育休1カ月取得を21年6月から義務化しています。男性社員に対して育休取得を推奨している企業は多い。なので、取得率100%の会社はそれほど珍しくありません。ただ、対象者全員が1日でもとれば取得率は100%になります。しかし、それではあまり意味がない。社長の舩曵は、少子化対策などとともに、産後うつ防止についても気にかけていました」  産後の女性の死因の1位は自殺である。その大きな要因は産後うつだ。出産に必要な女性ホルモンは子どもを産むと急激に減少し、ホルモンバランスが大きく崩れ、うつが引き起こされる。産後うつのピークは出産後2週間から1カ月といわれる。 「そこで夫が休業をとって妻をしっかりと支える。なので、男性社員が育児休業をとるのは当たり前で、産後できるだけ早い時期に連続して休業をとることが重要だと伝えてきました」  実は、育休の取得日数が少ない、いわゆる「とるだけ育休」が特に横行しているのが金融・保険業界である。なので、こうした取り組みはかなり珍しい。さらに社長が産後うつの問題にまで言及して育休取得を進めるのは異例のことである。 ■それより人を増やしてくれよ  リモート会議に話を戻そう。 「これまでさまざまな育児支援の仕組みを充実させてきましたから、これ以上、産育休者本人に手当などを増やしてもあまり効果は見込めないかな、という話になりかけたときに、じゃあ、本人ではなく、まわりの人に一時金を支給するのはどうでしょうか、と言ったんです」  筆者は、思わず言葉が出てしまった。「そんなアイデアがよく出ましたね」と。 「いや、たぶん人事を長くやっている人だったら誰でもそういうことは考えていると思います」  丸山部長は謙虚にそう指摘し、さらに、続けた。 「なぜ、育休をとりにくいかというと、休む人は職場の人に迷惑をかけてしまうので、申し訳ないとどうしても思ってしまいます。まわりの人は、おめでとう、と祝福するのが普通ですが、心のどこかに、ああ負担が増えるな、とモヤモヤした気持ちも抱えてしまいがちです」  ちなみに、ヤフコメには「手当を支給するよりも人を増やしてくれよ」という声もあったが、同社は代替要員の配置を以前から行ってきた。 「でも、そう簡単ではないんですよ。すべての産育休のケースで代替要員を配置できるものではありません。部支店の要員計画とも関連がありますし、また、特に業務内容が高度になればなるほど難しい。同等のスキルや経験を持った人材が見つからないとか、見つかっても仕事を教えるのが大変とか。そういう不満はなかなかゼロにはならない。なので、数字のうえでは育休の取得率も取得日数も問題ないように見えても、本当に気兼ねなく育休をとれているか、周囲も心から快く応援できているかといったら、改善の余地が大きいよねと。そこで、本人ではなく、職場を支えるまわりの人にも一時金を支払い、会社全体で育休を応援していこう、という案を出した。そうしたら、『それ、いいね。それでいこう』という話になった」  丸山部長は人事部の課長とともに、制度を設計した。勘案したのは職場の規模と、実際の育休の取得日数である。 「今は男性と女性の育休の期間がかなり違います。女性は平均約17カ月(産休を含む)、男性は平均37日(法律上の育児休業取得日数[現在平均6.4日]と併せて取得する連続休暇やそれに続く土日・祝日を含めた暦日ベースでの育児休業・休暇等の平均日数)。その実態を踏まえて、女性が休んだときには多く支給するほうが本人の気兼ねが軽減できるし、まわりの社員の納得感も得られると思いました。それで最初は男女で支給金額に差を設けた」  冒頭で触れたように、この案が報道されるとインターネット上に賛同の声が一気に広まった。その一方で、「男女別でなければもっといいのに」という声も上がった。 「現状、男性の育休取得日数は女性に比べて短いですけれど、なかには子どもが1歳になるまで休みたい、という人もいるわけです。そういう声を聞いて、なるほど、と思った。今は少数派ですが、そういう男性を応援していかなければならない。そこで、性別ではなく、育休取得予定期間が3カ月以上か、3カ月未満かで区切って支給金額を変えることにしました」  なぜ、3カ月で区切ったのか? 「数は少ないですが、キャリアの断絶をできるだけ少なくしたいと、出産後、育休をとらない女性もいます。当社の場合、産前・産後休暇は約3.7カ月です。そこで、職場に早く復帰したいという女性の妨げにならないように、3カ月を基準にしました。また、産前・産後休暇の期間も育休取得予定期間に含めて判定するルールとしました。そうすれば、産後すぐに職場復帰してもまわりの人に10万円が支払われます(職場規模13人以下の場合)。また、男性社員の育休取得日数は、今は平均37日ですが、3カ月以上の取得を目指しやすくなります。今は少ない長期取得者も周囲からより受け入れられやすくなるでしょう。男性、女性、どちらの少数派に対しても背中を押せるような制度にしました」 ■経営陣に恵まれた  丸山部長は「本当に経営陣に恵まれたと思います」と語る。 「これまでに同様な仕組みを考えた人事担当者はたくさんいると思うんです。でも、そのような意見を下から上げたとき、変な制度じゃないか、とか言われてしまう可能性がある。ところがそれを、やろう、と言ってくれた。そんな『経営陣がすごい』というコメントがありましたが、確かにそうだな、と思いました」  社内の反応は上々という。 「お子さんのいる女性から『安心して2人目をもうけようという気持ちになれる』という声を直接聞きました。そのとき、ああ、これは本当に少子化対策にも貢献できるんじゃないか、と思いました。非常に嬉しく感じました」 (AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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    「こんな女と結婚なんてしなきゃよかった」と懊悩する46歳男性に、鴻上尚史が今すぐ実行するべきと勧めた驚きアドバイスとは?

    「取り返しがつかないことをもう10年責められ続けている」「妻を殴り殺したい」「自殺しようか」と悩み苦しむ46歳男性。「こんな女と結婚なんてしなきゃよかった」と追い込まれている相談者に、鴻上尚史が「今はこれが一番よい手段」と勧めた驚きのアドバイスとは? 【相談174】事あるごとに反論できない過去を蒸し返してなじる妻を殴り殺したくなります(46歳 男性 塵芥滓)  いつも楽しく人生相談を読ませていただいております。  題名どおりです。妻を殺したら子供たちが可哀想だし、自殺しようか悩んでいます。  理由は配偶者が、今住んでいる家を買ったことをなじるからです。  取り返しがつかないことをもう10年経っても責め続けられており、耐えられません。  私も妻も会社員です。10歳の娘と5歳の息子がおります。  若いころ、姉の子育てを手伝い、子育ての大変さを知っていた私は、絶対子育ては実家からスープの冷めない距離がいいと思い込んでおり、売りに出ていた今の家を買いました。妻は職場からの遠さを心配しておりましたが、頑強に反対はしていなかったと思います。いや、していたでしょうか? 記憶がおぼろげです。いずれにせよ、私は小さい子供を育てるには妻の実家近くが良いと信じて買いました。姉の子育てを手伝っていたので、赤ちゃんのお世話は慣れています。子供のお世話もしつけも遊び相手も家事も率先してやっています。  たびたび職場から遠いことの弊害はありました。定時でも保育園の延長時間ギリギリ。朝出勤時に電車を一本逃せば間に合わない。子供の帰宅時間には会社から帰ってこられないので、祖父母だよりになる。遠いから良いということはないけれど、それでも、子供が赤ちゃんのころ閑静でおちついた場所で育てられるのはよかったのかなと思いました。  でも保育園のころはともかく、小学校に上がった娘は学校になじめていないようです。妻は私立の学校に行かせればよかったと、当時のお友達と同じ学校に通うことを決めた娘をたびたびなじります。「ほら、言ったとおりでしょ? 私立の小学校に行けばよかったのに」と小学生の娘をなじります。  妻はことあるごとに「こんなとこに家を買わなきゃよかった。遠すぎる。もし上の娘を(親に頼まず)家でお迎えできる環境なら、お友達とも遊べた。人間関係で悩まずに済んだ(←これの因果関係は不明)。実家で子供たちは動画しか見てない。お陰で子供たちはゲームや動画を覚えた。おやつばっかりで太った」というように、気に入らないことは全て環境のせいにして(できてしまうのですが)、愚痴ります。  家が職場から遠いことの欠点は無限にでてきます。気に食わないことがあると、特に自分に失敗があると、かならず職場から遠くて余裕がないことを理由にします。両親への連絡を彼女が忘れていて、私が仕事の予定を変えないといけない場合も、 「ほら、こんな家に住んでるからこうなるの。子供の世話が父母だよりにならざるを得ないなんて機能不全なの。彼らは私が家を出て別の家の人間になったと思っているのでややこしいのに。だから私は反対したの。こんな家買わなきゃよかったのに。だから反対したのに。こうなることは分かってたの! なにか反論ある?」  と言われます。「ありません」と言うしかありません。  なにも言えません。  彼女は分かっていたのです。こうなると。  私は知らなかったのです。こうなると。  こうなると知っていたら買わなかった。  こうなると知っていたら結婚なんてしなかった。  私はなにも言えません。決めたのは私です。  こころから思います。  こんな家買わなきゃよかった。  そもそもこんな女と結婚なんてしなきゃよかった。  そもそも俺なんて生まれてこなきゃよかった。  なにもいいことない。いきててもいいことない。  子供たちは完璧です。すばらしいです。いいことしかない。なにも悪いことない。  でも妻は最悪です。人間として軽蔑しています。正しいけど嫌いです。  一度耐えきれなくなり家を飛び出しました。妻が子供のことを疎んじるような発言をし、私は怒りを抑えきれず殴りそうになったからです。  殴ったら間違いなく殺すまで殴ってしまいます。それで家を飛び出して頭を冷やしました。 「一本の藁がラクダの背を折る」って、あるんですね。  既に限界まで荷物が載せられていたら、些細な刺激で背骨が折れる。心が折れました。  妻はとりかえせない過去や相手が反論できない理由で人を攻撃するのが得意技です。  娘もたびたび、「ほら、言ったでしょ? 私立に行けばよかったのに」と言われて泣いているので、多分私と同様の辛さを味わっていると思います。  もう消えたい。  どうすればよいのでしょう? 【鴻上さんの答え】 塵芥滓さん。ぎりぎりですね。選択肢が「妻を殺すか自殺するか」と思われているんですね。  本当に切羽詰まってますね。 「どうすればよいのでしょう?」と書かれていますが、僕のアドバイスは、塵芥滓さんが書かれたこの相談の文章を妻に見せることです。  驚かれましたか? でも、今はこれが一番よい手段だと思います。というか、これしかないと思います。  塵芥滓さんは、「妻を殺すか自殺」かの選択で迷っていて、「離婚」とか「別居」なんて思考はないですよね。それは、とても危険な状態だと思います。追い込まれすぎて視野が狭くなっているのだと思います。  こういう時は、言いたいこと、思っていることを相手に伝えるのです。  そこからどうなるか? 申し訳ないですが、それは分かりません。でも、塵芥滓さんが、ここまで追い込まれているんだ、ここまで思い詰めているんだ、ここまでギリギリなんだ、ということを妻に伝えることはとても意味のあることだと思います。  口で言ってもすぐに反論されるんでしょう。だから、この文章を見せるのです。「鴻上ってのに見せるといいと言われた」と付け足してもいいです。  怒鳴り合いになったり、ケンカになったりしたら、諦めずに、粘り強く、話し続けて下さい。何時間も何日も。  もし、この文章を見せても鼻で笑われたとしたら、妻を殺すのでも自殺するのでもなく、離婚を含めて、子供と自分の人生を考えるのがいいと思います。  そのためにも、この文章を、今すぐ見せることを、強くお勧めします。 ■本連載の書籍化第4弾!『鴻上尚史のなにがなんでもほがらか人生相談』が発売中です。書き下ろしの回答2編も掲載! ↓【声で聴く】鴻上尚史さんインタビューはこちら↓

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    ヌートバー侍Jでは“低年俸”も今後は安泰? WBCでの活躍がもたらす「巨大な恩恵」

     ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で準決勝(日本時間21日)まで駒を進めた侍ジャパン。大谷翔平(エンゼルス)、ダルビッシュ有(パドレス)の招集などで開幕前から日本中が大騒ぎとなったが、大会が始まって最も注目されるようになったのは、なんといってもラーズ・ヌートバー(カージナルス)だろう。  初戦の中国戦からこれまで5戦全勝を収めている侍ジャパンの1番センターとして全試合に出場。打率.368(19打数7安打)、3打点、7得点とリードオフマンとしての役割を十分に果たし、守備でも好守を披露している。また、試合中やベンチでの“熱い”振舞いでもファンの心をガッチリと掴んだ。 「身体能力の高さや野球へ向き合う真摯な姿勢など、可能性は感じた選手だが未知数の部分も大きかった。カージナルスでは試合の出場数は増えているが、レギュラーポジションが安泰という立場でもない。どこまでやれるのか注目していたが、まさかここまで活躍するとは嬉しい誤算だった」(MLBアジア地区担当スカウト) 「少し前まで国内スポーツ界の話題といえば、(サッカー日本代表・長友佑都の)ブラボー一色だった。3月と時期が早いとはいえ、ペッパーミル・パフォーマンスなど何かしら関係するワードが流行語大賞にノミネートされるのは間違いないでしょう。調理器具専門店ではペッパーミルがバカ売れしているとも聞く。国内の日常風景すら変えてしまった」(大手広告代理店関係者)  一躍スター選手となったヌートバーは、WBCが終わった後も日本から熱い視線がそそがれるのは間違いないだろう。だが、メジャーでは2021年にデビューし、昨年は試合数を増やしたものの、これまで通算の出場試合数は166試合で92安打、19本塁打、55打点、6盗塁と“これから”の選手でもある。  昨年の年俸も53万8625ドル(約7000万円)と大谷やダルビッシュのメジャー組と比べると少なく、NPB組を含めても侍ジャパンでは給料は高いとはいえない部類だ。 「日本での知名度や人気は桁外れとなったが、米国ではまだまだ若手のグリーンボーイ。MLBでの実績がまだ少ないので、現状の年俸は適正価格だといえる」(大手マネージメント会社関係者)  今後の活躍次第では年俸が高騰しているメジャーで大型契約を見込めるだろうが、早くても年俸調停の権利を得るのは2024年のシーズン終了後。フリーエージェント(FA)は2027年のシーズン後と、“高給取り”になるにはこれから数シーズンにわたって結果を残すことが必要とされる。  今季は所属しているカージナルスでライトのレギュラーとして見られているが、同球団は育成上手で、続々と若手の良い選手が出てくるという事情もある。世界から有望な選手が集まる中で定位置を守り続けるのは至難の業だ。  だが今回のWBCでの活躍で日本での株は“急上昇”。仮にメジャーで結果を残さなくても、いずれかのタイミングでNPB球団が獲得に動くというのは間違いないと見られている。 「選手として結果を残せることは証明しつつある。外国人特有の強引さもなく、状況に応じたプレーができるので日本向きといえる。NPB球団に入団しても大外れの心配はないので獲得に動く球団は間違いなくあるだろう。また知名度は日本人トップ選手と比較しても遜色ない。仮に来日した場合には、戦力、営業面の両方で大きな力を発揮するはず」(在京球団編成担当者) 「仮にNPB球団が獲得に動くならば早いに越したことはない。ハードなプレースタイルは身体能力が支えており、またケガと背中合わせの部分もある。また営業面では熱しやすく冷めやすい日本人の国民性を考えても、WBCの記憶が残っているうちでないと意味がない。年俸2億の複数年契約なら今すぐ出す価値がある選手」(大手マネージメント会社関係者)  また、試合で一生懸命プレーする姿や、家族愛が溢れるコメントなどでイメージは抜群。これからはCMなど日本からの仕事が舞い込むことも十分に考えられる。 「ルックスも良く、目の下のアイブラックとペッパーミルという際立った特徴もある。水面下ではすでに複数企業からCM契約出演の打診が来ているらしい。一生懸命で爽やかなイメージがあるのでどのような企業にもマッチする。WBC後も様々な場所で見かけることになりそう」(大手広告代理店関係者)  そして、現在所属しているカージナルスでもWBCで活躍したことにより、恩恵を受けるかもしれないという。 「カージナルスは“おいしい選手”が出てきて喜んでいる。かつては田口壮(現オリックスコーチ)が在籍し、世界一になったこともある。日本との縁は深く、今回の人気をきっかけに広告や放映権などのジャパンマネー獲得を狙っている。実現すればヌートバーとの高額な長期契約を結ぶ可能性もあるかもしれない」(大手マネージメント会社関係者)  ヌートバーはWBCではわずか5試合だけの出場だが、グラウンド内外での価値は想像以上に上がっている。子供の時から夢見た侍ジャパンとしての活躍により、様々な“成功”を手にしたといえそうだ。WBC後も日本人メジャーリーガー以上に注目が集まる存在になるだろう。

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    浅村&田中将はWBC出場志願も叶わず…「侍ジャパン落選」の理由

     WBCに向け、侍ジャパンの選考は大きな話題になった。野手では山川穂高が内定。2019年秋のプレミア12でアキレス腱に不安を抱えていたことから出場を断念すると、日の丸から遠ざかっていた。昨季は本塁打、打点の2冠に輝くなど長距離砲としての実力は疑う余地がない。本大会での活躍が楽しみだ。  投手でサプライズ選出は、オリックスの宇田川優希だ。昨年7月下旬に育成枠から支配下登録されると、セットアッパーとして奮闘。最速159キロの直球に落差の鋭いフォークで三振の山を築いた。19試合登板で2勝1敗、防御率0.81と抜群の安定感を誇り、CS、日本シリーズでも快投を続け、26年ぶり日本一の原動力となった。 「出場辞退」を決断した選手たちも話題を呼んだ。柳田悠岐、今宮健太(ソフトバンク)、坂本勇人(巨人)、森友哉(オリックス)はコンディションに不安があったり、シーズンに集中したいという理由で代表入りを見送った。  スポーツ紙デスクは、「柳田、坂本は今年35歳を迎えるシーズンで、もう若くない。昨年はチームとしても個人としても思うような結果を残せず、悔しい思いをしている。2人は侍ジャパンの常連でしたが、遊撃は源田壮亮(西武)、外野も選手がそろっているので、彼らに託せるという思いもあったのでは。森も西武からFAで新天地のオリックスに移籍し、投手の特徴を把握するなど、やらなければいけないことがたくさんある。WBC出場に迷いはあったと思いますが、リーグ3連覇に向けて中心選手として期待が大きい。この決断は致し方ないと思います」と理解を示す。  一方で、侍ジャパン入りを熱望したが落選した選手たちがいる。楽天の田中将大、浅村栄斗だ。田中の実績は語るまでもないだろう。日米通算190勝をマークし、WBC、五輪と共に2度出場。ヤンキースでは6年連続2桁勝利をマークするなどメジャーの強打者を抑える術を熟知している。昨年10月には自身のツイッターで、「来年開催されるWBCについて自分の気持ちをお話する機会がなかったので、ここで言わせていただきます。良い選手が沢山居ますし、なかなか簡単なことではないのは重々承知の上ですが、出場したいです!この気持ちを持ってオフシーズンのトレーニングにも取り組んでいきます」と出場を志願。昨オフの契約更改の席でも侍ジャパンで先発にこだわらず、どの役割でも全うすることを望んでいたが、朗報は届かなかった。  球界を代表する強打者として長年活躍している浅村も、代表から漏れた。21年の東京五輪では金メダル獲得に大きく貢献し、日の丸への思いは強い。2度目のFA権を取得し、去就が注目された22年オフに4年契約で楽天に残留を発表。WBC出場に向けても意欲を示していた。  侍ジャパンを取材するスポーツ紙記者は、「田中、浅村はメンバー入りしても不思議ではなかったし、栗山英樹監督は迷ったと思います。田中の場合は全盛期に比べて球速が落ちたのがネックになったと思います。投球術はさすがですが、不慣れな救援で投げさせるのはリスクがある。先発陣は枠が埋まっていますしね。浅村は牧秀悟(DeNA)とタイプが重なる。勝負強さに定評がある中距離砲で、浅村と同様に牧も本職の二塁だけでなく一塁を守れる。二塁は激戦区で山田哲人(ヤクルト)、菊池涼介(広島)もいる。それぞれ持ち味は違いますが、栗山監督は国際舞台に強い山田をチョイスした。こればかりは仕方ないですね」と振り返る。  田中、浅村が日の丸をつけるにふさわしい実力者であることは間違いない。テレビ関係者は「実績を残している2人が代表入りを熱望してメディアに発信した姿に敬意を表したい。落選しましたが、彼らの侍ジャパンへの思いは野球ファンに十分に伝わっていると思います」と評価する。  2人の目標は、楽天の10年ぶりのリーグ優勝に切り替わっているだろう。投打の両輪として活躍を期待したい。(今川秀悟)

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    4月から「NHK受信料」未払いだと“3倍”の金額の請求が来る? 未払い者はどうなるのか

     NHKとの放送受信契約に正当な理由がないにもかかわらず応じない人に、割増金を請求できる制度が4月に導入される。過去には受信料支払いの督促に応じない人や事業者にNHKが裁判を起こすこともあったが、新たな制度の創設で、支払いを拒んできた人たちは、より“痛い思い”をすることになるのか。 *  *  *  NHKの放送受信規約が改正され、4月1日に施行される。新たな規約では、受信契約書の提出期限を明確にし、従来の「遅滞なく」から「受信機の設置の月の翌々月の末日まで」と規定された。  この期限内に受信契約書を提出しなかった場合と、受信契約の解約や受信料免除について、ウソなどの不正があった場合に、受信料の2倍に当たる額を割増金として「請求することができる」とした。未払いの受信料を入れると、3倍の金額を支払う羽目になる。  現在の受信料は振込払いの場合、一般的に1世帯あたり地上契約(地上放送のみ受信)が月額1275円で、衛星契約(衛星放送も受信)が同2220円。このため、未払いの場合は、地上契約だと1カ月あたり3825円、衛星契約だと6660円の請求が来る可能性がある(事業者の場合は、受信機のある部屋数などによって異なる)。  実は、受信料には5年の消滅時効があるが、NHKは「受信料のお支払いが滞っている分については、これまでどおり全額請求させていただき、時効の申し出があった場合には、時効を5年として取り扱います」としている。もし時効の申し出をしなかったら、一体いくらになってしまうのか……。長く支払って来なかった人は気が気でないだろう。  そもそも、NHKとの契約は放送法64条で「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、(略)受信契約を締結しなければならない」と定められている。  NHKのホームページには、「未契約の世帯や事業所に対しても、訪問や文書などを通じて受信料制度の意義を誠心誠意丁寧にご説明し、ご契約とお支払いをお願いしていきますが、こうした努力を重ねてもなお、ご契約いただけない場合の最後の方法として、受信契約の締結や受信料の支払いを求める民事訴訟を実施しています」とある。  過去には大手ホテルチェーンに対し、客室に設置されたテレビの受信料を支払うようNHKが裁判を起こし、19億円超の支払い命令が確定したケースもあった。  新たな規約によって、未払いを続けてきた個人や事業者はこれまで以上に“痛い思い”をすることになるのだろうか。  村松由紀子弁護士は、「受信契約書の提出期限というルールが明確になったことで、訴訟を起こした場合、今までより短期間で判決が出ると予想されます。裁判にかかる費用や労力も軽減されるため、NHKにとっては、訴訟手続きに移行しやすくなる面があるでしょう」と指摘する。  ただ、訴訟が増えるかどうかは定かでない。  新たな規約には割増金を「請求する」、ではなく「請求することができる」と、やや遠回しな文言が用いられている。このため、訴訟を起こす前に、割増金は請求しないことにして受信料を任意で支払うように促す、という運用をしていくことも考えられるという。 「いずれにしても、嫌々でも支払う判断をする個人や事業者が増える可能性が高いと思います」(村松弁護士)  最近では「チューナーレステレビ」と呼ばれる、地上波や衛星放送を受信するためのチューナーがないテレビが「NHK受信料を払わなくていい」と話題になった。ただ、テレビをチューナーレステレビに買い替えれば100%支払いを免れることができる、という単純な話ではないようだ。村松弁護士はこう注意を促す。 「放送法の『協会の放送を受信することのできる受信設備』には、ワンセグ機能付き携帯電話やテレビチューナー付きのカーナビ、テレビチューナー付きのパソコンも該当するとあり、受信契約の対象となります」  NHKの稲葉延雄会長は1月の就任会見で割増金について、「一律に条件に該当するからといって請求するわけではない。お客さまの個別の事情を総合的に勘案しながら運用していく姿勢にあると聞いている」と話した。  「割増金」の効果やいかに。 (AERA dot.編集部・國府田英之) 【訂正】 当初の記事では、地上契約と衛星契約を加算して「両方未払いの場合は未納分と割増金で1カ月当たり1万485円を支払わなくてはならない。年間で約12万6000円もの額になる。」と記載しましたが、個人(世帯)契約の場合は、衛星契約をすれば地上放送も受信できるため、地上契約と衛星契約を加算する必要はありませんでした。訂正します。

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    「そんなメールがきたのは初めて」 東大院生も驚いたChatGPTの“効果” 池谷裕二教授の活用法

     人工知能による対話型の自動応答ソフト「ChatGPT」が登場し、大きな反響を呼んでいる。海外では学生たちがAIを使用し試験対策をする動きもある。日本の教育界では、AIの活用をどのように受け止めているのか。AERA 2023年3月20日号の特集「ChatGPTの衝撃」から、ここではすでにGPTを導入している現場を紹介する。 *  *  *  GPTによって激変する業界の一つが、教育現場だ。  脳研究者で東京大学大学院薬学系研究科教授の池谷(いけがや)裕二さんのもとに、この冬、一通のメールが届いた。 「例年と出題傾向が違いますが」  差出人は池谷さんの授業を受けている学生。今年1月に期末テストが終わった後のことだ。  東大に限らず、大学生の多くは過去問をもとに試験対策をしている。だからこそ、池谷さんも偏りが出ないようバランスよく作問しているつもりだった。 「でも、自分でも気づかない脳のクセがあったんです」  そのクセに気がついたのも、GPTがきっかけだった。池谷さんは今年、薬理学の試験問題をGPTで作問。提案された約20題のなかから四つを選び、出題した。  ■GPT力も評価対象に  すると、単位を落とす学生が例年の2倍に増えた。そして、先のメールが届いたという。 「そんな連絡がきたのは初めてですよ」  と池谷さんは笑みを浮かべる。傾向にとらわれることなく、幅広く勉強してほしいという思いだった。そして“2倍”の救済措置として、レポート課題を用意した。 「高血圧の薬についてChatGPTが書いた解説文である。この間違いを説明せよ」  として提示した2千字の文章のなかには、薬の名前やメカニズム、事実関係の微妙な違いがちりばめられた。 「ChatGPTの間違いは絶妙なので、誤りを探すために、薬理学が専門である私でさえ教科書や専門書をあたりながら、30分ほど調べました」  海外ではすでに学生たちがAIを使って試験の対策をする動きも出ている。  米スタンフォード大学の学生新聞の調査によると、昨年秋の宿題や試験で同大の学生の17%が「ChatGPTを活用した」と回答。学生の半数以上が「倫理規定に違反している」と答えるなど、物議を醸した。  こうした波は日本にも広がると見られ、池谷さんは「GPTありきで考えるべき」だと指摘する。 「ChatGPTを禁じても、学生はきっとどこかで使う。そうすれば全員の単位を落とさないといけなくなります。GPTの作る文章にはミスもあるので、それを修正できるかどうかも評価対象にすればいい」  さらに、池谷さんは学生たちにこんな宣言もした。 「ChatGPT、DeepL、グラマリーの“三種の神器”を必ず使うようにと伝えました。人間の生の脳で書いた文章なんて、下手くそですから」 ◯池谷裕二(いけがや・ゆうじ)/脳の健康や老化について探求している。週刊朝日連載をまとめた『脳はすこぶる快楽主義』(朝日新聞出版)、『できない脳ほど自信過剰』(朝日文庫)などが発売中。2013年、日本学士院学術奨励賞を受賞 (編集部・福井しほ) ※AERA 2023年3月20日号より抜粋

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    開成がついに失冠、明大は合格者1千人増 激変した私大入試を分析

     首都圏の難関私大の合格者がほぼ出そろった。今年の私大入試の特徴を、ランキングとともに紹介する。 *  *  *  国公立大学の後期日程の試験が終わり、2023年度入試もいよいよ幕を閉じようとしている。国公立よりも一足早く実施された私大入試では合格者がほぼ出そろった。  今号の大学合格者高校ランキング(4)では、私学の雄である早稲田・慶應を筆頭に、上智、東京理科、GMARCH(学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政)の有名私大編をお届けする。  まずは早大から。ランキングをみると、上位校の顔ぶれは大きく変わらないが、順位に変動があった。東大合格者とともにここ10年以上トップを走ってきた開成(東京)がついに失冠し、渋谷教育学園幕張(千葉)にその座を明け渡した。慶大のランキングでは、開成がトップを死守したものの、2位の横浜翠嵐(神奈川)の躍進が目立った。  私立最難関の早慶に合格者を出す高校の多くは、東大合格者でも上位につける。だが、例外もある。慶大で5位に輝いた頌栄女子学院(東京)は近年、60~80人台をキープしているが、東大は5人と100位以下だ。頌栄女子学院は上智大のランキングではトップに輝いている。有名私大に強い高校と言えるだろう。  私大の場合、大学からの距離によって、上位校の陣容が変わる傾向もある。早大は千葉県や埼玉県、東京都の中心北部から西部にかけて、慶大は日吉や湘南藤沢キャンパスがある神奈川県を中心に、東京都の中心南部から南西部一帯の高校が増える、といった具合だ。  東大と違って1都3県の高校で上位が占められている。自宅からの通いやすさも大きな要因となっているといえそうだ。  ほかの私大はどうか。東京理科は栄東(埼玉)、明治は湘南(神奈川)、青山学院は厚木(神奈川)、立教・中央・法政・学習院の4大学は大宮開成(埼玉)がトップに輝いた。高校によっては、東大をはじめとする国公立大の合格実績よりも、難関私大の合格者を伸ばすことに力を入れているところもある。  そのため、文系の場合は早い段階から数学を必修から外す高校もある。また、早大向けに社会科目は政経に集中したり、慶大向けに小論文指導に力を入れたりしている高校もある。国公立大入試が受験の核となる首都圏以外の高校からすると、驚きかもしれない。  さて、近年の私大入試の動きとして欠かせないのが、16年度入試から文部科学省の主導で段階的に進められてきた入学定員の厳格化だ。  本来の定員よりも多く入学させたら補助金カットの対象とするもので、22年度入試は定員8千人以上の大規模大学は定員の1.1倍、4千人以上8千人未満の中規模校は1.2倍、4千人未満の大学は1.3倍までしか毎年の入学者を取れなかった。学部単位でもこの制約が課されていたため、全国的に私大の合格者数が大きく減り、入試の難化につながったというものだ。  元々は定員割れが続いている地方私大への対策や、若者の東京一極集中を避ける狙いがあっての施策だったが、受験人口の割に国公立大の定員が少ない首都圏では大きな影響となった。特に東京都では大打撃となり、全国的には大学進学率が上がっている一方で、東京都の現役大学進学率は16年から18年にかけて3年連続で下がった。  大学通信で情報調査・編集部部長を務める井沢秀さんが解説する。 「定員厳格化の影響で16年度から19年度にかけて私大の倍率が上がり続けていました。しかし新型コロナウイルスの影響や、21年1月に始まった共通テストの受験を嫌い、受験生の多くが20年度入試で合格した大学に入学した影響で、21年度は私大の一般選抜の志願者が前年比14%減という史上最高ともいわれる減少幅となりました」  こうした問題が生じたことから、文科省は定員厳格化の動きを撤回、23年度入試から緩和する方針を打ち出した。  それまで学年ごとの入学定員で判断されていたものが、全学年の総定員数で判断されることとなり、その年で入学者を出しすぎても、その次の年以降で調整できるようになったのだ。  この新制度1年目となった今年の私大入試はどうだったのか。井沢部長が分析する。 「私大の志願者は去年から増えており、定員管理厳格化の合格者の出し方に大学側が慣れたということと、緩和の影響で今年は合格者が出しやすい状況にありました。実際に明治大では現時点で去年より1千人近く合格者数が増えています。その他の私大も全体的に合格者が増えた傾向にあります。今年の入試は近年で一番私大に受かりやすかったのではないでしょうか」  一方、私大の共通テスト利用入試においては、数学などの「難問対策」に時間を取られたくない私大専願者を中心に、「共通テスト離れ」が起きているとの指摘も出ていた。実際にこうした影響はあったのだろうか。  井沢部長はこう話す。 「確かに私大専願者を中心に共通テストの受験者が大きく減るのではないかという見方があったのですが、蓋を開けてみれば18歳人口の減少分程度にとどまりました。昨年の秋ごろにコロナの第8波の影響も強かったことから、移動が伴わない共通テスト利用で私大を受ける動きも強かったようです。また国公立大受験者も、昨年の難化の影響により共通テスト利用で私大に多く併願する動きもあったようです」  3月13日から「マスク緩和」となり、多くの受験生を苦しめたコロナ禍から、かつての日常に徐々に戻りつつある。キャンパスライフがより活動的になり、海外留学もしやすくなる。有名私大が集まる大都市圏と地方との行き来の障壁も大幅に下がるだろう。  脱コロナと定員厳格化の緩和が重なる24年度の入試では、私大の人気が復活する可能性も十分にありそうだ。(河嶌太郎)※週刊朝日  2023年3月31日号

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    「一国の主にならないと」と1人目の夫が後押し 同志社大教授、女性生命科学者64歳の人生ドラマ

     同志社大学生命医科学部教授の野口範子さんは、生命科学者として体の中の活性酸素の研究を続けつつ、「サイエンスコミュニケーター養成副専攻(SC副専攻)」を2016年にスタートさせた。「理系の学生にコミュニケーションのノウハウを教えるのではなく、理系と文系の学生が一緒に社会における科学の問題を議論する場を作りたかった」。周囲の理解が乏しくてもやり抜くことができたのは、子育てと研究の両立に苦闘する中で、持って生まれた胆力がさらにパワーアップされたからなのかもしれない。(聞き手・構成/科学ジャーナリスト・高橋真理子) >>【前編:元日テレ桝太一アナを“スカウト”した女性生命科学者64歳の行動力 STAP細胞事件で「やらねば」】から続く * * *――筑波大学の博士課程2年のときに1人目を産んだんですね。  妊娠中に夫は東京に異動して、私は一人で茨城県つくば市のアパートにいた。実家の母に来てもらった次の日に陣痛が来て、夫はいないので私が運転して病院に行きました。京都の母には3カ月いてもらって、約束通り娘を(義父母が住む神奈川県横須賀市の)久里浜に預けにいきました。 「よろしくお願いします」と義母に娘を預けて、私はつくば市に帰った。母乳がよく出たので、毎日乳搾りをして法医学教室の冷凍庫に入れて、週末になるとそれをアイスボックスに入れて車で東京に寄り、そこから夫が運転して久里浜に行って、1泊して帰ってくる、という生活でした。 ――娘さんはずっと久里浜に?  えーと、2歳8カ月までそうでした。義母はものすごく娘をかわいがってくれた。  博士3年の夏に次の妊娠がわかりました。そのころは長女を義母に取られたように感じてしまって、ホント勝手ですよ、私が預けてお世話になっているんですけど、なんか返してくれない雰囲気の中、せっかく2人目に恵まれたんだから今度はもっと一緒の時間を過ごそうと決心した。  翌年4月に次女が生まれ、今度は6カ月京都の母にいてもらって、その後は保育ママさんにお世話になりました。週末に次女を助手席に乗せて東京を経由して久里浜へ行き、帰りも次女だけ連れ帰る生活になりました。長女は何を思っていたのか、覚えていないでしょうけど、その頃のことを思うと胸が痛みます。医学系って博士課程が4年なんですが、農薬の毒性発現機序の研究をして4年で無事に博士号を取れました。  医学博士になって帝京大学医学部法医学教室の助手になり、夫婦二人が東京勤務になったので、長女を引き取り、4人で頑張ることにしました。  夫の職場の近くに住み、保育園もすぐそばにあって、毎朝子どもたちをそこに連れて行ったんですけど、やっぱり大変でした。帝京大から家まで、1時間ちょっとかかる。しかも、帝京大の法医学教室は遅くまでいることが大事みたいな古いタイプの研究室でした。  早めに帰るなんて許されず、夕方6時に出る。走って帰っても保育園のお迎えに間に合わないので、外で仕事をしていないご近所さんにお迎えをお願いして、私が帰るまでそのおうちで面倒を見てもらったりしていました。すごくいい人で本当に助けてもらいましたが、その方だって都合が悪い日がある。そのときはまた別の人を探して、本当にもう、米つきバッタみたいに頭を下げて回っていた。保育園に連れて行ったら熱があるから預かれないと言われるときもありますよね。何とか近所の方に預けて遅れて研究室に行くと、「やっぱりお子さんのいる方はダメですねえ」と上司が言う。  夫の職場は、家からも保育園からも1分なのに、土曜日以外はお迎えに行ってくれなかった。子どもが熱を出したときに仕事を休んでお医者さんに連れて行くのもいつも私。小学生になって、授業参観のお知らせが来ると、どっちが行くかで必ずケンカになる。  あるとき、「あなたはいいんだよ。子どものために休むと言っても頑張っているって見てもらえるけど、僕はそういうふうには見てもらえないんだよ」って訴えるように言った。 ――そういう時代でしたね。  これが決定的な言葉だったんです。今振り返ればわかります。彼の立場も、気持ちもわかる。でも言われたときは「もう一緒にやっていけないな」と思いました。だから、それからケンカもしなくなりました。ケンカをしても無駄だなって思って、でも、この関係はどこかで終えてやるって思いました。それで、予定通り離婚しました。 ――いつですか?  2006年ごろですね。娘たちが大学生のとき。 ――かなり時間がたってからなんですね。娘さんたちへの影響を考えてですか?  それもあるし、子どもたちが大きくなってきたら、慌てて離婚する必要もなくなったというか。  帝京大の法医学教室は一番つらい時期でしたが、ひょんなことから東京大学へ移ることになりました。帝京の生化学教室の先生とお部屋で研究の話をしていたら電話がかかってきて、切ったあと先生がこちらを向いて「野口さん、東大の二木先生って知ってる?」とおっしゃった。二木鋭雄先生は活性酸素の研究ですごく有名で、学会でお名前を見たことがあったから「知ってます」と答えたら、「二木先生が助手を探しておられるけど、行きますか?」と聞かれた。「行きます、行きます」と言うと、「法医学じゃなくなりますよ?」と言うので、「法医学やめます!」と即答しました。  紹介状を書いていただいて面接に行ったら、OKが出たんですが、そのとき夫が米国の国立保健研究所(NIH)に留学することになった。二木先生に相談したら、「いい機会だから一緒に行っていらっしゃい」と言われ、1年間米国の国立研究所の客員研究員をしました。  帰国して1991年2月に東大工学部に助手として着任しました。二木先生は生体の活性酸素とビタミンEの研究をしていて、本当に神様みたいな先生で、学生さんはたくさんいるし、みんな温かく優しくしてくれるし、精神的にすごく楽になりました。二木先生は「子どもにはいくら愛情をかけてもいいんですよ」とおっしゃった。この言葉が嬉しくて今も忘れません。  先生が東大先端科学技術研究センターに移られたので、私の所属も先端研に変わりました。2000年に二木先生が定年退職されると、児玉龍彦先生が率いる大きな研究チームの中で、私は直属のボスがいない形で研究室を持たせてもらった。研究環境はものすごく恵まれていました。ポスドク3人、博士課程の学生2人、実験補助員3人といった態勢で、お金は児玉先生がたくさん取ってきてくださるので、論文がたくさん書けた。  あるとき、筑波大時代に宿舎が一緒だった親友から「あなた、論文がたくさんあるのになぜ助手なの?」と聞かれたんです。私は研究ができればいいと考えていたんですが、そう言われればそうだなと二木先生に「私はいつまで助手ですか」って手紙を書いた。  そうしたら、二木先生は当時のセンター長に相談に行ってくださったのですが、すでに退職されたお立場だったからでしょう、状況は変わりませんでした。しばらくして、私は科学技術振興機構特任助教授という立場になった。助手は国家公務員ですが、このポストは公務員ではありません。特任助教授という肩書はついたけれど、良かったのかどうかわかりません。ただ、研究環境は変わらず、恵まれた状態でした。  そのうち、活性酸素の研究仲間である京都府立医科大学の先生から「同志社大に行かへんか」と声がかかった。工学部(当時)の環境システム学科が教員を募集しているというんです。そのときは娘が高校生で、連れて行くわけにも置いていくわけにもいかないと思って、お断りしました。このとき府立医大から同志社大に移った谷川徹先生から1年後にまたお誘いを受けた。夫に相談したら、「やっぱり一国の主にならないとダメなんだよ」と言ってくれて、じゃあ行こうかとなった。次女も大学生になるという時期でした。  2005年に同志社大の教授になりましたが、行ってみたら学生もスタッフも誰もいない、私一人なんですよ。これでは研究ができないので、東京に帰ろうと思いました。先端研にはまだ博士課程の学生がいたので、先端研の特任教授を兼務して研究は東京のラボで続けていました。もう同志社は早く辞めようと思ったんですが、その年の12月に新しい学部をつくる話が出て、今に至る、ということです。 ――2回目の結婚はどんな方と?  さっき話に出た谷川先生と。私、今の戸籍名は谷川です。 ――離婚はどのように?  子どもたちが小学生のころ、夫は東京から離れた別の機関に移り、長女は小学6年生の途中から再び義母に引き取られて夫の赴任地で生活するようになりました。次女は私と東京に残りました。長女が東京の高校に進学したので、3人一緒に東京の家に住むようになり、私は同志社に就職してから京都と東京を行ったり来たりするようになった。週末は東京で4人全員集合です。  それでお互いに穏やかに暮らしていたわけですが、やはりけじめをつけたいと思い、私は離婚したいという手紙を書きました。自分が思ってきたことをまとめ、そしてこれからはそれぞれ別のほうがいいでしょう、みたいな感じで。その後二人で会って、彼は真面目だから手紙の内容の一つ一つにコメントをくれて、「前から考えていたんだよね。しょうがないね」って。  でも、その後も生活は変わらないんです。週末は親子4人でごはんを仲良く食べる。いつかは娘たちに言わなくちゃと思って、下北沢に4人でブランチに行ったとき、お互いに「そっちから言って」と目配せしあって、彼が「実はお父さんとお母さん離婚したんだよ」って伝えました。 ――娘さんたちは何と?  エーッてなりました。大きな衝撃を受けたのは長女のほうでしたね。それから2年後ぐらいに再婚しようと思っていることを娘たちに話したんですけど、そのことは「あんまり衝撃じゃなかった」って言ってました。その後、彼も再婚して安心しました。  娘たちは父親と普通に行き来しています。長女は結婚して、3人の子どものママ。父親が再婚したお相手にもお孫さんがいらして、ちょうど同年齢なのでお宅にお泊まりに行ったりしています。お祝いがあるときは旧野口家大集合みたいになる。次女は京都が好きと言ってよく京都に来ます。今の夫のことは「徹さん」って呼んで、楽しくやっています。だから、どんどん家族が増えているみたいな感じですね。 ――なんともすごいドラマの連続で、野口さんのパワーがびんびん伝わってきました。  そうですか。とにかく今は2人目の夫と仲良く暮らしています。私ももうしばらくすると定年なので、サイエンスコミュニケーター養成副専攻をどのように継続していってもらうか、私がいる間にできる限りの手を打たなきゃと思っているところです。  野口範子(のぐち・のりこ)/1958年、京都市生まれ。筑波大学第二学群生物学類卒業、同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。帝京大学医学部助手、東京大学工学部助手、同大先端科学技術研究センター助手などを経て2005年に同志社大学工学部教授。2008年から同大生命医科学部教授、2018~2019年に生命医科学部学部長・研究科長、2020年から研究推進部長。京都市教育委員会の教育委員を2018 年から務める。創設したサイエンスコミュニケーター養成副専攻では、同志社大卒の作家・佐藤優氏に15回のフル講義「サイエンスとインテリジェンス」を担当してもらっている。

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    WBC「やっぱり“侍ジャパン”に選んでほしかった投手」は? 球界関係者が推す令和版「投げる精密機械」

     第5回WBCで覇権奪回を狙う侍ジャパンは、「過去最強」の呼び声が高い。ダルビッシュ有(パドレス)、大谷翔平(エンゼルス)、ラーズ・ヌートバー(カージナルス)、吉田正尚(レッドソックス)らチームの中心を担うメジャー組が参戦できるのが大きなプラスアルファだ。  先発はダルビッシュ、山本由伸(オリックス)、佐々木朗希(ロッテ)、今永昇太(DeNA)の4人で回る公算が高い。WBCは1次ラウンドが65球、準々決勝が80球、準決勝以降は95球と球数制限が設定されている。カギを握るのが「第2先発」だ。ここに各球団のエース級がズラリ。戸郷翔征(巨人)、宮城大弥(オリックス)、高橋宏斗(中日)、高橋奎二(ヤクルト)、伊藤大海(日本ハム)と先発陣と遜色ない実力者たちが控えている。そして、試合終盤のリリーバーは大勢(巨人)、栗林良吏(広島)、松井裕樹(楽天)、宇田川優希(オリックス)、湯浅京己(阪神)と三振奪取能力が高い投手たちがそろう。大谷を含めて計15人の投手を登録。盤石な布陣と言えるが、現場の見方はどうだろうか。  各球団の首脳陣、スコアラー、球団スタッフなど球界関係者に「侍ジャパンに選ばれるべきだった投手」を調査したところ、「この布陣で十分に戦える」という回答が3人。他の人からは水上由伸(西武)、伊勢大夢(DeNA)、高梨雄平(巨人)の名前が。いずれもセットアッパーだった。  そして、3票を集めたのが藤井皓哉(ソフトバンク)だった。26歳右腕は苦労人だ。高卒で広島に入団したが、5年目のオフに戦力構想から外れて退団。四国アイランドリーグplus・高知ファイティングドッグスで制球力を磨き、ソフトバンクに育成枠で入団した昨季に大ブレークした。150キロを超える直球、スライダー、フォークを武器に実戦で好結果を残し続けて開幕前に支配下昇格。セットアッパーで稼働して55試合登板で5勝1敗3セーブ22ホールド、防御率1.12と抜群の安定感だった。他球団のスコアラーは「落差の鋭いフォークで打者は『消える』と話していました。直球も速くてスピードガン以上の体感速度を感じるので、なかなか打てない。今年は救援から先発に転向するのでコンディション調整を配慮して代表招集が見送られたのかもしれませんが、国際試合でも十分に通用するでしょう」と太鼓判を押す。  セットアッパーとしてチームを支えてきた西武の平良海馬も、今年から本人の強い希望を球団が受け入れ、先発に転向。調整に専念するため、侍ジャパンに選出されても辞退する意向を示していた。平良と同様に、先発挑戦する藤井はさらなる飛躍ができるか。 「侍ジャパンに選ぶべき投手」で最も支持を集めたのが、5票で加藤貴之(日本ハム)だった。  針の穴を通す制球力が武器で、昨季は11四死球で72年ぶりに日本記録を更新。22試合登板で8勝7敗1ホールド、防御率2.01をマークした。  他球団の首脳陣は「加藤は先発でも救援でも力を発揮できる投手。第2先発に一番ハマる投手だと思う。先発ができるから中継ぎができるという簡単な問題ではない。侍ジャパンのロングリリーフ要員を見ると、チームで先発しかしていない投手ばかり。立ち上がりが良いとは言えない投手もいるし、そこが懸案材料かなと。加藤は球速が速いとは言えないから敬遠されたのかな。メジャーリーガー相手にどんな投球を見せてくれるか、楽しみな投手だけどね」と指摘する。  上記の投手たちは今後、侍ジャパンに招集される可能性が十分にある。NPBで今後の活躍が楽しみだ。(今川秀悟)

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    【超速報】東大合格発表、開成146人、灘86人、麻布・聖光学院78人<3月10日20時時点>

     東京大学と京都大学の一般選抜の合格者が3月10日に発表された。   週刊朝日は、サンデー毎日・大学通信と合同調査を行い、高校別の合格者数を集計した。  午後8時時点での速報値で、東大の合格者1位は146人の開成(東京)、2位は86人の灘(兵庫)、3位に78人の麻布(東京)と聖光学院(神奈川)が入る。  今年は、東大の一般選抜の志願者数9306人に対し、2997人が合格した。うち女子合格者は653人。割合は21・8%で、過去5年間で最も高い割合だった。  藤垣裕子副学長は10日のオンライン記者会見で、 「女子の志願者数および合格者が増えたことは、我々としても大変喜ばしいと思っている。『女子枠』については私が入学した20~30年前から議論があったが、当時の先生方からは『女子枠を設けると、当の女子学生から反対される』と聞かされていた。実際に導入するとなれば様々な方の意見をまとめねばならず、議論が収束していない状態だ」と述べた。  今年の特徴を見ていこう。まず、受験生に人気を集めたのは理系の学部だ。  東大の理科二類は募集人員532人に対して、計2294人の志願者が集まった。現行の定員となった2008年以来、最多の人数だという。  東進ハイスクールを運営するナガセ専務取締役・コンテンツ本部本部長の渋川哲矢さんが言う。 「コロナ禍で医療関連の話題に接する機会が増えたためか、近年では他大学も含め、医学や薬学などのメディカル系の学部が人気です。農学系統では生命科学系の人気が非常に高い。東大理科二類で志願者が増えた背景にも、こうした事情が関わっていると思います」  京大の志願者数も理学部が前年比114%、医学部で同115%だった。 「京大の場合、理学部と医学部・医学科では第1段階選抜に基準点が設定されていますので、22年度入試では共通テストが難化したことの影響から、両学部で志願者が減りました。それに対し今年は共通テストが昨年に比べて易しくなったこともあり、志願者が戻ってきたものと考えられます」(渋川さん)  また、今年度の東大入試では、物理の問題が「ここ十数年で最高水準の難易度」としてSNS上で話題になった。  渋川さんが言う。 「生徒からも『難しかった』と相談の電話がかかってきました。化学や生物に関しても難度の高い問題が多く、理系科目については全体として難化傾向にあったと言えます」  Y-SAPIX事業本部長の山口拓司さんはこう話す。  「大問2は電磁気・波動に関する問題で、一見とても難しそうですが、一生懸命解いていると取っかかりが見えてくる。大問3は熱に関する問題で、易しそうに見えますがいざ解いてみると答案にするのが非常に難しい。ぱっと見だけでは難易度はわからない、という教訓となる問題だったと思います」    ◇  東大・京大合格者ランキングは、3月14日(火)発売の「週刊朝日3月24日増大号」で詳報します。合格者数1人まで掲載の充実した内容で、去年と同じ定価据え置き、税込み470円。私立大学の医学部、歯学部、薬学部の結果もあわせて掲載します。  関連企画として、東京工業大学の益一哉学長に聞いた学校推薦型や総合型選抜入試での「女子枠」導入、東大推薦、京大特色入試に合格した「スーパー高校生」へのインタビューと実名アンケートなども紹介します。    ◇  以下は、午後8時時点での東大合格者数上位20校と、その人数。 (1)開成(東京) 146 (117) (2)灘(兵庫) 86(66) (3)麻布(東京) 78(53) (3)聖光学院(神奈川) 78(70) (5)渋谷教育学園幕張(千葉) 74(59) (6)西大和学園(奈良) 73(50) (7)桜蔭(東京) 72(67) (7)駒場東邦(東京) 72(55) (9)日比谷(東京) 47(33) (10)栄光学園(神奈川) 46(38) (11)横浜翠嵐(神奈川) 44(35) (12)海城(東京) 43(31) (12)浅野(神奈川) 43(39) (14)渋谷教育学園渋谷(東京) 40(35) (15)早稲田(東京) 38(30) (16)東海(愛知) 37(25) (16)久留米大附設(福岡) 37(32) (18)浦和・県立(埼玉) 36(21) (18)甲陽学院(兵庫) 36(29) (20)ラ・サール(鹿児島) 35(26) (合格実績のある学校への週刊朝日とサンデー毎日、大学通信の合同調査を基にした速報値で、数値は今後変動する可能性がある。右のかっこ内は現役合格者数) ※週刊朝日オリジナル記事 (本誌・松岡瑛理)

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    「芦田愛菜」慶應政治学科進学で再注目された“秀才伝説” 15歳で読書1000冊&台本は全出演者分を暗記

     4月から内部進学で慶應義塾大学法学部政治学科へ進学することが報じられた女優の芦田愛菜(18)。報道によると、同学科は内部進学を目指す生徒から人気があり、3年間で優秀な成績を収めた結果、無事進学が決まったという。  芦田は慶應義塾中等部に入学した2017年、「スッキリ!!」(日本テレビ系)で、将来について「病理医」になりたいと話したこともあってか、医学部への進学もささやかれていた。ふたを開けてみれば法学部へ進んだが、なぜ法律学科ではなく政治学科を選んだのだろうか。週刊誌の記者は言う。 「芦田は今後も芸能活動にも力を入れていく予定のようで、やはり理系学部となると授業が忙しくなり支障が出るからでしょう。慶應の法律学科は司法試験合格を目指す学生も多く、法律について深く学び専門性が高い。一方、芦田が選んだ政治学科は法律から政治学まで、さまざまな分野を幅広く学ぶことができる。もしかしたら、将来はそこで学んだことを生かしてマルチに活躍できる芸能人という道も視野に入れているのかもしれません。2月に行われた『2023年エランドール賞』の授賞式に出席した際も、新人賞に選ばれた芦田は今年の目標について『いろんなことにチャレンジしたり、フットワークが軽い人間になりたい』とコメントしています」  芸能活動は多忙で、昨年は主演映画「メタモルフォーゼの縁側」が公開され、現在もバラエティー番組「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」(テレビ朝日系)でMCを担当するうえ、多数のCMに出演するなど引っ張りだこだ。医学部進学が取り沙汰された際は、芦田に女優と医師という“二刀流”を期待した人もいるかもしれないが、多忙な芸能活動をこなしながら成績上位で人気学科に進学したのは、やはりすごいと言うべきだろう。  最近メディアで活躍する慶應義塾大学法学部政治学科のOGといえば、テレビ朝日の弘中綾香アナ、情報番組「シューイチ」のMCを務める日本テレビの徳島えりかアナ、コメンテーターなどでも活躍するトラウデン直美など、知的で華もある女性が多い。  芦田もそのイメージ通りと言えそうだが、そもそも、その秀才ぶりは子役のころからたびたび話題になってきた。19年、15歳で初の単行本『まなの本棚』(小学館)を刊行。発売記念会見では、これまでトータル1000冊以上は読んでいると明かし、読書は歯磨きや入浴と同じくらい当たり前な日常だと語っていた。子どものころから読書が習慣だった人は知識が豊富で地頭の良い人が多く、だからこそ芸能活動と学業が両立できたのかもしれない。 ■マルモリ福くんが学友に!?  また、「バラいろダンディ」(TOKYO MX、3月10日放送)では、芦田が6歳ぐらいのころに一緒に営業に回っていたという古坂大魔王が当時の芦田について、「どの現場にも必ず宿題を持ってきていた」「本番で全員分の台本を覚えていた」と明かしていた。やはり、子どものころから地頭の良さは健在だったようだ。 「最近のコメントからも頭の良さがにじみ出ています。一昨年放送された『博士ちゃん』で、廃虚となった軍艦島が紹介された際、『人が造ったものがまだ残っているっていうのは、崩れないことの皮肉というか、循環していけないことのむなしさを感じる』と、とても10代とは思えない含蓄のあるコメントを残していました。その一方で、昨年6月に放送されたバラエティー番組の料理企画ではホイコーロー作りに悪戦苦闘し、『どんくさいんです』と漏らすなど、普通の高校生らしいところも残っていました」(前出の記者)  また、「マルモのおきて」(フジテレビ系)で、子役としてともにブレークした鈴木福も慶應大学に進学すると報じられた。“マルモリコンビ”は大学でも学友となることに。 「報道によると、鈴木の場合は書類と面接で評価される『AO入試』で合格したとのこと。学力だけでいえば芦田のほうが勝っている印象ですが、昨年7月に2人が『博士ちゃん』で共演した際は、鈴木が『愛菜ちゃんも頑張っているのを見ると刺激になる』と率直な思いを語っていました。さらに、『戦友だと勝手に感じている部分がある』と鈴木が言うと、芦田も『うん!』と応答。そんなやりとりを見て、今後もお互いに切磋琢磨(せっさたくま)しながら活躍してほしいと願っている視聴者は多いでしょう」(テレビ情報誌の編集者)  元「週刊SPA!」芸能デスクの田辺健二氏は芦田についてこう評する。 「兵庫県生まれで幼いころは関西弁を話していた愛菜ちゃんですが、仕事で新幹線が東京に近づくにつれ『どんどん標準語になっていった』といったエピソードなど、彼女には“天才子役伝説”がたくさんあり、神格化されてきた感もあります。しかし、そのプレッシャーに押しつぶされることなく、マイペースにここまで芸能界と学業を両立していることがまずすごい。子役出身で芸能界に残れる人はほんのひと握り。愛菜ちゃんは役に恵まれてきたという側面もありますが、その“当たり役”を引き寄せたのは彼女の実力です。学業を優先しつつ、昨年は映画『メタモルフォーゼの縁側』に主演。興行的に苦戦しましたが、BL好きの女子高生という役を好演し、新たな可能性を感じさせる作品になりました。今後は学業が忙しくなると思いますが、いつか女優としてフルスイングする愛菜ちゃんも見てみたいですね。元天才子役のポテンシャルはまだまだこんなものではないと思います」  大学生活も注目を集めそうな芦田。身につけた教養を生かしてどんな活躍を見せるのか楽しみだ。 (丸山ひろし)

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    日本にはびこるシニアたたき シニアの言い分「そのうち私たちのような年代になる」

     3月2日付朝日新聞の「声」欄(読者投稿欄)に、経済学者・成田悠輔氏の「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」という旨の発言に対する投書が掲載された。 「この言動は高齢者に対する若い世代の憎悪や敵意をあおる力を持っていて、私は容認できない」  投書は「世代間の敵意をあおらないで」と題されていた。投書をした北海道の松本美紀子さん(67)は、この発言をTwitterで知って、震えるような恐ろしさを感じた。 「なかなかのインテリなのになぜこんな残酷なこと、前近代的なことを平気で言うのか。弱者を切り捨てていった戦前の歴史をまず思い出しました」  岸田内閣が次々と国益優先の閣議決定をしている最中。そんななかこの発言を聞き、歴史が逆行するような感覚を覚えたという。松本さんの投稿を読んだ昔の同僚からメールも来た。 「わたしたちも諦めているよね、どうしょもないねって。でもやっぱり日本、おかしいよって」  松本さんはこの発言に触れる少し前に、年金の受給開始年齢を現行の62歳から64歳に引き上げる年金制度改革案に反対するフランスの大規模なストライキのニュースを読んでいた。全国で実施された抗議デモに112万人が参加。レピュブリック広場がデモの参加者で埋め尽くされた。 「若者が高齢者と共にプラカードを掲げて歩いていることに感動しました」  年金で生活している松本さんだが、後期高齢者になったときに自分がこのまま生活していけるのかとても不安だ。 「これは私たちの年代だけの問題じゃない。若いエリートたちが弱者を冷笑するような文化がありますが、『あなたたちもそのうち私たちみたいな年代になるんですよ』とまず言いたいです」  高齢者福祉を削り子育てなどの予算を充実させるべきという議論があるが、高齢者福祉を削るとその子ども世代が自己資金で親を支えなければならなくなる。シニア世代と若者世代の利害は、単純に対立しているだけではないのだ。 「今の若者は生まれたときから格差があたりまえに存在していて、大変な世の中で不満がいっぱいたまっている。若者は『自分たちは年金なんかもらえないよ』と言うだろうけど、当然の権利をあきらめてしまっていいんですか。若い人も高齢者も、支えあって生きていくんです」 ◇  命に優劣をつけ選別する「優生思想」。2016年、相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」の入所者ら45人が殺傷された事件の際にも、社会に潜む優生思想について多くの声があがった。  刑法・堕胎罪の撤廃を求めている「SOSHIREN女(わたし)のからだから」での活動を長く続ける大橋由香子さん(63)は、その活動のなかで、中絶を許可した優生保護法の目的に「不良な子孫の出生防止」があることに闇の深さを感じる。強制不妊手術という人権侵害、社会に浸透する優生思想について問い続けてきた。 「優生思想という言葉は、いろいろな意味でつかわれますが、優れた存在と劣った存在、能力がある人とない人に分けること自体に無理があります。その区別は、誰が、どう作るのか。線引きはいくらでも恣意的になりえます」  昨年のカンヌ国際映画祭でカメラドール特別表彰を受けた映画「PLAN 75」(早川千絵監督)は、少子高齢化が進んだ近未来の日本で、満75歳以上の人に自らの生死を決定できる制度のある社会を描いた。大橋さんは、この映画を見た日はよく眠れなかったという。 「安楽死については『したい人が選ぶのだから問題はない』と言う人もいるのでしょうが、実際には自己決定というより、死を選ぶように追い込まれる危険性が高いと思います。これだけ賃金が上がらず、不安定雇用の人も多く、性差別も含めた格差が広がっている世の中ですから」 ◇ 『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?国会議員に聞いてみた。』の著者、フリーランスライターの和田靜香さん(57)は、生活のためにライター業と並行していろいろなバイトを経験してきた。コンビニ、パン屋、スーパー、おにぎり屋……。将来が心配で「地域おこし協力隊」(総務省が行う都市から過疎地域への移住促進事業)に応募したこともある。コロナ禍前はバイトを二つかけもちしていたが、コロナ前・コロナ後で二つともクビになってしまった。 「本当に生活、どうしようかなって。私はフリーランスだから自己責任の部分もあるにはあるんですけど、でもそれだけが理由なのか」  それを知りたくて、国会議員に直接聞いてみることにした。そうしてできたのが前述の本だ。 「これで私のせいばかりではないとやっと思えました。知らないからこそ過激で簡単な言葉にひきよせられてしまう。自分で学ばないと自己責任だけに囚われます」  現行の日本の社会保障制度は「標準的家族(ライフコース)」を前提としている。また、経済問題やケアはすべて家族の中で解決する「家族主義」も強い。標準的ライフコースをとっているうちは守られるが、一度そこから外れるといきおいリスクに晒(さら)される。この間、雇用の流動化など、人びとが標準的ライフコースから外れるような社会の変化はどんどん進んでいるのに、社会保障制度は以前のままだ。 「時代に合わせて社会制度を作り変えてこなかった。つくづく政治が変化できないことや、怠惰さが問題であって。そういう政治を放置してきた私たちの責任でもあるんですけどね」  しかし、声をあげると、見える景色が違ってきたという。 「不安や不満があったら、うまく言えなくていい、戦争したくないよ、軍拡すんな! もっと税金安くしろ! そのとき、自分が思う不安をみんなガンガン叫んだらいい。多分その集合って大きいもので、それこそが力になる気がするんですよね」 (本誌・小柳暁子、佐賀旭/西岡千史)※週刊朝日  2023年3月31日号

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    早慶の首都圏中高一貫校「合格率」ランキング 慶大は男子校が占めるなか早大トップは女子校

     中学受験において、志望校選びはいろいろな情報があり、迷うのも確か。そんな時に頼りになるのが客観的なデータで、中でも特に重視したいのが大学合格実績です。ここでは、合格実績などを指標に、首都圏の中高一貫校のさまざまなランキングを紹介します。第3回目は早稲田大・慶應義塾大のランキングです。  表3と4を見ていこう。近年は早稲田大、慶應義塾大にどうしても入りたいからと、文系学部を全部受けるような受験生は減っている。大学で学びたいことを決め、学びたいことを軸に併願プランを立てていくのが普通だ。大学へのこだわりが薄れてきている。  早稲田大トップは女子学院の76・1%だ。2位が前年トップの聖光学院、3位は共学校トップの渋谷教育学園渋谷、4位は合格者数全国トップの開成、5位は渋谷教育学園幕張だった。  一方、慶應義塾大のトップは聖光学院の57・5%で、2位は栄光学園の56・4%、3位は合格者数全国トップの開成、4位は前年トップの浅野、5位は海城だった。男子校が強い中、女子校トップは6位の洗足学園、共学校トップは8位の渋谷教育学園渋谷だった。  表の早慶の顔ぶれは似ている。トップ30のうち24校が同じなのは、早慶の併願者が多いことの表れだ。異なる6校は、早稲田では、東京都市大付、東葛飾、暁星、南、白百合学園、桐朋、慶應では、雙葉、芝、世田谷学園、桐蔭学園中教、武蔵、吉祥女子だった。学校によって、早稲田に強い、慶應に強いといった差はある。女子学院は早稲田トップだが慶應は10位、渋谷教育学園幕張は早稲田は5位だが慶應は15位、逆に浅野は慶應は4位だが早稲田は22位だ。  ひとくくりに早慶と言われるが、校風やキャンパスの立地、学部構成や入試科目も異なる。慶應は医学部や薬学部などの医療系の学部があるが、早稲田には無い。それらが影響して人気の分かれ目になっている。 (文/大学通信・大野香代子)

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    「人の顔色ばかり伺う自分」が嫌で「言いたいことを言える自分」になりたいと吐露する27歳女性に、鴻上尚史が“その2つは一緒”だと指摘し提案したこと

    「人の空気感や顔色をうかがうことは得意」でも「人の気持ちを考えることがとても苦手」と告白する27歳女性。自分の頭で考えられるようになりたいと願う相談者に、鴻上尚史が指摘する「こんな私でも」と否定的な思考の流れを遮断する必要性。 【相談177】私は人の空気感や顔色をうかがうことは得意でも、人の気持ちを考えることがとても苦手です(27歳 女性 砂漠)  鴻上さん、こんにちは。  以前、「大人というのは自分の頭で考えられる人間になることだ」という鴻上さんの言葉を拝見しました。  私は、なるほどなと思うと同時に、それなら自分は子どもだなとも感じました。  というのも、昔から私は人の空気感や顔色をうかがうことは得意でも、人の気持ちに寄り添う=その人の気持ちを考えることがとても苦手で、そのせいか友達は少ないのに、先生や友達の親といった大人からは好かれやすいところがありました。  周りからはそれを「優等生」「いい子」と見られ、褒められることもありましたが、私は人の顔色をうかがう臆病な自分が嫌いで、思ったことをなんでもズバズバ言える人=自分の考えを言える人を見ると羨ましく感じていました。私には私の考えがないから、自分の意見を言うことができない。子どもが親に許しをもらおうとするように、うかがいをたてることしかできないんだと辛くなりました。  本をたくさん読むと自分で考える力が付くとも言いますが、私の場合、本を読んでもこんな考えもあるのか!とは思えど、それをちゃんと力にできていない気もして……(力にできていたら、こんなダメにはなっていませんよね)。  今回もこのような形で自分の力ではなく、鴻上さんの力に頼るようなことをしておりますが、こんな私でも自分の頭で考えられる大人になりたいとも思っており、投稿しました。  長文をすいません。  どんな厳しい言葉でもいいので、よろしくお願いします。 【鴻上さんの答え】 砂漠さん。そうですか。「顔色をうかがうことは得意」でも、「その人の気持ちを考えること」がとても苦手なんですね。  この二つは、似ているようで違いますよね。「顔色をうかがうこと」と「その人の気持ちを考えること」の違いはなんでしょうか。  僕が思うには、「顔色をうかがうこと」は、「人に嫌われたくない」という気持ちが中心で、関心は自分に向いていると感じます。一方、「その人の気持ちを考える」ということは、関心は相手に向いているんじゃないかと思います。自分中心か、相手中心かの違いですね。  いきなりの例え話なんですが、俳優になりたい初心者の中で、ものすごく自意識が強い人がいます。  相手役と会話していても、「どんなふうに見られているか」「恥は絶対にかきたくない」「笑われたくない」と強く思っている人です。そういう人は、相手に対する関心はまったくありません。相手がどんな表情をしようが、どんな演技をしようが関係ないのです。関心は自分です。自分がどうしたら恥をかかないか、笑われないか、どんな言い方をしたら演出家にほめられるかだけを考えているのです。  極端な例ですが、砂漠さんの状況もそれに近いと思います。  相手が本当は何を求めているかとか、本当はどう思っているかが問題ではなく、自分が嫌われないこと、自分が傷つかないことが重要なんだということです。  どうしてそうなってしまうかは、みんな、なんとなく分かっていると思います。自分に自信がない、ということですね。自分に自信がないから、とにかく、嫌われないこと、否定されないこと、笑われないことが一番大切なことになるのです。  どうですか、砂漠さん。もし、そうだと納得してもらえるなら、砂漠さんのやることはたったひとつです。  自分に自信をつけること。別な言い方をすると、自己肯定感を高めることだと思います。  だって、焦って本を読んでも何も身につかないでしょう。私なんかダメだと思いながらいろんなことに接しても、あまり得るものはないんじゃないでしょうか。  さて、砂漠さん。どうしたら自分に自信がつくのか。  僕は以前にこの「ほがらか人生相談」で、「小さな勝ち味を積み重ねること」と書きました。  自分のことを「こんなダメにはなっていませんよね」と書く砂漠さんですが、100%ダメですか? まったく良い点はありませんか?  でも、仕事のために(働いてないなら家事手伝いのために)毎朝ちゃんと起きてるんじゃないですか? 顔を洗えてるし、歯も磨けているんじゃないですか?  冗談ではないですよ。いくつかのことを、毎日ちゃんとできているのは素晴らしいことです。全部ダメなんて人はいません。ただ、全部を一気に否定する方が、細かな良い点を見つけるより楽だから、「私はダメだ」と言いたい人が多いのだと僕は思っています。  だって、自分と自分の生活を見つめて、小さいけれど良い点を見つけることはエネルギーが必要ですからね。  ネットで調べれば、自己肯定感を上げる方法を書いた本にたくさん出会うでしょう。僕はこの前、自己肯定感が低かったOLさんがどうやって自信をつけたかを正直に書いた本を読んで感動しました。  自己肯定感が低くて苦しんでいる人は多いですが、同時に、少しずつ少しずつ自己肯定感を高めて楽になった人も多いのです。そういう人が書いた本や経験談はきっと砂漠さんの参考になると思います。  自己肯定感が高まれば、焦ることはなくなります。相手の顔色をうかがうことに必死になる必要もなくなります。  人間の能力には限界があるので、一度にたくさんのことはできません。自意識の強い俳優は、エネルギーを「自分はどう見られているか」を探ることに使います。当然、相手のことを感じたり、観察したりする余裕はなくなります。人間のエネルギーは有限だからです。  でも、自分に向けるエネルギーが減ると、必然的に相手を観察するエネルギーが増えてきます。俳優はそうやって成長するのです。  自己肯定感が高まると、落ち着いて、相手の感情に寄り添うことができるようになります。本を読んでも、「早く吸収しよう」とか「自分は全然ダメだ」と焦ることもなくなります。ゆっくりと、言葉が身体に染み込んで、やがて使えるようになります。  ちなみに、俳優の初心者で、周りのことばかりを気にしていた人が、突然、思い切った演技を始めることがあります。思っていることを全部、ぶちまけるような演技です。  今まで「こんなことを言ったら嫌われるから言わないようにしよう」とフタをしていたことを一気に出すのです。  でも、残念ながら、そういう演技は人を感動させることは少ないです。ただ気持ちを吐き出しているだけで、一種の排泄作用のようなものだからです。  そして、この場合もじつは、相手に関心は向いていません。関心は、やっぱり自分です。自分の感情をとにかく吐き出すことに集中しているのです。  砂漠さんは「私は人の顔色をうかがう臆病な自分が嫌いで、思ったことをなんでもズバズバ言える人=自分の考えを言える人を見ると羨ましく感じていました」と書きます。  残念ながら、それは極端から極端へ移っただけで、「自分の考えにすべてフタをする」と「なんでもズバズバ言う」は、コインの裏表で、相手を無視するという意味では同じことじゃないかと感じます。  どちらも、自分に自信がないから起こることだと僕は思っています。 「こんな私でも自分の頭で考えられる大人になりたい」と砂漠さんは書きますが、「こんな私でも」と思っている間は、「自分の頭で考えられる」ことはないと思います。  まずは「こんな私でも」とオートマチックに考えてしまう流れを遮断することが必要なのです。  大丈夫。自己肯定感を低くしたのは、砂漠さんです。だから、自己肯定感を高くできるのも、砂漠さんなのです。人は変われます。変われると思ったら変われます。  少しずつ、自分をほめて、認めてあげませんか? ■本連載の書籍化第4弾!『鴻上尚史のなにがなんでもほがらか人生相談』が発売中です。書き下ろしの回答2編も掲載! ↓【声で聴く】鴻上尚史が「人生相談に込める思い」ポッドキャストはこちら↓

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    徳川家臣団「忠臣」ランキング! 秀吉からの恩恵を“拒絶”してまで徳川家への奉公を貫いた武将

     徳川家康は、関白秀吉に「私は殿下のように名物の茶器や名刀は持たないが、命を賭して仕えてくれる五百ほどの家臣が宝」と、控えめに誇ったという。週刊朝日ムック『歴史道 Vol.25 真説!徳川家康伝』では、徳川家を支えた忠臣、猛将、智将などを、歴史学者の小和田泰経氏が採点。各武将の生き様と能力を解説している。今回は、「忠臣」で採点した。1位の天野康景は先日報じたが、「犬のように忠節」と称賛された徳川の家臣たちの中で2位と3位に選ばれたのは――。 *  *  * ■2位 鳥居元忠 / 片足を引きずりながらの最期の奉公  鳥居氏は商いで成功を収めた股肱の臣の家で、蔵に蓄えが溢れていたことから、元忠の父忠義は人質時代の家康に衣服や食料の援助を惜しまなかったとされる。  元忠も13歳のときから、駿府で人質生活を送る家康に仕え始め、旗本部隊の将として数々の戦功を挙げた。三方原の戦いでは斥候中に銃撃を受け、片足が不自由になった。  天正十年(1582)の甲斐平定戦では水野勝成とともに古府中の守備を託され、北条氏忠が1万の軍勢を率いて郡内に侵攻したと知ると、わずか2000騎で奇襲を仕掛け、大勝利を博した(黒駒の戦い)。  天正十四年(1586)に上洛した際、豊臣秀吉から叙爵の内示があったが、徳川家以外から恩恵を受けるわけにはいかないとして、これを辞退。九戸一揆の平定に際しても秀吉からの感状を辞退した。  慶長五年(1600)、家康が上杉討伐のため東下するに際し、松平家忠・内藤家長・松平近正とともに伏見城を託され、石田三成からの降伏勧告を断固拒絶。西軍10万人相手に力戦のすえ討ち死にした。ともに戦死した家臣57人、兵700余人、足軽数百人に及んだ。 ■3位 内藤家長 / 怪力無双にして放つ矢は大気を震わす  祖父の義清は松平信忠・清康に仕え、上野下村城を与えられた、岡崎五人衆の一人であったというから、武芸に秀でていたことがうかがえる。  父清長がそうであったように、家長も家康から一字をもらうなど、代々の主従関係にあった。  石川数正の組で先手を務め、「力量人に勝れ、騎射の達者」と称された。遠江国二俣城を攻めた際には、その弓勢を目にした城主の依田信蕃から、「近代無双、今弁慶と称すべし」と恐れられた。相当な腕力を見せつけたのだろう。  家康の部将達が敵味方に分かれ争った、三河一向一揆の際には終始家康の側に付いた。家康の嫡男・信康が自害を強いられた際には付属の士25人を、宿老の石川数正が徳川を捨てて豊臣秀吉のもとへ走った際には、馬乗同心80を預けられている。  小田原城の包囲には兵50騎と雑兵数百人を率いて参陣すると、家長の容貌を見て感銘を受けた秀吉から、「将帥の器にあたれり」として、鉄砲30挺を与えられた。  関東入国時には、上総国佐貫に2万石を与えられ、伏見城の副将を拝命。鳥居元忠らとともに西軍足止めの大役を果たし、討ち死にした。 ◎監修/小和田泰経(おわだ・やすつね)1972年、東京都生まれ。静岡英和学院大学講師。大河ドラマ『麒麟がくる』の資料提供を担当。最新著書に『すごい ヤバい 戦国武将図鑑』(カンゼン)、『タテ割り日本史5 戦争の日本史』(講談社)、『天空の城を行く』(平凡社新書)など。 ※週刊朝日ムック『歴史道 Vol.25 真説!徳川家康伝』から抜粋 

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    賛同の嵐「育休で同僚に10万円」の三井住友海上 ネット記事の「至極真っ当」な書き込みで即改善も

     育休をとりやすい職場環境づくりの一環として三井住友海上火災保険が新設する「育休職場応援手当」が大きな反響を呼んでいる。3月12日、読売新聞オンラインが「育休を取得した社員の同僚に最大10万円の一時金」と配信すると、掲載された「Yahoo!ニュース」や「NewsPicks」などに賛同するコメントが数多く書き込まれた。しかも、驚くべきことに、同社はたった数日でこれらの声を吸い上げ、制度内容を大きく改善したことがわかった。 *   *   * 「読売さんの記事が出たのが日曜でした。月曜の朝、出社すると、ヤフー(ニュース)などのコメントがすごいことになっていると言われた」  そう語るのは、「育休職場応援手当」制度を立案した三井住友海上火災保険人事部部長の丸山剛弘さんだ。  読売新聞の記事には、次のように書かれている。 <13人以下の職場で育休取得者が女性の場合、同僚に各10万円を支給する。取得者が男性の場合、育休期間が女性より短い実態を踏まえ各3万円とする。41人以上の職場で取得者が女性なら各1万円、男性なら各3000円とする>  インターネット上のコメントにとどまらず、「直接、話をしたい」と、人事部にも電話がかかってきた。見知らぬ声の主は、こう訴えた。 「非常に素晴らしい仕組みだと思うし、期待している。ただ、男性と女性のどちらが育休をとったかで支給金額に差があるのは惜しい。ぜひ男女の差をなくしてほしい」 ■社長に見直しを進言  この声に丸山部長は耳を傾けた。 「ヤフーにも同様のコメントがあったのですが、もうおっしゃる通りというか、至極真っ当なご意見でした。制度をよりよいものにしたい、という気持ちがすごく伝わってきた。なので、経営会議にも出し、労組にも提案した内容だけれど、変えちゃえばいいじゃないか、と思った」  この制度案はすでに経営会議に付議され、労使協議の完了を条件に新設することが承認されていた。それをヤフー・ニュースのコメント(ヤフコメ)や直電の意見をもとに大幅に見直そう、というのである。  電話を終えた丸山部長は、すぐに上司の執行役員人事部長と人事担当役員(常務)に相談した。 「『すごい反響です。でも、男女差がないほうがもっといい、というお声もいただきました。私もそう思いますので、修正しませんか』と言ったら、『そうだよな。ぜひ変えよう』という話になった」  丸山部長は一晩考えて、男女で支給金額に差をつけない案に修正し、人事部内のダイバーシティ推進担当者たちにも意見を聞いたうえで、育休取得予定期間が3カ月以上か、3カ月未満かで区切って支給金額を変えるといった修正案を人事担当役員と人事部長に見せた。 「そうしたら、こちらのほうが絶対にいい、と言ってもらえた。翌日、労使協議中の労組に対しても、提案内容を修正したい旨を申し入れると、前向きに受けとめられ、よい感触を得た。そして15日、人事部長から、出張中の社長にも労使協議と内容見直しの動きをお伝えするようにと、私と部内の企画チーム長に対して指示があったので、企画チーム長から修正を進言するメールを社長に送ってもらった。すると、『見直す方向で進めてください』と、社長からすぐに返信があった」  三井住友海上火災保険の社員数は約1万7千人。大企業にもかかわらず、信じられないほどの柔軟性とスピードである。ネット記事の反応から、即座に制度を改善――。筆者はさまざまな企業を取材してきたが、このような事例は聞いたことがない。反響をさらにプラスに変えようとする前向きな意識が形を変えたのだ。 ※記事の後半<<同僚の育休で“まわりの人に一時金”の案に「それ、いいね!」 三井住友海上、背景に「産後うつ」のケア>>に続く (AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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    ryuchell 息子とお出かけ中に「だいぶ成長したな」と感じた出来事とは

     現在4歳になる男の子を育てるpeco(ぺこ)さんとryuchell(りゅうちぇる)さん。昨年8月、婚姻関係を解消しましたが、これまで通り3人で「新しい家族の形」を築いていくことを公表しました。本連載では、お二人の日々の育児や家庭について交互に語ってもらっています。今回はryuchellさんに、最近、息子と過ごした出来事について話を聞きました。 *  *  *  少し前ですが、息子とサンリオピューロランドに行ってきました。息子はポムポムプリンが好きで、私もキティちゃんが好きなんです。  とても盛り上がったのは、歌舞伎とキティちゃんがコラボしたミュージカル(KAWAII KABUKI ~ハローキティ一座の桃太郎~)です。息子はかわいいけど、格好いいというのが好きなんですね。いいところで観たかったので、早く席を取りに行って、前の席で観ることができました。  実は、このミュージカルはもうすでに4、5回くらい見ています(笑) パフォーマンスがとてもすばらしいんです。ダンサーは格好よくて、華やか。キティちゃんやポムポムプリンたちが出てきて、歌舞伎のメイクや着物の姿ですが、かわいらしさもあります。それで鬼退治をするんです。  その他にも、キティちゃんが作ってくれるポップコーンを食べたり、アトラクションに乗ったり、かわいいランチを食べたりと、大満足でした。  サンリオには行く度に、お土産を買っています。大きなお人形とかは家にあるので、「今回はちっちゃいのだよ」と約束したら、ポムポムプリンのついたキーホルダーを持ってきました。とてもかわいかったです。  一緒にお出かけして、改めて息子もだいぶ成長したなと感じることがいくつもありました。  サンリオには電車で行きましたが、最近はどこにいくにも、「抱っこして」とは言わなくなりました。手はつないで一緒に歩いています。抱っこしなくなった分、外出がとても楽になりました。  電車でサンリオに行くと、次第に窓から見える風景が自然いっぱいな感じに変わるんですよね。「お山が見えてきた!」とか窓から見える外の風景について共有して楽しめる年齢になってきました。  私は電車には普段あまり乗らないので、乗り換えを間違えてしまって。それで乗り換えたら、また間違って……。そしたら、息子も優しくて「大丈夫だよー」ってフォローしてくれました。イヤイヤ期もありましたが、頼れるお兄ちゃんになっているんだなと感じました。  最近は、息子と一緒にカラオケにも行きました。息子はカラオケで歌うのも大好きです。  歌うのは、NHKの「おかあさんといっしょ」に出てくるような子どもの曲です。息子が選曲して歌っています。私が好きな曲とかは歌わないです。それはもうちょっと大きくなってからかなと思っています。  カラオケは子どもが喜ぶようなものが多くあって、いいですね。  デンモク(選曲・予約する通信機器)の機能に、お絵かきできるものがあって、息子はそこで恐竜とか、キティちゃんの絵を描いていました。3時くらいにいったので、おやつにスイーツも食べました。キッズルームもあるカラオケ店で、滑り台とかつみ木で遊びました。2時間くらい満喫しました。  息子は肩車が大好きなので、家でよく肩車をして、歩き回っています。身長も大きくなって、体重も重くなってきているので、最近は重くなってきたなぁと思います。まだしばらくはできると思いますが、そのうち難しくなるんですね。できるときまで肩車したいと思います。  私のSNSでは紹介できていませんが、息子との時間も大切に過ごしています。一緒にいると予想外のハプニングも起こりますが、「あぁ、どうしよう」と思うよりも、「なんくるないさー」(なんとかなるさ)の精神で子育てしています。 (構成/AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

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    東浩紀「ゲームのように制度の穴を突いても意味がない。政治も論壇も空転するばかり」

     批評家の東浩紀さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、批評的視点からアプローチします。 *  *  *  10年ほど前、若い批評家がやたらと「ハック」という言葉を使った時期があった。老人支配の日本社会は正攻法では変わらない。ならば既存制度の穴を見つけ、脱法的に改革を進めるほかない。そんな発想をコンピューターのハッキングになぞらえた表現だ。  当時は一部の流行でしかなかったが、いまやその精神は社会全体に蔓延(まんえん)している。社会学者の伊藤昌亮氏は「世界」3月号で「ひろゆき現象」を論じている。そこにハックという言葉が出てくる。  ひろゆき氏はいまや日本で最大の影響力をもつ言論人のひとりである。けれども彼の核にあるのは特定の思想や正義感ではない。むしろライフハックの喜びである。ひろゆき氏はあらゆる主張をハックし、ゲームのように相手を「論破」する。そのさまが痛快なので若者は支持しているわけだ。  同じ精神がガーシー騒動の背景にもある。ガーシー氏は昨年2月に暴露系ユーチューバーとして活動を開始、瞬く間に知名度を上げて、7月の参院選で当選してしまった。その後の混乱はご存知(ぞんじ)のとおりで、この3月15日についに国会を除名処分となった。  筆者は除名処分に全面的に賛成である。氏の言動にはほとんど公共性がない。しかしそれだけに支持が消えないのは不気味である。氏は選挙の穴を突いた改革者だとみなされている。騒動を受け、氏が所属するNHK党は政治家女子48党に改名した。もはやコメディーだが、仕掛け人は一種のハックだと考えているのだろう。  この状況はじつに不健康である。日本社会が変わりにくいことは確かだ。制度の穴を突くのも悪くない。しかしハックそのものを自己目的化しても意味がない。何のために制度を逆手に取るのか、何のために相手を論破するのか、目的がないところでハックを繰り返しても政治も論壇も空転するばかりである。私たちはハッキング礼賛こそ抜け出す必要がある。  むろんこんな言葉はひろゆき氏やガーシー氏の支持者には響かないだろう。それでもひとりの「老害」として、人生はゲームではないとだけ言っておきたいと思う。 ◎東浩紀(あずま・ひろき)/1971年、東京都生まれ。批評家・作家。株式会社ゲンロン取締役。東京大学大学院博士課程修了。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。93年に批評家としてデビュー、東京工業大学特任教授、早稲田大学教授など歴任のうえ現職。著書に『動物化するポストモダン』『一般意志2・0』『観光客の哲学』など多数※AERA 2023年3月27日号

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    「厳しく怖い」伝説の大江健三郎 編集者が体験した冷や汗と忘れられない笑顔

     対談や連載など週刊朝日はノーベル賞作家の大江健三郎さんと深いご縁をいただいた。担当だった山本朋史元編集委員が大江さんの優しさを記憶に刻んでいた。 *  *  * 「編集者に厳しく怖い」。そんな伝説めいた大江評がなぜか本誌編集部に語り継がれていて近寄りがたい存在と目されていた。代表作をいくつか読んだだけで大江文学についてほとんど知らない事件記者だったぼくに1994年にノーベル文学賞受賞の記事を作れと指示が下った。困り果てて作家丸谷才一さんに泣きつき寄稿していただくことで救われた。徒手空拳で向かう相手ではない。受賞直後に単独インタビューなど、とても無理だった。  でも、大江さんに本誌に登場願いたい。ない知恵をしぼり、作家井上ひさしさんと20世紀末を振り返る対談をお願いしたのはたしか1998年の暮れのことだった。 「井上さんとだったらいいですよ」  快諾をいただき朝日新聞東京本社で行った対談は当初は3時間ほどで終わる予定だったが、お二人とも準備したものを語り尽くせず場所を変えて深夜に及んだ。  この対談は1999年新年号から2回にわたって掲載された。  お礼の手紙を出すと丁寧な返事をいただき、何度かやり取りが続いた。葉書や便箋に大江さん独特の角張った文字でびっしり書かれていた。当時の編集長から、 「大江さんに何か目玉になるような連載をやってもらえないか」  なかなか直接は口に出せないでいた。ある時、大江さんのほうから、 「子どもにもわかる童話のようなエッセイなら書いてもいいな」  と。願ってもない話だった。  なぜ学校に行かないといけないの?といった子どもの疑問に答えるエッセイの構想だった。最初の原稿を見せていただいた。簡単だが全体像を伝えるレジュメもできあがっていた。大江さんの故郷、愛媛県内子町で子ども時代に体験した話などを盛り込むという話も魅力的だった。  挿絵をどうするか。相談すると妻ゆかりさんが描いた絵を見せてくださった。繊細で詩的なタッチの完成度に驚いたものだ。タイトルは『「自分の木」の下で』。この時すでに大江さんの頭の中ではすべてができあがっていたのだと思う。担当記者のぼくのやることといえば、毎週月曜日に世田谷区の自宅に原稿を取りに行くこと。文学オンチのぼくでも楽勝、と思ったのは束の間。実はそんなに簡単ではなかった。  大江さんはいつも目の前で原稿を渡して、私が読み終わるとじっと見つめられた。 「子どもでもわかるようにしたいので、あなたが読んで少しでもわかりにくい部分があったら遠慮なく言ってください」  原稿用紙をハサミで何度か切り貼りした跡があったり、原稿用紙の隅に小さな字で書き込みをしたり。何度も推敲されたに違いない。重厚だが難解と思い込んでいた大江さんの文体とはひと味違っていた。読み応えがある、しかもわかりやすい。 「週刊朝日の読者にピッタリ。すばらしいです」といった通りいっぺんの称賛だけでは足りない。ふさわしい言葉が出てこない。情けなくなった。何か言わねば。焦り狂って畏れ多くもある時、 「この部分が少しわかりにくいと思います。ぼくにはちょっと難しい」  と言ったことがあった。すると大江さんは表情を変えた。 「そこで待っていてください」 ■詩集と色紙 忘れがたい笑顔  私がゆかりさんと挿絵について話していると10分ほどで大江さんは、 「これでどうですか」  と文章を作り変えてこられた。この時ほど冷や汗をかいたことはなかった。  連載はモノクロ誌面なのに、ゆかりさんは毎回時間をかけて丁寧にカラーで挿絵を描いてくれた。 「毎回色がすばらしい。なんとかカラーで本にしたいですね」  というと大江さんは自分の原稿のこと以上に喜んでくれた。連載は一回4ページ。切り貼りや書き込みが多かったのに分量はいつも変わらずきちっとしていた。ゲラをファクスで送るのだが直しはほとんどなかった。編集部の手続きミスで叱られたことはあったが、理不尽な怒りではない。大江さんを怖いと思ったことはなかった。  16回続いた連載が単行本になると評判を呼び36万部を超えるベストセラーに。しばらくして続編もお願いすると、 「彼女さえよければ」  とゆかりさんを見た。主婦業をやりながら時間をかけて一回に2枚の絵を描くのは大変な作業であることは大江さんも認識していたのだろう。『「新しい人」の方へ』というタイトルで続編が始まったのは1年近く経った2003年新年号からだった。  私事で恐縮だが、連載期間中に私の父が咽頭がんで死亡。数カ月後に母が末期の肺がんとわかった。看病のドサクサで原稿受け取りの日を変えてもらったことがある。すると大江さんは、 「病床でこの本をお母さんに読んであげたらいいですよ」  と一冊の詩集をくれた。ゆかりさんの手料理をご馳走になって、長男の光さんに悲しみを癒やすCD音楽を聞かせていただいたのもその頃だった。  古新聞に包んだ色紙を2枚いただいたこともあった。新井白石の「折たく柴の記」からの一文を筆記したもので、 「学業の道ではどんなに辛いことがあっても、自分を甘やかすことなく、いつも堪えて、人が一やることは十やり、十やることは百やりなさい」  私の無知を見通して、人の十倍勉強せよという励ます言葉をくださったのだと勝手に理解した。大江さんには、こういう優しさがあった。私が同時期に取材していたKSD事件の話も熱心に聞いてくれた。ちゃめっけたっぷりの笑顔が忘れがたい。2冊の本を再び手にしながらなんだか頭の中を寂しい風が抜けていくような気がする。(山本朋史)※週刊朝日  2023年3月31日号

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    葬式で「ご愁傷様です」と言われたら、なんと返せばいいのか…「ありがとうございます」を避けるべき理由

     葬式で「ご愁傷様です」と声をかけられたら、なんと返せばいいのだろうか。マナー講師の諏内えみさんは「『ありがとうございます』『すみません』という言葉は避けたほうがいい。『恐れ入ります』『痛み入ります』としたほうが場に適した表現といえる」という――。 ※本稿は、諏内えみ『一生ものの「正しい敬語と上級の気遣い」 先生! ダメダメな私を2時間で仕事デキる風にしてください!』(KADOKAWA)を再編集したものです お通夜やお葬式で絶対に口にしてはいけない言葉  冠婚葬祭の中でも、失敗できないのがお通夜とお葬式。悲しみに満ちた場では、ちょっとした失礼や失言でも人を深く傷つけることになります。「もし自分が言われたら……」という想像力を持っておくようにしましょう。  お通夜やお葬式の時、ご遺族にどんな言葉をかけていいものかは誰もが悩むところ。だからといって、ご遺族に声をかけずにその場を辞することは、何よりも失礼にあたります。深い悲しみから一日も早く立ち直ってほしいという思いは理解できますが、「がんばってください」は配慮が足りず不適切です。これ以上がんばれないくらい辛い思いをしている人にとって、「がんばって」は禁句です。 「お力を落とされないように」は一般的な言い回しとされていますが、力を落とさずにいられないのは当然のこと。寄り添う気持ちに欠ける印象です。  まずは「お力落としのことと存じます」と傷心のご遺族に心を寄せた上で、「何かお手伝いできることがありましたら、おっしゃってください」と、どんなことでもいいから力になりたいという気持ちを伝えます。その思いは、きっと届くはずです。 定型句よりも伝わる言葉を  お悔やみの言葉でよく知られているのは「ご愁傷様です」。この言葉は、お通夜に駆けつけてご遺族に挨拶をするシーンで用いられるのが一般的です。前項の「お力落としのことと存じます」は場を辞する時に言うことが多いので、「ご愁傷様です」との使い分けをしましょう。同じ言葉ばかりを使うのは、幼稚なイメージになります。 「ご愁傷様」は目上の方にも友人にも使える言葉ですが、もし故人やご遺族と親しい間柄である場合、「ご愁傷様」はよそよそしく感じられるかもしれません。定型句のような汎用性の高い言い回しは、相手を選ばずに使える反面、誰に対しても言えるという点で心がこもっていないととられる可能性もあるのです。  正式なマナーとは少し異なりますが、親しい方のお通夜に駆けつけたときの第一声は、「ご愁傷様」ではなく、「このたびは……」と言葉にならない悲しみをご遺族と共有する形でもいいかもしれません。  お悔やみの言葉はハキハキと明瞭に言う必要はなく、言葉を濁して語尾を小さく言ってもかまいません。時として、言葉にならない気持ちをそのままにご挨拶する、という方が思いが伝わることもあるのです。 「ありがとうございます」「すみません」は不適切  身内が亡くなった時は、参列者から挨拶を受ける立場になります。「ご愁傷様です」と言われた場合、何と答えるのが適切でしょうか。  一般的には「恐れ入ります。生前は○○が大変お世話になりました」です。「恐れ入ります」は「すみません」を丁寧にした形ではありますが、「参列してくださって恐れ多いこと(ありがたいこと)です」というお礼の意味もあります。 「恐れ入ります」に似た意味の表現に、「痛み入ります」があります。「ご丁寧に、痛み入ります」と使います。あまりの感謝に恐縮し、心苦しく思うという意味で、「恐れ入ります」よりも若干恐縮度が高いニュアンスがあります。  ちなみに、「恐れ入ります」も「痛み入ります」も、お通夜やお葬式だけでなく、結婚式に参列してくださった方へのお礼の際にも用いる表現です。  お悔やみの言葉をいただいて、「ありがとうございます」と言うのはお勧めできません。気持ちはわかりますが、場に適した言葉を使うようにしましょう。「すみません」も同様です。つい言ってしまいがちな言葉なので、気をつけましょう。 知っておいて損はない「死」についての言葉  死についての表現には、いくつかあります。身内の死については、「他界いたしました」「永眠いたしました」「死去いたしました」となります。 「亡くなる」は基本的には敬意表現になるので、身内に使うのはふさわしくありません。ただし、「死にました」というとあまりにダイレクトで少々乱暴に聞こえてしまうので、話し言葉として「亡くなる」を使うのは問題ないでしょう。  死の尊敬語は「逝去」です。弔電などの書き言葉では、「○○様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます」とします。「謹んでお悔やみ申し上げます」は話し言葉でも使うので、覚えておきましょう。  時折耳にするのが「お亡くなりになられました」という表現。これは「亡くなる」+「~になる」の二重敬語であり、敬意表現として正しいものではないのですが、マナー違反ととがめられることはないようです。  深い悲しみで皆が動揺している場面では、正しさよりも気持ちを優先する傾向にあるのです。 招待した方もされた方も幸せになるひと言  結婚式に招待された場合、新郎新婦にはもちろん、そのご家族にも挨拶をするのが礼儀です。「おめでとうございます。すごいですねー」で終わらせることのないよう、最低限言うべきことを身につけておきましょう。  新郎新婦とご家族、どちらに対しても基本構造は同じ。「お祝い・感謝・ほめる」のセットで挨拶をします。 (1) まずは「本日は誠におめでとうございます」というお祝いの言葉。新郎新婦が友人であれば、「本当におめでとう!」でもかまいません。(2) 次に、「お招きいただきありがとうございます」という感謝の言葉。ここは、新郎新婦にもきちんと伝えたいところです。(3) 最後に「素敵な会場ですね」や「和やかで楽しい披露宴でした」など、式や披露宴の会場や雰囲気などを称賛する言葉を付け加えます。  お祝い・感謝に何が素晴らしかったかを一言伝えると、招待した甲斐があったと思ってもらえます。招待した方もされた方も幸せな気持ちになるコミュニケーションです。 正しいマナーの土台にあるのは相手への気持ち  結婚式の招待状には、出席・欠席を知らせるハガキが同封されています。これを正しく記入できると、社会人として一目置かれることでしょう。  出席にしても欠席にしても、「御出席」「御欠席」と書かれている「御」の文字を消すのは知っていますよね。もし出席するなら「御出席」の「御」と「御欠席」を、欠席するなら「御欠席」の「御」と「御出席」を消します。同じように、「御住所」「御芳名」の「御」と「芳」も消します。  文字を二重線で消すのが一般的ですが、「御」や「芳」の上に「寿」を重ねて書くことで消す方法もあります。覚えておいて損はありません。  やむをえず欠席する場合は、余白に「おめでとうございます。出張中につきおうかがいできず大変残念です」と書き添えます。無言で欠席するのではなく、お祝いの気持ちと、本当は行きたいのにやむをえず欠席することを伝えるようにしましょう。  どんな場面でも、気持ちを言葉に乗せることが大事です。正しい言葉遣いやマナーは、気持ちという土台があってこそ生きるもの。気持ちと言葉は不即不離なのです。両方を的確に正しく表現できる人が「デキる人」であり、信頼されて出世できる人でもあるのです。 諏内 えみ(すない・えみ)「マナースクール・ライビウム」「親子・お受験作法教室」代表 VIPアテンダント業務を経てスクールを設立。上質なふるまいや会話、社交術、テーブルマナーが学べるオンライン講座『Class the SUNAI』を主宰。難関幼稚園、名門小学校合格率95%のお受験講座は「にじみ出る育ちの良さ」が身につくと話題に。映画やドラマで女優への所作指導のほか、テレビ出演多数。著書に『「育ちがいい人」だけが知っていること』(ダイヤモンド社)』など。

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    脳卒中の5つのサイン 症状が出たら迷わず救急車を呼んで 脳梗塞には前兆がみられることも

    日本人の死因第4位(2021年厚生労働省「人口動態統計」)、寝たきりの大きな原因となる脳卒中。その多くを占める脳梗塞は、生活習慣と深く関わる。万が一のとき、迅速に治療を受けられるよう原因や症状を理解しておきたい。 *  *  * 「脳卒中」は脳の血管の病気であり、血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」と血管が詰まる「脳梗塞」に大別される。脳梗塞は、脳の血管が詰まって血流が途絶えることで神経細胞が壊死し、その働きが失われる病気だ。  厚労省の統計では脳卒中の患者数は111万5千人(2017年)とされているが、国立循環器病研究センター病院副院長の豊田一則医師は「実際にはもっと多いと推察される」と話す。 「国で定めた統計の方法により、このデータには、リハビリ施設に移行した回復期の患者さんや、施設・在宅で療養している患者さんは含まれておらず、実際には約300万人という報告もあります。ただし、いずれも推計であり、正確なデータは今のところありません」  昔は、脳卒中のなかでも脳出血の割合が圧倒的に高かったが、現在は脳梗塞のほうが多い。その理由について豊田医師は、画像診断技術の進歩で両者の正確な区別が可能になったこと、国民の健康意識の高まりによる塩分摂取量の減少、高血圧治療薬の進歩などを挙げる。 「血圧が高いと血管が破裂する脳出血が起こりやすくなります。高血圧の管理ができるようになったことで1980年代に脳出血と脳梗塞の割合が逆転し、日本脳卒中データバンクによると、現在は脳卒中の75%が脳梗塞とされています」(同)  脳梗塞は、「ラクナ梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」「心原性脳塞栓症」の3タイプに大別される。前者二つは、首や脳の動脈硬化により起こる。ラクナ梗塞は、脳内の細い血管が詰まるもので、症状が起こりにくく比較的軽症なことが多い。アテローム血栓性脳梗塞は、首や脳の太い動脈で起こる。血管の内側にコレステロールなどが沈着したかたまり「アテローム」ができることで血管が閉塞する。 ■生活習慣病や心臓病に注意  心原性脳塞栓症は、心房細動など心臓の病気が原因で起こる。心臓でできた血のかたまり(血栓)が血流にのり脳に運ばれ血管を詰まらせる。このタイプは脳梗塞のなかでもとくに重症化しやすい。  脳梗塞の主な原因は、加齢や生活習慣だ。60歳代から増え始め、発症のピークは男性が70代前半、女性は80代前半とされる。東京慈恵会医科大学病院脳神経内科教授の井口保之医師はこう話す。 「加齢にともなう血管の老化や動脈硬化、脳梗塞のリスク因子となる生活習慣病の増加・悪化など、さまざまな要因が重なって脳梗塞が起こりやすくなると考えられます」  高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病、心臓の病気、喫煙、飲酒など、脳梗塞のリスク因子のほとんどが生活習慣に関わるもの。「総コレステロール値が1ミリモルパーリットル増加すると脳梗塞の発症率が25%増加する」「心房細動のある人は、ない人と比べて脳梗塞発症リスクが5倍高い」という報告も。一方で、高血圧や脂質異常症の適切な治療、禁煙で脳卒中のリスクが低下するというデータもある。 「遺伝的な要因など予防が難しいリスク因子もありますが、ほとんどが生活習慣に関わるものです。言い換えれば生活習慣の改善や生活習慣病の治療により脳梗塞のリスクを減らせるということです」(豊田医師)  また、一般的に心臓や血管の病気は冬に多いとされるが、豊田医師が実施した研究によると、脳梗塞の発症率は秋だけがやや少なく、それ以外の季節では差がなかった。ただし重症例は冬が多く、これは、季節により起こりやすい脳梗塞のタイプが異なるためだという。 「冬は、脳梗塞のなかでも重症化しやすい心原性脳塞栓症が多い傾向があります。冬は血圧が高くなることや血圧の変動が多く、心房細動が起こりやすくなることが主な理由です。一方、動脈硬化が原因の脳梗塞は脱水がきっかけとなることが多く、夏に起こりやすくなります」(同) ■症状がみられたら迷わず救急車を  井口医師は、「脳卒中の5大症状」として、図の症状を挙げる。脳の障害される場所により、症状はひとつのことも、複数が重なることもある。 「脳梗塞は、発症後いかに早く治療するかで予後が異なります。症状がみられたら迷わず救急車を呼んでください」(井口医師)  また、脳梗塞には前兆がみられることもあり、これを「一過性脳虚血発作(TIA)」という。脳の血管が一時的に詰まり、脳梗塞の症状が出るが、自然に血流が改善することで短時間のうちに症状が消失する。TIAが起こると3カ月以内に10~15%の人が脳梗塞を発症し、その半数が48時間以内に発症するといわれる。「治まったから大丈夫」と考えず、すぐ受診することが必要だ。  日本脳卒中学会や日本脳卒中協会も「ACT−FAST」を合言葉に、「F(Face:顔のゆがみ)、A(Arm:腕の力が入らない)、S(Speech:言葉が出ない)などの症状がみられたら、症状が出た時間(Time)を確認し、すぐに(FAST)救急車を呼ぶ(ACT)こと」をすすめる。  一方、脳梗塞には「無症候性脳梗塞」という、症状がないものもある。そのときは症状が出なくても、放置して神経細胞のダメージが積み重なると、意欲や認知機能の低下、大きな脳梗塞やほかの神経の病気につながる可能性も。むやみに恐れることはないが、「5大症状」を忘れず、「おかしい」と思ったらすぐに専門医を受診してほしい。 (文・出村真理子) ※週刊朝日2023年3月24日号より

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    75歳以上に安楽死を勧める制度ができたら…落合恵子が考えたこと

     昨年公開のフィクション映画「PLAN75」はリアルな現実と架空の近未来が重なって観る人の心をかき乱した。理由は「75歳以上に安楽死を勧める制度ができたら──」という世界を描いていたから。作家で、クレヨンハウス代表の落合恵子さんに「映画のような社会を現実のものとしないために私たちに何ができるのか」について聞いた。 *  *  * ■「年金生活者も立ち上がっていい」  主役の倍賞千恵子さんといえば、私の世代にとって、1963(昭和38)年の映画「下町の太陽」(山田洋次監督が映画化)をまず思い出します。その方が、いま81歳で主役をされている。素敵に年齢を重ねられていますね。自然な老いによる表面的な変化もそのまま見せておられる。  作品を観て、私は「政治や社会から自らの最期を押し付けられることはお断りします」。そう、改めて強く感じました。人は誰もいつかは死を迎えますが、私はそれを国に管理されたくない。可能な限り、自分で自分の最期を決めたい。  私は長年、毎年1月1日に、おおまかに言うと「自然のまま、私を逝かせてください」という内容のリビングウィルを書いています。30代と40代で仲のいい友人を亡くしたときの宿題として、医療従事者や周囲の友人たちが後々「あれでよかったのか」と苦しまなくていいように、私の意思を文書で残しています。  弱者をないがしろにするような政治が続いて、生きにくさを感じる社会ですよ。私が国葬反対、原発反対、改憲反対とデモに参加しているのは、民主主義の基本である、私たちひとりひとりが社会に参加しているのだ、という感覚を確認したいからでもあります。 「パンとサーカス」という言葉があります。権力者は市民にわずかな食料と娯楽を与えておけばいいという意味ですが、私は「パンは自分で作ります、タネから。サーカスも勝手に示さないでください。自分たちで考えます」と。そうしないと、結局は政治や制度にからめとられてしまいます。  若い人たちにもっと声を上げていただきたいし、年金生活者も、もう少し立ち上がってもいいと思うんですよね。社会を変えることは大変ですが、私は「まだ、やってるよ」と言われる一人でいいのです。  昨年、国葬反対のデモの帰りに転んでしまって。医師に「なんて強い骨なんだ!」と褒められるほど、何でもなかったって喜んでいたのですが、寒くなると痛むようになって。老いは日々感じます。  でも、「だから、デモには行かない」というのはできないな。  ただ、ちょっとだけ「体も労わりなさい」って、自分の体から教えてもらう。体からの教えは贈り物と思っています。  最期まで生きていくために必要なことのひとつは、悔しいけど経済力ですよね。でも、大好きだったお年寄り(私も年寄りですが)が言っていました。「棺おけに持っていけるのは、菊の花だけだよ」。最後にプラマイゼロになればいい、と私は考えています。  そのために、みんなが、あるいは、みんなで、分かち合えるかどうか。分かち合うことは奪われることではない。分かち合うことがスムーズに機能しない社会では、すぐに自己責任という言葉が登場し、問われます。  昨年12月、クレヨンハウスの東京店は表参道から吉祥寺に移転しました。47年目を迎えたクレヨンハウスは、子どもも大人も自分であることに疲れた人の居場所になったらいいなって、空間作りをしてきました。次は小さな教室もやりたい。農福連携のような活動、さまざまな古今東西の本を読む、シュタイナーの教育や絵を描く、何でもいい。  血縁だけではなく、結び縁を大切にしたい。どうして、日本は養子が少ないのか。結び縁の家族があってもいいですよね。そんな結び縁を続けていくことが、この映画に対する答えでもあるのかなと思います。 (医療ジャーナリスト/介護福祉士・福原麻希)※週刊朝日  2023年2月10日号

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