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Snow Man阿部亮平、「滝沢歌舞伎」公演期間に号泣した理由
一般受験で上智大学に合格、ジャニーズ初の大学院修了者で“ジャニーズクイズ部”のリーダー・Snow Man阿部亮平さんが、満を持して登場! 合格率4%の難関で知られる気象予報士や、世界遺産検定2級に合格するなど、アイドルとしての活動と学業との両立を見事成し遂げた阿部さんが、そのなかで号泣した理由とは? * * * ──小学5年生からジャニーズJr.として活動されてきて、自分には取(と)り柄(え)が少ないと感じるようになったことで、勉強をしようと思われたとか? 僕が所属していたMis Snow Manとか、Jr.BOYSって、先輩たちのバックに引っ張りだこなJr.が集まっていて。まわりみんなダンスすごくうまいし覚えるの超早いし、歌うまい人もいて、自分はあんまり取り柄ないなーって感じることがあったんですよね。自分が置いていかれてるって思ったのは、中2とかなのかな。本当にね、俺一番下手だなって思ってた。頑張って食いついてはいたんですけど、何か一番できるものがほしい、ってなったときに、勉強しかないなと。もちろんダンスとか歌とかアイドル業も磨くけど、プラスアルファでもう一軸、勉強をやろうって思ったのが、高校2年生ぐらい。受験は経験しておきたいって意識もあったので、半年間活動を休んで勉強をしっかりして一般受験をするって決断しました。 ──休んだ半年間はどのように勉強を? 8月から3月の頭までの半年は、毎日12~13時間勉強して、でも絶対7、8時間は寝ていましたね。眠いのに無理して続けるのは、効率が悪い気がして。独学中心でしたが、冬期講習だけは受けました。冬は朝9時からずっと自習室にいて、講習の時間は教室に行って、家帰ってリビングで勉強するんですよ、夜12時ぐらいまで。あとは通学中もキクタン聞いたりしていました。毎日、だいたいの目標は決めるんですけど、例えばもう無理、眠くなった、ってなったらやめるし、いやまだめっちゃ集中できてる、って思ったら続けるようにしていましたね。だから高2の試験勉強で朝4時まで勉強しちゃったこととかありました。空がだんだん明るくなっていくのが、これだけ勉強したんだっていう証しになるから、ちょっとうれしかったな(笑)。 ──一般受験に際し、上智大学を選んだ理由は? ほかも受験したんですけど、結局はいちばんいいところに受かったなって思いますね。研究室でやりたいこともできたし、いい教授とも出会えたし、都心だからすごく通いやすいのもあって。受験でいろいろな大学を受けて、っていう流れは多分誰しもにあって、でも結局どこに行くかっていうのは、自分が頑張ったぶんの努力が連れてってくれるんだと思うんです。僕は理工学部で、出席や単位にはすごく厳しかったんですけど(笑)。 ──その厳しい学部で学業優秀賞を受賞した? 4年のときに表彰されました。学科で毎年3人くらいですかね。仕事と両立させるなかで、出席が足りなくなって必修科目を落としたこともありますけど、そういう賞をいただいて、ね、ほんと真面目にやってよかったなあって。 ──仕事と学業を両立するなかで、号泣するほど悩んだこともあったとか。 大学4年生の頃ですね。ちょうど「滝沢歌舞伎」の公演中で。研究室では院進(大学院への進学)の話題で持ち切りだったんです。大学在学中も、出席が厳しいからちょっとお仕事休ませてもらったりとか、メンバーに迷惑をかけてしまうことがあって、それが4年で終わるって思っていたんですけど、自分のなかに、院に進んであと2年学びたいっていう思いがあったんですね。理系で、コンピューターによって便利になった社会に対してどう生かすかといった情報学を学んでいたので、ライブの演出についてもうちょっと学ぶことができないかな、例えば何かを念じたり集中したりっていう脳波を信号として読み取って演出に生かせないかな、って。院進したいっていう思いと、メンバーにこれ以上迷惑はかけたくないっていう思いがあって、マネジャーさんと話してるうちに、だんだん気持ちの整理がついてきて……進学したいっていう自分の真の気持ちに気づいたら、号泣していたんですよね、なぜか。最終的には大学4年生から大学院の授業を受けられる制度をフルで駆使して、院ではほとんど仕事を休まなくてもいいようにして、落とし込んだ感じですね。 ──受験勉強は自身に返ってきていると感じる? 受験っていう経験はマジで一生ものだなって思いますね。人生で得られる経験値としてすごく大きいなって。後にも先にもあんなに勉強したのはあのときだけだし。僕自身はジャニーズの活動をお休みして、メンバーに迷惑をかけて、っていうのがかなりプレッシャーだったので、忍耐強くなりましたよね。 ──勉強が自分の役に立っているといま最も実感するのはどんなとき? いちばんは、学んだ内容そのものよりも学び方にあるかなって。社会人になってからも新しく学ぶことって多いじゃないですか。たぶん応用が利くと思うんですよね。僕はいま、クイズ番組でクイズを解くためにはどう勉強したらいいか、みたいに使えてますね。 ──阿部さんにとって、その「学び方」とは? 学び方の、ほんっとの第一歩は、興味を持つことですね。僕は社会とか地理とかが苦手なんですが、でも旅行は好きなんですよ。だから旅行で得た知識を最初の呼び水みたいにして、例えばここが有名だとか、これがおいしいとか、みたいにして、地歴がめっちゃ苦手なのに、世界遺産検定2級を取りました。僕は、勉強ってモチベーションがすべてだと思っていて。どうやっても面白さを見いだせなかったら、この勉強終わったらおいしいもの食べられるとか、この勉強するときのこのノートがお気に入りとか、そういうところでうまく自分をあやしていくのが大事かなって思います。 ──ご自身が勉強するときの、いまのご褒美は? 最近ね、サウナかもしんない。そこまでサウナーってわけじゃないんですけど、たまに行くとすごくゆったりとできるので。もともとお風呂も大好きですし。 ──サウナ好きのメンバーもたくさんいますが。 そうなんですよ。うちにはサウナに精通してる人がたくさんいるので、楽しいですね。いろいろ相談にのってくれるんですよ、親身になって。この前、岩本(照さん)からサウナハットをもらって、愛用してますし。ただ、一緒に行ったこともあるけど、まあほぼ一人ですね。一人でのんびり過ごすのがすごい好きで。 ──ライブの演出「スノインザボックス」を思いついたのもサウナだとか。 そうだった気もするようなしないような(笑)。でも確かに、のんびりしているときにいろいろ考えて、あっと思ったものをお風呂とかサウナとか上がった後にメモしておくことは多いですね。 ──最後に、来春の受験生に向けてメッセージを。 時が過ぎるのって本当にあっという間。来年の受験までまだ1年弱ある、って思ってる人がいるかもだけど、本当にすぐ来る。だからこそ、未来の自分に向けてプレゼントを贈る気持ちで、いまからちょっとずつ頑張ってほしいと思います。 (取材・構成/編集部・伏見美雪)※週刊朝日 2023年3月31日号
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4時間前
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Snow Man阿部亮平、キャスターを目指す理由と自身の生きる意味
Snow Manきって、ジャニーズきっての知性派として数々のクイズ番組でその実力を発揮している阿部亮平さん。一方で、ニュース番組でのスペシャルキャスターや、ドラマで航空管制官役を務めるなど、幅広い活躍を見せている。そんな阿部さんが目指す将来像、そして生きる意味とは? * * * ──Snow Manでは、常に全体を俯瞰して、状況に応じて立ち位置を柔軟に変えている印象が。 まあ例えばメンバーから何人か出るお仕事のときは、バランスは見ますね。このメンツだったら、俺ちょっとふざけに行く側だなとか、ちょっとしっかりしたほうがいいなとか……僕はメンバーカラー緑なんですけど、緑って虹の色の順番に並べたら真ん中なんですよ。だから、どっちにもなれるようにしたいなと。軸はインテリで、いろいろ変化できていったらいいなって思っています。 ──目指すべきアイドル像がしっかりあって進んでいる印象も。 はい。そうですね。理想はやっぱり櫻井翔くんなんです。ほんっとに多才で、真面目な顔もあるし、ふざけたりお茶目なアイドルっぽいときもある、っていうのに強く惹かれていて。僕、アイドルってすごい職業だなあと思ってるんです。何でもやるじゃないですか。そんななかでも知性とか品性とかも生かしていろいろマルチにこなすっていうのが、本当に理想のアイドル像です。 ──櫻井さんもされているキャスターを、阿部さんも目標に掲げています。目指すキャスター像は? 生活に溶け込みたいですね。以前はずっと、「いってらっしゃい」を言いたいって考えていたんですけど、「おかえり」もいいなって。その人から始まるのでも、その人で終わるのでも、1週間の中でこの日に必ずこの人がいる、みたいな存在になりたいかな。ニュース番組は幅広い世代の方が見るからこそ、ふさわしいイメージも必要だと思うので、もっとクイズ番組で頑張んなきゃなとも思ってます。 ──キャスターは当初から目標にしていた? キャスターというよりはもう、櫻井翔くん的な存在ですね。もちろん、キャスターとしては、ね、もっともっと勉強しなきゃいけないこともあるだろうと思いますし。 ──櫻井さんはキャスターとして、主演ドラマ「大病院占拠」のテーマ「正義とは何か」を意識しているとおっしゃっていましたが、その主題歌でSnow Manの新曲「W」にも「人の数だけ正しさ」という歌詞が。阿部さんも考えることが? 僕は社会が苦手なので、知識が浅い段階で発言するのはちょっと怖いなっていうところもありますが、まずは自分の身のまわりのことから、社会のことも少しずつ勉強していきたいなとは思っています。それこそSDGsとか、言葉は難しそうに見えるけど、できることが多いから。身のまわりに落ちているヒントとかを、ね、自分なりに広げていったりして、ゆくゆくはそういう大きなことも考えていきたいですね。SDGsの目標には平和も入っているので。 ──まさにSDGsや選挙番組に出ていい影響を与えていますが、逆に最近影響を受けたことは? 昨年ドラマ(「NICE FLIGHT!」)で玉森(裕太)くんとご一緒させていただいたんですが、玉森くんが基本的に現場に台本を持ち込まない人で。僕はもう初日は本当に不安で……セリフはもちろんちゃんと覚えて入ったつもりなんですけど、精神安定剤代わりに台本を持ってたんです。でも、いやこれはダメだと思って、それからはマネジャーさんに持ってもらって、できるだけ開かないようにしましたね。そういう現場が本当に初めてだったので、先輩を盗み見て、というわけじゃないですけど、得るものがありました。 ──ドラマといえば、次にやってみたい役は? 「NICE FLIGHT!」はだいぶ自分と重なる部分があって、そのぶんやりやすさはあったんですけど、今度はもうちょっと自分の性格から離れた役をやってみたいという気持ちがあります。例えば、オタク気質とか、ちょっと寡黙とか。 ──ちなみに、20代のうちにやりたいことは? あー、確かに今年30になりますからね。えー、なんだろう……「週刊朝日」で表紙を飾る、じゃないですかね(笑)。 ──3月15日、新曲「タペストリー/W」が発売に。 「タペストリー」は目黒(蓮さん)・渡辺(翔太さん)が最初に歌ってからのスピードアップがポイントですね。あそこでドキッとするんですよ。ちょっとゆったり始まるのかなと思いきや、だいぶテンポがいい。けどすごいしっとりとしてるっていうの、ちょっとグッとくるかなって思います。 ──阿部さんが歌う2番Bメロが話題です。 うれしいです。僕は普段けっこう低いパートを担当することが多くて、サビも下ハモを歌うことが多いんですけど、今回はすごく高い音があって。地声では高い音が出ないので、Bメロの「自分が消えてしまわぬ様に」はファルセットで頑張ってるんですけど、この音この人から出るんだって思っていただけたら。なかなか聞かない僕の声だと思うので、楽しんでもらいつつ、メンバーそれぞれが前に歌っていた人からパスもらって次の人に渡していく、つながっていく歌い方にもぜひ注目してもらいたいです。 ──「タペストリー」で「全てを投げ出してもいいから」という歌詞が。そう思ったことはある? 「それSnow Manにやらせて下さい」っていう冠番組が、この春からゴールデンタイムに進出するんですけど(金曜20時から1時間番組として全国放送決定)、ここからがむしろ勝負だなって思っていて。だからまさにいまが、この言葉の気持ちかもしれない。“それスノ”のゴールデン化と全国化は、どっちも叶(かな)えたい夢だったんですよ。どっちが先に叶うかねーみたいな話をしていた3日後ぐらいにその話が出たので、すごくうれしかったです。せっかくここまで来たからには、長く愛される番組にしたいと思います。 ──「W」の歌詞にちなんで、「生きる意味」は? CM(ユーキャンで出演中)で、学ぶことは生きること、って言っちゃってるんですけど(笑)、まさに間違いなく死ぬまで勉強だと思ってます。僕はすごく受験の勉強もしたし、クイズ用の学術的・学力的な勉強もしているし、生きるための術、例えば上座の場所を覚えるとか(笑)も、大切になってくることもあるじゃないですか。本当に一生ずっと勉強で、かつ自分の覚えた知識は誰にも奪えない財産だと思っているので、どれだけ蓄えられるか、経験値も含めてどれだけ得られるかっていうのが、人生を豊かにするポイントなのかなって思います。※週刊朝日 2023年3月31日号
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4時間前
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4月から「マイナ保険証」を使わないと医療費アップに!対策を知って備えよう
4月以降、オンライン資格確認システムを導入または申請中の医療機関で、従来保険証で受診すると医療費が高くなる。マイナ保険証対応の医療機関が増える中、本格的にマイナ保険証を使わないと損、ということになりそうだ。連載『医療費の裏ワザと落とし穴』の第256回では、4月以降のマイナ保険証の利用について注意しておきたいポイントを押さえておこう。(フリーライター 早川幸子) 4月からマイナ保険証を使ったほうが初診時40円、再診時20円お得になる この4月から、「マイナ保険証」を使わない人の医療費が、さらに引き上げられることになった。 現在、その病気で初めて病院や診療所を受診したときの医療費は、マイナ保険証より、従来の健康保険証のほうが、20円(3割負担で6円)高くなるように設定されている。この差が、4月以降は、特例措置として40円(3割負担で12円)に広がることになったのだ。 ただし、医療費に差が出るのは、オンライン資格確認のシステムを導入しているなど、一定の要件を満たしている医療機関を受診した場合だ。また、今回の加算は、全国の医療機関にマイナ保険証に対応できるシステムが普及するまでの期間限定の措置となっている。 どのようなケースで医療費に差が出るのか。この4月以降のマイナ保険証に関する見直し内容について確認しておこう。 これまで病院や診療所などを利用するときは、自分が加入している健康保険組合を証明するために、「健康保険被保険者証(健康保険証)」を提示することになっていた。 この健康保険証の代わりに、マイナンバーカードの個人認証機能を使って、本人確認や健保組合の特定を行うのが「マイナ保険証」で、2021年10月に本格導入された。そして、普及を促すために、2022年4月の診療報酬改定で、マイナ保険証に対応できるシステムを導入した病院や診療所に対して、通常の医療費に加えて、マイナ保険証関連の加算が付けられることになった。 だが、このときの診療報酬体系は、マイナ保険証を利用した患者のほうが、健康保険証で受診した患者よりも、医療費が高くなるように設定されていた。 マイナ保険証に対応する医療機関を増やすための誘導策とはいえ、患者はマイナ保険証を使うと損してしまう。そのため、国民目線を欠いた制度設計には疑問の声が上がっていた。 そこで、2022年10月、マイナ保険証の利用者のほうが、健康保険証を利用するよりも、医療費が安くなるように見直しが図られたのだ(連載の第247回参照)。 今回の見直しは、この考え方を拡大したものだ。では、今後どのように医療費は変わるのだろうか。次ページから見ていこう。 ●4月からマイナ保険証では初診時加算が20円だが、旧健康保険証では、これまでの初診40円が60円に引き上げられ、再診ではマイナ保険証にない20円の加算が付く●加算はオンライン資格確認システム導入済み、または申請中の医療機関で適用される ●24年秋までに現行保険証は廃止。マイナ保険証に移行したくない人は「資格確認証」の発行手続きを自分で行う必要がある カードリーダー設置または資格確認届け出を行っている病院ではマイナ保険証提示がなければ負担増に オンライン資格確認システムの導入を加速させるために、2023年4月から12月までの期間限定で、病院や診療所の初・再診時に加算される金額が次のように見直されることになった。 マイナ保険証を利用した場合は、初診時の加算が20円(3割負担で6円)で据え置かれているが、健康保険証で受診した場合は、これまでの40円(3割負担で12円)から60円(3割負担で18円)に引き上げられる。 また、再診時については、マイナ保険証では加算がないが、健康保険証で受診した場合は20円(3割負担で6円)がプラスされることになった。 つまり、初診時は40円(3割負担で12円)、再診時は20円(3割負担で6円)の差がつくことになったのだ。 ただし、この加算が付くのは、マイナンバーカードを読み取れるカードリーダーなどを設置している医療機関を利用した場合だ。オンライン資格システムを導入していない医療機関を受診した場合は、そもそも追加の負担がない。 実のところは、マイナ保険証に対応していない医療機関を利用するのが、一番医療費が安いのが現状だ。 だが、厚生労働省は、23年4月までに、すべての病院や診療所などに対して、マイナ保険証による健康保険の資格確認システムを導入することを義務付けておりその数は徐々に増えてきている。 さらに、今回の加算の特例措置は、すでにシステムを導入している医療機関だけではなく、今年12月までにオンライン資格確認の開始を届け出ている医療機関も対象となっている。 2023年3月5日時点の「オンライン資格確認の都道府県別導入状況について」によると、病院は98.7%、診療所(医科)は91.7%がカードリーダーの申し込みを済ませている。そのため、今年の4月~12月は、マイナ保険証で受診したほうが医療費が安くなる医療機関のほうが多くなりそうだ。 4月以降、医療機関を受診するときは、忘れずにマイナンバーカードも持参するのが得策だ。 2024年秋までに健康保険証は廃止代わる「資格確認証」の発行は自分で行う必要がある このように、医療機関はマイナ保険証に対応できるシステムを整えつつあるが、肝心のマイナンバーカードの交付率は2023年3月12日時点で75.4%。いまだ2割強がカードを取得していない状況だ(総務省の「マイナンバーカードの交付状況について」)。 カードを取得していなければ、当然のことながら、マイナ保険証の機能も使えないが、国は2024年秋までに従来の健康保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化する方針を打ち出している(発行済みの従来の健康保険証も、有効期限が来るまでは利用できる)。 マイナンバーカードを取得するかどうかは個人の自由で、マイナ保険証の登録を希望しない人については、従来の健康保険証に代わるものとして「資格確認書」を発行することになっている。資格確認書の有効期限は1年間で、更新もできるので、今後もマイナ保険証を登録していなくても健康保険の適用は受けられる。 だが、資格確認書は、原則的に必要な人が自分で申請するもので、健康保険証のように自動的に発行されるものではない。 マイナンバーカードの申請をしていない人の中には、一人暮らしの高齢者などで、自分では手続きがままならない人が含まれている可能性がある。そうした人が、マイナ保険証を登録しておらず、資格確認書の申請もできなければ、病院や診療所を利用するときに健康保険の資格確認ができず、不便を強いられてしまう。 国がマイナ保険証を導入した目的は、医療分野にもデジタルトランスフォーメーション(DX)を取り入れることで業務を効率化し、患者に質の高い医療を提供することだったはずだ。だからこそ、この4月からマイナ保険証関連の医療費をさらに引き上げる特例措置を行い、マイナンバーカードの普及を急いだわけだ。 患者の利益のために導入したはずのマイナ保険証によって、保険適用が受けられないという不利益を被る国民を作り出すのは本末転倒で、制度を導入した意味がなくなってしまう。 システムの変更によって、弱い立場にいる人が置き去りになるようなことは、絶対にあってはならない。健康保険の資格確認をマイナ保険証に一本化すると決めたなら、個人からの申請を待つだけではなく、国が責任を持って丁寧にフォローしていく必要があるのではないだろうか。
ダイヤモンド・オンライン
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1人死亡の保津川下り「全員ベテラン。難所ではないのに、なぜ」 歴20年の元船頭男性の疑問
京都の観光名物「保津川下り」で3月28日に起きた転覆事故。船頭1人が死亡、別の船頭1人が行方不明となっていたが、30日には事故現場の下流で人が見つかり、行方不明の船頭とみて身元の確認を進めている。400年の歴史がある川下りに何が起きたのか。20年近く、保津川下りの船頭をしていた男性に話を聞いた。 保津川下りは、京都府亀岡市から京都市の嵐山、渡月橋近くまでの16キロを2時間かけて運航する。 記者も子どものころから何度も乗ったことがある。3~5人の船頭が独特のさおと櫂(かい/水をかくオールのような道具)を巧みに操り、川幅の狭い急流でもうまく舟を運んでくれる。 大きなしぶきがあがり、スリル感を味わえたり、のんびりと川面や対岸の景色を楽しめたりもする。船頭の軽妙な語りも魅力の一つだ。 今回、事故が起きたのは、出発してから15~20分ほどでさしかかる「大高瀬」という場所だ。ゆったりした流れから、急に速くなる所で、名物ポイントの一つでもある。 舟には、子ども3人を含む乗客25人と船頭4人の計29人が乗っていたといい、全員が船外に投げ出された。乗客は、周囲の船に救助されたという。 20年ほど保津川下りの船頭をしていた男性はAERAdot.の取材に、 「乗っていた船頭の4人は、前に2人、真ん中に1人、後に1人。舟の一番後ろで舵を取るのがわかりやすくいえば船長で、船頭のまとめ役です。今回は後方の船頭が、空舵(からかじ)という状態になって川に落ちた。2人の船頭が後方に走り舟を安定させようとしたが、間に合わずに岩にぶつかり転覆してしまった。全員、ベテランで保津川下りを知り尽くしているメンバーです。どうしてこんなことになってしまったのか」 と残念そうに話した。 以下、男性との一問一答。 * * * ――事故が起きた場所を動画などで見ると厳しい流れに見えますが? 「大高瀬は波はあるけど難所ではないと思う。たしかに、舟に水が入ってきて歓声が沸き上がるハイライト地点ではあります。前から2人目、舵をとる船頭も『これからです。青いシートを』とはやしたてて盛り上げます。動画でもそういうシーンがあるでしょう」 ――空舵(からかじ)という言葉が報じられています。 「舟は激流で船体が浮くことがあります。そうすると、舵が水に届かず空中で空振りする状態になる。それを空舵といいます。そうなると舵が取れないので舟の方向が定まらない。さらに、舵を取る船頭が転落したとなれば、舵が完全にきかなくなります。流れが速い場所で空舵になると方向が定まらないということになります」 ――救命胴衣は装着しているのですね。 「腰に巻くタイプのものを必ずつけます。お客様、船頭とも同じです。お客様がきちんと装着しているか、船頭が確認してから出発します」 ――船頭がさおでどの岩を突くのか、櫂をどうこぐのか、技を見せるのも保津川下りの魅力です。 「そこそこ年数を積めば、どこにどんな形の岩がある、今日の水位はこれくらいだからその岩が水面からどれくらい出ているとかわかる。流れの速さからどこで岩に竿をつくのか、櫂はどうこぐか自然と身につきます。その日の流れ、水位、天候によって微妙に変わるけど、経験で頭に入ってくるものです」 ――船頭はそれぞれやることが決まっているんでしょうか。 「保津川下りは船頭3人、4人なりの共同作業で安全にお客様に楽しんでいただくもの。その呼吸が合わないとだめ。過去に、呼吸が合わずに起きた事故もあった。今回もどこかで4人の呼吸が合わなかったのかもしれないし、船尾の船長が落下したのも何か影響があったのかもしれない。20mほどの長さがある舟を操り、お客様を安全に送り届ける。チームワークなくしてできません」 ――今後はどうなるのでしょうか。 「これまで事故が起こると、しばらく休んで検証してきました。今回も桜のシーズンで予約も多いかき入れ時だけど、当面は休んで原因究明となるはずです。ここできちんと検証して次につなげていかないと、400年の歴史がついえてしまうことにもなりかねない。こういうときこそ、一致結束してことにあたるべきだ」 * * * 保津川下りの運航会社「保津川遊船企業組合」が報道陣にした説明では、28日は、水位が規定の85cm以下の69cmだったため運航を決めたという。 国土交通省が観測して公表している保津峡水位観測所の水位が85センチ以上になれば運航を中止するが、28日の水位は船頭を1人増やすと定めている50センチ以上75センチ未満の範囲だった。 国交省運輸安全委員会は、船舶事故調査官2人を現地に派遣することを決めた。 保津川下り400年の伝統を守ってくためにも、原因究明をしっかりとした上で、今後の事故防止につなげてほしい。 (AERA dot.編集部 今西憲之)
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5時間前
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「たまむすび」沼にハマった人たちは放送終了ロスどう乗り越える?
春は出会いと別れの季節。それにしても今年は強烈なお別れが多すぎる。サービスの終了や老舗の商業施設の閉店によるお別れのほか、とくに目立っているのが、長年人気のあったレジェンド級の番組とのお別れだ。「タモリ倶楽部」(テレビ朝日系)の終了は世間を驚かせたが、ほかにも多くの番組が消えていく。 * * * テレビ番組では3月25日、27年の歴史を誇る巨星が消えていった。以前は全国のテレビ東京系列局で放送、13年からはBSジャパン(現BSテレ東)で放送されていた「サブちゃんと歌仲間」だ。 北島三郎(86)をホストに演歌を中心にしたスターたちがゲスト出演。歌とサブちゃんとのほのぼのトーク、お便り紹介などで構成されていた貴重な演歌番組だった。放送回数は1377回、延べ6千組以上のゲストが出演した、演歌界にはなくてはならない番組としても知られていた。 BSテレ東での放送は、毎週土曜の朝5時半から30分間。SNSを見ると、ゲストで出演する推しの若手歌手の姿をいち早く見たいと早起きしたり、夜のお仕事から帰って番組を楽しんでからゆっくり眠るというファンも少なくなかった。 だが、芸歴60周年を機に幕を下ろしたいという北島の意向で、終了することになったといわれる。またこの番組終了とともに、北島音楽事務所からもうひとつのお別れの発表もあった。 1972年設立された「北島音楽事務所」から、原田悠里、北山たけし、山口ひろみ、大江裕の4人が独立。石原裕次郎軍団の石原ファミリー、脚本家橋田壽賀子の橋田ファミリーに続いて、演歌界の大手、北島ファミリーも「実質的解体」との声があがっている。 TBSラジオの昼の人気番組「赤江珠緒たまむすび/金曜たまむすび」(以下、「たまむすび」)も3月末で終了が決まった。フリーアナウンサーの赤江珠緒が月曜から木曜のパーソナリティーを務める午後の帯番組だ(「金曜たまむすび」はTBSアナウンサーの外山惠理がパーソナリティー、パートナーは玉袋筋太郎)。 昨年9月におこなわれた放送10周年記念イベント「たまむすび in 武道館~10年の実り大収穫祭!~」では、武道館に8千人以上のリスナーを集めた人気絶頂期の終了となる。 終了理由として赤江は、放送中心の生活のなか、子どもとの時間を取りたいと番組内で語ったこともあった。 3月20日には、裏番組の文化放送「大竹まことゴールデンラジオ!」とのコラボ企画も実現。文化放送にいるはずの大竹まことがTBSの「たまむすび」のスタジオに乱入。 「赤江珠緒の前に赤江なく、赤江珠緒の後に赤江なし」といった赤江への手紙を読み上げた。毎日放送を聞いているディープなファンのなかには、終了後を思い、早くもロスを感じている人も多い。 テキスタイルデザイナーの高橋真紀さん(58)は、5年ほど前から「たまむすび」漬けの毎日を送るようになった。 「最初、町山智浩さんを聞くようになり、さらに語りがおもしろい土屋礼央さん(RAG FAIR)がレギュラーになってからは、家にいるときはリアルタイムで聞いて、聞き逃したらradikoのタイムフリーで。さらにリアルタイムで聞いたおもしろかったところは、タイムフリーでリピートして聞くほどのヘビーリスナーになりました」 仕事は自宅で、パソコンに向かって行うことがほとんど。そんな“ながら聴取”に、アナウンサーの訓練を受けた赤江の明るい声が心地よかった。 「それでいて、普通のアナウンサーのように聞き役に徹するわけじゃない。だからといって笑わせてやろうという気負いもないんですよね。まじめにしゃべっているのに、どこか気が抜けた赤江さんの語りで、聞いている空間そのものが軽くなる感じも好きでした」 高橋さんにとって、「たまむすび」は「仲のいい中学2年3組のクラス」みたいなもの。 「今感じているロスは、大好きだったそのクラスが組替えでなくなってしまうさみしさに似ています。今回は後番組の『こねくと』に土屋さんが出るので、新しいクラスにも愉快な土屋クンがいる、感じ。新番組がロスを癒やしてくれることを期待しています」(同) もうひとり50代のソフトウェアエンジニアの石原安浩さんの「たまむすび」との出会いはコロナが流行してから。リモートワーク中のランチ時、偶然radikoで出合ったのが始まりだった。 「赤江さんが自宅から電話で出演していて、ディレクターからのファクスを待っているのに届かないと言っていた。と、スタジオから『赤江さんが電話使っているから、今ファクス送れないよ』との声が。爆笑したのを覚えています」 赤江とパートナー陣との会話が心地よく、毎晩寝る前にベッドで聞く。 「魅力ですか? とくに有益な情報があるわけでもなく(笑)。寝落ちするような番組なのに、気がつけば毎日聞かずにはいられなくなり、去年の武道館イベントにも、わざわざ名古屋から夫婦で参加しているんですよね」 番組を例えるとすると、通勤電車の中から毎朝見ている小学校。名前も知らない学校ながら、校庭で遊んでいたり、運動会の練習をしていたり。そんな子どもたちの様子を見るのが楽しみになった。 「今の時代、身の回りには、『ほら、役に立つでしょ?』という情報であふれている。でも、『たまむすび』という番組は、ただ存在しているだけで毎日心に小さなカイロを入れているような感じ。推しを推すのともちょっと違うんですよね」 よく言われるように、聞き終わったら内容をキレイさっぱり忘れるような番組ではあるものの、その存在に大きな意味があったことを、あらためて感じているという。 最初は何かの冗談かと思ったのに、本当だったことを知って驚いたという終了の告知。 「終了ロスを乗り越えるのはなかなか難しい。数年ぐらいは、録音した過去番組や武道館のDVDを見返していると思う」 そうして、いさぎよく消えていく番組たち。週刊朝日も、すぐ行きます。(福光恵)※週刊朝日 2023年4月7日号より抜粋
週刊朝日
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6回連続で勝率8割台、史上最年六冠の藤井聡太 本人は記録にほとんど興味なし
3月19日におこなわれた棋王戦五番勝負第4局で、10連覇中の渡辺明(38)を破り史上最年少で六冠を達成した藤井聡太(20)。史上初の八冠制覇に期待がかかる。AERA 2023年4月3日号の記事を紹介する。 * * * 今年度の藤井はハードスケジュールの中、叡王、棋聖、王位、竜王、王将を順に防衛。さらには棋王を獲得し、保持するタイトルは全部で六つとなった。 「7月以降はかなり、対局が多いときが続いたんですけど。その中で、勝負強く指すことができたのは収穫だったかなと思っています」 「まだまだ実力的には足りないところが多いと思うので。立場にふさわしい将棋が指せるように、よりいっそう頑張らなくてはいけないのかなと思います」(藤井) 対局地の栃木県はイチゴの名産地としても知られる。終局後、藤井が贈られた6粒のイチゴには「祝六冠 1+5=6」と記されていた。六冠は羽生善治九段(52)に続いて史上2人目の偉業だ。羽生の六冠達成は1994年、24歳のとき。藤井は弱冠20歳にして「史上最年少六冠」という記録を作った。 藤井のこれまでのタイトル獲得数は森内俊之九段(十八世名人資格者、52)に並んで12だった。 「そういった実績のある棋士の方の対局を見ると、まだまだ学ぶところが多いのかなというふうにも感じています」(藤井) 棋王獲得で通算13期。佐藤康光九段(永世棋聖資格者、53)に並んで歴代7位タイとなった。 事前に収録され、棋王戦第4局と同日に放映されたNHK杯決勝では、藤井は佐々木勇気七段(A級昇級により八段に昇段、28)を破り、初優勝を達成。史上初めて、銀河戦、日本シリーズ、朝日杯、NHK杯と、早指しのトーナメント4棋戦をすべて制することになった。 要するに藤井は今年度、途中で敗退した棋戦は、挑戦権を争うトーナメントの1回戦で大橋貴洸六段(現七段、30)に敗れた王座戦のみ。ほとんど完璧に近いシーズンだったと表現するのが適切だろう。 ■6回連続で勝率8割台 藤井は2022年度の対局を終え、成績は53勝11敗(勝率8割2分8厘)。将棋界では、年度勝率8割台は、数年に1回見られるかどうかというハイアベレージだ。過去に複数回達成した棋士は羽生(3回)と中原誠十六世名人(2回、75)というレジェンドクラスしかいない。藤井はそれをデビュー以来6回連続でやってのけた。形容すべき言葉が見つからない。 改めて言うまでもないことだが、六冠の時点ですでに偉業だ。しかし藤井の場合、それが通過点のように思われてしまうのが恐ろしい。4月から始まる名人戦七番勝負では、藤井が渡辺に挑戦する。藤井には史上最年少名人、そして羽生以来の七冠がかかっている。 「名人戦ですと持ち時間が(2日制の)9時間ということで、公式戦の中でも一番長い対局になるので、その点も踏まえてしっかりいい将棋が指せるように頑張りたいと思っています」(藤井) 渡辺は04年に初タイトルの竜王位を獲得して以来、これまで無冠になったことがない。しかし藤井に棋聖、王将、棋王を奪われ、残す牙城は名人のみとなった。渡辺にとって、相当厳しい情勢なのは間違いない。 「あれこれ考える時間もなく次が始まりますが、まあその時の最善を尽くすしかないので、また頑張っていきたいと思います」(渡辺のツイッター投稿から) 藤井は保持したタイトルを失うことなく、名人を獲得し、さらには王座も獲得すれば、今秋にも史上初の八冠となる。八冠なんて、夢のようなストーリーであったはずだ。しかし現時点ではもう、現実的に想定しうる段階に入っている。 藤井自身は、そうした記録にほとんど興味がない。一方で観戦者の多くは、そうはいかない。「八冠なるか?」とドキドキしながら、藤井の対局を見守り続けることになりそうだ。(ライター・松本博文) ※AERA 2023年4月3日号より抜粋
AERA
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「オータニ」が必要だった3月 女性支援団体Colaboを「とても楽しそう」に攻撃する男たちに言葉失う
作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、「オータニ」の凄さについて。 * * * 今月、私が一番発した言葉は「オータニ」かもしれない。 圧倒的なあのきらめきはいったい何だろう。BTSを初めて見たときに、「想定を超える未来って存在するんだな」と、その未来感、その希望的存在に衝撃を受けたものだけれど、BTS(7人です)=1オータニ……くらいの単位で、今のオータニは眩しい。オータニの横に並ぶと、あのダルビッシュにすら影が見えてしまう。光って凄いな……と思います。 なにより凄いのは、「日本はおかしい。なぜ連日、トップニュースがWBCなのか?」とメディアへの義憤にかられる女友だちですら、「オータニは好きだけどね」とひとこと言わずにはいられないことだ。ふだん「信用できるオトコなんていない」と、男性への不信を語るフェミ友ですら、恐る恐る「オータニってどう思う?」と聞いてみれば、「いいよね!!!」と顔が明るくなる。もちろんそれは「野球の腕が凄い」ということではなく、「何だか分からないけど、あの人凄い」という称賛である。いったい、これはどういう現象なのだろう。 大谷翔平の凄さとは何なのか……なんてことを考えていたとき、Twitterでトレンドに入っていた言葉に膝を打つような思いになった。 「大谷翔平のただしさと息苦しさ」だ。 思わず声をあげて笑ってしまう。その瞬間にスルスルと理解する。野球に関心などなく、プロ野球は特に苦手で、マッチョな男集団を怖いと感じる女ですら(私です)、オータニへの好意を語らずにはいられない理由について。 そもそも、これはTwitterで、オータニは「高校生みたいでキモい」「ネオテニー(幼形のまま成熟した状態)っぽい」とか、「欠点がない=人間的魅力がない」「無機質だ、男性のメス化だ、中性化だ」など、オータニの光を前にした男たちが「僕はオータニを認めない」というようなことを口にしたためにボコボコにされる様を見た男性ライターの有料noteのタイトルである。 つまり、オータニは一部の男たちにとり「正しく」、それ故に「息苦しい」存在ということのようだ。ライターの意向は他にあるのかもしれないが、Twitterでは思い思いの解釈でバズったのだろう。なかなかの島国的発言、ホモソ(男性中心社会ですね)の日本男子的な正直な感覚に私には見える。そしてそれ故に……オータニの正しさと、その正しさで焼かれている男たちの存在が見えるからこそ、女はオータニに希望と未来を見いだしオータニを語りたがるのかもしれない。 ある種の男性たちは、オータニが「男というだけでは連帯しないタイプの男」であることを繊細に敏感に見抜いているのだ。どこかで目にした記事だが、オータニは男どうしの下ネタに交わろうとせず、女性を性的に嘲笑する仲間をたしなめたことがあるという。そのエピソードが事実かどうかは分からないが、「そういうこと、オータニさんならあるだろうな」と思わせる説得力がオータニにはなぜかある。根拠はないが、なぜか、ある。それが先の男性たちの「オータニが性的な成人男性に思えない」発言につながるのだろう。この場合の「男」とは、間違ったことも、キモいことも、不正義も、男どうしならば……と互いに目をつむり許しあえる、ぬるい男湯で生きられる日本の男ジェンダーのことである。オータニはそのぬるま湯には入ってこない、そもそもそのぬるま湯が嫌なのでは……というのが伝わるからこそ、ある種の男たちはオータニに傷つくのかもしれない。 と、野球に全く関心ないくせに、エラソーにオータニさんを語ってしまってすみません。でも私には今月、オータニが必要だったのだ。 今年に入ってから女性支援団体Colaboへの誹謗中傷が激しさを増している。私も何度か歌舞伎町に通い、この目でColaboを攻撃する男性たちの姿を見てきた。「女性を尊敬してます~」とヘラヘラし自慰行為のフリをする男性、「帰れ!」と抗議する女性たちに「バレンタインだから」とチョコレートを無理やり渡そうとする男性、「公金チューチュー」と楽しそうに罵倒する男性、「ババアか? 気持ち悪いんだよ、ババア」とババアババアを連呼する男性……。デマからはじまったColabo叩きは、東京都が助成金の過払いはなく、返還請求は行わないことを明らかにした今も熾烈化している。都は「安全が確保できない」として、Colaboが新宿区役所前で続けてきたバスカフェの中止を要請した。中止はきっと妨害者たちの成功体験になってしまったことだろう。 私が本当に驚くのは、彼らが「とても楽しそう」なことだ。女性を罵倒し、性的なことを言ってはゲヒヒと笑い、女性が真剣に怒れば怒るほど楽しげに振る舞うことだ。オンライン上に溢れる匿名の下卑た連帯が、そのままリアルに目の前で動く衝撃は、やはり強い。女性たちが少女を支援する現場にわざわざやって来て、女虐めの「悦楽」に浸る男たちを目の前に、凄い世界になったと言葉を失う。苦しいのは、彼らが「特殊な一部の先鋭的な集団」に思えないことでもある。実際に行動に移すのは一部の人たちであるとしても、彼らが街に繰り出すまでの煽りの空気は、十分にもうこの社会にある。陰湿に女性を排除してきた社会がじわじわと育ててきた結果だ。 そんな世界から自分の心を取り戻すために、今月はオータニが必要だったのかもしれない。ミソジニーでホモソーシャルな空気をまとっていない(ように見える)オータニさんの“正しさ”に、ようやく深い呼吸ができた。男どうしの「な?」が通じそうもない男に、ある種の男たちが感じる不安の正体を知ることもできた。そして、そんな男どうしの「な?」の通じない世界の風通しの良さを私は心から願っていて、その象徴にオータニさんがいたのかもしれない。女虐めを悦楽にする男たちの下卑た笑いをオータニの最強の光で燃やしてくれればいいのにな。まじで、オータニさんがいなければ3月を乗り切れなかったかも。ありがとう、オータニ。そして東京都は、Colaboのバスカフェ、再開を認めてください。
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室井佑月「反論記事を読んでみた」
作家・室井佑月さんは、上野千鶴子さんの「文春砲」反論記事を読んだ感想を明かす。 * * * 先週号のこのコラムに、週刊文春のスクープ、「“おひとりさまの教祖”上野千鶴子(74)が入籍していた」というものを取り上げた。その後、上野さんが反論記事を書くといったので、楽しみにしていた。 それは婦人公論4月号。「緊急寄稿 『文春砲』なるものへの反論 15時間の花嫁」。 読んだ感想としては、がっかりの一言だ。フェミニスト村のボスの緊急寄稿というわりに、中途半端なページというのもさもありなん。非常につまらないものだった。 なんでも上野さんはパートナーの介護と看取りのため、「婚姻届を提出した(入籍)といわれたくない」らしい。パートナーの彼曰(いわ)く、上野さんは「親友」なのだそうだ。 本人がそうだというなら、そうなのだろう。しかし、私が期待したものとはまったく違った。 私が期待したものは、 「誰にどういわれようがかまわなかった。私は彼のすべてが欲しかった」 というようなものだったかもしれない。 上野さんほど成功し、お金もあり、誰かのツテも使えそうな人は、少々の面倒を嫌がらなければ、ずっと自分が否定してきた婚姻をしなくてもどうにかなったはずである。 上野さんのパートナーにはその昔、奥様がいた。本当に婚姻したのは、婦人公論に書かれてあった、優等生的なつまらない理由だけだったのか。 愛した男のすべてが欲しいという願望は、上野さんにはなかったのだろうか。 恋人であり、親友であり、現世では母になるのは無理であっても、妻というものが残っていた。私ならなりたいと思っただろう。 そして、上野さんのコラムの最初と最後には、他人のプライバシーを嗅(か)ぎまわるのは卑しい、というようなことが書かれてあったのが印象的だった。最初と最後にわざわざ書くほど、強くいいたかったことに違いない。 こうして上野さんのことを書いている私も、彼女からいわせれば卑しいのか。 私たちはどうも分かり合えないようだ。私が考える卑しさとは、違う。 たとえば、ジャニーズ事務所のジャニーさん問題、海外メディアが報じても、日本では、上野さんがいうところの卑しい『週刊文春』しか扱わない。上野さんや上野さんの子分たちと一緒に、「性的搾取が!」「ジェンダーが!」と始終騒いでいるメディアはだんまりだ。この週刊誌の大元の会社、朝日新聞社はとくにこの話題が好きである。上野さんがカウンターで手記を出した婦人公論も、この手の話が好物だ。なぜ、この件では動かないの? 偉そうに正義風味だけど、正義で動いてないからじゃない? 室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中※週刊朝日 2023年4月7日号
週刊朝日
15時間前
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約束を破った息子からipadを没収した鈴木おさむが、息子に返却条件として課したこととは
放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、物をエサに勉強させることについて。 * * * 東大卒のプロゲーマー・ときどさんと会った時に、子供のころ、勉強した時間だけゲームが出来たと言ってました。1時間勉強すれば1時間ゲーム。5時間勉強すれば5時間ゲーム。 勉強したら〇〇してあげると子供に言うのは賛否両論あるところだとは思いますが。僕は小学6年生の時は成績は普通でした。生徒会長ではありましたが、すごくよいわけでもない。 中学に上がり最初の中間テスト。僕はとてもパソコンが欲しかった。すると母が「中間テストで10位以内に入ったら買ってあげる」と言ったのです。一学年の生徒は200人ほど。 物をぶら下げられて、めちゃくちゃ勉強しました。結果、6位になり、母親にパソコンを買ってもらえました。自分でもびっくりしました。勉強するとそれが結果に繋がるんだなと13歳にして初めて気づけました。 さあ、ここで息子の話です。息子は7歳。春から小学2年生になります。正直、勉強がかなり嫌いです。ゲームばかりしてます。僕らは息子の好きなことをなるべくやらせてあげたいと思ってはいますが、こんなに勉強嫌いになるなんてと。 そんな息子が先日、ちょっとした事件を起こしました。大好きなipadを持ち、友達の家に行きました。夜帰ってくると、妻がかなり怒ってます。友達の家に行き、笑福はipadで課金してしまったのです。以前、勝手に課金したことがあり、その時にかなり強く注意したのですが・・・。 今回は友達と一緒で気が緩んだのか、課金してしまいました。まあまあの金額を。妻はかなり息子に怒ってます。僕も約束を破った息子に腹が立ちました。息子は色々理由を言っていますが、言い訳にすぎません。僕が課金にロックをかけなかったのも大きなミスです。だけど、もうしないだろうと思っていたのがダメでした。 息子に怒りました。もうipad禁止にすることに決めました。が、怒ってる途中に、この怒りは何も生まないなと思い始めました。息子が反省していることを次につなげたいなと。 そこで、思いつたことを息子に言いました。「ipadは没収です。そのかわり、2年生から習う掛け算九九を全部覚えたらipadを返します」と。 すると、息子は「えーーーーー!??」と驚いた顔をしました。 だけど、ipadが永遠に禁止になるわけではないことに少し安心していました。翌日から、息子はとんでもない勢いで掛け算を勉強しています。その集中力を見て「やれるんかーーーい」と思わず突っ込みそうになりますが。大好きなものをなんとか取り返してやろうという思いが、掛け算九九に繋がっていく。 僕は中学1年の時にパソコンをかけて猛勉強したときに勉強するコツを覚えられた。 今回、息子が、今回の事件をきっかけに勉強するコツを覚えてくれて、結果自信になってくれたらいいなと思っています。 物を賭けての勉強。色々と意見があるところだとは思いますが、僕は今のところ、息子のやる気を見て、「マイナスの事件」をプラスに変えられることになったらいいなと思っています。 ■鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)、長編小説『僕の種がない』(幻冬舎)が好評発売中。漫画原作も多数で、ラブホラー漫画「お化けと風鈴」は、毎週金曜更新で自身のインスタグラムで公開、またLINE漫画でも連載中。「インフル怨サー。 ~顔を焼かれた私が復讐を誓った日~」は各種主要電子書店で販売中。コミック「ティラノ部長」(マガジンマウス)が発売中。
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5時間前
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俳優・吉岡秀隆のリアル過ぎる演技に警察幹部が「困った映画だ」 警察裏金問題を告発した元巡査部長とは
「組織のためなら何してもいいんか?」制服を着た巡査部長役の吉岡秀隆さんが、同じ警察官にそう問いかける。3月10日に封切られた映画「Winny」の一場面。吉岡さんの役は、愛媛県警の巡査部長時代の2005年に、県警の裏金問題を実名で告発した仙波敏郎さん(75)だ。巨大な組織を敵に回してでも仙波さんが貫こうとしたこととは何だったのか。 「18年前に警察の裏金問題を告発したことを、大手の配給会社の映画の中で取り上げてもらい、本当に感無量です」(仙波さん) 映画の主役は、東出昌大さんが演じる天才プログラマーの金子勇さん(2013年に42歳で死去)だ。2002年、当時、東京大学大学院助手だった金子さんは、インターネットで映画や音楽などの情報を直接やりとりできるファイル交換ソフト「Winny」を開発し、その試用版をネットの掲示板「2ちゃんねる」に公開した。 すると、大量の映画や音楽などが違法にアップロードされ、事件化されることも多かった。2004年、金子さんは著作権法違反の幇助(ほうじょ)の容疑で京都府警に逮捕されてしまう。その後、金子さんは弁護団と裁判を戦い、2011年に無罪を勝ち取る。映画はその7年間の壮絶なストーリーを描いている。 そのなかで、仙波さんの警察裏金問題の告発の話が出てくる。接点はWinnyだった。Winnyは情報漏洩系ウイルスに感染しやすく、個人や企業、官公庁の情報などが次々とインターネット上に流出した。警察でも捜査情報が漏洩するトラブルが相次いだ。 仙波さんがこう説明する。 「裏金づくりの手口は、白紙の領収書に、捜査協力をしてもらったとして一般市民の架空の名前や金額、日付などを書かせます。私はニセ領収書を書きませんでしたから、当然のことながら実物を持っていなかった。そこで『仙波の(告発の)話は本当なのか?』となった。しかしその後、愛媛県警の刑事がWinnyに接続した結果、パソコンのデータが流出したんです。その中にニセ領収書が含まれていたので愛媛県警が言い訳できなくなった」 映画化の話が仙波さんに持ち込まれたのは、2021年3月のことだった。 それまでも何度か、仙波さんの裏金告発について映画化するという話は持ち上がっていた。しかし、なかなか実現にはいたらなかった。 「今回、映画会社からオファーがきて、いろいろ聞きました。Winnyの話が大半ですが、裏金告発を一部でも取り込んでくれるというのはありがたいことです。当初、台本では裏金告発の警官はシラトリリョウという架空の人物だったんです。私からすれば『なんで実名出さんのか?』となりますので、そう監督に申し入れると『本当に実名でいいのですか』とびっくりされていました。その時はすでに撮影に入っていたけど、台本を書き換えたそうです」 実名であることも含め、仙波さんの裏金告発の内容はリアルに表現されている。 「ええか、ニセ領収書を書いたら私文書偽造で3カ月以上5年以下の罪になる。それを元に公文書を偽造すると1年以上10年以下の罪や。詐欺や業務上横領は10年以下。それだけの罪を犯したもんが千円のもんを万引きした人に調書をとれんのか」 仙波さん役の吉岡さんが、若い警官を悟す場面だ。 仙波さんは2008年1月20日に実名で記者会見することを決める。するとその数日前から、人や車に尾行されていることに気づく。それが愛媛県警の関係者や車両と見られ、仙波さんが苦悩、葛藤する様子も描かれている。 仙波さんが意を決して臨んだ記者会見で、 「仙波敏郎巡査部長55歳、38年間の警察生活の中で見たこと聞いたこと、そして自分の体験に基づく真実を話します。捜査費の支払いはすべて架空、捜査協力者に支払われた事実はありません。一つだけ言わせてください。人一倍強い正義感を持って警察官になった若者たちが今日もどこかで裏金づくりに加担させられている」 というセリフがある。このシーンについて仙波さんは、 「本気で映画を作っているんだなと思いましたよ。記者会見した時と一言一句同じ。吉岡さんは、私の著書なども徹底的に読み込んで演じてくださったそうで感動しました」 と振り返る。 映画の撮影現場にも1度だけ訪れた。 「そのとき、私も一瞬ですがエキストラとして出演しました。裁判で傍聴しているシーンがあるのですが、スーツにネクタイ姿で映っています。とてもいい経験でした」 吉岡さんはその日、別の撮影があって不在だったが、東出さんらとは話す機会があったという。 仙波さんは一人でも多くの人にこの映画のことを知ってほしいと、愛媛県警の記者クラブを訪れたという。 「映画のチラシを記者に渡しにいったのです。配り終えて記者と雑談していると、県警の広報担当者が息せき切ってやってきて、『仙波さんちょっと』『ここはダメなので』と言いました。裏金告発からは18年も経っているのに、という感じでしたね」 映画の撮影が終わってから公開されるまで1年ほどあったといい、仙波さんは「警察の圧力」も危惧していたという。 ある警察幹部は取材に、 「困った映画だな。また警察の裏金問題が蒸し返されるきっかけになりかねないよ。吉岡さんがうまく演じているからな」 と話した。 仙波さんは、 「無事、上映にこぎつけられよかった。吉岡さんや制作にかかわった皆さんに感謝したい。ぜひ映画館で見てほしい」 と話している。 (AERA dot.編集部 今西憲之)
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浅村&田中将はWBC出場志願も叶わず…「侍ジャパン落選」の理由
WBCに向け、侍ジャパンの選考は大きな話題になった。野手では山川穂高が内定。2019年秋のプレミア12でアキレス腱に不安を抱えていたことから出場を断念すると、日の丸から遠ざかっていた。昨季は本塁打、打点の2冠に輝くなど長距離砲としての実力は疑う余地がない。本大会での活躍が楽しみだ。 投手でサプライズ選出は、オリックスの宇田川優希だ。昨年7月下旬に育成枠から支配下登録されると、セットアッパーとして奮闘。最速159キロの直球に落差の鋭いフォークで三振の山を築いた。19試合登板で2勝1敗、防御率0.81と抜群の安定感を誇り、CS、日本シリーズでも快投を続け、26年ぶり日本一の原動力となった。 「出場辞退」を決断した選手たちも話題を呼んだ。柳田悠岐、今宮健太(ソフトバンク)、坂本勇人(巨人)、森友哉(オリックス)はコンディションに不安があったり、シーズンに集中したいという理由で代表入りを見送った。 スポーツ紙デスクは、「柳田、坂本は今年35歳を迎えるシーズンで、もう若くない。昨年はチームとしても個人としても思うような結果を残せず、悔しい思いをしている。2人は侍ジャパンの常連でしたが、遊撃は源田壮亮(西武)、外野も選手がそろっているので、彼らに託せるという思いもあったのでは。森も西武からFAで新天地のオリックスに移籍し、投手の特徴を把握するなど、やらなければいけないことがたくさんある。WBC出場に迷いはあったと思いますが、リーグ3連覇に向けて中心選手として期待が大きい。この決断は致し方ないと思います」と理解を示す。 一方で、侍ジャパン入りを熱望したが落選した選手たちがいる。楽天の田中将大、浅村栄斗だ。田中の実績は語るまでもないだろう。日米通算190勝をマークし、WBC、五輪と共に2度出場。ヤンキースでは6年連続2桁勝利をマークするなどメジャーの強打者を抑える術を熟知している。昨年10月には自身のツイッターで、「来年開催されるWBCについて自分の気持ちをお話する機会がなかったので、ここで言わせていただきます。良い選手が沢山居ますし、なかなか簡単なことではないのは重々承知の上ですが、出場したいです!この気持ちを持ってオフシーズンのトレーニングにも取り組んでいきます」と出場を志願。昨オフの契約更改の席でも侍ジャパンで先発にこだわらず、どの役割でも全うすることを望んでいたが、朗報は届かなかった。 球界を代表する強打者として長年活躍している浅村も、代表から漏れた。21年の東京五輪では金メダル獲得に大きく貢献し、日の丸への思いは強い。2度目のFA権を取得し、去就が注目された22年オフに4年契約で楽天に残留を発表。WBC出場に向けても意欲を示していた。 侍ジャパンを取材するスポーツ紙記者は、「田中、浅村はメンバー入りしても不思議ではなかったし、栗山英樹監督は迷ったと思います。田中の場合は全盛期に比べて球速が落ちたのがネックになったと思います。投球術はさすがですが、不慣れな救援で投げさせるのはリスクがある。先発陣は枠が埋まっていますしね。浅村は牧秀悟(DeNA)とタイプが重なる。勝負強さに定評がある中距離砲で、浅村と同様に牧も本職の二塁だけでなく一塁を守れる。二塁は激戦区で山田哲人(ヤクルト)、菊池涼介(広島)もいる。それぞれ持ち味は違いますが、栗山監督は国際舞台に強い山田をチョイスした。こればかりは仕方ないですね」と振り返る。 田中、浅村が日の丸をつけるにふさわしい実力者であることは間違いない。テレビ関係者は「実績を残している2人が代表入りを熱望してメディアに発信した姿に敬意を表したい。落選しましたが、彼らの侍ジャパンへの思いは野球ファンに十分に伝わっていると思います」と評価する。 2人の目標は、楽天の10年ぶりのリーグ優勝に切り替わっているだろう。投打の両輪として活躍を期待したい。(今川秀悟)
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ryuchell 息子とお出かけ中に「だいぶ成長したな」と感じた出来事とは
現在4歳になる男の子を育てるpeco(ぺこ)さんとryuchell(りゅうちぇる)さん。昨年8月、婚姻関係を解消しましたが、これまで通り3人で「新しい家族の形」を築いていくことを公表しました。本連載では、お二人の日々の育児や家庭について交互に語ってもらっています。今回はryuchellさんに、最近、息子と過ごした出来事について話を聞きました。 * * * 少し前ですが、息子とサンリオピューロランドに行ってきました。息子はポムポムプリンが好きで、私もキティちゃんが好きなんです。 とても盛り上がったのは、歌舞伎とキティちゃんがコラボしたミュージカル(KAWAII KABUKI ~ハローキティ一座の桃太郎~)です。息子はかわいいけど、格好いいというのが好きなんですね。いいところで観たかったので、早く席を取りに行って、前の席で観ることができました。 実は、このミュージカルはもうすでに4、5回くらい見ています(笑) パフォーマンスがとてもすばらしいんです。ダンサーは格好よくて、華やか。キティちゃんやポムポムプリンたちが出てきて、歌舞伎のメイクや着物の姿ですが、かわいらしさもあります。それで鬼退治をするんです。 その他にも、キティちゃんが作ってくれるポップコーンを食べたり、アトラクションに乗ったり、かわいいランチを食べたりと、大満足でした。 サンリオには行く度に、お土産を買っています。大きなお人形とかは家にあるので、「今回はちっちゃいのだよ」と約束したら、ポムポムプリンのついたキーホルダーを持ってきました。とてもかわいかったです。 一緒にお出かけして、改めて息子もだいぶ成長したなと感じることがいくつもありました。 サンリオには電車で行きましたが、最近はどこにいくにも、「抱っこして」とは言わなくなりました。手はつないで一緒に歩いています。抱っこしなくなった分、外出がとても楽になりました。 電車でサンリオに行くと、次第に窓から見える風景が自然いっぱいな感じに変わるんですよね。「お山が見えてきた!」とか窓から見える外の風景について共有して楽しめる年齢になってきました。 私は電車には普段あまり乗らないので、乗り換えを間違えてしまって。それで乗り換えたら、また間違って……。そしたら、息子も優しくて「大丈夫だよー」ってフォローしてくれました。イヤイヤ期もありましたが、頼れるお兄ちゃんになっているんだなと感じました。 最近は、息子と一緒にカラオケにも行きました。息子はカラオケで歌うのも大好きです。 歌うのは、NHKの「おかあさんといっしょ」に出てくるような子どもの曲です。息子が選曲して歌っています。私が好きな曲とかは歌わないです。それはもうちょっと大きくなってからかなと思っています。 カラオケは子どもが喜ぶようなものが多くあって、いいですね。 デンモク(選曲・予約する通信機器)の機能に、お絵かきできるものがあって、息子はそこで恐竜とか、キティちゃんの絵を描いていました。3時くらいにいったので、おやつにスイーツも食べました。キッズルームもあるカラオケ店で、滑り台とかつみ木で遊びました。2時間くらい満喫しました。 息子は肩車が大好きなので、家でよく肩車をして、歩き回っています。身長も大きくなって、体重も重くなってきているので、最近は重くなってきたなぁと思います。まだしばらくはできると思いますが、そのうち難しくなるんですね。できるときまで肩車したいと思います。 私のSNSでは紹介できていませんが、息子との時間も大切に過ごしています。一緒にいると予想外のハプニングも起こりますが、「あぁ、どうしよう」と思うよりも、「なんくるないさー」(なんとかなるさ)の精神で子育てしています。 (構成/AERA dot.編集部・吉崎洋夫)
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大谷翔平が韓国でも大人気 子供たちも「投打の二刀流」がブームに
侍ジャパンが14年ぶりの頂点に立った今回のWBCは野球ファンだけでなく、普段メジャーやプロ野球を見ない視聴者も夢中になった。その主役は大谷翔平だ。投打で大活躍し、「3番・指名打者」でスタメン出場した決勝・米国戦では1点リードの9回に守護神でマウンドへ。エンゼルスの同僚でメジャー球界を代表する強打者のマイク・トラウトを空振り三振に仕留め、喜びを爆発させた。 侍ジャパンを取材するスポーツ紙記者は、「ドラマや漫画でもこんな劇的な展開は描けない。完全に大谷劇場でしたね。決勝ラウンドは米国のマイアミで開催されたので完全アウェーの空気でしたが、大谷がマウンドに上がった時の盛り上がりは凄かった。試合後には侍ジャパンのメンバーたちに、大観衆がスタンディングオベーションで拍手を送っていました。感動的な光景でしたね」と振り返る。 大谷の活躍はお隣の韓国でも大きな反響を呼んだ。08年の北京五輪で金メダル、09年のWBCで準優勝と国際大会で強さを見せ、「日本の好敵手」として知られていた韓国だが、近年は精彩を欠いている。13、17年のWBCでいずれも1次ラウンド敗退。21年の東京五輪も準決勝で日本に敗れると、3位決定戦でドミニカ共和国に敗れてメダルを逃した。 今大会は韓国系米国人のトミー・エドマン(カージナルス)、キム・ハソン(パドレス)とメジャーでプレーする二遊間コンビを招集するなど、復活に向けて闘志を感じたが、課題の投手陣が機能しなかった。1次ラウンドの初戦・豪州戦で7-8と敗れると、2戦目の日本戦は3回に先発のダルビッシュ有(パドレス)から3点を先制したが、直後に4点を奪われて逆転を許した。その後は救援陣が打ち込まれて一方的な展開に。4-13と大敗を喫して2連敗。3大会連続で1次ラウンド敗退となった。 韓国国内で、「弱すぎる」、「情けない」などSNS上で批判の声が多く上がる一方で、国境を越えて心をつかんだのが、大谷だった。メジャーの舞台で、投打の二刀流で異次元のパフォーマンスを続けていたため以前から注目度は高かったが、今回のWBCで活躍ぶりを韓国メディアが連日大きく取り上げた。規格外のプレーだけでなく、甘いマスク、誠実で謙虚な姿勢も好感度が高まった理由だろう。決勝・米国戦で頂点に立った試合後のインタビューで、「日本だけじゃなく、韓国も台湾も中国も、またその他の国も、もっともっと野球を大好きになってもらえるように、その一歩として優勝できたことが良かったなと思うし、そうなってくれることを願っています」と答えたことも大きな反響を呼んだ。 韓国に駐在する一般紙記者は「大谷の人気は韓国でも凄い。ナショナルチームが国際試合で結果を残していないことも影響して、野球人口の減少が危惧されていますが、大谷を目指して投手と野手の二刀流でプレーを熱望する子供たちは増えている。同じアジア人として、あれだけ凄い活躍を見せている姿は大きな励みになっていると思います」 大谷は勝利への執着心を前面に出す一方で、野球を楽しむ姿勢を常に忘れない。韓国戦でも二塁の塁上でキム・ハソンと談笑する光景が見られた。野球で見せる高水準のパフォーマンスだけでなく、立ち振る舞いや野球に向き合う姿勢が世界の野球ファンに愛される秘訣だ。 「打倒・日本」を掲げた韓国代表は、大谷を筆頭に個々の選手の能力、チームの組織力で侍ジャパンと大きな差を感じただろう。苦い敗戦を糧に、もう一度はい上がれるか。大谷を目指した子供たちが韓国代表として、侍ジャパンに立ちはだかる日が来るかもしれない。(今川秀悟)
週刊朝日
4時間前
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鈴木おさむの小学1年の息子が、ゲームの有料ダウンロードを正当化するために話した内容とは
放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、息子の成長について。 * * * 息子・笑福は現在、小学1年の7歳。日々、色々なことを覚えていきます。最近は、自分のことを「正当化」することを覚えました。 息子はゲームが大好き。僕もまあまあゲームが好きです。親子ともにゲームが好きだと、一緒のゲームにハマった時に、7歳と50歳が43歳の年齢差を超えて同じエンタメで共通の興奮と感動を同時に経験出来るのがとても良い。 最近だと「ONE PIECE ODYSSEY」というプレイステーションのONE PIECEのゲームに親子ともにハマっています。 息子はユーチューブでゲームの攻略動画を見て僕に教えてくれる。このゲームをはじめてから父と息子の共通会話もかなり増えた。本当にありがたいんですよね。 で、このONE PIECE ODYSSEYのちょい前から息子は「スプラトゥーン3」という任天堂スイッチのゲームにハマっております。 元々は僕もこのゲームに興味があったのですが、いざやってみると、僕的にはゲーム酔いするんですよね。 なので、僕は離脱。息子に任せました。息子はスプラトゥーン3にがっつりハマりました。 かなりの期間やりまくっていたのですが、最近になり、有料配信で追加のゲーム的なものが出たのです。 息子は僕にそれをダウンロードしてくれと言いました。でも、最後までやり切ってはないので、僕は「ダメだよ。最後までやり切ってないんだから」と言いました。 僕はそのあと、お風呂に入っていたのですが、すると、息子がドカドカ走って来て、風呂のドアを開けます。なんか興奮している様子。 僕がダウンロードはしないと言ったことに対して納得してないのでしょう。そして、自分のことを正当化して、こう言ったのです。「あのさ、もともとスプラ3を買ったのは、とうと(僕の事)じゃん。それをさ、俺がやってあげたわけじゃん。全部俺に任せっきりじゃん。俺一人でやってんじゃん! それ、おかしいじゃん」と僕にぶつけます。つまりは「だからダウンロードしろ」と言っているのでしょう。 普通に「買ってくれ」では無理だと思い、自分がゲームをやってることを正当化し、僕を論破しようとしたんです。 が、そのあとに僕が「わかりました。一人でやらせてすいませんでした。だとしたら、今すぐスプラ3をやめてもらっていいですよ。今までありがとうございました」と言ったら、息子は「そういうこと言ってんじゃないじゃん」と諦めて撤退。 息子がションボリしながら帰る姿を見て、この行動には驚きましたし、こんなこと言うようになったんだと嬉しかったんです。 その数日後。息子は勉強が嫌いです。めちゃくちゃ嫌いです。妻が「学校行くの、嫌なの?」と聞いたら、息子は「学校ってさ、友達と遊ぶところだと思ってたらさ、勉強があるなんて聞いてないよー」と。 そうやって自分を正当化する息子。 この息子の成長を見ていて、ふと思う。自分もいつからかこうやって自分を正当化したり、言い訳したりすることを覚えて大人になっていったんだよなと。 人の成長って色々な色があるんだなと思う。おもしろい。 ■鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)、長編小説『僕の種がない』(幻冬舎)が好評発売中。漫画原作も多数で、ラブホラー漫画「お化けと風鈴」は、毎週金曜更新で自身のインスタグラムで公開、またLINE漫画でも連載中。「インフル怨サー。 ~顔を焼かれた私が復讐を誓った日~」は各種主要電子書店で販売中。コミック「ティラノ部長」(マガジンマウス)が発売中。作・演出を手がける、今田耕司×鈴木おさむの第8弾舞台『正偽の芸能プロダクション』が3/15(水
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ミッツ・マングローブ「WBCを直視できないイタい女装の話」
ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は「WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)」について。 * * * 「自分は赤信号に引っかかりがちだ」という人、少なくないと思います。しかしあれは赤信号の記憶ばかりが刻まれ、青信号ですんなり行けた時のことはほとんど憶えていないからだそうです。私も自分のことを「信号運の悪い人間」、さらには「タクシー運のない人間(道を知らないドライバーに当たりがち)」だと思っています。要するに成功体験を蓄積できないネガティブ思考だということです。 もっと言うと、私には「好調な人の足を引っ張る疫病神」という自覚があります。昔から私が気合を入れてテレビを観ていると、巨人が負け、千代の富士や貴乃花が負け、伊藤みどりが転倒し、珍しくサッカーを観た日には「ドーハの悲劇」が起こりました。 目下、悩ましいのは、愛する大谷翔平さんを直視できないことです。記録のかかった大リーグの試合なども、腰を据えて観る時に限って打てない、もしくは打たれる。なのでテレビを点けても音を消し、「ながら観」をするようにしています。大谷翔平のホームランや奪三振は、私が目を離した隙に生まれる。本当です。私はテレビの生中継で、彼のホームランを観た記憶がありません。 連日大きな盛り上がりを見せているWBCですが、せっかく国内でプレーをしている大谷選手の姿を、テレビにかぶりついて観られないのは歯痒いものです。しかし私が「ながら観」をしているお陰で、現在のところ日本代表チームは順調に勝ち続けています。 先日の「日本対韓国戦」も、私は大阪のナジャ・グランディーバさんがやっているラジオの生放送を聴きながら、テレビの試合中継をチラチラ観ていました。すると番組中にナジャさんが「ダルビッシュさん、絶対に今日は勝てます。ダルビッシュ頑張れ!」と叫んだのです。まさにその直後、ダルビッシュ投手は3点を取られ降板しました。もはや女装は、スポーツを観戦したり応援したりしてはいけない気がします。 私もナジャさんも大谷翔平さんが大好きで仕方のない日々をずっと送っており、毎晩のように「大谷ベスト・ショット・オブ・ザ・デー」の画像を送り合ってから寝るのが私たちのルーティンです。 例えば、好きなアイドルと握手したら1週間手を洗わないとか、憧れの人から貰ったハンカチを洗わずに保管しておく的なファン心理が、昔から理解できませんでした。なおかつ大谷を現地で応援するのに「大谷のユニフォーム」を着ていく心理もよく分かりません。私にとってのアイドルとは、「明日になったら見られない今、今日、今夜の姿」を目に焼き付けさせてくれさえすればそれでよい存在でした。それがこの間、生まれて初めての感情に遭遇してしまったのです。「大谷翔平が着ているTシャツになりたい」。 よもや自分がこんな境地に辿り着く日が来るなんて。試合は二度と観ない。貴方のお邪魔はしないから、あの上半身を包み擦れるTシャツになりたい。ちなみにヌートバー選手の「ペッパーミル」の手つきは、どう見ても卑猥です。子供たちがこぞってやるようなジェスチャーじゃないと思いながら見ています。 ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する※週刊朝日 2023年3月31日号
週刊朝日
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エマニュエル・トッドが考えるネット「監視社会」の真の目的と、長期化するウクライナ戦争を左右する「経済問題」
家族制度や識字率、出生率に基づき、現代政治や社会を分析し、「ソ連崩壊」から「米国の金融危機」などを予言した、フランスの歴史家エマニュエル・トッド。パンデミックとウクライナ戦争で注目を集めた“デジタル技術”により、ある群の国家が勝利を収めていると語ります。しかし長期化するウクライナ戦争では、他方で、このようなデジタル技術はそれほど価値があるわけではないとも言います。その真意を、最新刊『2035年の世界地図』から一部を抜粋・再編して大公開します。 * * *■ネットによる“監視社会”がもたらしたのは大衆支配ではない ――あなたは、パンデミックはデジタル技術を使った監視社会への道を開いたと思いますか。 この質問は大変難しい。答えにためらってしまいます。 確かに、我々の社会は「監視社会」ではあります。ただ、私たちが問題にしているのが誰についてなのか定かでありません。「誰が観察されていますか?」「ソーシャルメディアなどで監視されているのは誰ですか?」ここから考え始めるべきです。 たくさんの偏執症的な文言や動画が出回っています。いかに私たち全員が国家などによって観察され、監視されているかを伝えています。私の印象では、ほとんどの人は――私もその中に含まれると思いますが――まったく重要ではないので、監視する必要など、さらさらありません。 つまり、ここには、いわば信じがたい自己陶酔的な要素があります。「国家が全員を観察し、監視したい」という考えです。国家にとってほとんどの人は全く重要ではありません。 しかし、あるカテゴリーの人たちは重要です。監視したり観察したりする値打ちのある人たちです。それがエリートです。全世界規模の権力ゲームの中にいるエリートです。 私は最近、ある歴史的な問題を理解し、説明したいと考えています。それは、「なぜヨーロッパのエリートがますます米国に従属的になっているのか」ということです。 なぜ英国とオーストラリアは、米国の衛星国化がますます進行しているのでしょうか。銀行や金融、大学などのエリートにおける、インターネットによるコミュニケーションや監視が大変重要な役割を果たしているのは間違いありません。 インターネットは、英語圏を作り出しました。その中で、米国から独立した考えを持つ英国人であること、または豪州人であることはだんだん非常に難しくなっています。なぜなら、同じ言語を使う者どうしであれば、インターネットはコミュニケーションを容易にするからです。 あなたは日本人で、私はフランス人であるにもかかわらず、私たちは英語を使っています。しかし、私生活では自国語を使っている。しかし、あなたが英国人や豪州人であるなら、話は違うわけです。 インターネットは、英国とオーストラリアに対して米国の力をとてつもなく増大させたと思います。 これは、エリートのレベルの話です。インターネットを使って送金すると、非常に簡単に送金できたように感じますが、個人の情報が丸見えになる可能性があります。丸見えになっている相手というのは、誰に対してでも、というわけではありません。米国の情報機関に対して、なのです。ヨーロッパのエリートは現在、米国に対して丸裸になりうる存在なのだと思います。 これが問題だと思っているのです。現在起こっているのは、大衆への支配ではなく、エリートへの支配です。これら二つはまったく違うものです。いわば「世界的な寡頭制システム」の中ではとくにそうなります。だから私は、グローバルエリート内での相互作用と支配に、より関心があります。その中心には、米国がいます。 ■長期化するウクライナ戦局を左右するもの ――ウクライナ危機に関しては、ロシア軍とNATOまたはウクライナ軍によるサイバー戦の側面もありますが、どのように感じておられますか。 これらは「新しい戦争技術」です。歴史のあらゆる段階で新しい戦争技術が生み出されてきました。 私は専門家ではありませんが、すでにある種の新しいバランスに達していると感じています。ウクライナ戦争について興味深いのは、洗練されたテクノロジーの重要性ではなく、それどころか逆にいわばテクノロジーが後退しているということです。 われわれが気づきつつあるのは、本当の戦争をする場合には、問題はもはや最も洗練された武器を持つことではないということです。複雑なものでなくても、多くの武器を持つことの方が重要なのです。 私にとって、ウクライナでこれから何が起こるかに関して問いたいことは、サイバー戦に関して米国またはロシアのどちらが有能か、ということではありません。 両国はかなり互角だと思います。むしろ重要なのは、米国またはロシアのどちらが多くロケット、砲弾などを供給できるか、ということです。これらは長期戦に必要なものです。この戦争は、おそらく4、5年ほど続くからです。今、私たちは直接参戦していませんが、ウクライナとロシアの戦いは続きます。ウクライナもロシアも戦争を止めないことは明らかです。 そこで、もっと基本的な事柄に戻るわけです。従来型の破壊手段をより多く生産する工業システムの能力です。同時に、本当の戦争はロシアと米国の間で行われていることも明らかです。こちらは冷戦です。 ウクライナ侵攻が彼らの「冷戦」の延長として始まったことを思い出しましょう。プーチンが開戦の前に行った演説を思い出してみましょう。 みなさんはプーチンがウクライナへの宣戦布告を拒否したことを忘れているのではないでしょうか。彼は、「特別軍事作戦」について話しただけでした。しかし、彼が欧米、特に米国に宣戦布告したことは明らかでした。ロシアが望んでいるのは、米国に屈辱を与えることであり、単にウクライナの領土をもう少し奪うことではありません。 私は偉大な戦士ではありませんし、戦争は嫌いです。戦争について話すのはほとんど苦痛です。ウクライナで起こっているのは恐ろしいことです。戦争です。人が殺され、民間人も殺されています。しかし、まさにこの瞬間、戦争は次の段階に進みつつあると思います。 次の段階とは、経済的なものです。つまりエネルギー問題がヨーロッパ経済に与える影響が戦争の行方に重要な意味を持つでしょう。繰り返しになりますが、これは、高度な兵器とは程遠い話です。単純なエネルギーをめぐる問題が与える影響が大きくなっていくはずです。 エマニュエル・トッド歴史家、文化人類学者、人口学者。1951年フランス生まれ。家族制度や識字率、出生率に基づき現代政治や社会を分析し、ソ連崩壊、米国の金融危機、アラブの春、英国EU離脱などを予言。主な著書に『グローバリズム以後』(朝日新聞出版)、『帝国以後』『経済幻想』(藤原書店)、『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』『第三次世界大戦はもう始まっている』(文藝春秋)など。
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羽生結弦「希望」のアイスショー 「自分の幸せを削ってでも、全てを背負って進んでいく」
「羽生結弦 notte stellata」が3月10~12日、東日本大震災から12年に合わせて開催された。羽生さんが地元・宮城で伝えたのは「希望」だった。AERA 2023年4月3日号の記事を紹介する。 * * * 満天の星が氷上と大画面に映し出され、ショーのタイトルでもある「notte(ノッテ)stellata(ステラータ)(星降る夜)」の音色が響く。羽生結弦さん(28)のソロからスタートするという豪華演出に、歓声が湧き起こった。 「今回は『希望』というテーマが一つ大きなもの。オープニングで、スクリーンに3.11の頃の星空を出していただいて『星空から出てきた希望とともに今まで滑ってきたんだ』ということを感じながら滑らせていただきました」 自身も被災した2011年3月11日の、停電した仙台の夜空に広がった満天の星。羽生さんがその時に感じた希望がショーのコンセプトだ。総合演出のデイビッド・ウィルソン氏と、震災への複雑な思いを希望という前向きなテーマとしてどう発信していくか綿密に打ち合わせた。 「オープニングで僕が演じたあと、星が降ってくるような形で流れ星のように今回のキャストのスケーターさんたちを見せたい、とデイビッドさんと話しました。僕の『notte stellata』と、その後に続くオープニングが一つのプログラムとして見える感覚になっています」 ■内村航平さんとコラボ 共に演じるのは縁ある8人のゲストスケーターだ。仙台生まれの本郷理華さん(26)、大学時代に仙台を練習拠点とした鈴木明子さん(37)は鎮魂の思いを込めた。18年平昌五輪に羽生さんと共に出場した宮原知子さん(25)は耽美(たんび)な滑り。米国のジェイソン・ブラウンさん(28)は世界選手権(22~26日)直前にもかかわらず友情出演し、SNSでコメントした。 「ゆづ、このとくべつなショーで滑る機会を与えてくれてありがとう。あなたの心と闘志が私を奮い立たせます」 そして「希望」のテーマを強く発信した新しい取り組みがあった。それは体操界のレジェンド内村航平さん(34)とのコラボレーションだ。五輪を連覇したカリスマ同士の共演である。 「普通のアイスショーではないことをしたいという企画のなかで、内村さんとのコラボの話が出ました」 第1幕の最後、金の刺繍(ししゅう)が胸元にほどこされた黒い衣装で2人は登場した。内村さんが円馬で旋回を始めると、羽生さんは同時にコンビネーションスピン。回転が見事にシンクロし、会場からどよめきが起きた。 ■「試合感もありました」 羽生さんは一気に加速してジャンプコースに入っていく。内村さんも助走を始めた。羽生さんは4回転トーループを、内村さんは伸身の2回転ひねりを決めた。羽生さんはこう語る。 「なんか試合感もありました。僕自身は4回転を跳んで、内村さんも本気の技を繰り出してくださって。床とスケートリンクという場所は違うんですが、エネルギーが増幅して、支え合って、ぶつかって、みたいないろいろな力の掛け合わせみたいなものが見えました」 昨夏のプロ転向の会見で「競技会としての緊張感を味わってもらえるようなことをしたい」と話していたとおりだった。 お互いの刺激も大きかった。内村さんは、羽生さんの集中力に接した。 「本番前、2メートルくらいの距離感で、五輪や世界選手権の試合前の羽生くんが集中している、あの感じを生で見られて、『本当に全力なんだな』って。誰に対しても全力で、自分の思いをしっかりぶつけられる人間だなと感じました」 羽生さんも、内村さんに対して感じるものがあった。 「同じオーラを持っている人だな、とすごく思いました。競技とか技とか、そういう枠を超えて人を引きつけるカリスマ性的なもの。単純な言葉にすると、かっこいいなって思いました」 ■希望となりますように 3月11日をまたぐ3日間で開催されたこのショーにとって、もっとも深い意味を持つ場面がフィナーレだった。初日はMISIAの「希望のうた」、GReeeeNの「道」のあと、羽生さんはマイクを握った。 「もうすぐ、あれから12年という時が経とうとしています。これからの人生でも、つらいこと、幸せなこと、苦しいこと、悲しいこと、寂しくなること、いろいろなことがあると思います。今日という日が、僕らの星みたいに輝いてくれたプログラムたちが、皆さんにとって少しでも希望となりますように」 震災当日の11日は様子が違った。演技中、羽生さんは幾度も氷を手で触れ、最後のあいさつでは声を詰まらせた。会場であるセキスイハイムスーパーアリーナは、震災時に遺体を安置する場所として使われていたのだ。 「ここは宮城県民、仙台市民、そして全ての人々にとって本当に特別な場所です。ここに氷を張って、3月11日という日に僕が演技をしてしまってよいのだろうか、という戸惑いはすごくありました。ただ今日、ちょっとでも希望や優しさを感じる時間ができたのではないか、僕が生きて今日という日をこの会場で迎えることができたのは少しでも意味があったのではないか、と自分を肯定できます」 同日、会場に隣接して置かれた献花台は黙祷(もくとう)を捧げる人であふれた。この日にこの場所でショーを行ったことの重みを物語っていた。 ■「全てを背負って進む」 12日の千秋楽は空気が一変した。「希望」の意味合いが強くなる。グランドフィナーレ後にはサプライズでBTSの「Dynamite」が流れ、羽生さんが生ダンスを披露。最後のあいさつは笑みをたたえながら約7分間、思いを口にした。 「昨日はあんなに苦しくて、悲しくて、つらい日でしたが、1日経ってみると、悲しさを越えて前に進んでいかなきゃ、僕が暗い気持ちになっていたらだめだと思って頑張ってはっちゃけて、希望になろうと思って頑張りました。(中略)皆さんに希望を届けることができて幸せであると同時に、これからもいろいろなことを背負って、スケートのためだけに日々を過ごしたいと思っています。精いっぱい、自分の幸せを削ってでも、羽生結弦として全てを背負って進んでいきます」 羽生さんが演技にこめた思いは変化していった。初日は新たなコラボレーションへの挑戦も含めた希望への「願い」、11日は自身の「葛藤」、そして12日は「決意」へ。あの日の悲しみを背負い、希望へと変化させ、伝えていく覚悟。28歳の胸に、たしかな魂が宿っていた。(ライター・野口美恵) ※AERA 2023年4月3日号
AERA
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脳卒中の5つのサイン 症状が出たら迷わず救急車を呼んで 脳梗塞には前兆がみられることも
日本人の死因第4位(2021年厚生労働省「人口動態統計」)、寝たきりの大きな原因となる脳卒中。その多くを占める脳梗塞は、生活習慣と深く関わる。万が一のとき、迅速に治療を受けられるよう原因や症状を理解しておきたい。 * * * 「脳卒中」は脳の血管の病気であり、血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」と血管が詰まる「脳梗塞」に大別される。脳梗塞は、脳の血管が詰まって血流が途絶えることで神経細胞が壊死し、その働きが失われる病気だ。 厚労省の統計では脳卒中の患者数は111万5千人(2017年)とされているが、国立循環器病研究センター病院副院長の豊田一則医師は「実際にはもっと多いと推察される」と話す。 「国で定めた統計の方法により、このデータには、リハビリ施設に移行した回復期の患者さんや、施設・在宅で療養している患者さんは含まれておらず、実際には約300万人という報告もあります。ただし、いずれも推計であり、正確なデータは今のところありません」 昔は、脳卒中のなかでも脳出血の割合が圧倒的に高かったが、現在は脳梗塞のほうが多い。その理由について豊田医師は、画像診断技術の進歩で両者の正確な区別が可能になったこと、国民の健康意識の高まりによる塩分摂取量の減少、高血圧治療薬の進歩などを挙げる。 「血圧が高いと血管が破裂する脳出血が起こりやすくなります。高血圧の管理ができるようになったことで1980年代に脳出血と脳梗塞の割合が逆転し、日本脳卒中データバンクによると、現在は脳卒中の75%が脳梗塞とされています」(同) 脳梗塞は、「ラクナ梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」「心原性脳塞栓症」の3タイプに大別される。前者二つは、首や脳の動脈硬化により起こる。ラクナ梗塞は、脳内の細い血管が詰まるもので、症状が起こりにくく比較的軽症なことが多い。アテローム血栓性脳梗塞は、首や脳の太い動脈で起こる。血管の内側にコレステロールなどが沈着したかたまり「アテローム」ができることで血管が閉塞する。 ■生活習慣病や心臓病に注意 心原性脳塞栓症は、心房細動など心臓の病気が原因で起こる。心臓でできた血のかたまり(血栓)が血流にのり脳に運ばれ血管を詰まらせる。このタイプは脳梗塞のなかでもとくに重症化しやすい。 脳梗塞の主な原因は、加齢や生活習慣だ。60歳代から増え始め、発症のピークは男性が70代前半、女性は80代前半とされる。東京慈恵会医科大学病院脳神経内科教授の井口保之医師はこう話す。 「加齢にともなう血管の老化や動脈硬化、脳梗塞のリスク因子となる生活習慣病の増加・悪化など、さまざまな要因が重なって脳梗塞が起こりやすくなると考えられます」 高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病、心臓の病気、喫煙、飲酒など、脳梗塞のリスク因子のほとんどが生活習慣に関わるもの。「総コレステロール値が1ミリモルパーリットル増加すると脳梗塞の発症率が25%増加する」「心房細動のある人は、ない人と比べて脳梗塞発症リスクが5倍高い」という報告も。一方で、高血圧や脂質異常症の適切な治療、禁煙で脳卒中のリスクが低下するというデータもある。 「遺伝的な要因など予防が難しいリスク因子もありますが、ほとんどが生活習慣に関わるものです。言い換えれば生活習慣の改善や生活習慣病の治療により脳梗塞のリスクを減らせるということです」(豊田医師) また、一般的に心臓や血管の病気は冬に多いとされるが、豊田医師が実施した研究によると、脳梗塞の発症率は秋だけがやや少なく、それ以外の季節では差がなかった。ただし重症例は冬が多く、これは、季節により起こりやすい脳梗塞のタイプが異なるためだという。 「冬は、脳梗塞のなかでも重症化しやすい心原性脳塞栓症が多い傾向があります。冬は血圧が高くなることや血圧の変動が多く、心房細動が起こりやすくなることが主な理由です。一方、動脈硬化が原因の脳梗塞は脱水がきっかけとなることが多く、夏に起こりやすくなります」(同) ■症状がみられたら迷わず救急車を 井口医師は、「脳卒中の5大症状」として、図の症状を挙げる。脳の障害される場所により、症状はひとつのことも、複数が重なることもある。 「脳梗塞は、発症後いかに早く治療するかで予後が異なります。症状がみられたら迷わず救急車を呼んでください」(井口医師) また、脳梗塞には前兆がみられることもあり、これを「一過性脳虚血発作(TIA)」という。脳の血管が一時的に詰まり、脳梗塞の症状が出るが、自然に血流が改善することで短時間のうちに症状が消失する。TIAが起こると3カ月以内に10~15%の人が脳梗塞を発症し、その半数が48時間以内に発症するといわれる。「治まったから大丈夫」と考えず、すぐ受診することが必要だ。 日本脳卒中学会や日本脳卒中協会も「ACT−FAST」を合言葉に、「F(Face:顔のゆがみ)、A(Arm:腕の力が入らない)、S(Speech:言葉が出ない)などの症状がみられたら、症状が出た時間(Time)を確認し、すぐに(FAST)救急車を呼ぶ(ACT)こと」をすすめる。 一方、脳梗塞には「無症候性脳梗塞」という、症状がないものもある。そのときは症状が出なくても、放置して神経細胞のダメージが積み重なると、意欲や認知機能の低下、大きな脳梗塞やほかの神経の病気につながる可能性も。むやみに恐れることはないが、「5大症状」を忘れず、「おかしい」と思ったらすぐに専門医を受診してほしい。 (文・出村真理子) ※週刊朝日2023年3月24日号より
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工藤、古田、吉井…侍ジャパンの次期監督は誰?「イチロー待望論」は現実的か
WBCで2009年の第2回大会以来14年ぶりの頂点に立った侍ジャパン。大谷翔平(エンゼルス)、吉田正尚(レッドソックス)、ラーズ・ヌートバー(カージナルス)の活躍、村上宗隆(ヤクルト)の復活劇、チームを一つにまとめたダルビッシュ有(パドレス)の献身的な姿勢がフォーカスされたが、栗山英樹監督の功績を忘れてはいけない。 スポーツ紙デスクは、「栗山監督でなければ、ヌートバーを招集するという選択肢は思いつかない。ダルビッシュ、大谷も栗山監督のためにという思いは強かったはず。短期決戦では不調の選手を起用し続けると致命傷になるケースがありますが、村上を最後まで信じて代えなかった。気配りの人で、全ての選手、コーチ陣、裏方を含めたスタッフを大事にしていた。米国との決勝戦を終えて出場機会が少なかった牧原大成(ソフトバンク)に謝っていた姿が印象的でした」と振り返る。 気になるのは次期監督だ。栗山監督の続投を望む声は多いが、今月27日に都内の日本記者クラブで会見を行った時、「もし『やってくれ』と言われたら、もちろん考えますけど、野球でまず自分が留まってはいけないと思っている」と語った。 栗山監督が退任した場合は、次期監督を選定しなければいけない。最有力候補と目されるのが、工藤公康氏だ。15年から21年までソフトバンクの監督を務め、3度のリーグ優勝、5度の日本一に輝いた。短期決戦の強さに定評があり、勝負に徹した柔軟な選手起用で知られる。また、元ヤクルト監督の古田敦也氏も候補の1人だろう。アマチュア時代にソウル五輪で銀メダルを獲得。ヤクルトでの現役時代は野村克也監督の下、「ID野球の申し子」と形容されて球界を代表する名捕手として活躍した。今春にはダイヤモンドバックスで臨時コーチを務めている。 侍ジャパンで投手コーチを務めたロッテ・吉井理人監督、リーグ連覇を飾ったヤクルト・高津臣吾監督、オリックス・中嶋聡監督もふさわしい人材だが、否定的な見方を示す球界関係者もいる。 「NPBの監督と代表監督の兼任は大きな負荷がかかる。現実的ではないでしょう。09年の第2回大会で巨人の原辰徳監督が侍ジャパンの監督に就任しましたが、あの時は08年の北京五輪でメダルを逃した星野仙一監督の続投路線に世論が反発し、監督人事が白紙に戻った経緯がある。12球団を回り、じっくりチームを作るためにもNPBの現役監督は選ばれないでしょう」 知名度や国際舞台での実績を踏まえ、有力候補がもう一人いる。マリナーズの会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏(49)だ。その名は米国でもレジェンドとして知れ渡っている。現役時代はメジャーで2度の首位打者を獲得し、04年にシーズン安打となる262安打をマーク。10年連続200安打の大記録を樹立した。走攻守3拍子揃ったプレースタイルで日米通算4367安打を積み上げた天才打者は、WBCでの活躍も印象深い。06、09年とWBC連覇に大きく貢献。09年は打撃不振に苦しんだが、決勝・韓国戦で同点の延長10回2死二、三塁の好機に決勝打となる2点中前適時打を放った。大谷、村上は少年時代にこの場面が強く印象に残ったことを明かしている。全国の野球少年、野球少女が心を揺さぶられた一打だった。 イチロー氏が侍ジャパンの監督に就任すれば、日本列島がいまだかつてない盛り上がりに包まれるのは間違いないだろう。一方で懸念材料もある。MLB、NPBで監督としての経験がなく、指導者としての手腕は未知数だ。 イチロー氏は19年3月に引退会見を行った際に「監督は絶対無理ですよ。絶対がつきますよ。人望がない。本当に。人望がないですよ、僕」と語っていた。スポーツ紙記者は「イチローさんはアマチュア野球の普及に熱心で、プロの世界で監督というのは現実味がわかない。ただ、侍ジャパンの監督として打診を受けたら、受諾する可能性はゼロではない。日の丸をつけて戦うことは大きな重圧を伴いますが、かけがえのない経験ですから」 栗山監督が続投するか、それとも――。侍ジャパンを託す監督の動向が注目される。(今川秀悟)
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小島よしおが「足を細くしたい」という小6女子に伝えたい、ダイエットで「忘れてほしくない」こととは?
「自分磨きのためにダイエットを始めた。何かいい方法はない?」と相談を送ってくれたのは、小学6年生の女子。数多くの子ども向けライブを開催し、YouTubeチャンネル「おっぱっぴー小学校」も人気の小島よしおさんが子どもの悩みや疑問に答えるAERA dot.の本連載。筋トレやランニングなどを日課とする小島さんが、健康的なダイエット方法をアドバイス。ただ、ダイエットをするときに「忘れないでほしいことがある」と言います。 * * * 【相談35】最近、周りの可愛い子たちと自分を比較して、自分が太っている感じがして、自分磨きのために、ダイエットを始めようと決意したんですけどいい方法はありませんか? いまは、寝る前に20回程度の腹筋や腕立て伏せをしています。他には、家族にバレない程度に食事制限をしています(お腹が満腹になるまで食べないとか)。太もももけっこう太いのですが、どうすればNiziUみたいに足を細くできますか? アドバイス待っています!(ふくにし・小学6年生・女子) 【よしおの答え】 ふくにしピーヤ、よしおも、小学5、6年生くらいのころ、自分の見た目が気になりだしたよ。当時は吉田栄作さん(ってわかるかな? とってもかっこいい俳優さんだよ!)のサラサラヘアのセンター分けがはやっていて、よしおもそれに憧れていたんだけど、天然パーマだからどうがんばってもできなくてね(笑)。友だちを見ても、「あいつかっこいいな~」とか思っていた。だからふくにしピーヤの気持ち、すっごくわかるなあ。 そしてふくにしピーヤがすごいのは、すでにもう努力ができていること。毎日20回腹筋や腕立て伏せをするなんて、大人でもなかなかできないよ。ダイエットって、この「続ける・続けられない」が大きな差を生むんだけど、小学6年生で実践力も計画性もあるなんて、本当に感心しちゃう。 ただ、成長期のダイエットというのは危険性もあるもの。それも考えながら、自分磨きのためにどんなことができるか、一緒に考えよう! ■食事制限ではなく食事内容の見直しを! ふくにしピーヤは家族にバレないように食事制限をしているっていうけど、家族に「ダイエットをしている」って打ち明けるのは恥ずかしいかな? よしおの後輩芸人(やぎゅう)に、最近ダイエット本を出した女性がいるんだけど、その子も「女の子は周りに内緒でダイエットする人が多い」って言っていた。体形を気にしている、って思われるのが恥ずかしいのかな。 でも、よしおはいっそのこと家族に打ち明けて協力してもらうっていう方法もあるんじゃないかな、って思うんだ。特に食事っていうのは、家族で一緒に食べるとなると、なかなか自分だけメニューを変えるのは難しいからね。 それに、ダイエット食って、イコール健康食だったりもする。ヘルシーでバランスよく栄養を摂取できる食事は、家族にとってもいい影響があるんじゃないかな。いまは食べる量を満腹にならない程度にしているくらいだから心配はしていないんだけど、過度な食事制限はからだを壊してしまう原因になるから、量を減らすことよりも、食事内容を見直すことができれば、ふくにしピーヤにも、ふくにしピーヤの家族にもいいことだと思うんだ! そして、運動。よしおは、ランニングや筋トレが好きで習慣的にやっているんだけど、運動は寝る前よりも食べる前のほうがおすすめだよ。運動は空腹のときにしたほうが効果的って言われているんだ。それに、運動をすると交感神経っていう、昼間に活発になる神経が刺激されるから、寝つきも悪くなるかもしれない。 成長期は睡眠もすごく大事だから、睡眠の質を下げてしまわないように、寝る前はストレッチとかをするのがいいと思うよ! 筋トレは、朝起きたときにするのがおすすめ。夕ご飯から時間が経って空腹になっているし、交感神経を刺激できるから目覚めもよくなって、一石二鳥だよ! そもそも、ふくにしピーヤは「自分が太っている感じがして」って言うけど、友だちと比べてそう感じるというだけで、実はあまり気にする必要はないのかもしれない、とも思った。成長期の子どもは身長も伸びているし、成長の仕方には個人差もあるから、単に体重や見た目だけで「自分は太っている」って判断するのは、本当にそうなのかな?って思うよ。 ■いまの自分も素敵だって忘れないで! 美意識ってやつも、時代や人の感覚で変わったりするもの。たとえば、眉毛も細いスタイルがはやっていたときもあれば、ちょっとボサッとしたスタイルがはやったときもあって……。髪形や服装にもはやりってあるよね。体形も、人によってさまざまだし、細いから美しいっていう考え方も、いまの時代は変わってきているよね。 ふくにしピーヤは「自分磨きのため」っていうポジティブな理由でダイエットをしようとしているのがすごくいいな、って思う。だからあまり心配する必要はないのかもしれないけど、「いまの自分も好きだな」っていう気持ちも持っていてほしい。もちろん、憧れがあることはとってもいいことなんだけど、もしそうなれなかったときにすごく落ち込むことになっちゃうんじゃないかな、って思って。ほら、今ってSNSもあって簡単に周りの人たちのことがわかっちゃうじゃん? だから余計にそう思うんだ。 よしおはお笑い芸人をやっているから、出されたお題に面白い回答をする大喜利が得意な人に憧れた。だけど、どうしても苦手で、芸人になりたての頃は大喜利が苦手なことにすごく悩んでいたんだ。でも、自分の芸を磨くうちに、「野菜の歌とか面白いボケがあるわけではないネタを恥ずかしがらずに大きい声で歌えるのは俺しかいないんじゃないか!?」ってことに気づいた。そうしたら、大喜利が苦手なことにも悩まなくなったんだよね。いまでもちょっぴり憧れはあるけどね(笑)。 ちょっと話がずれたけど、もし理想通りにならなくても、自分を責めずに、ありのままの自分の素敵なところを見つけて認めてほしいな、って思う。もしそれが難しいようだったら、いろんな人の「素敵だな」って思うところを探してみて。いろんな人のいいところに気づけたら、自分のいいところにももっと気づけると思うんだ。 ふくにしピーヤはまだ小学6年生で成長期真っただ中。これから、たくさん変化があるから焦らないでほしいな。そして、最初にも少し話したけど、成長期の食事制限は危険性もある。必要な栄養が足りなくて骨が弱くなってしまったり、身長があまり伸びなくなってしまったりするんだ。 「これは食べちゃだめ、おやつ我慢しないと……」っていろいろ制限すると、心にもあまりよくない。よしおはボディービル系の大会に出たことがあるんだけど、大会直前は減量が必要だから食事を制限していたんだ。いろいろ我慢してストレスがたまるし、必要な栄養が足りなくてすごくイライラしちゃった経験があるよ。 だから、栄養満点のご飯をしっかり食べて、たくさん寝て、運動をしっかりする方法で憧れに近づいてほしいな。あと、よく噛んで食べるのも満足感が得られるからおすすめだよ! NiziUのダンスをまねるのもいいと思うよ。ダンスは有酸素運動だし、憧れの人と同じ動きをすればより近づける気がしない? そして、努力できているふくにしピーヤはすでにキラキラ輝いているってことを忘れないでね! ……って、僕は思うんだけど、君はどう思うかな? (構成/濱田ももこ) 【質問募集中!】小島よしおさんに答えてほしい悩みや疑問を募集しています。お気軽にお寄せください!https://dot.asahi.com/info/2021100800087.html
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4月から「マイナ保険証」を使わないと医療費アップに!対策を知って備えよう
4月以降、オンライン資格確認システムを導入または申請中の医療機関で、従来保険証で受診すると医療費が高くなる。マイナ保険証対応の医療機関が増える中、本格的にマイナ保険証を使わないと損、ということになりそうだ。連載『医療費の裏ワザと落とし穴』の第256回では、4月以降のマイナ保険証の利用について注意しておきたいポイントを押さえておこう。(フリーライター 早川幸子) 4月からマイナ保険証を使ったほうが初診時40円、再診時20円お得になる この4月から、「マイナ保険証」を使わない人の医療費が、さらに引き上げられることになった。 現在、その病気で初めて病院や診療所を受診したときの医療費は、マイナ保険証より、従来の健康保険証のほうが、20円(3割負担で6円)高くなるように設定されている。この差が、4月以降は、特例措置として40円(3割負担で12円)に広がることになったのだ。 ただし、医療費に差が出るのは、オンライン資格確認のシステムを導入しているなど、一定の要件を満たしている医療機関を受診した場合だ。また、今回の加算は、全国の医療機関にマイナ保険証に対応できるシステムが普及するまでの期間限定の措置となっている。 どのようなケースで医療費に差が出るのか。この4月以降のマイナ保険証に関する見直し内容について確認しておこう。 これまで病院や診療所などを利用するときは、自分が加入している健康保険組合を証明するために、「健康保険被保険者証(健康保険証)」を提示することになっていた。 この健康保険証の代わりに、マイナンバーカードの個人認証機能を使って、本人確認や健保組合の特定を行うのが「マイナ保険証」で、2021年10月に本格導入された。そして、普及を促すために、2022年4月の診療報酬改定で、マイナ保険証に対応できるシステムを導入した病院や診療所に対して、通常の医療費に加えて、マイナ保険証関連の加算が付けられることになった。 だが、このときの診療報酬体系は、マイナ保険証を利用した患者のほうが、健康保険証で受診した患者よりも、医療費が高くなるように設定されていた。 マイナ保険証に対応する医療機関を増やすための誘導策とはいえ、患者はマイナ保険証を使うと損してしまう。そのため、国民目線を欠いた制度設計には疑問の声が上がっていた。 そこで、2022年10月、マイナ保険証の利用者のほうが、健康保険証を利用するよりも、医療費が安くなるように見直しが図られたのだ(連載の第247回参照)。 今回の見直しは、この考え方を拡大したものだ。では、今後どのように医療費は変わるのだろうか。次ページから見ていこう。 ●4月からマイナ保険証では初診時加算が20円だが、旧健康保険証では、これまでの初診40円が60円に引き上げられ、再診ではマイナ保険証にない20円の加算が付く●加算はオンライン資格確認システム導入済み、または申請中の医療機関で適用される ●24年秋までに現行保険証は廃止。マイナ保険証に移行したくない人は「資格確認証」の発行手続きを自分で行う必要がある カードリーダー設置または資格確認届け出を行っている病院ではマイナ保険証提示がなければ負担増に オンライン資格確認システムの導入を加速させるために、2023年4月から12月までの期間限定で、病院や診療所の初・再診時に加算される金額が次のように見直されることになった。 マイナ保険証を利用した場合は、初診時の加算が20円(3割負担で6円)で据え置かれているが、健康保険証で受診した場合は、これまでの40円(3割負担で12円)から60円(3割負担で18円)に引き上げられる。 また、再診時については、マイナ保険証では加算がないが、健康保険証で受診した場合は20円(3割負担で6円)がプラスされることになった。 つまり、初診時は40円(3割負担で12円)、再診時は20円(3割負担で6円)の差がつくことになったのだ。 ただし、この加算が付くのは、マイナンバーカードを読み取れるカードリーダーなどを設置している医療機関を利用した場合だ。オンライン資格システムを導入していない医療機関を受診した場合は、そもそも追加の負担がない。 実のところは、マイナ保険証に対応していない医療機関を利用するのが、一番医療費が安いのが現状だ。 だが、厚生労働省は、23年4月までに、すべての病院や診療所などに対して、マイナ保険証による健康保険の資格確認システムを導入することを義務付けておりその数は徐々に増えてきている。 さらに、今回の加算の特例措置は、すでにシステムを導入している医療機関だけではなく、今年12月までにオンライン資格確認の開始を届け出ている医療機関も対象となっている。 2023年3月5日時点の「オンライン資格確認の都道府県別導入状況について」によると、病院は98.7%、診療所(医科)は91.7%がカードリーダーの申し込みを済ませている。そのため、今年の4月~12月は、マイナ保険証で受診したほうが医療費が安くなる医療機関のほうが多くなりそうだ。 4月以降、医療機関を受診するときは、忘れずにマイナンバーカードも持参するのが得策だ。 2024年秋までに健康保険証は廃止代わる「資格確認証」の発行は自分で行う必要がある このように、医療機関はマイナ保険証に対応できるシステムを整えつつあるが、肝心のマイナンバーカードの交付率は2023年3月12日時点で75.4%。いまだ2割強がカードを取得していない状況だ(総務省の「マイナンバーカードの交付状況について」)。 カードを取得していなければ、当然のことながら、マイナ保険証の機能も使えないが、国は2024年秋までに従来の健康保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化する方針を打ち出している(発行済みの従来の健康保険証も、有効期限が来るまでは利用できる)。 マイナンバーカードを取得するかどうかは個人の自由で、マイナ保険証の登録を希望しない人については、従来の健康保険証に代わるものとして「資格確認書」を発行することになっている。資格確認書の有効期限は1年間で、更新もできるので、今後もマイナ保険証を登録していなくても健康保険の適用は受けられる。 だが、資格確認書は、原則的に必要な人が自分で申請するもので、健康保険証のように自動的に発行されるものではない。 マイナンバーカードの申請をしていない人の中には、一人暮らしの高齢者などで、自分では手続きがままならない人が含まれている可能性がある。そうした人が、マイナ保険証を登録しておらず、資格確認書の申請もできなければ、病院や診療所を利用するときに健康保険の資格確認ができず、不便を強いられてしまう。 国がマイナ保険証を導入した目的は、医療分野にもデジタルトランスフォーメーション(DX)を取り入れることで業務を効率化し、患者に質の高い医療を提供することだったはずだ。だからこそ、この4月からマイナ保険証関連の医療費をさらに引き上げる特例措置を行い、マイナンバーカードの普及を急いだわけだ。 患者の利益のために導入したはずのマイナ保険証によって、保険適用が受けられないという不利益を被る国民を作り出すのは本末転倒で、制度を導入した意味がなくなってしまう。 システムの変更によって、弱い立場にいる人が置き去りになるようなことは、絶対にあってはならない。健康保険の資格確認をマイナ保険証に一本化すると決めたなら、個人からの申請を待つだけではなく、国が責任を持って丁寧にフォローしていく必要があるのではないだろうか。
ダイヤモンド・オンライン
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俳優・吉岡秀隆のリアル過ぎる演技に警察幹部が「困った映画だ」 警察裏金問題を告発した元巡査部長とは
「組織のためなら何してもいいんか?」制服を着た巡査部長役の吉岡秀隆さんが、同じ警察官にそう問いかける。3月10日に封切られた映画「Winny」の一場面。吉岡さんの役は、愛媛県警の巡査部長時代の2005年に、県警の裏金問題を実名で告発した仙波敏郎さん(75)だ。巨大な組織を敵に回してでも仙波さんが貫こうとしたこととは何だったのか。 「18年前に警察の裏金問題を告発したことを、大手の配給会社の映画の中で取り上げてもらい、本当に感無量です」(仙波さん) 映画の主役は、東出昌大さんが演じる天才プログラマーの金子勇さん(2013年に42歳で死去)だ。2002年、当時、東京大学大学院助手だった金子さんは、インターネットで映画や音楽などの情報を直接やりとりできるファイル交換ソフト「Winny」を開発し、その試用版をネットの掲示板「2ちゃんねる」に公開した。 すると、大量の映画や音楽などが違法にアップロードされ、事件化されることも多かった。2004年、金子さんは著作権法違反の幇助(ほうじょ)の容疑で京都府警に逮捕されてしまう。その後、金子さんは弁護団と裁判を戦い、2011年に無罪を勝ち取る。映画はその7年間の壮絶なストーリーを描いている。 そのなかで、仙波さんの警察裏金問題の告発の話が出てくる。接点はWinnyだった。Winnyは情報漏洩系ウイルスに感染しやすく、個人や企業、官公庁の情報などが次々とインターネット上に流出した。警察でも捜査情報が漏洩するトラブルが相次いだ。 仙波さんがこう説明する。 「裏金づくりの手口は、白紙の領収書に、捜査協力をしてもらったとして一般市民の架空の名前や金額、日付などを書かせます。私はニセ領収書を書きませんでしたから、当然のことながら実物を持っていなかった。そこで『仙波の(告発の)話は本当なのか?』となった。しかしその後、愛媛県警の刑事がWinnyに接続した結果、パソコンのデータが流出したんです。その中にニセ領収書が含まれていたので愛媛県警が言い訳できなくなった」 映画化の話が仙波さんに持ち込まれたのは、2021年3月のことだった。 それまでも何度か、仙波さんの裏金告発について映画化するという話は持ち上がっていた。しかし、なかなか実現にはいたらなかった。 「今回、映画会社からオファーがきて、いろいろ聞きました。Winnyの話が大半ですが、裏金告発を一部でも取り込んでくれるというのはありがたいことです。当初、台本では裏金告発の警官はシラトリリョウという架空の人物だったんです。私からすれば『なんで実名出さんのか?』となりますので、そう監督に申し入れると『本当に実名でいいのですか』とびっくりされていました。その時はすでに撮影に入っていたけど、台本を書き換えたそうです」 実名であることも含め、仙波さんの裏金告発の内容はリアルに表現されている。 「ええか、ニセ領収書を書いたら私文書偽造で3カ月以上5年以下の罪になる。それを元に公文書を偽造すると1年以上10年以下の罪や。詐欺や業務上横領は10年以下。それだけの罪を犯したもんが千円のもんを万引きした人に調書をとれんのか」 仙波さん役の吉岡さんが、若い警官を悟す場面だ。 仙波さんは2008年1月20日に実名で記者会見することを決める。するとその数日前から、人や車に尾行されていることに気づく。それが愛媛県警の関係者や車両と見られ、仙波さんが苦悩、葛藤する様子も描かれている。 仙波さんが意を決して臨んだ記者会見で、 「仙波敏郎巡査部長55歳、38年間の警察生活の中で見たこと聞いたこと、そして自分の体験に基づく真実を話します。捜査費の支払いはすべて架空、捜査協力者に支払われた事実はありません。一つだけ言わせてください。人一倍強い正義感を持って警察官になった若者たちが今日もどこかで裏金づくりに加担させられている」 というセリフがある。このシーンについて仙波さんは、 「本気で映画を作っているんだなと思いましたよ。記者会見した時と一言一句同じ。吉岡さんは、私の著書なども徹底的に読み込んで演じてくださったそうで感動しました」 と振り返る。 映画の撮影現場にも1度だけ訪れた。 「そのとき、私も一瞬ですがエキストラとして出演しました。裁判で傍聴しているシーンがあるのですが、スーツにネクタイ姿で映っています。とてもいい経験でした」 吉岡さんはその日、別の撮影があって不在だったが、東出さんらとは話す機会があったという。 仙波さんは一人でも多くの人にこの映画のことを知ってほしいと、愛媛県警の記者クラブを訪れたという。 「映画のチラシを記者に渡しにいったのです。配り終えて記者と雑談していると、県警の広報担当者が息せき切ってやってきて、『仙波さんちょっと』『ここはダメなので』と言いました。裏金告発からは18年も経っているのに、という感じでしたね」 映画の撮影が終わってから公開されるまで1年ほどあったといい、仙波さんは「警察の圧力」も危惧していたという。 ある警察幹部は取材に、 「困った映画だな。また警察の裏金問題が蒸し返されるきっかけになりかねないよ。吉岡さんがうまく演じているからな」 と話した。 仙波さんは、 「無事、上映にこぎつけられよかった。吉岡さんや制作にかかわった皆さんに感謝したい。ぜひ映画館で見てほしい」 と話している。 (AERA dot.編集部 今西憲之)
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6回連続で勝率8割台、史上最年六冠の藤井聡太 本人は記録にほとんど興味なし
3月19日におこなわれた棋王戦五番勝負第4局で、10連覇中の渡辺明(38)を破り史上最年少で六冠を達成した藤井聡太(20)。史上初の八冠制覇に期待がかかる。AERA 2023年4月3日号の記事を紹介する。 * * * 今年度の藤井はハードスケジュールの中、叡王、棋聖、王位、竜王、王将を順に防衛。さらには棋王を獲得し、保持するタイトルは全部で六つとなった。 「7月以降はかなり、対局が多いときが続いたんですけど。その中で、勝負強く指すことができたのは収穫だったかなと思っています」 「まだまだ実力的には足りないところが多いと思うので。立場にふさわしい将棋が指せるように、よりいっそう頑張らなくてはいけないのかなと思います」(藤井) 対局地の栃木県はイチゴの名産地としても知られる。終局後、藤井が贈られた6粒のイチゴには「祝六冠 1+5=6」と記されていた。六冠は羽生善治九段(52)に続いて史上2人目の偉業だ。羽生の六冠達成は1994年、24歳のとき。藤井は弱冠20歳にして「史上最年少六冠」という記録を作った。 藤井のこれまでのタイトル獲得数は森内俊之九段(十八世名人資格者、52)に並んで12だった。 「そういった実績のある棋士の方の対局を見ると、まだまだ学ぶところが多いのかなというふうにも感じています」(藤井) 棋王獲得で通算13期。佐藤康光九段(永世棋聖資格者、53)に並んで歴代7位タイとなった。 事前に収録され、棋王戦第4局と同日に放映されたNHK杯決勝では、藤井は佐々木勇気七段(A級昇級により八段に昇段、28)を破り、初優勝を達成。史上初めて、銀河戦、日本シリーズ、朝日杯、NHK杯と、早指しのトーナメント4棋戦をすべて制することになった。 要するに藤井は今年度、途中で敗退した棋戦は、挑戦権を争うトーナメントの1回戦で大橋貴洸六段(現七段、30)に敗れた王座戦のみ。ほとんど完璧に近いシーズンだったと表現するのが適切だろう。 ■6回連続で勝率8割台 藤井は2022年度の対局を終え、成績は53勝11敗(勝率8割2分8厘)。将棋界では、年度勝率8割台は、数年に1回見られるかどうかというハイアベレージだ。過去に複数回達成した棋士は羽生(3回)と中原誠十六世名人(2回、75)というレジェンドクラスしかいない。藤井はそれをデビュー以来6回連続でやってのけた。形容すべき言葉が見つからない。 改めて言うまでもないことだが、六冠の時点ですでに偉業だ。しかし藤井の場合、それが通過点のように思われてしまうのが恐ろしい。4月から始まる名人戦七番勝負では、藤井が渡辺に挑戦する。藤井には史上最年少名人、そして羽生以来の七冠がかかっている。 「名人戦ですと持ち時間が(2日制の)9時間ということで、公式戦の中でも一番長い対局になるので、その点も踏まえてしっかりいい将棋が指せるように頑張りたいと思っています」(藤井) 渡辺は04年に初タイトルの竜王位を獲得して以来、これまで無冠になったことがない。しかし藤井に棋聖、王将、棋王を奪われ、残す牙城は名人のみとなった。渡辺にとって、相当厳しい情勢なのは間違いない。 「あれこれ考える時間もなく次が始まりますが、まあその時の最善を尽くすしかないので、また頑張っていきたいと思います」(渡辺のツイッター投稿から) 藤井は保持したタイトルを失うことなく、名人を獲得し、さらには王座も獲得すれば、今秋にも史上初の八冠となる。八冠なんて、夢のようなストーリーであったはずだ。しかし現時点ではもう、現実的に想定しうる段階に入っている。 藤井自身は、そうした記録にほとんど興味がない。一方で観戦者の多くは、そうはいかない。「八冠なるか?」とドキドキしながら、藤井の対局を見守り続けることになりそうだ。(ライター・松本博文) ※AERA 2023年4月3日号より抜粋
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羽生結弦「希望」のアイスショー 「自分の幸せを削ってでも、全てを背負って進んでいく」
「羽生結弦 notte stellata」が3月10~12日、東日本大震災から12年に合わせて開催された。羽生さんが地元・宮城で伝えたのは「希望」だった。AERA 2023年4月3日号の記事を紹介する。 * * * 満天の星が氷上と大画面に映し出され、ショーのタイトルでもある「notte(ノッテ)stellata(ステラータ)(星降る夜)」の音色が響く。羽生結弦さん(28)のソロからスタートするという豪華演出に、歓声が湧き起こった。 「今回は『希望』というテーマが一つ大きなもの。オープニングで、スクリーンに3.11の頃の星空を出していただいて『星空から出てきた希望とともに今まで滑ってきたんだ』ということを感じながら滑らせていただきました」 自身も被災した2011年3月11日の、停電した仙台の夜空に広がった満天の星。羽生さんがその時に感じた希望がショーのコンセプトだ。総合演出のデイビッド・ウィルソン氏と、震災への複雑な思いを希望という前向きなテーマとしてどう発信していくか綿密に打ち合わせた。 「オープニングで僕が演じたあと、星が降ってくるような形で流れ星のように今回のキャストのスケーターさんたちを見せたい、とデイビッドさんと話しました。僕の『notte stellata』と、その後に続くオープニングが一つのプログラムとして見える感覚になっています」 ■内村航平さんとコラボ 共に演じるのは縁ある8人のゲストスケーターだ。仙台生まれの本郷理華さん(26)、大学時代に仙台を練習拠点とした鈴木明子さん(37)は鎮魂の思いを込めた。18年平昌五輪に羽生さんと共に出場した宮原知子さん(25)は耽美(たんび)な滑り。米国のジェイソン・ブラウンさん(28)は世界選手権(22~26日)直前にもかかわらず友情出演し、SNSでコメントした。 「ゆづ、このとくべつなショーで滑る機会を与えてくれてありがとう。あなたの心と闘志が私を奮い立たせます」 そして「希望」のテーマを強く発信した新しい取り組みがあった。それは体操界のレジェンド内村航平さん(34)とのコラボレーションだ。五輪を連覇したカリスマ同士の共演である。 「普通のアイスショーではないことをしたいという企画のなかで、内村さんとのコラボの話が出ました」 第1幕の最後、金の刺繍(ししゅう)が胸元にほどこされた黒い衣装で2人は登場した。内村さんが円馬で旋回を始めると、羽生さんは同時にコンビネーションスピン。回転が見事にシンクロし、会場からどよめきが起きた。 ■「試合感もありました」 羽生さんは一気に加速してジャンプコースに入っていく。内村さんも助走を始めた。羽生さんは4回転トーループを、内村さんは伸身の2回転ひねりを決めた。羽生さんはこう語る。 「なんか試合感もありました。僕自身は4回転を跳んで、内村さんも本気の技を繰り出してくださって。床とスケートリンクという場所は違うんですが、エネルギーが増幅して、支え合って、ぶつかって、みたいないろいろな力の掛け合わせみたいなものが見えました」 昨夏のプロ転向の会見で「競技会としての緊張感を味わってもらえるようなことをしたい」と話していたとおりだった。 お互いの刺激も大きかった。内村さんは、羽生さんの集中力に接した。 「本番前、2メートルくらいの距離感で、五輪や世界選手権の試合前の羽生くんが集中している、あの感じを生で見られて、『本当に全力なんだな』って。誰に対しても全力で、自分の思いをしっかりぶつけられる人間だなと感じました」 羽生さんも、内村さんに対して感じるものがあった。 「同じオーラを持っている人だな、とすごく思いました。競技とか技とか、そういう枠を超えて人を引きつけるカリスマ性的なもの。単純な言葉にすると、かっこいいなって思いました」 ■希望となりますように 3月11日をまたぐ3日間で開催されたこのショーにとって、もっとも深い意味を持つ場面がフィナーレだった。初日はMISIAの「希望のうた」、GReeeeNの「道」のあと、羽生さんはマイクを握った。 「もうすぐ、あれから12年という時が経とうとしています。これからの人生でも、つらいこと、幸せなこと、苦しいこと、悲しいこと、寂しくなること、いろいろなことがあると思います。今日という日が、僕らの星みたいに輝いてくれたプログラムたちが、皆さんにとって少しでも希望となりますように」 震災当日の11日は様子が違った。演技中、羽生さんは幾度も氷を手で触れ、最後のあいさつでは声を詰まらせた。会場であるセキスイハイムスーパーアリーナは、震災時に遺体を安置する場所として使われていたのだ。 「ここは宮城県民、仙台市民、そして全ての人々にとって本当に特別な場所です。ここに氷を張って、3月11日という日に僕が演技をしてしまってよいのだろうか、という戸惑いはすごくありました。ただ今日、ちょっとでも希望や優しさを感じる時間ができたのではないか、僕が生きて今日という日をこの会場で迎えることができたのは少しでも意味があったのではないか、と自分を肯定できます」 同日、会場に隣接して置かれた献花台は黙祷(もくとう)を捧げる人であふれた。この日にこの場所でショーを行ったことの重みを物語っていた。 ■「全てを背負って進む」 12日の千秋楽は空気が一変した。「希望」の意味合いが強くなる。グランドフィナーレ後にはサプライズでBTSの「Dynamite」が流れ、羽生さんが生ダンスを披露。最後のあいさつは笑みをたたえながら約7分間、思いを口にした。 「昨日はあんなに苦しくて、悲しくて、つらい日でしたが、1日経ってみると、悲しさを越えて前に進んでいかなきゃ、僕が暗い気持ちになっていたらだめだと思って頑張ってはっちゃけて、希望になろうと思って頑張りました。(中略)皆さんに希望を届けることができて幸せであると同時に、これからもいろいろなことを背負って、スケートのためだけに日々を過ごしたいと思っています。精いっぱい、自分の幸せを削ってでも、羽生結弦として全てを背負って進んでいきます」 羽生さんが演技にこめた思いは変化していった。初日は新たなコラボレーションへの挑戦も含めた希望への「願い」、11日は自身の「葛藤」、そして12日は「決意」へ。あの日の悲しみを背負い、希望へと変化させ、伝えていく覚悟。28歳の胸に、たしかな魂が宿っていた。(ライター・野口美恵) ※AERA 2023年4月3日号
AERA
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浅村&田中将はWBC出場志願も叶わず…「侍ジャパン落選」の理由
WBCに向け、侍ジャパンの選考は大きな話題になった。野手では山川穂高が内定。2019年秋のプレミア12でアキレス腱に不安を抱えていたことから出場を断念すると、日の丸から遠ざかっていた。昨季は本塁打、打点の2冠に輝くなど長距離砲としての実力は疑う余地がない。本大会での活躍が楽しみだ。 投手でサプライズ選出は、オリックスの宇田川優希だ。昨年7月下旬に育成枠から支配下登録されると、セットアッパーとして奮闘。最速159キロの直球に落差の鋭いフォークで三振の山を築いた。19試合登板で2勝1敗、防御率0.81と抜群の安定感を誇り、CS、日本シリーズでも快投を続け、26年ぶり日本一の原動力となった。 「出場辞退」を決断した選手たちも話題を呼んだ。柳田悠岐、今宮健太(ソフトバンク)、坂本勇人(巨人)、森友哉(オリックス)はコンディションに不安があったり、シーズンに集中したいという理由で代表入りを見送った。 スポーツ紙デスクは、「柳田、坂本は今年35歳を迎えるシーズンで、もう若くない。昨年はチームとしても個人としても思うような結果を残せず、悔しい思いをしている。2人は侍ジャパンの常連でしたが、遊撃は源田壮亮(西武)、外野も選手がそろっているので、彼らに託せるという思いもあったのでは。森も西武からFAで新天地のオリックスに移籍し、投手の特徴を把握するなど、やらなければいけないことがたくさんある。WBC出場に迷いはあったと思いますが、リーグ3連覇に向けて中心選手として期待が大きい。この決断は致し方ないと思います」と理解を示す。 一方で、侍ジャパン入りを熱望したが落選した選手たちがいる。楽天の田中将大、浅村栄斗だ。田中の実績は語るまでもないだろう。日米通算190勝をマークし、WBC、五輪と共に2度出場。ヤンキースでは6年連続2桁勝利をマークするなどメジャーの強打者を抑える術を熟知している。昨年10月には自身のツイッターで、「来年開催されるWBCについて自分の気持ちをお話する機会がなかったので、ここで言わせていただきます。良い選手が沢山居ますし、なかなか簡単なことではないのは重々承知の上ですが、出場したいです!この気持ちを持ってオフシーズンのトレーニングにも取り組んでいきます」と出場を志願。昨オフの契約更改の席でも侍ジャパンで先発にこだわらず、どの役割でも全うすることを望んでいたが、朗報は届かなかった。 球界を代表する強打者として長年活躍している浅村も、代表から漏れた。21年の東京五輪では金メダル獲得に大きく貢献し、日の丸への思いは強い。2度目のFA権を取得し、去就が注目された22年オフに4年契約で楽天に残留を発表。WBC出場に向けても意欲を示していた。 侍ジャパンを取材するスポーツ紙記者は、「田中、浅村はメンバー入りしても不思議ではなかったし、栗山英樹監督は迷ったと思います。田中の場合は全盛期に比べて球速が落ちたのがネックになったと思います。投球術はさすがですが、不慣れな救援で投げさせるのはリスクがある。先発陣は枠が埋まっていますしね。浅村は牧秀悟(DeNA)とタイプが重なる。勝負強さに定評がある中距離砲で、浅村と同様に牧も本職の二塁だけでなく一塁を守れる。二塁は激戦区で山田哲人(ヤクルト)、菊池涼介(広島)もいる。それぞれ持ち味は違いますが、栗山監督は国際舞台に強い山田をチョイスした。こればかりは仕方ないですね」と振り返る。 田中、浅村が日の丸をつけるにふさわしい実力者であることは間違いない。テレビ関係者は「実績を残している2人が代表入りを熱望してメディアに発信した姿に敬意を表したい。落選しましたが、彼らの侍ジャパンへの思いは野球ファンに十分に伝わっていると思います」と評価する。 2人の目標は、楽天の10年ぶりのリーグ優勝に切り替わっているだろう。投打の両輪として活躍を期待したい。(今川秀悟)
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大泉洋の兄、光GENJIの元メンバー…統一地方選・衆参5補選の個性派候補を直撃
4月23日までの約1カ月にわたる統一地方選が幕を開けた。統一地方選と、同時に行われる衆参5つの補欠選挙の気になる“個性派”候補者たちに直撃取材した。 * * * ■【函館市長選】「頼朝」の兄が決起!? 上司と部下の因縁対決 「もっと街のステータスを上げなければなりません。函館を変えていきましょう。応援の翼を大きく大きく広げてほしい」 3月18日、北海道函館市内のホテルで、今や国民的スターとなった大物有名人に似た顔で声をからしたのは4月23日投開票の函館市長選に出馬する大泉潤氏(57)だ。俳優の大泉洋の兄である。会場には1200人の支持者が集まり、函館出身のロックバンド「GLAY」のTAKUROからビデオメッセージが寄せられた。新人候補として、4期目を目指す工藤寿樹市長(73)に挑む構図。大泉氏には立憲民主党が支持を表明、工藤市長は自民、公明が推薦しており、与野党ガチンコ対決となる。 この選挙がおもしろいのは両氏が同じ早稲田大学法学部を卒業し、市役所の上司と部下の関係だった点だ。函館市保健福祉部長だった大泉氏は函館市長選の準備をするため、昨年7月、工藤市長に退職願を出した。 大泉氏は出馬の経緯をこう語る。 「別に工藤市政に弓を引きたくて出馬するわけではありません。やっぱり、観光面でこれだけのポテンシャルを持っている函館市ですけど、市役所時代から市民や業界団体の方と話すと、多くの人が函館を諦めてしまっている。人口減も激しく、中核市の中でも最悪レベルの減少率ですから若者も市外に出てしまう。市役所の一部長がやれることは限られていますから、函館を変えるためにも立候補を決意しました」 対する工藤陣営は、思わぬ部下の出馬にも表向き平静を装う。工藤陣営の選対幹部は「大泉洋さんの兄という意識よりも、どなたが出ても同じと考えている。選挙戦は誰が出るから歩く、誰が出ないから歩かないということはない。人口減少など他の自治体と課題は同じだ。あくまで財政再建など3期12年の実績を訴え淡々とやっていく」 ある市政関係者は「あの大泉洋氏の兄貴であるがために、マスコミがタレントの兄だと過剰に取り上げる。それは大泉陣営にとって有利で、話題性だけが先行する。そこに現職は普通の選挙と違って危機感を持っている。本人ではなくて弟たる有名タレントと戦っているような感じになる。やはりそこはきちんと実績、政策を比べて良識ある判断をしてほしいはずだ」と工藤陣営のジレンマを語る。100万ドルの函館山の夜景の輝きが照らし出すのは、どちらか。 ■【東京都北区長選】「最年長区長」に挑む元アイドルの仰天プラン 東京都北区長選も注目度は高い。アイドルグループ「光GENJI」の元メンバー・大沢樹生氏ら5人が出馬を表明している激戦区。6選を目指す現職の花川與惣太(よそうた)区長は投開票日時点で88歳で、当選すれば最年長区長のギネス世界記録になる。大ベテランに挑む大沢氏に話を聞いた。 12歳で芸能界入り、今年で54歳になる大沢氏。政治に興味を持ったのは、コロナ禍の3年間の中で経験した出来事が影響しているという。 「昨年8月にコロナをテーマにした映画のオファーを受けて、北区内の零細、中小企業さんらが参加してくれた。北区の皆さんがいなければ完成しない映画で、すごいご縁を感じてしまって。本当に下町気質で、自分も江東区の下町育ちなんで、肌が合ってしまった。これから30年あるかないかの残りの人生を、社会や地域に貢献できる立場としていこうと決意して、出馬を決めました」 政策は子育て支援、高齢者対策に加えて、コロナ禍の影響で苦しむ区内の中小企業のために、経済の立て直しを重視したいという。さらには、こんな仰天プランも……。 「2009年に死去した米人気歌手、マイケル・ジャクソンさんの米カリフォルニア州にある自宅兼遊戯施設だった『ネバーランド』をイメージした『ノースランド』プロジェクトを提唱したい。区内を流れる荒川の河川敷にトラックの荷台を利用したステージを配置して音楽イベントなどを開催したり、ドッグランを設置したりといったことを計画しています」 今回が政界初挑戦となる大沢氏に対し、相手は5期20年、区議、都議を合わせると50年の政治キャリアを持つ。 「正直、政治力ではかなうわけはないですが、花川氏が作り上げてきた北区をさらに素晴らしくする自信はあります。大沢という新風を北区に入れたい。負け戦をするつもりはないです」 ■【衆院千葉5区補選】ウイグルのルーツに誇り7カ国語を操る国際派 「優しい社会を目指したいというテーマを掲げて政治活動をしたいと思っています」 こう語るのは、衆院千葉5区補選に自民党公認で出馬する新人・えりアルフィヤさんだ。1988年、福岡県北九州市生まれ。両親は中国の新疆ウイグル自治区出身で、99年に家族で日本国籍を取得した。同年、父親の転勤に伴い10歳からは中国で育つ。米国ジョージタウン大学外交政策大学院修了後、日本銀行や国連でキャリアを積んだ。7カ国語を操る国際派だ。 えりさんが政治を意識するようになったのは、東アジアの安全保障関係の激変にある。 「米国の国防族だけでなく、リベラルなアカデミックな方々も東アジアの安全保障関係は危ないと言いだした。本当に国際情勢の転機だと思います。民主主義対権威主義、この構造がすごく緊迫化している。自分は公共政策のキャリアを持っているので、米国と日本の橋渡しになれるのではないかと思いました」 公募に応じた72人の中から勝ち抜いて党千葉5区支部長となった。政策は改憲論者の保守そのもの。尊敬する政治家は安倍晋三元首相だという。森山裕選対委員長も、「自民党の女性活躍の最先端の人」と絶賛する。 SNSを駆使して選挙活動を展開中だが、ネット上では「帰化1世を公認する自民党は国賊だ」などと、心ない誹謗中傷を浴びることもある。「ネットに書き込まれる議論のクオリティーにウッと感じるところもある」と本音も漏らす。 「生まれが北九州なので、自分を日本人としか思ったことはなく、日本人として海外でも経験を積んできました。その上で、ウイグルにルーツを持っていることも非常に特別なことで、誇りを持っています。ルーツを大事にしつつ、日本の政治家として頑張っていきたい」 初当選を目指し、分刻みのスケジュールで走り回る毎日だ。(本誌・村上新太郎)※週刊朝日 2023年4月7日号より抜粋
週刊朝日
17時間前
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妖術に操られていませんか? 古賀茂明
安倍晋三元総理最大の「功績」は、日本の岩盤右翼層をがっちりと固めたことだ。強烈な反日思想を持つ旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と、これとは全く相容れない国粋主義的思想を持つ日本の右翼層をともに自民党保守派を支持する層としてまとめるという、普通では考えられないことをやってのけた。その遺産を受け継いだのが自民党安倍派である。 彼ら岩盤右翼層は、数としては大きくなくとも、選挙の投票率が下がる傾向が続く中、自民党の得票の中では重要な地位を占める。そのため、岸田文雄首相のみならず、親安倍・反安倍に関わらず、ほとんどの自民党議員、とりわけ総裁を狙う者にとって、この「安倍派的」岩盤右翼層の支持を得ることが至上命題になってしまった。 私は、これを「妖怪に支配された自民党」と呼んでいる。“昭和の妖怪”と呼ばれた岸信介元総理。その孫が安倍元総理だから、彼は“妖怪の孫”だ。そして“妖怪の孫”亡き後もなお、得体のしれない安倍的なものが政界に漂っている。妖怪だけに、簡単には滅びず今もなお、その妖術で自民党を操っているのだ。 支配されているのは自民党だけではない。大手メディアも安倍政権時代に、安倍氏に支配され、忖度宣伝機関に堕していたが、今もそこから抜け出せない。特にテレビ局のスタッフたちに聞くと、今も局幹部には過剰な安倍派忖度があると聞く。 とりわけ、安倍派の中でもマスコミ支配に熱心だった萩生田光一自民党政調会長を恐れて「忖度」しているという。旧統一教会問題の報道でも萩生田氏への厳しい追及があるべきなのに、実際にはほとんどスルーされたままであるのもその影響だろう。全てが圧力というわけではなく、局側が勝手に忖度している側面もあるようだ。 忖度という行動パターンが何年も続いた結果、記者たちの問題認識能力自体が退化してしまったことも深刻な事態だ。面倒なことを避けるうちに、公開情報に含まれる重大な問題にも気づくことすらできなくなっている。 さらに困ったことは、私たち国民の心にもこの“妖術”が及んでいることだ。 10年前には議論されることさえなかった敵基地攻撃能力、防衛費倍増、憲法9条改正、原発新増設などの問題に賛成する層が拡大している。安倍氏よりさらに過激な政策を岸田氏が異様な勢いで進め、日本の国の形が「軽武装・国民経済重視」から「重武装・軍事最優先」に変容しつつあるのに、国民がそれを本気で止める動きが見えない。 それは国民の一定数が、安倍的なものに支配されるようになってしまったからという面もある。一度支配されると、他の意見には拒絶反応しか示さなくなる。議論の余地がなくなり、国民の間に深刻な分断がもたらされた。 一方、安倍的なものに支配されず、これに抵抗する人々もたくさんいる。しかし、実は、その人たちの心の中にも、「どんなに頑張ってもどうせ止まらない」という諦めの気持ちが広がっているのではないか。市民のデモなどの抗議活動は、明らかに力が弱くなっている。これもまた、“妖怪の孫”の支配ではないのか。 この支配を終わらせるためにはどうしたら良いのか。有権者はそのことを考えながら、春の選挙に臨んで欲しい。 古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。自身が企画プロデューサーを務めた映画『妖怪の孫』の原案『分断と凋落の日本』(講談社)が4月発売予定※週刊朝日 2023年4月7日号
週刊朝日
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葬式で「ご愁傷様です」と言われたら、なんと返せばいいのか…「ありがとうございます」を避けるべき理由
葬式で「ご愁傷様です」と声をかけられたら、なんと返せばいいのだろうか。マナー講師の諏内えみさんは「『ありがとうございます』『すみません』という言葉は避けたほうがいい。『恐れ入ります』『痛み入ります』としたほうが場に適した表現といえる」という――。 ※本稿は、諏内えみ『一生ものの「正しい敬語と上級の気遣い」 先生! ダメダメな私を2時間で仕事デキる風にしてください!』(KADOKAWA)を再編集したものです お通夜やお葬式で絶対に口にしてはいけない言葉 冠婚葬祭の中でも、失敗できないのがお通夜とお葬式。悲しみに満ちた場では、ちょっとした失礼や失言でも人を深く傷つけることになります。「もし自分が言われたら……」という想像力を持っておくようにしましょう。 お通夜やお葬式の時、ご遺族にどんな言葉をかけていいものかは誰もが悩むところ。だからといって、ご遺族に声をかけずにその場を辞することは、何よりも失礼にあたります。深い悲しみから一日も早く立ち直ってほしいという思いは理解できますが、「がんばってください」は配慮が足りず不適切です。これ以上がんばれないくらい辛い思いをしている人にとって、「がんばって」は禁句です。 「お力を落とされないように」は一般的な言い回しとされていますが、力を落とさずにいられないのは当然のこと。寄り添う気持ちに欠ける印象です。 まずは「お力落としのことと存じます」と傷心のご遺族に心を寄せた上で、「何かお手伝いできることがありましたら、おっしゃってください」と、どんなことでもいいから力になりたいという気持ちを伝えます。その思いは、きっと届くはずです。 定型句よりも伝わる言葉を お悔やみの言葉でよく知られているのは「ご愁傷様です」。この言葉は、お通夜に駆けつけてご遺族に挨拶をするシーンで用いられるのが一般的です。前項の「お力落としのことと存じます」は場を辞する時に言うことが多いので、「ご愁傷様です」との使い分けをしましょう。同じ言葉ばかりを使うのは、幼稚なイメージになります。 「ご愁傷様」は目上の方にも友人にも使える言葉ですが、もし故人やご遺族と親しい間柄である場合、「ご愁傷様」はよそよそしく感じられるかもしれません。定型句のような汎用性の高い言い回しは、相手を選ばずに使える反面、誰に対しても言えるという点で心がこもっていないととられる可能性もあるのです。 正式なマナーとは少し異なりますが、親しい方のお通夜に駆けつけたときの第一声は、「ご愁傷様」ではなく、「このたびは……」と言葉にならない悲しみをご遺族と共有する形でもいいかもしれません。 お悔やみの言葉はハキハキと明瞭に言う必要はなく、言葉を濁して語尾を小さく言ってもかまいません。時として、言葉にならない気持ちをそのままにご挨拶する、という方が思いが伝わることもあるのです。 「ありがとうございます」「すみません」は不適切 身内が亡くなった時は、参列者から挨拶を受ける立場になります。「ご愁傷様です」と言われた場合、何と答えるのが適切でしょうか。 一般的には「恐れ入ります。生前は○○が大変お世話になりました」です。「恐れ入ります」は「すみません」を丁寧にした形ではありますが、「参列してくださって恐れ多いこと(ありがたいこと)です」というお礼の意味もあります。 「恐れ入ります」に似た意味の表現に、「痛み入ります」があります。「ご丁寧に、痛み入ります」と使います。あまりの感謝に恐縮し、心苦しく思うという意味で、「恐れ入ります」よりも若干恐縮度が高いニュアンスがあります。 ちなみに、「恐れ入ります」も「痛み入ります」も、お通夜やお葬式だけでなく、結婚式に参列してくださった方へのお礼の際にも用いる表現です。 お悔やみの言葉をいただいて、「ありがとうございます」と言うのはお勧めできません。気持ちはわかりますが、場に適した言葉を使うようにしましょう。「すみません」も同様です。つい言ってしまいがちな言葉なので、気をつけましょう。 知っておいて損はない「死」についての言葉 死についての表現には、いくつかあります。身内の死については、「他界いたしました」「永眠いたしました」「死去いたしました」となります。 「亡くなる」は基本的には敬意表現になるので、身内に使うのはふさわしくありません。ただし、「死にました」というとあまりにダイレクトで少々乱暴に聞こえてしまうので、話し言葉として「亡くなる」を使うのは問題ないでしょう。 死の尊敬語は「逝去」です。弔電などの書き言葉では、「○○様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます」とします。「謹んでお悔やみ申し上げます」は話し言葉でも使うので、覚えておきましょう。 時折耳にするのが「お亡くなりになられました」という表現。これは「亡くなる」+「~になる」の二重敬語であり、敬意表現として正しいものではないのですが、マナー違反ととがめられることはないようです。 深い悲しみで皆が動揺している場面では、正しさよりも気持ちを優先する傾向にあるのです。 招待した方もされた方も幸せになるひと言 結婚式に招待された場合、新郎新婦にはもちろん、そのご家族にも挨拶をするのが礼儀です。「おめでとうございます。すごいですねー」で終わらせることのないよう、最低限言うべきことを身につけておきましょう。 新郎新婦とご家族、どちらに対しても基本構造は同じ。「お祝い・感謝・ほめる」のセットで挨拶をします。 (1) まずは「本日は誠におめでとうございます」というお祝いの言葉。新郎新婦が友人であれば、「本当におめでとう!」でもかまいません。(2) 次に、「お招きいただきありがとうございます」という感謝の言葉。ここは、新郎新婦にもきちんと伝えたいところです。(3) 最後に「素敵な会場ですね」や「和やかで楽しい披露宴でした」など、式や披露宴の会場や雰囲気などを称賛する言葉を付け加えます。 お祝い・感謝に何が素晴らしかったかを一言伝えると、招待した甲斐があったと思ってもらえます。招待した方もされた方も幸せな気持ちになるコミュニケーションです。 正しいマナーの土台にあるのは相手への気持ち 結婚式の招待状には、出席・欠席を知らせるハガキが同封されています。これを正しく記入できると、社会人として一目置かれることでしょう。 出席にしても欠席にしても、「御出席」「御欠席」と書かれている「御」の文字を消すのは知っていますよね。もし出席するなら「御出席」の「御」と「御欠席」を、欠席するなら「御欠席」の「御」と「御出席」を消します。同じように、「御住所」「御芳名」の「御」と「芳」も消します。 文字を二重線で消すのが一般的ですが、「御」や「芳」の上に「寿」を重ねて書くことで消す方法もあります。覚えておいて損はありません。 やむをえず欠席する場合は、余白に「おめでとうございます。出張中につきおうかがいできず大変残念です」と書き添えます。無言で欠席するのではなく、お祝いの気持ちと、本当は行きたいのにやむをえず欠席することを伝えるようにしましょう。 どんな場面でも、気持ちを言葉に乗せることが大事です。正しい言葉遣いやマナーは、気持ちという土台があってこそ生きるもの。気持ちと言葉は不即不離なのです。両方を的確に正しく表現できる人が「デキる人」であり、信頼されて出世できる人でもあるのです。 諏内 えみ(すない・えみ)「マナースクール・ライビウム」「親子・お受験作法教室」代表 VIPアテンダント業務を経てスクールを設立。上質なふるまいや会話、社交術、テーブルマナーが学べるオンライン講座『Class the SUNAI』を主宰。難関幼稚園、名門小学校合格率95%のお受験講座は「にじみ出る育ちの良さ」が身につくと話題に。映画やドラマで女優への所作指導のほか、テレビ出演多数。著書に『「育ちがいい人」だけが知っていること』(ダイヤモンド社)』など。
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ryuchell 息子とお出かけ中に「だいぶ成長したな」と感じた出来事とは
現在4歳になる男の子を育てるpeco(ぺこ)さんとryuchell(りゅうちぇる)さん。昨年8月、婚姻関係を解消しましたが、これまで通り3人で「新しい家族の形」を築いていくことを公表しました。本連載では、お二人の日々の育児や家庭について交互に語ってもらっています。今回はryuchellさんに、最近、息子と過ごした出来事について話を聞きました。 * * * 少し前ですが、息子とサンリオピューロランドに行ってきました。息子はポムポムプリンが好きで、私もキティちゃんが好きなんです。 とても盛り上がったのは、歌舞伎とキティちゃんがコラボしたミュージカル(KAWAII KABUKI ~ハローキティ一座の桃太郎~)です。息子はかわいいけど、格好いいというのが好きなんですね。いいところで観たかったので、早く席を取りに行って、前の席で観ることができました。 実は、このミュージカルはもうすでに4、5回くらい見ています(笑) パフォーマンスがとてもすばらしいんです。ダンサーは格好よくて、華やか。キティちゃんやポムポムプリンたちが出てきて、歌舞伎のメイクや着物の姿ですが、かわいらしさもあります。それで鬼退治をするんです。 その他にも、キティちゃんが作ってくれるポップコーンを食べたり、アトラクションに乗ったり、かわいいランチを食べたりと、大満足でした。 サンリオには行く度に、お土産を買っています。大きなお人形とかは家にあるので、「今回はちっちゃいのだよ」と約束したら、ポムポムプリンのついたキーホルダーを持ってきました。とてもかわいかったです。 一緒にお出かけして、改めて息子もだいぶ成長したなと感じることがいくつもありました。 サンリオには電車で行きましたが、最近はどこにいくにも、「抱っこして」とは言わなくなりました。手はつないで一緒に歩いています。抱っこしなくなった分、外出がとても楽になりました。 電車でサンリオに行くと、次第に窓から見える風景が自然いっぱいな感じに変わるんですよね。「お山が見えてきた!」とか窓から見える外の風景について共有して楽しめる年齢になってきました。 私は電車には普段あまり乗らないので、乗り換えを間違えてしまって。それで乗り換えたら、また間違って……。そしたら、息子も優しくて「大丈夫だよー」ってフォローしてくれました。イヤイヤ期もありましたが、頼れるお兄ちゃんになっているんだなと感じました。 最近は、息子と一緒にカラオケにも行きました。息子はカラオケで歌うのも大好きです。 歌うのは、NHKの「おかあさんといっしょ」に出てくるような子どもの曲です。息子が選曲して歌っています。私が好きな曲とかは歌わないです。それはもうちょっと大きくなってからかなと思っています。 カラオケは子どもが喜ぶようなものが多くあって、いいですね。 デンモク(選曲・予約する通信機器)の機能に、お絵かきできるものがあって、息子はそこで恐竜とか、キティちゃんの絵を描いていました。3時くらいにいったので、おやつにスイーツも食べました。キッズルームもあるカラオケ店で、滑り台とかつみ木で遊びました。2時間くらい満喫しました。 息子は肩車が大好きなので、家でよく肩車をして、歩き回っています。身長も大きくなって、体重も重くなってきているので、最近は重くなってきたなぁと思います。まだしばらくはできると思いますが、そのうち難しくなるんですね。できるときまで肩車したいと思います。 私のSNSでは紹介できていませんが、息子との時間も大切に過ごしています。一緒にいると予想外のハプニングも起こりますが、「あぁ、どうしよう」と思うよりも、「なんくるないさー」(なんとかなるさ)の精神で子育てしています。 (構成/AERA dot.編集部・吉崎洋夫)
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King & Prince 岸優太が語る 芝居で見つめ合った美 少年・浮所飛貴の「すきすき」なところは?
1月にスタートし、27日深夜に最終回を迎えるドラマ「すきすきワンワン!」に主演した King & Princeの岸優太さん。元愛犬と恋に落ちるという奇想天外なラブコメディーについて、いろいろ聞きました。元愛犬役を演じた浮所飛貴さん(美 少年)との対談も必見!小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」2月号(2023年1月14日発売)からお届けします。 * * * ■生まれ変わりがあるなら鳥になりたい ドラマ「すきすきワンワン!」は、夢も希望もない、人生諦めモードの雪井炬太郎(岸優太)のもとに、幼少期に飼っていた愛犬「てん」の生まれ変わりだと名乗る男、木ノ宮天(浮所飛貴)が現れる。てんとの出会いで炬太郎が成長していく物語だ。 ――台本を読んだ感想は? 設定自体がいい意味でぶっ飛んでいるので、面白いなと思いました。浮所くんとは至近距離でお芝居をする「見つめるタイム」というものがあって、それを見たときはびっくりしましたし、要所要所でびっくりしてます(笑い)。 ――炬太郎の印象は? てんに対して毒を吐いたりする面もあるんですけど、根はいいやつなんです。頑張ろうとして空回りするところなんかは自分と似ていて。僕も空回りしかしてないので(笑い)。だから「わかるなぁ」と思う一方で、演じるのはすごく難しい役ですね。ファンタジックな中にリアルな日常も描かれているので、どれぐらいのテンションで「ごく普通の26歳」を演じればいいのか。でも監督がお手本として演じて見せてくれたりしたので、参考にしながら演じました。 ――てん役の本物のワンちゃんとは仲良くなれました? 現場のアイドルなんですけど、僕には全然懐かないんですよ。ボールを投げても持ってこないし、お手すらもしてくれなくて。僕に対してだけ猫みたいな感じ。でもそういう塩対応なところもかわいい。NGもほとんど出さないし、堂々としていて、見ていて勉強になってます。 ――ちなみに、てんのように「元愛犬の生まれ変わりです!」という人が現れたらどうします? 絶対に信じない! いや、いくらどうしゃべってきても、めちゃくちゃ勘ぐりますね(笑い)。でも「よく○○川に行ったよね!」みたいな、散歩に行ってた場所の詳細まで言われたりしたらビビりますね。でも、信じたとしても恋に落ちる可能性はないかなぁ。「家族」という感覚のほうが大きいので。 ――もし生まれ変わりがあるなら次はどんなことをしてみたいですか? シンプルですけど、鳥になりたい。ツバメがいいですかね。風を切って気持ちよく大空を飛んで……もちろん鳥だって大変な世界だと思うんですよ。大雨が降ったり大風が吹いたり、過酷かもしれないけど、「飛ぶ」ということに挑戦してみたい。 ――ドラマは「愛し愛されて成長していく物語」とのこと。岸さんも「愛し愛されて成長した」と感じるエピソードはありますか? それはやはりファンの方々との関係ですかね。過去に、僕がしてきた数々の失敗の瞬間を見ていただいているので……僕としては見せたくない姿なんですけど(笑い)。それでも優しく応援してくださって。感謝しかありませんね。こちらもそのぶん、お返ししたいなと思って頑張ってきたので、双方向の気持ちがあると思います。 ――最後にドラマの見どころと、この物語を通じて伝わるといいなと思うことを教えてください。 てんとのやりとりも見どころですけど、てんと出会うことによって変わっていく炬太郎はいろいろなことに挑戦します。まっすぐに立ち向かう姿勢と、少しずつ成長していく姿を楽しんでほしいですね。人は巡り合う一つひとつのもので人生が変わる。出会いや経験していくことの大切さが伝わるといいなと思います。「よし、明日も頑張ろう!」と思える活力と癒やしを提供しますので、ぜひ見てください! ■スペシャル対談 岸優太さん×浮所飛貴さん(美 少年/ジャニーズJr.) ――一緒にお芝居をした感想は? 岸 バラエティーでしか会ってなかったから、最初は不思議な感じはありましたね。でも日にちを重ねて息が合ってきた。今ではむしろ、バラエティーで会うほうが違和感です。 浮所 逆にね(笑い)。僕は元犬の役なので距離感がおかしいんですよ。岸くんの膝の上に座っちゃうシーンを台本で読んだときは「どうしようかな~」と思いましたけど、いざ撮影をしてみたら楽しくて。これぐらいの距離で(手の平を顔の真ん前に当てる)岸くんの顔を見られたので貴重でした。 ――元犬の習性で「ペロペロしてぇ」と心の声が漏れるシーンも。照れなかった? 浮所 そのセリフは寝てる岸くんの顔を見つめて思い出したように言うんですけど、しばらく僕たちの間ではやりましたよね。 岸 そう。カメラ回ってないところで「耳元でささやいてもらっていい?」って。僕も求めてました。 浮所 アハハ! あと、いろいろな言葉を「ペロペロしてぇ」と言い換えて話したりしてました。もう、照れません! ――お互いの「すきすき!」なところは? 浮所 人柄の良さ、顔を見てもわかる性格の良さが大好きです。いいお兄様って感じ。その優しさにはほれてしまいますね~。 岸 知識が豊富なので一緒に番組に出てるとき、いろいろヒントがもらえるんですよ。僕が知らないっていうのもあるんですけど。いろんな場面で助けてもらってます。 (取材・文/大道絵里子) きし・ゆうた/1995年9月29日生まれ、埼玉県出身。King & Princeのメンバー。ドラマやバラエティー番組でも活躍中。2023年夏公開予定の映画「Gメン」では映画初主演を飾る。
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棋王戦五番勝負で勝利し、史上最年少で六冠達成の藤井聡太 「最後まで全くわからないまま指していた」
藤井聡太が棋王戦五番勝負で10連覇中の渡辺明を破り、史上最年少で六冠を達成した。残るタイトルは名人と王座。史上初の八冠制覇が現実的に想定しうる段階に入った。AERA 2023年4月3日号の記事を紹介する。 * * * 将棋界の若き王者が、ほとんど完璧に近い年度を、最後も華麗に締めくくった。 藤井聡太挑戦者(20)が渡辺明棋王(38)と対戦する棋王戦五番勝負第4局は3月19日、栃木県日光市でおこなわれ、132手で藤井が勝利を収めた。藤井は3勝1敗でシリーズを制し、初めて棋王位を獲得した。 「棋王戦では前期までなかなか、よい成績を残せていなかったので。今期、五番勝負まで進むことができて。その中でなんとか、本当に大変な将棋ばかりだったんですけど、結果を残すことができたというのは、非常に嬉しく思っています」(藤井) 将棋界の序列では、藤井が1位で渡辺が2位。両者の対局のほとんどは熱戦、名局となる。今回もまたそうだった。 「判断が難しい局面が続いた一局だったかなと感じています」(藤井) 基本的に藤井は作戦面において、相手の注文をすべて受けて立つ王道の姿勢だ。棋王戦五番勝負と並行しておこなわれた王将戦七番勝負では、挑戦者の羽生善治九段(52)が様々な工夫を見せ、全6局すべて戦型が異なるシリーズとなった。 ■相手の歩の上に桂馬 対照的に棋王戦では、すべて現代最新の角換わりとなった。作戦家の渡辺にとっても、番勝負を通じて全局同じ戦型というのは、初めての試みだった。 観戦者には難解すぎる序中盤を経て、見ごたえのある攻防が長く続いた。 「本当に最後まで全くわからないまま指していたんですけど」(藤井) 使いづらい駒であるはずの桂馬を、藤井は終始、うまく使った。そして最終盤、相手の歩の上に桂馬を打ち捨てる妙手を放って、きれいに決めてみせた。 「負けました」(渡辺) 「ありがとうございました」(藤井) 両者が深く一礼をかわして終局。長く続いた渡辺の棋王戦連覇記録は、10でストップした。 「うーん……。そうですね……」 シリーズを振り返るコメントを求められた際、いつも明朗闊達な渡辺にしては珍しく、なかなか次の言葉が出てこなかった。 「負けてしまった将棋があんまり、チャンスがなかったので。もう少しチャンスがある将棋にしないと、やっぱりなかなか、結果はついてこないというか。まあ、そういう感じですね」 渡辺ほどの実力者が周到な事前準備をしても、現在の藤井を止めるのは容易ではないのだ。藤井が突出した存在となるまで、現役最強の棋士は渡辺と言われていた。歴史に「もし」はないが、もし藤井さえ現れなければ、渡辺の地位はいまも揺るぎないものだった可能性は高い。なにしろ渡辺は年下を相手にして、藤井以外にタイトル戦で敗退したことがないのだから。(ライター・松本博文) ※AERA 2023年4月3日号より抜粋
AERA
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「オータニ」が必要だった3月 女性支援団体Colaboを「とても楽しそう」に攻撃する男たちに言葉失う
作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、「オータニ」の凄さについて。 * * * 今月、私が一番発した言葉は「オータニ」かもしれない。 圧倒的なあのきらめきはいったい何だろう。BTSを初めて見たときに、「想定を超える未来って存在するんだな」と、その未来感、その希望的存在に衝撃を受けたものだけれど、BTS(7人です)=1オータニ……くらいの単位で、今のオータニは眩しい。オータニの横に並ぶと、あのダルビッシュにすら影が見えてしまう。光って凄いな……と思います。 なにより凄いのは、「日本はおかしい。なぜ連日、トップニュースがWBCなのか?」とメディアへの義憤にかられる女友だちですら、「オータニは好きだけどね」とひとこと言わずにはいられないことだ。ふだん「信用できるオトコなんていない」と、男性への不信を語るフェミ友ですら、恐る恐る「オータニってどう思う?」と聞いてみれば、「いいよね!!!」と顔が明るくなる。もちろんそれは「野球の腕が凄い」ということではなく、「何だか分からないけど、あの人凄い」という称賛である。いったい、これはどういう現象なのだろう。 大谷翔平の凄さとは何なのか……なんてことを考えていたとき、Twitterでトレンドに入っていた言葉に膝を打つような思いになった。 「大谷翔平のただしさと息苦しさ」だ。 思わず声をあげて笑ってしまう。その瞬間にスルスルと理解する。野球に関心などなく、プロ野球は特に苦手で、マッチョな男集団を怖いと感じる女ですら(私です)、オータニへの好意を語らずにはいられない理由について。 そもそも、これはTwitterで、オータニは「高校生みたいでキモい」「ネオテニー(幼形のまま成熟した状態)っぽい」とか、「欠点がない=人間的魅力がない」「無機質だ、男性のメス化だ、中性化だ」など、オータニの光を前にした男たちが「僕はオータニを認めない」というようなことを口にしたためにボコボコにされる様を見た男性ライターの有料noteのタイトルである。 つまり、オータニは一部の男たちにとり「正しく」、それ故に「息苦しい」存在ということのようだ。ライターの意向は他にあるのかもしれないが、Twitterでは思い思いの解釈でバズったのだろう。なかなかの島国的発言、ホモソ(男性中心社会ですね)の日本男子的な正直な感覚に私には見える。そしてそれ故に……オータニの正しさと、その正しさで焼かれている男たちの存在が見えるからこそ、女はオータニに希望と未来を見いだしオータニを語りたがるのかもしれない。 ある種の男性たちは、オータニが「男というだけでは連帯しないタイプの男」であることを繊細に敏感に見抜いているのだ。どこかで目にした記事だが、オータニは男どうしの下ネタに交わろうとせず、女性を性的に嘲笑する仲間をたしなめたことがあるという。そのエピソードが事実かどうかは分からないが、「そういうこと、オータニさんならあるだろうな」と思わせる説得力がオータニにはなぜかある。根拠はないが、なぜか、ある。それが先の男性たちの「オータニが性的な成人男性に思えない」発言につながるのだろう。この場合の「男」とは、間違ったことも、キモいことも、不正義も、男どうしならば……と互いに目をつむり許しあえる、ぬるい男湯で生きられる日本の男ジェンダーのことである。オータニはそのぬるま湯には入ってこない、そもそもそのぬるま湯が嫌なのでは……というのが伝わるからこそ、ある種の男たちはオータニに傷つくのかもしれない。 と、野球に全く関心ないくせに、エラソーにオータニさんを語ってしまってすみません。でも私には今月、オータニが必要だったのだ。 今年に入ってから女性支援団体Colaboへの誹謗中傷が激しさを増している。私も何度か歌舞伎町に通い、この目でColaboを攻撃する男性たちの姿を見てきた。「女性を尊敬してます~」とヘラヘラし自慰行為のフリをする男性、「帰れ!」と抗議する女性たちに「バレンタインだから」とチョコレートを無理やり渡そうとする男性、「公金チューチュー」と楽しそうに罵倒する男性、「ババアか? 気持ち悪いんだよ、ババア」とババアババアを連呼する男性……。デマからはじまったColabo叩きは、東京都が助成金の過払いはなく、返還請求は行わないことを明らかにした今も熾烈化している。都は「安全が確保できない」として、Colaboが新宿区役所前で続けてきたバスカフェの中止を要請した。中止はきっと妨害者たちの成功体験になってしまったことだろう。 私が本当に驚くのは、彼らが「とても楽しそう」なことだ。女性を罵倒し、性的なことを言ってはゲヒヒと笑い、女性が真剣に怒れば怒るほど楽しげに振る舞うことだ。オンライン上に溢れる匿名の下卑た連帯が、そのままリアルに目の前で動く衝撃は、やはり強い。女性たちが少女を支援する現場にわざわざやって来て、女虐めの「悦楽」に浸る男たちを目の前に、凄い世界になったと言葉を失う。苦しいのは、彼らが「特殊な一部の先鋭的な集団」に思えないことでもある。実際に行動に移すのは一部の人たちであるとしても、彼らが街に繰り出すまでの煽りの空気は、十分にもうこの社会にある。陰湿に女性を排除してきた社会がじわじわと育ててきた結果だ。 そんな世界から自分の心を取り戻すために、今月はオータニが必要だったのかもしれない。ミソジニーでホモソーシャルな空気をまとっていない(ように見える)オータニさんの“正しさ”に、ようやく深い呼吸ができた。男どうしの「な?」が通じそうもない男に、ある種の男たちが感じる不安の正体を知ることもできた。そして、そんな男どうしの「な?」の通じない世界の風通しの良さを私は心から願っていて、その象徴にオータニさんがいたのかもしれない。女虐めを悦楽にする男たちの下卑た笑いをオータニの最強の光で燃やしてくれればいいのにな。まじで、オータニさんがいなければ3月を乗り切れなかったかも。ありがとう、オータニ。そして東京都は、Colaboのバスカフェ、再開を認めてください。
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12時間前
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「タモリ倶楽部」昔はありえない企画も 吉田豪に聞くロスを癒やす方法
地球がある限りずっと続くものだと思っていた平和ボケの頭に、「終了」という一撃をガツンと食らわせた「タモリ倶楽部」(テレビ朝日系)。 プロ書評家・プロインタビュアーの吉田豪さんは1999年、タレント本コレクターとしてタモリ倶楽部にゲストとして初出演した。まだ吉田さんが数回しかテレビに出ていないとき。いわばメジャーデビューのようなものだったらしい。 「その後トータルで3回出ていて、最後に出てから10年経ってますね」 思い出に残っているエピソードは、2007年、亡くなったプロレスラーのカール・ゴッチを追悼する回に出演したときのこと。ゲストは、浅草キッドと元プロレスラーの山本小鉄、そして吉田さんだった。 「収録前、ゲストがテーブル席で雑談していたら、僕の隣にタモリさんが座ってきて。タモリさんと小鉄さんが、まったく僕が入れないゴルフの話で盛り上がっちゃったんですよ。すぐに浅草キッドはエスケープして、僕は壁とテーブルに挟まれて身動きも取れず。すごく貴重な現場にいるのに、話にも入れないという本当にもったいない時間を過ごして。本番ではタモリさんとプロレス界の意外な接点の話をボクが振って盛り上がりましたが、盛り上がらなかった本番前が印象的で(笑)」 番組初期こそ、連続メロドラマの主演を務めたりとがんばっていたタモリだが、まもなく脱力ぶりを発揮。現場でも、すっかり脱力したタモリを目のあたりにすることも多かったという。 例えばカメラが回って、さあ今から本番というとき、隣のみうらじゅんにタモリが、どうしようもない下ネタ入りの夢の話をし始めて、いつまで経っても本番が始まらない、など。 同時に番組の内容も脱力化していった。初期は今ならありえないようなニッチな企画も多かった。 コーナーも「東京トワイライトゾーン」とか、「夜の英会話」とか、完成度の高いいろんな企画が目まぐるしく登場。ところが最終的には「『空耳アワー』がおもしろすぎて(笑)」(吉田さん)固定に。 「新陳代謝がなくなったことで、さらに脱力した平和な番組になっていきましたよね。そうして脱力したタモリさんを支えるように、安齋肇さんや渡辺祐さん、山田五郎さんを筆頭とするサブカルの人がメジャーな場に出るお試しの場になっていた番組でした」 やがてサブカル有名人も高齢化して、そもそもサブカルというジャンルも消滅したような状態に。 「ドン荒川さんという“前座の力道山”の異名を持つプロレスラーの物語を、まるまる30分やるとか、昔はありえない企画をいっぱいやってたんですよ。ところが今は発掘するべきサブカル有名人もいなくなり、上坂すみれさんとか星野源さんとか若い世代もいたけれど、攻めたキャスティングはやりにくくなった気がします」 で、このロス、どう乗り切ったらいいですか? 「地上波でサブカルに浸かれる最後の番組かもしれません。でも今は配信イベントなど、居ながらにしてサブカルを楽しめる場所はいくらでもある。課金すれば、楽しいものにちゃんとたどり着けると思いますよ。僕も誰よりも配信イベントに課金して、原稿書きながら楽しんでます」 「タモリ倶楽部」に代わって、自身の目で新しいサブカルスターを探す。これが「タモリ倶楽部」ロスを癒やす秘訣かも。(福光恵)※週刊朝日 2023年4月7日号より抜粋
週刊朝日
17時間前
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“黄金世代”の選手にも徐々に明暗 女子ゴルフ界の一大勢力の現在地
「あ、また勝った」 これは先日、女子ゴルフの国内ツアーを見ていた時に頭に浮かんだ言葉だ。 本原稿のテーマは“黄金世代の現在地”。ここ数年、国内女子ツアーは20代前半の若手が席巻しているが、その筆頭といえる“黄金世代”の面々が、どのような現状にあるのかをまとめようというものだ。 で、冒頭の言葉。ここまで言えば、ゴルフファンならこれが誰のことを指しているか想像がつくだろう。 12日まで高知県の土佐カントリークラブで開催されていた国内女子ツアー第2戦の明治安田生命レディス ヨコハマタイヤゴルフトーナメントを制したのは、“黄金世代”の一人、吉本ひかるだった。 吉本は、2打差単独トップで最終日をスタートすると前半で1つスコアを落とし、ささきしょうこに逆転を許す場面もあった。しかし、後半に4つのバーディを奪い通算19アンダーでプレーオフに突入。ささきとのプレーオフでは2ホール目にバーディを奪ってツアー初優勝を飾った。 2019年のフジサンケイレディスでも今回と同じく最終日を2打差の首位で出たが、この時は申ジエ(韓)に逆転されて涙を流した。今回は、プレーオフにもつれ込む接戦となったが、最後は4年前の悔し涙を嬉し涙に変えた。 では、ツアーを席巻する“黄金世代”はどのような活躍をしているのか? 個々に見ていきたいと思う。いわゆる“黄金世代”は、一般的に1998年4月から1999年3月までに生まれた女子プロゴルファーを指す。吉本のツアー制覇で、“黄金世代”のツアー覇者は12人目となったが、今回は吉本のように優勝歴のある12名についてチェックしていきたい。 “黄金世代”の中で最も早くツアー優勝を果たしたのは、勝みなみだった。勝が優勝したのは2014年のKKT杯バンテリンレディスで当時の勝は高校一年生。15歳293日でのツアー勝利は、ツアー史上最年少優勝記録という偉業だった。 2017年のプロテストに合格した勝は、2018年の大王製紙エリエールレディスオープンでプロとして初勝利すると2020年以外は毎年2勝しており、ここまでメジャーの日本女子オープン2勝を含むツアー通算8勝を記録。今季からは米女子ツアーに本格参戦し、海外メジャーVを目指している。 2023年3月現在、“黄金世代”で一番優勝回数が多いのは畑岡奈紗だ。初優勝は2016年の日本女子オープン。これは国内メジャー史上初のアマチュア優勝という偉業だった。 そんな畑岡はプロ転向してから米国を主戦場としており、2018年には19歳で、NWアーカンソー選手権でツアー制覇を達成。昨年はDIOインプラントLAオープンでも優勝するなど、ここまで国内5勝、海外6勝と“黄金世代”を牽引する活躍を見せており、今季もさらなる活躍が期待されている。 “黄金世代”において日米両ツアーの合計優勝回数で畑岡に続くのが小祝さくらだ。2017年のプロテストに合格した小祝は、本格的な参戦となった2018年から4シーズン連続で、賞金ランクでトップ10入り。2020-21シーズンは2億円以上を稼ぎ出し3位にまで躍進した。 鋭いショットとは対照的な素朴でおっとりとしてキャラクターはファンの間でも人気だが、実力は上記の通り折り紙付き。2019年の初優勝を皮切りに昨季も2勝するなどここまで通算8勝しており、こちらも“黄金世代”を代表する女子ゴルファーの一人。そろそろメジャー優勝も果たしたいところだ。 「“黄金世代”といえば?」と聞かれたら、一番この女子プロの名前が多く挙がるのではないだろうか。渋野日向子だ。渋野は2019年のAIG全英女子オープンで、樋口久子以来、42年ぶりに日本人メジャー優勝を果たすと一躍ヒロインに。国内で2勝すると海外メジャー初挑戦となった大舞台で、当時の国内ゴルフ界で最大の快挙を成し遂げた。 同年の渋野はツアーで4勝し賞金ランクは2位。LPGAメルセデス最優秀選手賞などツアーの各賞も多数受賞し、日本中に「シブコ」のニックネームが知れ渡ったことは記憶に新しいだろう。 そんなシブコは、コロナ禍の2020年こそ未勝利だったが、2021年に2勝しツアー通算6勝をマーク。2022年からは舞台を米女子ツアーに移し全英女子オープンに続く海外メジャー2勝目を目指しているが、いまだに国内では“黄金世代”の顔としてその存在感はピカイチと言える。 ツアー屈指の人気を誇る原英莉花も“黄金世代”の一人だ。ツアーの優勝回数こそ4回と、ここまでに挙げた4選手と比べれば劣るが、2020年に日本女子オープン、JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップとメジャーで2勝しており大舞台に強い。 2021年の大王製紙エリエールレディスオープンで4勝目を挙げた後は未勝利で、2022年のメルセデス・ランキングも31位と納得がいくものではなかっただろうが、その存在感は抜群。昨年はツアーのアンバサダー役「JLPGAブライトナー」6名のうちの一人に選出されており、ツアーのPR役としても期待されている。こちらもツアーの顔として、2シーズンぶりの優勝が待たれるところだ。 渋野と仲の良い大里桃子も“黄金世代”の一角だ。2017年にファイナルQTの資格でツアー参戦していたが、2018年7月にプロテストを3位で通過すると翌月のCAT Ladiesでいきなりツアー初優勝。その後2年間、勝利から遠ざかっていたが、2021年にはほけんの窓口レディースでツアー2勝目を挙げている。身長171センチと体格にも恵まれており、これからさらなる飛躍が期待できるだろう。 植竹希望と高橋彩華は、昨年、念願のツアー勝利を挙げた“黄金世代”だ。植竹はKKT杯バンテリンレディスオープンで優勝し同世代10人目のツアー覇者になると、高橋はフジサンケイレディスクラシックで勝利し同世代11人目の優勝メンバーに。ともにコロナ禍でも安定した成績を挙げており、今季はさらなる飛躍が求められている。 一方、ここまで取り上げた“黄金世代”に少し差をつけられ始めているのが、新垣比菜、河本結、淺井咲希の3名だ。新垣は2018年にツアー初勝利を飾ると、河本、淺井は2019年に初優勝。その勢いでさらなるステップアップが望まれたが、3者ともこの1、2年は厳しい戦いを強いられている。 まず新垣は、2022年に富士通レディースで単独3位になったものの、予選落ちが続きメルセデス・ランキングは85位。ステップアップツアーの京都レディースオープンで優勝する明るい話題もあったが、2シーズン連続でシード権を失い今季はQTランキング14位での出場となった。 河本は、2020年に主戦場を米国に置いたが、思うような結果が出せず2021年5月に帰国。その後も、調子がなかなか上がらず2023年シーズンもフルシードとはならなかった。前半戦で好成績を残さなければ、後半戦の出場は難しい状況。今季は開幕から3試合連続予選落ちとなっているが、奮起が待たれる。 淺井は2020-21シーズンにメルセデス・ランキングで56位に落ち込むと、2022年は同114位と低迷した。QTランキングも111位となっており、優勝経験がある他の“黄金世代”にやや水をあけられた状態だ。 しかし今年1月下旬になり自身のインスタグラムでプロキャディの栗永遼さんとの入籍を発表した。栗永さんは、淺井が初優勝した2019年のCAT Ladiesでバッグを担いだ存在。レギュラーツアーでの出場機会は限られるが、夫婦で力を合わせ復活したいところだろう。 ツアーを彩る“黄金世代”だが、このように優勝者12名の現在地には明暗がある。日本、そして海外で、彼女たちの2023年はどのようなシーズンになるのだろうか?
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「低学年からの先取りで勉強がイヤに」 中学受験のプロが口を揃える“いきなり座学”を始める弊害
「詰め込み」「偏差値」というイメージが強い中学受験。「受験のための勉強は子どもの将来に役に立つの?」「難易度より、子どもを伸ばしてくれる学校を選びたい」といった悩みを抱えている親御さんも増えています。思い切って「偏差値」というものさしから一度離れて、中学受験を考えてみては――。こう提案するのは、探究学習の第一人者である矢萩邦彦さんと、「きょうこ先生」としておなじみのプロ家庭教師・安浪京子さんです。今回は将来の中学受験のあり方について悩むお母さんからのご質問です。 * * * 【相談】中学受験を経験した先輩たちのご家庭を見ていると、小さい頃からガリガリやって希望校に合格している子もいれば、それなりにやって、それなりの学校に入る子もいます。お二人はどちらがいいと思いますか?(小2男子母) 安浪:かつて中学受験といえば「一生懸命に勉強をして少しでも偏差値が上の学校を目指す」が主流でした。でも今は、中学受験そのものに対する価値観が多様化し、従来通り最難関校・難関校を目指すことがゴールのご家庭もあれば、環境の整った私立であればどこでも良いというご家庭、志望校はないけれど無理しない程度に勉強は続けて御縁のあった学校に進学できればOK、というご家庭もあります。親がつきっきりで大量に勉強をやらせているご家庭もあれば、ほとんど親は関わっていないご家庭もあります。だから「どちらがいいか?」と聞かれても、各ご家庭の価値観次第なので、どちらがいいとは私には言えません。 矢萩:そうですね。まずはご家庭の「価値観」とご本人の「性格や性質」を確認することが大事ですね。その際、保護者が学生だった頃とは、時代が大きく変わりつつあることも考慮する必要があります。 安浪:今年高校に合格した元教え子は、すべて子どもに任せるというスタンスで、中学受験時代、親御さんはほぼ関与していませんでした。週末の午前中に指導に伺っていたのですが、いつも「今週もずっと遊んでいて、今朝も5時に起きて1週間分の宿題を慌ててやっていました」と耳打ちされていました。中学入試では御縁がなく公立中学に進学し、中学1、2年生の間も親御さんから「相変わらず勉強は直前詰め込み派です」とご連絡をいただいていたのですが、3年生になって本気を出し、最難関高校に合格しました。親が口を出すのは簡単ですが、家庭教師や塾といった環境だけは整え、本人が自覚を持つのを辛抱強く待つというのはなかなかできることではないな、と思いました。 ■「いきなり座学」は、幸せな学びにならない 矢萩:親がどれぐらいかかわるか、という議論の前に、勉強とは何か、ということを捉え直さないといけないと思うんです。4科の勉強を最初から座学でガリガリやらせるのは、おすすめできません。僕は、学びの入り口は何か親子で探究したほうがいい、とよく言っているのですが、それは、学びの入口が「テストのため」だったり、興味のないことを「暗記すること」ことだったりすると、高校や大学くらいになってつまずくことが多いんです。何かひとつ興味を持ったことを親子で観察してみたりして、なんでだろう?と疑問を持ったら、どう調べたらいいんだろう、誰に聞いたらいいんだろう、みたいなことを考えて実際やってみる。この基盤があると、自分で試行錯誤しながらやっていける底力というか、素養ができたりするんです。これが一切ないまま、いきなり自分で勉強をやらせるのも、親が干渉してやらせるのも、目の前のテストでは効果があるように感じるかもしれませんが、長い目で見ると逆効果になりかねない。つまり、基盤がないままだと、放任系でも、過干渉系でも、幸せな学びにはならないと思うんですね。今まで教え子たちを見ていても、順序やバランスは本当に大事だと感じています。 安浪:ただ、今は中学受験の準備もどんどん低学年しているから、基盤を築くときも親は頭の中でそろばん弾きがちですよね。これをやっておいたら算数の力がつくんじゃないか、これは国語の読解力がつくんじゃないか、とか(笑)。全部中学受験の点数にひもづけて考えてしまって、無欲でその基盤作りをできなくなってしまっている親御さんも多いような気がします。 矢萩:そうなんですよね。でも現実的なことを言うとダブルスタンダードでいいと思うんです。これは何か役に立つだろうな、とかこれは読解力に繋がるだろうなって思っていてもいい。いいけれども、それを子どもには言わないとほうがいいですね。例えばゲームをやるときに、このゲームは〇〇力がつくのよ、とか言ってやらせるのではなくて、一緒に遊ぼう、と言って遊ぶ。心の中でのみ、○〇に繋がるかもしれないな、と思っているぐらいがいいと思うんです。親や教師が、目の前のことだけを考えて、「成長や学びのため」と思わないのは不自然ですし、難しいですからね。 ■勉強の先取りで、むしろ学力が低下 安浪:特に今は中学受験の低学年化、勉強の先取り化が進んでいますが、それがゆえにむしろ学力が全体的に低下しているという事実を親御さんたちにはしっかり考えてほしいです。おそらく「早くやっておけば有利なはず」とそろばんを弾いてのことだと思いますが、中学受験の勉強に小さいうちから取りかかったからといって、学力が他の子より伸びる保証はありません。基盤がないうちに問題集ばかりやらされて勉強がイヤになったり、塾に行くこと自体が惰性になったりするご家庭は、決して少なくありません。あと、低学年のうちはやはり家庭での対話に集中する、とにかくそれに尽きるような気がします。そういうと皆さん、「うちはちゃんと会話しています」っておっしゃるんですが、よくよく会話を聞いてみると、言葉のキャッチボールをしていないことが多いんですよね。 矢萩:厳密いうと会話と対話って僕は違うものだと考えていて、会話は単なるおしゃべりでよいのですが、対話は相手の話を聞いて自分のマインドや行動が変わるかもしれない、という前提が必要です。ですから、対話は片方が言いたいことを言っているだけではダメなんです。 安浪:まして中学受験塾に行き始めると「あれやったの?」「これやったの?」「いつやるの?」など一方通行になりやすいです。これは対話とは言わないんですよね。単なる事実確認です。 矢萩:今、ChatGPTが話題ですが、これからよりデジタル化が進んで世の中も一層変わっていくと思うんです。そんな未来を見たときに、今の「事実確認」ってすごくデジタルなことなんですよね。そうではない、アナログな体験っていうものがどんどん学びの中でも減っていくと考えられます。ですから質問者さんのお子さんのような低学年のうちは、なるべく自然体験のようなアナログな体験や対話を増やしていくことが大事だと思うんです。紙の本を読むとか、お話を聞くなどもいいですね。デジタルな社会がやってくるのだから、デジタルじゃない体験量を意識して増やさないと、多分バランスが取れなくなってくるんじゃないかと思います。そういう観点を持っておくと、社会に出てからの生きる力にきっと繋がるだろうなとは思います。 ■絵本に勉強を求めていることに、衝撃を覚えた 安浪:絵本の読み聞かせに関して、以前、こんなご相談を受けたんです。「今まで頑張ってたくさん読み聞かせをしてきましたが、うちの子は全然話を聞いていないことに気づいて衝撃を受けました。これからは絵本の要約とかを毎回させたほうがいいのでしょうか」って。絵本に勉強を求めていると知って、結構衝撃を覚えました。 矢萩:それこそ、読み聞かせの中で対話ができていないんですよ。例えば読んでいる時に子どもの顔を見て、ゆっくり読んだり、スピードをつけたりなど読み方を変えたり、「これってどう思った?」と聞いてみたりといった対話的な読み聞かせもできると思うんです。一方的に自分のペースで読んで、「今までの話を要約して」みたいなことって、それはもう無茶な国語教育と同じです。 安浪:絵本って親子でお話を追っていく楽しさもあるけれど、子どもが挿絵を見てボーッといろいろ想像を膨らませたり、お母さんやお父さんの温かさに触れたり、文字情報を耳から音として入れたりなどいろいろな価値があるはずなんです。先ほど、デジタルとアナログの話がありましたが、今の親御さんってなんでもデジタル的に捉える傾向がありますよね。 矢萩:僕も息子に絵本の読み聞かせをするときがありますが、途中で止めて「この後どうなると思う?」と言うことはよくやるんです。はい、合ってました、残念、不正解です、という話ではなくて、たしかにそういう可能性もあるよね、そっちの世界線だったらどういうエンディングになったんだろうね、と対話していくのが楽しいのです。一つの絵本の中で、いろいろな可能性を一緒に広げていこうよ、という読み方はすごく面白いです。 (構成/教育エディター・江口祐子) ※矢萩邦彦さんの新著『自分で考える力を鍛える 正解のない教室』(朝日新聞出版)では、中高生や大学生を相手におこなっているリベラルアーツの授業をベースにした対話的な学びや、古今東西の偉人たちのエピソードも紹介しています。 【安浪先生、矢萩先生への取材を見学してみませんか?】本連載『矢萩&きょうこの「偏差値にとらわれない」中学受験相談室』の取材風景をオンラインで見学しませんか?4月6日(木)15時~16時半、zoomウェビナーで公開取材をします(参加者の顔出しはなし、アーカイブ配信なし。参加費無料)。当日は事前に用意した4つのお悩みをテーマに語っていただく予定です。お申し込みは以下から。質問も受け付けています(申し込みは3月31日まで)。https://forms.gle/ucZYDEoq7rqXDNsUA
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4月から「NHK受信料」未払いだと“3倍”の金額の請求が来る? 未払い者はどうなるのか
NHKとの放送受信契約に正当な理由がないにもかかわらず応じない人に、割増金を請求できる制度が4月に導入される。過去には受信料支払いの督促に応じない人や事業者にNHKが裁判を起こすこともあったが、新たな制度の創設で、支払いを拒んできた人たちは、より“痛い思い”をすることになるのか。 * * * NHKの放送受信規約が改正され、4月1日に施行される。新たな規約では、受信契約書の提出期限を明確にし、従来の「遅滞なく」から「受信機の設置の月の翌々月の末日まで」と規定された。 この期限内に受信契約書を提出しなかった場合と、受信契約の解約や受信料免除について、ウソなどの不正があった場合に、受信料の2倍に当たる額を割増金として「請求することができる」とした。未払いの受信料を入れると、3倍の金額を支払う羽目になる。 現在の受信料は振込払いの場合、一般的に1世帯あたり地上契約(地上放送のみ受信)が月額1275円で、衛星契約(衛星放送も受信)が同2220円。このため、未払いの場合は、地上契約だと1カ月あたり3825円、衛星契約だと6660円の請求が来る可能性がある(事業者の場合は、受信機のある部屋数などによって異なる)。 実は、受信料には5年の消滅時効があるが、NHKは「受信料のお支払いが滞っている分については、これまでどおり全額請求させていただき、時効の申し出があった場合には、時効を5年として取り扱います」としている。もし時効の申し出をしなかったら、一体いくらになってしまうのか……。長く支払って来なかった人は気が気でないだろう。 そもそも、NHKとの契約は放送法64条で「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、(略)受信契約を締結しなければならない」と定められている。 NHKのホームページには、「未契約の世帯や事業所に対しても、訪問や文書などを通じて受信料制度の意義を誠心誠意丁寧にご説明し、ご契約とお支払いをお願いしていきますが、こうした努力を重ねてもなお、ご契約いただけない場合の最後の方法として、受信契約の締結や受信料の支払いを求める民事訴訟を実施しています」とある。 過去には大手ホテルチェーンに対し、客室に設置されたテレビの受信料を支払うようNHKが裁判を起こし、19億円超の支払い命令が確定したケースもあった。 新たな規約によって、未払いを続けてきた個人や事業者はこれまで以上に“痛い思い”をすることになるのだろうか。 村松由紀子弁護士は、「受信契約書の提出期限というルールが明確になったことで、訴訟を起こした場合、今までより短期間で判決が出ると予想されます。裁判にかかる費用や労力も軽減されるため、NHKにとっては、訴訟手続きに移行しやすくなる面があるでしょう」と指摘する。 ただ、訴訟が増えるかどうかは定かでない。 新たな規約には割増金を「請求する」、ではなく「請求することができる」と、やや遠回しな文言が用いられている。このため、訴訟を起こす前に、割増金は請求しないことにして受信料を任意で支払うように促す、という運用をしていくことも考えられるという。 「いずれにしても、嫌々でも支払う判断をする個人や事業者が増える可能性が高いと思います」(村松弁護士) 最近では「チューナーレステレビ」と呼ばれる、地上波や衛星放送を受信するためのチューナーがないテレビが「NHK受信料を払わなくていい」と話題になった。ただ、テレビをチューナーレステレビに買い替えれば100%支払いを免れることができる、という単純な話ではないようだ。村松弁護士はこう注意を促す。 「放送法の『協会の放送を受信することのできる受信設備』には、ワンセグ機能付き携帯電話やテレビチューナー付きのカーナビ、テレビチューナー付きのパソコンも該当するとあり、受信契約の対象となります」 NHKの稲葉延雄会長は1月の就任会見で割増金について、「一律に条件に該当するからといって請求するわけではない。お客さまの個別の事情を総合的に勘案しながら運用していく姿勢にあると聞いている」と話した。 「割増金」の効果やいかに。 (AERA dot.編集部・國府田英之) 【訂正】 当初の記事では、地上契約と衛星契約を加算して「両方未払いの場合は未納分と割増金で1カ月当たり1万485円を支払わなくてはならない。年間で約12万6000円もの額になる。」と記載しましたが、個人(世帯)契約の場合は、衛星契約をすれば地上放送も受信できるため、地上契約と衛星契約を加算する必要はありませんでした。訂正します。
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江戸時代の武家地・番町で“セレブの乱” 日テレ旧本社跡地の再開発で火花
日本テレビ放送網が都心の広大な所有地で、千代田区を巻き込み、大規模再開発を進め、高さ制限緩和の見直しを求める住民と火花を散らしている。何が起きているのか。 * * * 皇居に近い東京都千代田区二番町の日テレの旧本社跡地で、再開発をめぐり地元住民から反対運動が起こっている。 1.5ヘクタールの広大なこの跡地は一部にテレビ塔とスタジオ施設がつくられているが、問題となっているのは、現在駐車場などとなっている残りの1ヘクタールだ。 日テレは高層ビルを建設する予定で、千代田区は建物高の制限60メートルを90メートルに緩和する方針だが、地元住民で組織する「番町の町並みを守る会」は、町の風格や雰囲気も壊すなどとして、この高さ制限の緩和に反対している。 守る会の顧問は榊原定征経団連名誉会長や田中信明元国連事務次長、福田博元最高裁判事、人間国宝で歌舞伎俳優の中村東蔵氏、ノーベル化学賞受賞者の野依良治氏、岡村勲元日弁連副会長など多士済々の顔ぶれで、さながら“セレブの乱”の様相を呈している。 開発計画をめぐるこうした問題は珍しくないが、気になるのは、区による住民への説明が不十分で、さらに日テレ側からの実質的な「巨額の寄付」が区の規制緩和方針に影響したのではないかという声が上がっている点だ。 「区はもう少していねいに進めるべきだ。住民への情報開示も十分ではない」と同区の小林孝也区議は指摘する。たとえば区が昨年7月に開いた住民説明会では、参加者全員に対して賛否の意見表明ができる形での開催が通常なのに対して、来場者に個別説明し、個別に意見を聞くだけだった。さらに、区が公表する開発計画の資料では高さ制限緩和に関する箇所が一見しただけではわかりにくく、見過ごされやすかったという。 こうした説明不足に加えて、守る会が問題視しているのが、日テレの区側への「巨額の寄付」だという。 日テレは先述した旧本社跡地のほか、隣接する四番町の所有地も含めた再開発を視野に入れているとされる。ここはもともと別の企業や番町教会があった場所で、現在は更地になっている。 話は数年前にさかのぼる。区の図書館や保育園、児童館などが老朽化で建て替えられることになり、仮施設が必要になった際、建設地として白羽の矢が立ったのが、日テレが所有するこの四番町の土地だった。関係者は「ほかに適当な土地がなかったので、区は日テレとどんどん話を進めた」と話す。 問題は、区の認可保育所と児童館の仮施設が建てられた約1400平方メートルのこの土地賃料が無償だったことだ。日テレサイドとしては、公益に供した土地として固定資産税の減免対象となるため、税負担を軽減できるメリットもある。 小枝寿美子区議によると、区議会は2016年度予算案を保育園と児童館の借地料1925万円(3カ月分)を含め議決。ところが議決後ほどなくして「いきなり契約書で無償になっていた」(小枝区議)。 区議会の議事録によると、前出の小林区議は16年10月の委員会で、使用貸借は賃貸借と違い、この契約を「無償の契約」にあたると指摘。通常は親子など密接な関係がある場合の契約のため、「日テレさんとは親子、兄弟のような密接な関係にあるのですか」と質問している。当時の区子ども部長は親子のような関係でないとし、有償でと伝えたが、日テレの強い意思があり、「地域貢献と申しましょうか、日本テレビさんの厚意ということで、ありがたくお受けさせていただいた」と説明した。 さらに小林区議は日テレが遊休地、更地を遊ばせず、区に貸すことで税負担を逃れているようにみえると指摘している。 小枝区議もこの委員会で「ただより高いものはない」「年間その分、寄付を受けていることになる」とただし、「寄付」の額よりも「大きなデメリットを生むのではないか」と懸念を示した。 そもそも土地賃料を支払うとすればどれくらいになるのか。 昨年9月の区の委員会で、区子ども施設課長は借地料を「年間で1億数千万円程度」と試算している。保育所や児童館の新設まではまだ時間がかかると見られ、年額1億数千万円相当の無償提供が続けば、総額は10億円単位になる。これが高層ビルの高さ制限の緩和の決定を左右したのではないかと守る会側は主張しているのだ。 日テレ旧本社跡地を含む二番町の計画地はそもそも都の再開発等促進区に該当する。区地域まちづくり課の担当者は、「都の促進区の運用基準に沿って進めていきたい」と強調する。運用基準の容積率は770%。日テレの計画は建物高の制限を90メートルにしても容積率は700%の提案だ。 広場や歩道の確保、地下鉄からのバリアフリー化など課題対応に関しても、容積率が「抑え気味の700%の提案は妥当」(区担当者)とする。 ■武家地であり文人が住んだ地 一方、守る会は高さ制限60メートルでも建築面積を広げて課題解決が可能と主張。建物高が90メートルから60メートルと低くなると、確保できる広場も2500平方メートルから2200平方メートルと狭くなるが、広さとしては問題ないとする。 区側は守る会の「広場や歩道を狭めても高さ制限の現状を維持すべきだ」という意見があることを踏まえた上で、住民アンケートでの結果などから「意見は拮抗している」としている。 日テレや関連企業、関係者を顧客とする地元商店街の人たちが多い二番町の町会は開発計画に賛成と伝えられていたが、ここへきてほころびも見え始めている。 二番町にあるグロービス経営大学院の堀義人学長が3月16日、二番町の町会で意見を述べる機会を奪われたなどとして東京地裁に民事訴訟を起こした。堀学長は守る会の共同代表だ。 守る会の関係者は、「2年前に策定した都市計画マスタープランは、区が2年をかけてつくった都市計画の憲法です。そこから日テレ所有地のみを切り離し、開発促進型の地区計画に変更している。教育施設、業務・商業施設が調和した住宅街と言えるのか」と語気を強める。 守る会の高さ60メートルを維持する提案について、日テレ社長室広報部は本誌の取材に「建築基準法に抵触するなど提案として成立していない」「区も確認済み」としている。 番町は江戸時代では武家地であり、近代では多くの文人が居を構えた地。 守る会は「自分の住む町について学び、語り、そして意見や気持ちを少しでも行政に届けたい」と訴えている。 住民の意見をていねいに聞き、合意形成に積極的に関わる姿勢が区に問われている。(本誌・浅井秀樹)※週刊朝日 2023年4月7日号
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ミッツ・マングローブ「WBCを直視できないイタい女装の話」
ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は「WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)」について。 * * * 「自分は赤信号に引っかかりがちだ」という人、少なくないと思います。しかしあれは赤信号の記憶ばかりが刻まれ、青信号ですんなり行けた時のことはほとんど憶えていないからだそうです。私も自分のことを「信号運の悪い人間」、さらには「タクシー運のない人間(道を知らないドライバーに当たりがち)」だと思っています。要するに成功体験を蓄積できないネガティブ思考だということです。 もっと言うと、私には「好調な人の足を引っ張る疫病神」という自覚があります。昔から私が気合を入れてテレビを観ていると、巨人が負け、千代の富士や貴乃花が負け、伊藤みどりが転倒し、珍しくサッカーを観た日には「ドーハの悲劇」が起こりました。 目下、悩ましいのは、愛する大谷翔平さんを直視できないことです。記録のかかった大リーグの試合なども、腰を据えて観る時に限って打てない、もしくは打たれる。なのでテレビを点けても音を消し、「ながら観」をするようにしています。大谷翔平のホームランや奪三振は、私が目を離した隙に生まれる。本当です。私はテレビの生中継で、彼のホームランを観た記憶がありません。 連日大きな盛り上がりを見せているWBCですが、せっかく国内でプレーをしている大谷選手の姿を、テレビにかぶりついて観られないのは歯痒いものです。しかし私が「ながら観」をしているお陰で、現在のところ日本代表チームは順調に勝ち続けています。 先日の「日本対韓国戦」も、私は大阪のナジャ・グランディーバさんがやっているラジオの生放送を聴きながら、テレビの試合中継をチラチラ観ていました。すると番組中にナジャさんが「ダルビッシュさん、絶対に今日は勝てます。ダルビッシュ頑張れ!」と叫んだのです。まさにその直後、ダルビッシュ投手は3点を取られ降板しました。もはや女装は、スポーツを観戦したり応援したりしてはいけない気がします。 私もナジャさんも大谷翔平さんが大好きで仕方のない日々をずっと送っており、毎晩のように「大谷ベスト・ショット・オブ・ザ・デー」の画像を送り合ってから寝るのが私たちのルーティンです。 例えば、好きなアイドルと握手したら1週間手を洗わないとか、憧れの人から貰ったハンカチを洗わずに保管しておく的なファン心理が、昔から理解できませんでした。なおかつ大谷を現地で応援するのに「大谷のユニフォーム」を着ていく心理もよく分かりません。私にとってのアイドルとは、「明日になったら見られない今、今日、今夜の姿」を目に焼き付けさせてくれさえすればそれでよい存在でした。それがこの間、生まれて初めての感情に遭遇してしまったのです。「大谷翔平が着ているTシャツになりたい」。 よもや自分がこんな境地に辿り着く日が来るなんて。試合は二度と観ない。貴方のお邪魔はしないから、あの上半身を包み擦れるTシャツになりたい。ちなみにヌートバー選手の「ペッパーミル」の手つきは、どう見ても卑猥です。子供たちがこぞってやるようなジェスチャーじゃないと思いながら見ています。 ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する※週刊朝日 2023年3月31日号
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12時間前
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開成がついに失冠、明大は合格者1千人増 激変した私大入試を分析
首都圏の難関私大の合格者がほぼ出そろった。今年の私大入試の特徴を、ランキングとともに紹介する。 * * * 国公立大学の後期日程の試験が終わり、2023年度入試もいよいよ幕を閉じようとしている。国公立よりも一足早く実施された私大入試では合格者がほぼ出そろった。 今号の大学合格者高校ランキング(4)では、私学の雄である早稲田・慶應を筆頭に、上智、東京理科、GMARCH(学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政)の有名私大編をお届けする。 まずは早大から。ランキングをみると、上位校の顔ぶれは大きく変わらないが、順位に変動があった。東大合格者とともにここ10年以上トップを走ってきた開成(東京)がついに失冠し、渋谷教育学園幕張(千葉)にその座を明け渡した。慶大のランキングでは、開成がトップを死守したものの、2位の横浜翠嵐(神奈川)の躍進が目立った。 私立最難関の早慶に合格者を出す高校の多くは、東大合格者でも上位につける。だが、例外もある。慶大で5位に輝いた頌栄女子学院(東京)は近年、60~80人台をキープしているが、東大は5人と100位以下だ。頌栄女子学院は上智大のランキングではトップに輝いている。有名私大に強い高校と言えるだろう。 私大の場合、大学からの距離によって、上位校の陣容が変わる傾向もある。早大は千葉県や埼玉県、東京都の中心北部から西部にかけて、慶大は日吉や湘南藤沢キャンパスがある神奈川県を中心に、東京都の中心南部から南西部一帯の高校が増える、といった具合だ。 東大と違って1都3県の高校で上位が占められている。自宅からの通いやすさも大きな要因となっているといえそうだ。 ほかの私大はどうか。東京理科は栄東(埼玉)、明治は湘南(神奈川)、青山学院は厚木(神奈川)、立教・中央・法政・学習院の4大学は大宮開成(埼玉)がトップに輝いた。高校によっては、東大をはじめとする国公立大の合格実績よりも、難関私大の合格者を伸ばすことに力を入れているところもある。 そのため、文系の場合は早い段階から数学を必修から外す高校もある。また、早大向けに社会科目は政経に集中したり、慶大向けに小論文指導に力を入れたりしている高校もある。国公立大入試が受験の核となる首都圏以外の高校からすると、驚きかもしれない。 さて、近年の私大入試の動きとして欠かせないのが、16年度入試から文部科学省の主導で段階的に進められてきた入学定員の厳格化だ。 本来の定員よりも多く入学させたら補助金カットの対象とするもので、22年度入試は定員8千人以上の大規模大学は定員の1.1倍、4千人以上8千人未満の中規模校は1.2倍、4千人未満の大学は1.3倍までしか毎年の入学者を取れなかった。学部単位でもこの制約が課されていたため、全国的に私大の合格者数が大きく減り、入試の難化につながったというものだ。 元々は定員割れが続いている地方私大への対策や、若者の東京一極集中を避ける狙いがあっての施策だったが、受験人口の割に国公立大の定員が少ない首都圏では大きな影響となった。特に東京都では大打撃となり、全国的には大学進学率が上がっている一方で、東京都の現役大学進学率は16年から18年にかけて3年連続で下がった。 大学通信で情報調査・編集部部長を務める井沢秀さんが解説する。 「定員厳格化の影響で16年度から19年度にかけて私大の倍率が上がり続けていました。しかし新型コロナウイルスの影響や、21年1月に始まった共通テストの受験を嫌い、受験生の多くが20年度入試で合格した大学に入学した影響で、21年度は私大の一般選抜の志願者が前年比14%減という史上最高ともいわれる減少幅となりました」 こうした問題が生じたことから、文科省は定員厳格化の動きを撤回、23年度入試から緩和する方針を打ち出した。 それまで学年ごとの入学定員で判断されていたものが、全学年の総定員数で判断されることとなり、その年で入学者を出しすぎても、その次の年以降で調整できるようになったのだ。 この新制度1年目となった今年の私大入試はどうだったのか。井沢部長が分析する。 「私大の志願者は去年から増えており、定員管理厳格化の合格者の出し方に大学側が慣れたということと、緩和の影響で今年は合格者が出しやすい状況にありました。実際に明治大では現時点で去年より1千人近く合格者数が増えています。その他の私大も全体的に合格者が増えた傾向にあります。今年の入試は近年で一番私大に受かりやすかったのではないでしょうか」 一方、私大の共通テスト利用入試においては、数学などの「難問対策」に時間を取られたくない私大専願者を中心に、「共通テスト離れ」が起きているとの指摘も出ていた。実際にこうした影響はあったのだろうか。 井沢部長はこう話す。 「確かに私大専願者を中心に共通テストの受験者が大きく減るのではないかという見方があったのですが、蓋を開けてみれば18歳人口の減少分程度にとどまりました。昨年の秋ごろにコロナの第8波の影響も強かったことから、移動が伴わない共通テスト利用で私大を受ける動きも強かったようです。また国公立大受験者も、昨年の難化の影響により共通テスト利用で私大に多く併願する動きもあったようです」 3月13日から「マスク緩和」となり、多くの受験生を苦しめたコロナ禍から、かつての日常に徐々に戻りつつある。キャンパスライフがより活動的になり、海外留学もしやすくなる。有名私大が集まる大都市圏と地方との行き来の障壁も大幅に下がるだろう。 脱コロナと定員厳格化の緩和が重なる24年度の入試では、私大の人気が復活する可能性も十分にありそうだ。(河嶌太郎)※週刊朝日 2023年3月31日号
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【岩合光昭】背中をほぐされて餅のように伸びる一條神社の“接待ネコ”
動物写真家・岩合光昭さんが見つけた“いい猫(こ)”を紹介する「今週の猫」。今回は、高知県四万十市の「神の手だにゃ~」です。 * * * 一條神社の“接待役”のチビは、推定12歳のもと迷いネコ。 朝の本堂、宮司さんが祝詞を唱える。隣で太鼓を打つのはお孫さん。まだ幼稚園児くらいだが、歴4年の見事な腕前。続いて境内の掃除が始まると、待っていました!とばかりにチビが駆け寄る。竹の熊手でブラッシングされるのが大好きだとか。 グリグリと背中をほぐされると、丸い体はさながらのし餅に、目もとろーんと横に伸びる。ゴッドハンドのような熊の手を通して愛情をもらい、今日も看板ネコのお勤めが始まる。※週刊朝日 2023年3月31日号
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4月から「NHK受信料」未払いだと“3倍”の金額の請求が来る? 未払い者はどうなるのか
NHKとの放送受信契約に正当な理由がないにもかかわらず応じない人に、割増金を請求できる制度が4月に導入される。過去には受信料支払いの督促に応じない人や事業者にNHKが裁判を起こすこともあったが、新たな制度の創設で、支払いを拒んできた人たちは、より“痛い思い”をすることになるのか。 * * * NHKの放送受信規約が改正され、4月1日に施行される。新たな規約では、受信契約書の提出期限を明確にし、従来の「遅滞なく」から「受信機の設置の月の翌々月の末日まで」と規定された。 この期限内に受信契約書を提出しなかった場合と、受信契約の解約や受信料免除について、ウソなどの不正があった場合に、受信料の2倍に当たる額を割増金として「請求することができる」とした。未払いの受信料を入れると、3倍の金額を支払う羽目になる。 現在の受信料は振込払いの場合、一般的に1世帯あたり地上契約(地上放送のみ受信)が月額1275円で、衛星契約(衛星放送も受信)が同2220円。このため、未払いの場合は、地上契約だと1カ月あたり3825円、衛星契約だと6660円の請求が来る可能性がある(事業者の場合は、受信機のある部屋数などによって異なる)。 実は、受信料には5年の消滅時効があるが、NHKは「受信料のお支払いが滞っている分については、これまでどおり全額請求させていただき、時効の申し出があった場合には、時効を5年として取り扱います」としている。もし時効の申し出をしなかったら、一体いくらになってしまうのか……。長く支払って来なかった人は気が気でないだろう。 そもそも、NHKとの契約は放送法64条で「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、(略)受信契約を締結しなければならない」と定められている。 NHKのホームページには、「未契約の世帯や事業所に対しても、訪問や文書などを通じて受信料制度の意義を誠心誠意丁寧にご説明し、ご契約とお支払いをお願いしていきますが、こうした努力を重ねてもなお、ご契約いただけない場合の最後の方法として、受信契約の締結や受信料の支払いを求める民事訴訟を実施しています」とある。 過去には大手ホテルチェーンに対し、客室に設置されたテレビの受信料を支払うようNHKが裁判を起こし、19億円超の支払い命令が確定したケースもあった。 新たな規約によって、未払いを続けてきた個人や事業者はこれまで以上に“痛い思い”をすることになるのだろうか。 村松由紀子弁護士は、「受信契約書の提出期限というルールが明確になったことで、訴訟を起こした場合、今までより短期間で判決が出ると予想されます。裁判にかかる費用や労力も軽減されるため、NHKにとっては、訴訟手続きに移行しやすくなる面があるでしょう」と指摘する。 ただ、訴訟が増えるかどうかは定かでない。 新たな規約には割増金を「請求する」、ではなく「請求することができる」と、やや遠回しな文言が用いられている。このため、訴訟を起こす前に、割増金は請求しないことにして受信料を任意で支払うように促す、という運用をしていくことも考えられるという。 「いずれにしても、嫌々でも支払う判断をする個人や事業者が増える可能性が高いと思います」(村松弁護士) 最近では「チューナーレステレビ」と呼ばれる、地上波や衛星放送を受信するためのチューナーがないテレビが「NHK受信料を払わなくていい」と話題になった。ただ、テレビをチューナーレステレビに買い替えれば100%支払いを免れることができる、という単純な話ではないようだ。村松弁護士はこう注意を促す。 「放送法の『協会の放送を受信することのできる受信設備』には、ワンセグ機能付き携帯電話やテレビチューナー付きのカーナビ、テレビチューナー付きのパソコンも該当するとあり、受信契約の対象となります」 NHKの稲葉延雄会長は1月の就任会見で割増金について、「一律に条件に該当するからといって請求するわけではない。お客さまの個別の事情を総合的に勘案しながら運用していく姿勢にあると聞いている」と話した。 「割増金」の効果やいかに。 (AERA dot.編集部・國府田英之) 【訂正】 当初の記事では、地上契約と衛星契約を加算して「両方未払いの場合は未納分と割増金で1カ月当たり1万485円を支払わなくてはならない。年間で約12万6000円もの額になる。」と記載しましたが、個人(世帯)契約の場合は、衛星契約をすれば地上放送も受信できるため、地上契約と衛星契約を加算する必要はありませんでした。訂正します。
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浅村&田中将はWBC出場志願も叶わず…「侍ジャパン落選」の理由
WBCに向け、侍ジャパンの選考は大きな話題になった。野手では山川穂高が内定。2019年秋のプレミア12でアキレス腱に不安を抱えていたことから出場を断念すると、日の丸から遠ざかっていた。昨季は本塁打、打点の2冠に輝くなど長距離砲としての実力は疑う余地がない。本大会での活躍が楽しみだ。 投手でサプライズ選出は、オリックスの宇田川優希だ。昨年7月下旬に育成枠から支配下登録されると、セットアッパーとして奮闘。最速159キロの直球に落差の鋭いフォークで三振の山を築いた。19試合登板で2勝1敗、防御率0.81と抜群の安定感を誇り、CS、日本シリーズでも快投を続け、26年ぶり日本一の原動力となった。 「出場辞退」を決断した選手たちも話題を呼んだ。柳田悠岐、今宮健太(ソフトバンク)、坂本勇人(巨人)、森友哉(オリックス)はコンディションに不安があったり、シーズンに集中したいという理由で代表入りを見送った。 スポーツ紙デスクは、「柳田、坂本は今年35歳を迎えるシーズンで、もう若くない。昨年はチームとしても個人としても思うような結果を残せず、悔しい思いをしている。2人は侍ジャパンの常連でしたが、遊撃は源田壮亮(西武)、外野も選手がそろっているので、彼らに託せるという思いもあったのでは。森も西武からFAで新天地のオリックスに移籍し、投手の特徴を把握するなど、やらなければいけないことがたくさんある。WBC出場に迷いはあったと思いますが、リーグ3連覇に向けて中心選手として期待が大きい。この決断は致し方ないと思います」と理解を示す。 一方で、侍ジャパン入りを熱望したが落選した選手たちがいる。楽天の田中将大、浅村栄斗だ。田中の実績は語るまでもないだろう。日米通算190勝をマークし、WBC、五輪と共に2度出場。ヤンキースでは6年連続2桁勝利をマークするなどメジャーの強打者を抑える術を熟知している。昨年10月には自身のツイッターで、「来年開催されるWBCについて自分の気持ちをお話する機会がなかったので、ここで言わせていただきます。良い選手が沢山居ますし、なかなか簡単なことではないのは重々承知の上ですが、出場したいです!この気持ちを持ってオフシーズンのトレーニングにも取り組んでいきます」と出場を志願。昨オフの契約更改の席でも侍ジャパンで先発にこだわらず、どの役割でも全うすることを望んでいたが、朗報は届かなかった。 球界を代表する強打者として長年活躍している浅村も、代表から漏れた。21年の東京五輪では金メダル獲得に大きく貢献し、日の丸への思いは強い。2度目のFA権を取得し、去就が注目された22年オフに4年契約で楽天に残留を発表。WBC出場に向けても意欲を示していた。 侍ジャパンを取材するスポーツ紙記者は、「田中、浅村はメンバー入りしても不思議ではなかったし、栗山英樹監督は迷ったと思います。田中の場合は全盛期に比べて球速が落ちたのがネックになったと思います。投球術はさすがですが、不慣れな救援で投げさせるのはリスクがある。先発陣は枠が埋まっていますしね。浅村は牧秀悟(DeNA)とタイプが重なる。勝負強さに定評がある中距離砲で、浅村と同様に牧も本職の二塁だけでなく一塁を守れる。二塁は激戦区で山田哲人(ヤクルト)、菊池涼介(広島)もいる。それぞれ持ち味は違いますが、栗山監督は国際舞台に強い山田をチョイスした。こればかりは仕方ないですね」と振り返る。 田中、浅村が日の丸をつけるにふさわしい実力者であることは間違いない。テレビ関係者は「実績を残している2人が代表入りを熱望してメディアに発信した姿に敬意を表したい。落選しましたが、彼らの侍ジャパンへの思いは野球ファンに十分に伝わっていると思います」と評価する。 2人の目標は、楽天の10年ぶりのリーグ優勝に切り替わっているだろう。投打の両輪として活躍を期待したい。(今川秀悟)
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「そんなメールがきたのは初めて」 東大院生も驚いたChatGPTの“効果” 池谷裕二教授の活用法
人工知能による対話型の自動応答ソフト「ChatGPT」が登場し、大きな反響を呼んでいる。海外では学生たちがAIを使用し試験対策をする動きもある。日本の教育界では、AIの活用をどのように受け止めているのか。AERA 2023年3月20日号の特集「ChatGPTの衝撃」から、ここではすでにGPTを導入している現場を紹介する。 * * * GPTによって激変する業界の一つが、教育現場だ。 脳研究者で東京大学大学院薬学系研究科教授の池谷(いけがや)裕二さんのもとに、この冬、一通のメールが届いた。 「例年と出題傾向が違いますが」 差出人は池谷さんの授業を受けている学生。今年1月に期末テストが終わった後のことだ。 東大に限らず、大学生の多くは過去問をもとに試験対策をしている。だからこそ、池谷さんも偏りが出ないようバランスよく作問しているつもりだった。 「でも、自分でも気づかない脳のクセがあったんです」 そのクセに気がついたのも、GPTがきっかけだった。池谷さんは今年、薬理学の試験問題をGPTで作問。提案された約20題のなかから四つを選び、出題した。 ■GPT力も評価対象に すると、単位を落とす学生が例年の2倍に増えた。そして、先のメールが届いたという。 「そんな連絡がきたのは初めてですよ」 と池谷さんは笑みを浮かべる。傾向にとらわれることなく、幅広く勉強してほしいという思いだった。そして“2倍”の救済措置として、レポート課題を用意した。 「高血圧の薬についてChatGPTが書いた解説文である。この間違いを説明せよ」 として提示した2千字の文章のなかには、薬の名前やメカニズム、事実関係の微妙な違いがちりばめられた。 「ChatGPTの間違いは絶妙なので、誤りを探すために、薬理学が専門である私でさえ教科書や専門書をあたりながら、30分ほど調べました」 海外ではすでに学生たちがAIを使って試験の対策をする動きも出ている。 米スタンフォード大学の学生新聞の調査によると、昨年秋の宿題や試験で同大の学生の17%が「ChatGPTを活用した」と回答。学生の半数以上が「倫理規定に違反している」と答えるなど、物議を醸した。 こうした波は日本にも広がると見られ、池谷さんは「GPTありきで考えるべき」だと指摘する。 「ChatGPTを禁じても、学生はきっとどこかで使う。そうすれば全員の単位を落とさないといけなくなります。GPTの作る文章にはミスもあるので、それを修正できるかどうかも評価対象にすればいい」 さらに、池谷さんは学生たちにこんな宣言もした。 「ChatGPT、DeepL、グラマリーの“三種の神器”を必ず使うようにと伝えました。人間の生の脳で書いた文章なんて、下手くそですから」 ◯池谷裕二(いけがや・ゆうじ)/脳の健康や老化について探求している。週刊朝日連載をまとめた『脳はすこぶる快楽主義』(朝日新聞出版)、『できない脳ほど自信過剰』(朝日文庫)などが発売中。2013年、日本学士院学術奨励賞を受賞 (編集部・福井しほ) ※AERA 2023年3月20日号より抜粋
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4月から「マイナ保険証」を使わないと医療費アップに!対策を知って備えよう
4月以降、オンライン資格確認システムを導入または申請中の医療機関で、従来保険証で受診すると医療費が高くなる。マイナ保険証対応の医療機関が増える中、本格的にマイナ保険証を使わないと損、ということになりそうだ。連載『医療費の裏ワザと落とし穴』の第256回では、4月以降のマイナ保険証の利用について注意しておきたいポイントを押さえておこう。(フリーライター 早川幸子) 4月からマイナ保険証を使ったほうが初診時40円、再診時20円お得になる この4月から、「マイナ保険証」を使わない人の医療費が、さらに引き上げられることになった。 現在、その病気で初めて病院や診療所を受診したときの医療費は、マイナ保険証より、従来の健康保険証のほうが、20円(3割負担で6円)高くなるように設定されている。この差が、4月以降は、特例措置として40円(3割負担で12円)に広がることになったのだ。 ただし、医療費に差が出るのは、オンライン資格確認のシステムを導入しているなど、一定の要件を満たしている医療機関を受診した場合だ。また、今回の加算は、全国の医療機関にマイナ保険証に対応できるシステムが普及するまでの期間限定の措置となっている。 どのようなケースで医療費に差が出るのか。この4月以降のマイナ保険証に関する見直し内容について確認しておこう。 これまで病院や診療所などを利用するときは、自分が加入している健康保険組合を証明するために、「健康保険被保険者証(健康保険証)」を提示することになっていた。 この健康保険証の代わりに、マイナンバーカードの個人認証機能を使って、本人確認や健保組合の特定を行うのが「マイナ保険証」で、2021年10月に本格導入された。そして、普及を促すために、2022年4月の診療報酬改定で、マイナ保険証に対応できるシステムを導入した病院や診療所に対して、通常の医療費に加えて、マイナ保険証関連の加算が付けられることになった。 だが、このときの診療報酬体系は、マイナ保険証を利用した患者のほうが、健康保険証で受診した患者よりも、医療費が高くなるように設定されていた。 マイナ保険証に対応する医療機関を増やすための誘導策とはいえ、患者はマイナ保険証を使うと損してしまう。そのため、国民目線を欠いた制度設計には疑問の声が上がっていた。 そこで、2022年10月、マイナ保険証の利用者のほうが、健康保険証を利用するよりも、医療費が安くなるように見直しが図られたのだ(連載の第247回参照)。 今回の見直しは、この考え方を拡大したものだ。では、今後どのように医療費は変わるのだろうか。次ページから見ていこう。 ●4月からマイナ保険証では初診時加算が20円だが、旧健康保険証では、これまでの初診40円が60円に引き上げられ、再診ではマイナ保険証にない20円の加算が付く●加算はオンライン資格確認システム導入済み、または申請中の医療機関で適用される ●24年秋までに現行保険証は廃止。マイナ保険証に移行したくない人は「資格確認証」の発行手続きを自分で行う必要がある カードリーダー設置または資格確認届け出を行っている病院ではマイナ保険証提示がなければ負担増に オンライン資格確認システムの導入を加速させるために、2023年4月から12月までの期間限定で、病院や診療所の初・再診時に加算される金額が次のように見直されることになった。 マイナ保険証を利用した場合は、初診時の加算が20円(3割負担で6円)で据え置かれているが、健康保険証で受診した場合は、これまでの40円(3割負担で12円)から60円(3割負担で18円)に引き上げられる。 また、再診時については、マイナ保険証では加算がないが、健康保険証で受診した場合は20円(3割負担で6円)がプラスされることになった。 つまり、初診時は40円(3割負担で12円)、再診時は20円(3割負担で6円)の差がつくことになったのだ。 ただし、この加算が付くのは、マイナンバーカードを読み取れるカードリーダーなどを設置している医療機関を利用した場合だ。オンライン資格システムを導入していない医療機関を受診した場合は、そもそも追加の負担がない。 実のところは、マイナ保険証に対応していない医療機関を利用するのが、一番医療費が安いのが現状だ。 だが、厚生労働省は、23年4月までに、すべての病院や診療所などに対して、マイナ保険証による健康保険の資格確認システムを導入することを義務付けておりその数は徐々に増えてきている。 さらに、今回の加算の特例措置は、すでにシステムを導入している医療機関だけではなく、今年12月までにオンライン資格確認の開始を届け出ている医療機関も対象となっている。 2023年3月5日時点の「オンライン資格確認の都道府県別導入状況について」によると、病院は98.7%、診療所(医科)は91.7%がカードリーダーの申し込みを済ませている。そのため、今年の4月~12月は、マイナ保険証で受診したほうが医療費が安くなる医療機関のほうが多くなりそうだ。 4月以降、医療機関を受診するときは、忘れずにマイナンバーカードも持参するのが得策だ。 2024年秋までに健康保険証は廃止代わる「資格確認証」の発行は自分で行う必要がある このように、医療機関はマイナ保険証に対応できるシステムを整えつつあるが、肝心のマイナンバーカードの交付率は2023年3月12日時点で75.4%。いまだ2割強がカードを取得していない状況だ(総務省の「マイナンバーカードの交付状況について」)。 カードを取得していなければ、当然のことながら、マイナ保険証の機能も使えないが、国は2024年秋までに従来の健康保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化する方針を打ち出している(発行済みの従来の健康保険証も、有効期限が来るまでは利用できる)。 マイナンバーカードを取得するかどうかは個人の自由で、マイナ保険証の登録を希望しない人については、従来の健康保険証に代わるものとして「資格確認書」を発行することになっている。資格確認書の有効期限は1年間で、更新もできるので、今後もマイナ保険証を登録していなくても健康保険の適用は受けられる。 だが、資格確認書は、原則的に必要な人が自分で申請するもので、健康保険証のように自動的に発行されるものではない。 マイナンバーカードの申請をしていない人の中には、一人暮らしの高齢者などで、自分では手続きがままならない人が含まれている可能性がある。そうした人が、マイナ保険証を登録しておらず、資格確認書の申請もできなければ、病院や診療所を利用するときに健康保険の資格確認ができず、不便を強いられてしまう。 国がマイナ保険証を導入した目的は、医療分野にもデジタルトランスフォーメーション(DX)を取り入れることで業務を効率化し、患者に質の高い医療を提供することだったはずだ。だからこそ、この4月からマイナ保険証関連の医療費をさらに引き上げる特例措置を行い、マイナンバーカードの普及を急いだわけだ。 患者の利益のために導入したはずのマイナ保険証によって、保険適用が受けられないという不利益を被る国民を作り出すのは本末転倒で、制度を導入した意味がなくなってしまう。 システムの変更によって、弱い立場にいる人が置き去りになるようなことは、絶対にあってはならない。健康保険の資格確認をマイナ保険証に一本化すると決めたなら、個人からの申請を待つだけではなく、国が責任を持って丁寧にフォローしていく必要があるのではないだろうか。
ダイヤモンド・オンライン
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ヌートバー侍Jでは“低年俸”も今後は安泰? WBCでの活躍がもたらす「巨大な恩恵」
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で準決勝(日本時間21日)まで駒を進めた侍ジャパン。大谷翔平(エンゼルス)、ダルビッシュ有(パドレス)の招集などで開幕前から日本中が大騒ぎとなったが、大会が始まって最も注目されるようになったのは、なんといってもラーズ・ヌートバー(カージナルス)だろう。 初戦の中国戦からこれまで5戦全勝を収めている侍ジャパンの1番センターとして全試合に出場。打率.368(19打数7安打)、3打点、7得点とリードオフマンとしての役割を十分に果たし、守備でも好守を披露している。また、試合中やベンチでの“熱い”振舞いでもファンの心をガッチリと掴んだ。 「身体能力の高さや野球へ向き合う真摯な姿勢など、可能性は感じた選手だが未知数の部分も大きかった。カージナルスでは試合の出場数は増えているが、レギュラーポジションが安泰という立場でもない。どこまでやれるのか注目していたが、まさかここまで活躍するとは嬉しい誤算だった」(MLBアジア地区担当スカウト) 「少し前まで国内スポーツ界の話題といえば、(サッカー日本代表・長友佑都の)ブラボー一色だった。3月と時期が早いとはいえ、ペッパーミル・パフォーマンスなど何かしら関係するワードが流行語大賞にノミネートされるのは間違いないでしょう。調理器具専門店ではペッパーミルがバカ売れしているとも聞く。国内の日常風景すら変えてしまった」(大手広告代理店関係者) 一躍スター選手となったヌートバーは、WBCが終わった後も日本から熱い視線がそそがれるのは間違いないだろう。だが、メジャーでは2021年にデビューし、昨年は試合数を増やしたものの、これまで通算の出場試合数は166試合で92安打、19本塁打、55打点、6盗塁と“これから”の選手でもある。 昨年の年俸も53万8625ドル(約7000万円)と大谷やダルビッシュのメジャー組と比べると少なく、NPB組を含めても侍ジャパンでは給料は高いとはいえない部類だ。 「日本での知名度や人気は桁外れとなったが、米国ではまだまだ若手のグリーンボーイ。MLBでの実績がまだ少ないので、現状の年俸は適正価格だといえる」(大手マネージメント会社関係者) 今後の活躍次第では年俸が高騰しているメジャーで大型契約を見込めるだろうが、早くても年俸調停の権利を得るのは2024年のシーズン終了後。フリーエージェント(FA)は2027年のシーズン後と、“高給取り”になるにはこれから数シーズンにわたって結果を残すことが必要とされる。 今季は所属しているカージナルスでライトのレギュラーとして見られているが、同球団は育成上手で、続々と若手の良い選手が出てくるという事情もある。世界から有望な選手が集まる中で定位置を守り続けるのは至難の業だ。 だが今回のWBCでの活躍で日本での株は“急上昇”。仮にメジャーで結果を残さなくても、いずれかのタイミングでNPB球団が獲得に動くというのは間違いないと見られている。 「選手として結果を残せることは証明しつつある。外国人特有の強引さもなく、状況に応じたプレーができるので日本向きといえる。NPB球団に入団しても大外れの心配はないので獲得に動く球団は間違いなくあるだろう。また知名度は日本人トップ選手と比較しても遜色ない。仮に来日した場合には、戦力、営業面の両方で大きな力を発揮するはず」(在京球団編成担当者) 「仮にNPB球団が獲得に動くならば早いに越したことはない。ハードなプレースタイルは身体能力が支えており、またケガと背中合わせの部分もある。また営業面では熱しやすく冷めやすい日本人の国民性を考えても、WBCの記憶が残っているうちでないと意味がない。年俸2億の複数年契約なら今すぐ出す価値がある選手」(大手マネージメント会社関係者) また、試合で一生懸命プレーする姿や、家族愛が溢れるコメントなどでイメージは抜群。これからはCMなど日本からの仕事が舞い込むことも十分に考えられる。 「ルックスも良く、目の下のアイブラックとペッパーミルという際立った特徴もある。水面下ではすでに複数企業からCM契約出演の打診が来ているらしい。一生懸命で爽やかなイメージがあるのでどのような企業にもマッチする。WBC後も様々な場所で見かけることになりそう」(大手広告代理店関係者) そして、現在所属しているカージナルスでもWBCで活躍したことにより、恩恵を受けるかもしれないという。 「カージナルスは“おいしい選手”が出てきて喜んでいる。かつては田口壮(現オリックスコーチ)が在籍し、世界一になったこともある。日本との縁は深く、今回の人気をきっかけに広告や放映権などのジャパンマネー獲得を狙っている。実現すればヌートバーとの高額な長期契約を結ぶ可能性もあるかもしれない」(大手マネージメント会社関係者) ヌートバーはWBCではわずか5試合だけの出場だが、グラウンド内外での価値は想像以上に上がっている。子供の時から夢見た侍ジャパンとしての活躍により、様々な“成功”を手にしたといえそうだ。WBC後も日本人メジャーリーガー以上に注目が集まる存在になるだろう。
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俳優・吉岡秀隆のリアル過ぎる演技に警察幹部が「困った映画だ」 警察裏金問題を告発した元巡査部長とは
「組織のためなら何してもいいんか?」制服を着た巡査部長役の吉岡秀隆さんが、同じ警察官にそう問いかける。3月10日に封切られた映画「Winny」の一場面。吉岡さんの役は、愛媛県警の巡査部長時代の2005年に、県警の裏金問題を実名で告発した仙波敏郎さん(75)だ。巨大な組織を敵に回してでも仙波さんが貫こうとしたこととは何だったのか。 「18年前に警察の裏金問題を告発したことを、大手の配給会社の映画の中で取り上げてもらい、本当に感無量です」(仙波さん) 映画の主役は、東出昌大さんが演じる天才プログラマーの金子勇さん(2013年に42歳で死去)だ。2002年、当時、東京大学大学院助手だった金子さんは、インターネットで映画や音楽などの情報を直接やりとりできるファイル交換ソフト「Winny」を開発し、その試用版をネットの掲示板「2ちゃんねる」に公開した。 すると、大量の映画や音楽などが違法にアップロードされ、事件化されることも多かった。2004年、金子さんは著作権法違反の幇助(ほうじょ)の容疑で京都府警に逮捕されてしまう。その後、金子さんは弁護団と裁判を戦い、2011年に無罪を勝ち取る。映画はその7年間の壮絶なストーリーを描いている。 そのなかで、仙波さんの警察裏金問題の告発の話が出てくる。接点はWinnyだった。Winnyは情報漏洩系ウイルスに感染しやすく、個人や企業、官公庁の情報などが次々とインターネット上に流出した。警察でも捜査情報が漏洩するトラブルが相次いだ。 仙波さんがこう説明する。 「裏金づくりの手口は、白紙の領収書に、捜査協力をしてもらったとして一般市民の架空の名前や金額、日付などを書かせます。私はニセ領収書を書きませんでしたから、当然のことながら実物を持っていなかった。そこで『仙波の(告発の)話は本当なのか?』となった。しかしその後、愛媛県警の刑事がWinnyに接続した結果、パソコンのデータが流出したんです。その中にニセ領収書が含まれていたので愛媛県警が言い訳できなくなった」 映画化の話が仙波さんに持ち込まれたのは、2021年3月のことだった。 それまでも何度か、仙波さんの裏金告発について映画化するという話は持ち上がっていた。しかし、なかなか実現にはいたらなかった。 「今回、映画会社からオファーがきて、いろいろ聞きました。Winnyの話が大半ですが、裏金告発を一部でも取り込んでくれるというのはありがたいことです。当初、台本では裏金告発の警官はシラトリリョウという架空の人物だったんです。私からすれば『なんで実名出さんのか?』となりますので、そう監督に申し入れると『本当に実名でいいのですか』とびっくりされていました。その時はすでに撮影に入っていたけど、台本を書き換えたそうです」 実名であることも含め、仙波さんの裏金告発の内容はリアルに表現されている。 「ええか、ニセ領収書を書いたら私文書偽造で3カ月以上5年以下の罪になる。それを元に公文書を偽造すると1年以上10年以下の罪や。詐欺や業務上横領は10年以下。それだけの罪を犯したもんが千円のもんを万引きした人に調書をとれんのか」 仙波さん役の吉岡さんが、若い警官を悟す場面だ。 仙波さんは2008年1月20日に実名で記者会見することを決める。するとその数日前から、人や車に尾行されていることに気づく。それが愛媛県警の関係者や車両と見られ、仙波さんが苦悩、葛藤する様子も描かれている。 仙波さんが意を決して臨んだ記者会見で、 「仙波敏郎巡査部長55歳、38年間の警察生活の中で見たこと聞いたこと、そして自分の体験に基づく真実を話します。捜査費の支払いはすべて架空、捜査協力者に支払われた事実はありません。一つだけ言わせてください。人一倍強い正義感を持って警察官になった若者たちが今日もどこかで裏金づくりに加担させられている」 というセリフがある。このシーンについて仙波さんは、 「本気で映画を作っているんだなと思いましたよ。記者会見した時と一言一句同じ。吉岡さんは、私の著書なども徹底的に読み込んで演じてくださったそうで感動しました」 と振り返る。 映画の撮影現場にも1度だけ訪れた。 「そのとき、私も一瞬ですがエキストラとして出演しました。裁判で傍聴しているシーンがあるのですが、スーツにネクタイ姿で映っています。とてもいい経験でした」 吉岡さんはその日、別の撮影があって不在だったが、東出さんらとは話す機会があったという。 仙波さんは一人でも多くの人にこの映画のことを知ってほしいと、愛媛県警の記者クラブを訪れたという。 「映画のチラシを記者に渡しにいったのです。配り終えて記者と雑談していると、県警の広報担当者が息せき切ってやってきて、『仙波さんちょっと』『ここはダメなので』と言いました。裏金告発からは18年も経っているのに、という感じでしたね」 映画の撮影が終わってから公開されるまで1年ほどあったといい、仙波さんは「警察の圧力」も危惧していたという。 ある警察幹部は取材に、 「困った映画だな。また警察の裏金問題が蒸し返されるきっかけになりかねないよ。吉岡さんがうまく演じているからな」 と話した。 仙波さんは、 「無事、上映にこぎつけられよかった。吉岡さんや制作にかかわった皆さんに感謝したい。ぜひ映画館で見てほしい」 と話している。 (AERA dot.編集部 今西憲之)
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WBC「やっぱり“侍ジャパン”に選んでほしかった投手」は? 球界関係者が推す令和版「投げる精密機械」
第5回WBCで覇権奪回を狙う侍ジャパンは、「過去最強」の呼び声が高い。ダルビッシュ有(パドレス)、大谷翔平(エンゼルス)、ラーズ・ヌートバー(カージナルス)、吉田正尚(レッドソックス)らチームの中心を担うメジャー組が参戦できるのが大きなプラスアルファだ。 先発はダルビッシュ、山本由伸(オリックス)、佐々木朗希(ロッテ)、今永昇太(DeNA)の4人で回る公算が高い。WBCは1次ラウンドが65球、準々決勝が80球、準決勝以降は95球と球数制限が設定されている。カギを握るのが「第2先発」だ。ここに各球団のエース級がズラリ。戸郷翔征(巨人)、宮城大弥(オリックス)、高橋宏斗(中日)、高橋奎二(ヤクルト)、伊藤大海(日本ハム)と先発陣と遜色ない実力者たちが控えている。そして、試合終盤のリリーバーは大勢(巨人)、栗林良吏(広島)、松井裕樹(楽天)、宇田川優希(オリックス)、湯浅京己(阪神)と三振奪取能力が高い投手たちがそろう。大谷を含めて計15人の投手を登録。盤石な布陣と言えるが、現場の見方はどうだろうか。 各球団の首脳陣、スコアラー、球団スタッフなど球界関係者に「侍ジャパンに選ばれるべきだった投手」を調査したところ、「この布陣で十分に戦える」という回答が3人。他の人からは水上由伸(西武)、伊勢大夢(DeNA)、高梨雄平(巨人)の名前が。いずれもセットアッパーだった。 そして、3票を集めたのが藤井皓哉(ソフトバンク)だった。26歳右腕は苦労人だ。高卒で広島に入団したが、5年目のオフに戦力構想から外れて退団。四国アイランドリーグplus・高知ファイティングドッグスで制球力を磨き、ソフトバンクに育成枠で入団した昨季に大ブレークした。150キロを超える直球、スライダー、フォークを武器に実戦で好結果を残し続けて開幕前に支配下昇格。セットアッパーで稼働して55試合登板で5勝1敗3セーブ22ホールド、防御率1.12と抜群の安定感だった。他球団のスコアラーは「落差の鋭いフォークで打者は『消える』と話していました。直球も速くてスピードガン以上の体感速度を感じるので、なかなか打てない。今年は救援から先発に転向するのでコンディション調整を配慮して代表招集が見送られたのかもしれませんが、国際試合でも十分に通用するでしょう」と太鼓判を押す。 セットアッパーとしてチームを支えてきた西武の平良海馬も、今年から本人の強い希望を球団が受け入れ、先発に転向。調整に専念するため、侍ジャパンに選出されても辞退する意向を示していた。平良と同様に、先発挑戦する藤井はさらなる飛躍ができるか。 「侍ジャパンに選ぶべき投手」で最も支持を集めたのが、5票で加藤貴之(日本ハム)だった。 針の穴を通す制球力が武器で、昨季は11四死球で72年ぶりに日本記録を更新。22試合登板で8勝7敗1ホールド、防御率2.01をマークした。 他球団の首脳陣は「加藤は先発でも救援でも力を発揮できる投手。第2先発に一番ハマる投手だと思う。先発ができるから中継ぎができるという簡単な問題ではない。侍ジャパンのロングリリーフ要員を見ると、チームで先発しかしていない投手ばかり。立ち上がりが良いとは言えない投手もいるし、そこが懸案材料かなと。加藤は球速が速いとは言えないから敬遠されたのかな。メジャーリーガー相手にどんな投球を見せてくれるか、楽しみな投手だけどね」と指摘する。 上記の投手たちは今後、侍ジャパンに招集される可能性が十分にある。NPBで今後の活躍が楽しみだ。(今川秀悟)
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開成がついに失冠、明大は合格者1千人増 激変した私大入試を分析
首都圏の難関私大の合格者がほぼ出そろった。今年の私大入試の特徴を、ランキングとともに紹介する。 * * * 国公立大学の後期日程の試験が終わり、2023年度入試もいよいよ幕を閉じようとしている。国公立よりも一足早く実施された私大入試では合格者がほぼ出そろった。 今号の大学合格者高校ランキング(4)では、私学の雄である早稲田・慶應を筆頭に、上智、東京理科、GMARCH(学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政)の有名私大編をお届けする。 まずは早大から。ランキングをみると、上位校の顔ぶれは大きく変わらないが、順位に変動があった。東大合格者とともにここ10年以上トップを走ってきた開成(東京)がついに失冠し、渋谷教育学園幕張(千葉)にその座を明け渡した。慶大のランキングでは、開成がトップを死守したものの、2位の横浜翠嵐(神奈川)の躍進が目立った。 私立最難関の早慶に合格者を出す高校の多くは、東大合格者でも上位につける。だが、例外もある。慶大で5位に輝いた頌栄女子学院(東京)は近年、60~80人台をキープしているが、東大は5人と100位以下だ。頌栄女子学院は上智大のランキングではトップに輝いている。有名私大に強い高校と言えるだろう。 私大の場合、大学からの距離によって、上位校の陣容が変わる傾向もある。早大は千葉県や埼玉県、東京都の中心北部から西部にかけて、慶大は日吉や湘南藤沢キャンパスがある神奈川県を中心に、東京都の中心南部から南西部一帯の高校が増える、といった具合だ。 東大と違って1都3県の高校で上位が占められている。自宅からの通いやすさも大きな要因となっているといえそうだ。 ほかの私大はどうか。東京理科は栄東(埼玉)、明治は湘南(神奈川)、青山学院は厚木(神奈川)、立教・中央・法政・学習院の4大学は大宮開成(埼玉)がトップに輝いた。高校によっては、東大をはじめとする国公立大の合格実績よりも、難関私大の合格者を伸ばすことに力を入れているところもある。 そのため、文系の場合は早い段階から数学を必修から外す高校もある。また、早大向けに社会科目は政経に集中したり、慶大向けに小論文指導に力を入れたりしている高校もある。国公立大入試が受験の核となる首都圏以外の高校からすると、驚きかもしれない。 さて、近年の私大入試の動きとして欠かせないのが、16年度入試から文部科学省の主導で段階的に進められてきた入学定員の厳格化だ。 本来の定員よりも多く入学させたら補助金カットの対象とするもので、22年度入試は定員8千人以上の大規模大学は定員の1.1倍、4千人以上8千人未満の中規模校は1.2倍、4千人未満の大学は1.3倍までしか毎年の入学者を取れなかった。学部単位でもこの制約が課されていたため、全国的に私大の合格者数が大きく減り、入試の難化につながったというものだ。 元々は定員割れが続いている地方私大への対策や、若者の東京一極集中を避ける狙いがあっての施策だったが、受験人口の割に国公立大の定員が少ない首都圏では大きな影響となった。特に東京都では大打撃となり、全国的には大学進学率が上がっている一方で、東京都の現役大学進学率は16年から18年にかけて3年連続で下がった。 大学通信で情報調査・編集部部長を務める井沢秀さんが解説する。 「定員厳格化の影響で16年度から19年度にかけて私大の倍率が上がり続けていました。しかし新型コロナウイルスの影響や、21年1月に始まった共通テストの受験を嫌い、受験生の多くが20年度入試で合格した大学に入学した影響で、21年度は私大の一般選抜の志願者が前年比14%減という史上最高ともいわれる減少幅となりました」 こうした問題が生じたことから、文科省は定員厳格化の動きを撤回、23年度入試から緩和する方針を打ち出した。 それまで学年ごとの入学定員で判断されていたものが、全学年の総定員数で判断されることとなり、その年で入学者を出しすぎても、その次の年以降で調整できるようになったのだ。 この新制度1年目となった今年の私大入試はどうだったのか。井沢部長が分析する。 「私大の志願者は去年から増えており、定員管理厳格化の合格者の出し方に大学側が慣れたということと、緩和の影響で今年は合格者が出しやすい状況にありました。実際に明治大では現時点で去年より1千人近く合格者数が増えています。その他の私大も全体的に合格者が増えた傾向にあります。今年の入試は近年で一番私大に受かりやすかったのではないでしょうか」 一方、私大の共通テスト利用入試においては、数学などの「難問対策」に時間を取られたくない私大専願者を中心に、「共通テスト離れ」が起きているとの指摘も出ていた。実際にこうした影響はあったのだろうか。 井沢部長はこう話す。 「確かに私大専願者を中心に共通テストの受験者が大きく減るのではないかという見方があったのですが、蓋を開けてみれば18歳人口の減少分程度にとどまりました。昨年の秋ごろにコロナの第8波の影響も強かったことから、移動が伴わない共通テスト利用で私大を受ける動きも強かったようです。また国公立大受験者も、昨年の難化の影響により共通テスト利用で私大に多く併願する動きもあったようです」 3月13日から「マスク緩和」となり、多くの受験生を苦しめたコロナ禍から、かつての日常に徐々に戻りつつある。キャンパスライフがより活動的になり、海外留学もしやすくなる。有名私大が集まる大都市圏と地方との行き来の障壁も大幅に下がるだろう。 脱コロナと定員厳格化の緩和が重なる24年度の入試では、私大の人気が復活する可能性も十分にありそうだ。(河嶌太郎)※週刊朝日 2023年3月31日号
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日本にはびこるシニアたたき シニアの言い分「そのうち私たちのような年代になる」
3月2日付朝日新聞の「声」欄(読者投稿欄)に、経済学者・成田悠輔氏の「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」という旨の発言に対する投書が掲載された。 「この言動は高齢者に対する若い世代の憎悪や敵意をあおる力を持っていて、私は容認できない」 投書は「世代間の敵意をあおらないで」と題されていた。投書をした北海道の松本美紀子さん(67)は、この発言をTwitterで知って、震えるような恐ろしさを感じた。 「なかなかのインテリなのになぜこんな残酷なこと、前近代的なことを平気で言うのか。弱者を切り捨てていった戦前の歴史をまず思い出しました」 岸田内閣が次々と国益優先の閣議決定をしている最中。そんななかこの発言を聞き、歴史が逆行するような感覚を覚えたという。松本さんの投稿を読んだ昔の同僚からメールも来た。 「わたしたちも諦めているよね、どうしょもないねって。でもやっぱり日本、おかしいよって」 松本さんはこの発言に触れる少し前に、年金の受給開始年齢を現行の62歳から64歳に引き上げる年金制度改革案に反対するフランスの大規模なストライキのニュースを読んでいた。全国で実施された抗議デモに112万人が参加。レピュブリック広場がデモの参加者で埋め尽くされた。 「若者が高齢者と共にプラカードを掲げて歩いていることに感動しました」 年金で生活している松本さんだが、後期高齢者になったときに自分がこのまま生活していけるのかとても不安だ。 「これは私たちの年代だけの問題じゃない。若いエリートたちが弱者を冷笑するような文化がありますが、『あなたたちもそのうち私たちみたいな年代になるんですよ』とまず言いたいです」 高齢者福祉を削り子育てなどの予算を充実させるべきという議論があるが、高齢者福祉を削るとその子ども世代が自己資金で親を支えなければならなくなる。シニア世代と若者世代の利害は、単純に対立しているだけではないのだ。 「今の若者は生まれたときから格差があたりまえに存在していて、大変な世の中で不満がいっぱいたまっている。若者は『自分たちは年金なんかもらえないよ』と言うだろうけど、当然の権利をあきらめてしまっていいんですか。若い人も高齢者も、支えあって生きていくんです」 ◇ 命に優劣をつけ選別する「優生思想」。2016年、相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」の入所者ら45人が殺傷された事件の際にも、社会に潜む優生思想について多くの声があがった。 刑法・堕胎罪の撤廃を求めている「SOSHIREN女(わたし)のからだから」での活動を長く続ける大橋由香子さん(63)は、その活動のなかで、中絶を許可した優生保護法の目的に「不良な子孫の出生防止」があることに闇の深さを感じる。強制不妊手術という人権侵害、社会に浸透する優生思想について問い続けてきた。 「優生思想という言葉は、いろいろな意味でつかわれますが、優れた存在と劣った存在、能力がある人とない人に分けること自体に無理があります。その区別は、誰が、どう作るのか。線引きはいくらでも恣意的になりえます」 昨年のカンヌ国際映画祭でカメラドール特別表彰を受けた映画「PLAN 75」(早川千絵監督)は、少子高齢化が進んだ近未来の日本で、満75歳以上の人に自らの生死を決定できる制度のある社会を描いた。大橋さんは、この映画を見た日はよく眠れなかったという。 「安楽死については『したい人が選ぶのだから問題はない』と言う人もいるのでしょうが、実際には自己決定というより、死を選ぶように追い込まれる危険性が高いと思います。これだけ賃金が上がらず、不安定雇用の人も多く、性差別も含めた格差が広がっている世の中ですから」 ◇ 『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?国会議員に聞いてみた。』の著者、フリーランスライターの和田靜香さん(57)は、生活のためにライター業と並行していろいろなバイトを経験してきた。コンビニ、パン屋、スーパー、おにぎり屋……。将来が心配で「地域おこし協力隊」(総務省が行う都市から過疎地域への移住促進事業)に応募したこともある。コロナ禍前はバイトを二つかけもちしていたが、コロナ前・コロナ後で二つともクビになってしまった。 「本当に生活、どうしようかなって。私はフリーランスだから自己責任の部分もあるにはあるんですけど、でもそれだけが理由なのか」 それを知りたくて、国会議員に直接聞いてみることにした。そうしてできたのが前述の本だ。 「これで私のせいばかりではないとやっと思えました。知らないからこそ過激で簡単な言葉にひきよせられてしまう。自分で学ばないと自己責任だけに囚われます」 現行の日本の社会保障制度は「標準的家族(ライフコース)」を前提としている。また、経済問題やケアはすべて家族の中で解決する「家族主義」も強い。標準的ライフコースをとっているうちは守られるが、一度そこから外れるといきおいリスクに晒(さら)される。この間、雇用の流動化など、人びとが標準的ライフコースから外れるような社会の変化はどんどん進んでいるのに、社会保障制度は以前のままだ。 「時代に合わせて社会制度を作り変えてこなかった。つくづく政治が変化できないことや、怠惰さが問題であって。そういう政治を放置してきた私たちの責任でもあるんですけどね」 しかし、声をあげると、見える景色が違ってきたという。 「不安や不満があったら、うまく言えなくていい、戦争したくないよ、軍拡すんな! もっと税金安くしろ! そのとき、自分が思う不安をみんなガンガン叫んだらいい。多分その集合って大きいもので、それこそが力になる気がするんですよね」 (本誌・小柳暁子、佐賀旭/西岡千史)※週刊朝日 2023年3月31日号
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ryuchell 息子とお出かけ中に「だいぶ成長したな」と感じた出来事とは
現在4歳になる男の子を育てるpeco(ぺこ)さんとryuchell(りゅうちぇる)さん。昨年8月、婚姻関係を解消しましたが、これまで通り3人で「新しい家族の形」を築いていくことを公表しました。本連載では、お二人の日々の育児や家庭について交互に語ってもらっています。今回はryuchellさんに、最近、息子と過ごした出来事について話を聞きました。 * * * 少し前ですが、息子とサンリオピューロランドに行ってきました。息子はポムポムプリンが好きで、私もキティちゃんが好きなんです。 とても盛り上がったのは、歌舞伎とキティちゃんがコラボしたミュージカル(KAWAII KABUKI ~ハローキティ一座の桃太郎~)です。息子はかわいいけど、格好いいというのが好きなんですね。いいところで観たかったので、早く席を取りに行って、前の席で観ることができました。 実は、このミュージカルはもうすでに4、5回くらい見ています(笑) パフォーマンスがとてもすばらしいんです。ダンサーは格好よくて、華やか。キティちゃんやポムポムプリンたちが出てきて、歌舞伎のメイクや着物の姿ですが、かわいらしさもあります。それで鬼退治をするんです。 その他にも、キティちゃんが作ってくれるポップコーンを食べたり、アトラクションに乗ったり、かわいいランチを食べたりと、大満足でした。 サンリオには行く度に、お土産を買っています。大きなお人形とかは家にあるので、「今回はちっちゃいのだよ」と約束したら、ポムポムプリンのついたキーホルダーを持ってきました。とてもかわいかったです。 一緒にお出かけして、改めて息子もだいぶ成長したなと感じることがいくつもありました。 サンリオには電車で行きましたが、最近はどこにいくにも、「抱っこして」とは言わなくなりました。手はつないで一緒に歩いています。抱っこしなくなった分、外出がとても楽になりました。 電車でサンリオに行くと、次第に窓から見える風景が自然いっぱいな感じに変わるんですよね。「お山が見えてきた!」とか窓から見える外の風景について共有して楽しめる年齢になってきました。 私は電車には普段あまり乗らないので、乗り換えを間違えてしまって。それで乗り換えたら、また間違って……。そしたら、息子も優しくて「大丈夫だよー」ってフォローしてくれました。イヤイヤ期もありましたが、頼れるお兄ちゃんになっているんだなと感じました。 最近は、息子と一緒にカラオケにも行きました。息子はカラオケで歌うのも大好きです。 歌うのは、NHKの「おかあさんといっしょ」に出てくるような子どもの曲です。息子が選曲して歌っています。私が好きな曲とかは歌わないです。それはもうちょっと大きくなってからかなと思っています。 カラオケは子どもが喜ぶようなものが多くあって、いいですね。 デンモク(選曲・予約する通信機器)の機能に、お絵かきできるものがあって、息子はそこで恐竜とか、キティちゃんの絵を描いていました。3時くらいにいったので、おやつにスイーツも食べました。キッズルームもあるカラオケ店で、滑り台とかつみ木で遊びました。2時間くらい満喫しました。 息子は肩車が大好きなので、家でよく肩車をして、歩き回っています。身長も大きくなって、体重も重くなってきているので、最近は重くなってきたなぁと思います。まだしばらくはできると思いますが、そのうち難しくなるんですね。できるときまで肩車したいと思います。 私のSNSでは紹介できていませんが、息子との時間も大切に過ごしています。一緒にいると予想外のハプニングも起こりますが、「あぁ、どうしよう」と思うよりも、「なんくるないさー」(なんとかなるさ)の精神で子育てしています。 (構成/AERA dot.編集部・吉崎洋夫)
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葬式で「ご愁傷様です」と言われたら、なんと返せばいいのか…「ありがとうございます」を避けるべき理由
葬式で「ご愁傷様です」と声をかけられたら、なんと返せばいいのだろうか。マナー講師の諏内えみさんは「『ありがとうございます』『すみません』という言葉は避けたほうがいい。『恐れ入ります』『痛み入ります』としたほうが場に適した表現といえる」という――。 ※本稿は、諏内えみ『一生ものの「正しい敬語と上級の気遣い」 先生! ダメダメな私を2時間で仕事デキる風にしてください!』(KADOKAWA)を再編集したものです お通夜やお葬式で絶対に口にしてはいけない言葉 冠婚葬祭の中でも、失敗できないのがお通夜とお葬式。悲しみに満ちた場では、ちょっとした失礼や失言でも人を深く傷つけることになります。「もし自分が言われたら……」という想像力を持っておくようにしましょう。 お通夜やお葬式の時、ご遺族にどんな言葉をかけていいものかは誰もが悩むところ。だからといって、ご遺族に声をかけずにその場を辞することは、何よりも失礼にあたります。深い悲しみから一日も早く立ち直ってほしいという思いは理解できますが、「がんばってください」は配慮が足りず不適切です。これ以上がんばれないくらい辛い思いをしている人にとって、「がんばって」は禁句です。 「お力を落とされないように」は一般的な言い回しとされていますが、力を落とさずにいられないのは当然のこと。寄り添う気持ちに欠ける印象です。 まずは「お力落としのことと存じます」と傷心のご遺族に心を寄せた上で、「何かお手伝いできることがありましたら、おっしゃってください」と、どんなことでもいいから力になりたいという気持ちを伝えます。その思いは、きっと届くはずです。 定型句よりも伝わる言葉を お悔やみの言葉でよく知られているのは「ご愁傷様です」。この言葉は、お通夜に駆けつけてご遺族に挨拶をするシーンで用いられるのが一般的です。前項の「お力落としのことと存じます」は場を辞する時に言うことが多いので、「ご愁傷様です」との使い分けをしましょう。同じ言葉ばかりを使うのは、幼稚なイメージになります。 「ご愁傷様」は目上の方にも友人にも使える言葉ですが、もし故人やご遺族と親しい間柄である場合、「ご愁傷様」はよそよそしく感じられるかもしれません。定型句のような汎用性の高い言い回しは、相手を選ばずに使える反面、誰に対しても言えるという点で心がこもっていないととられる可能性もあるのです。 正式なマナーとは少し異なりますが、親しい方のお通夜に駆けつけたときの第一声は、「ご愁傷様」ではなく、「このたびは……」と言葉にならない悲しみをご遺族と共有する形でもいいかもしれません。 お悔やみの言葉はハキハキと明瞭に言う必要はなく、言葉を濁して語尾を小さく言ってもかまいません。時として、言葉にならない気持ちをそのままにご挨拶する、という方が思いが伝わることもあるのです。 「ありがとうございます」「すみません」は不適切 身内が亡くなった時は、参列者から挨拶を受ける立場になります。「ご愁傷様です」と言われた場合、何と答えるのが適切でしょうか。 一般的には「恐れ入ります。生前は○○が大変お世話になりました」です。「恐れ入ります」は「すみません」を丁寧にした形ではありますが、「参列してくださって恐れ多いこと(ありがたいこと)です」というお礼の意味もあります。 「恐れ入ります」に似た意味の表現に、「痛み入ります」があります。「ご丁寧に、痛み入ります」と使います。あまりの感謝に恐縮し、心苦しく思うという意味で、「恐れ入ります」よりも若干恐縮度が高いニュアンスがあります。 ちなみに、「恐れ入ります」も「痛み入ります」も、お通夜やお葬式だけでなく、結婚式に参列してくださった方へのお礼の際にも用いる表現です。 お悔やみの言葉をいただいて、「ありがとうございます」と言うのはお勧めできません。気持ちはわかりますが、場に適した言葉を使うようにしましょう。「すみません」も同様です。つい言ってしまいがちな言葉なので、気をつけましょう。 知っておいて損はない「死」についての言葉 死についての表現には、いくつかあります。身内の死については、「他界いたしました」「永眠いたしました」「死去いたしました」となります。 「亡くなる」は基本的には敬意表現になるので、身内に使うのはふさわしくありません。ただし、「死にました」というとあまりにダイレクトで少々乱暴に聞こえてしまうので、話し言葉として「亡くなる」を使うのは問題ないでしょう。 死の尊敬語は「逝去」です。弔電などの書き言葉では、「○○様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます」とします。「謹んでお悔やみ申し上げます」は話し言葉でも使うので、覚えておきましょう。 時折耳にするのが「お亡くなりになられました」という表現。これは「亡くなる」+「~になる」の二重敬語であり、敬意表現として正しいものではないのですが、マナー違反ととがめられることはないようです。 深い悲しみで皆が動揺している場面では、正しさよりも気持ちを優先する傾向にあるのです。 招待した方もされた方も幸せになるひと言 結婚式に招待された場合、新郎新婦にはもちろん、そのご家族にも挨拶をするのが礼儀です。「おめでとうございます。すごいですねー」で終わらせることのないよう、最低限言うべきことを身につけておきましょう。 新郎新婦とご家族、どちらに対しても基本構造は同じ。「お祝い・感謝・ほめる」のセットで挨拶をします。 (1) まずは「本日は誠におめでとうございます」というお祝いの言葉。新郎新婦が友人であれば、「本当におめでとう!」でもかまいません。(2) 次に、「お招きいただきありがとうございます」という感謝の言葉。ここは、新郎新婦にもきちんと伝えたいところです。(3) 最後に「素敵な会場ですね」や「和やかで楽しい披露宴でした」など、式や披露宴の会場や雰囲気などを称賛する言葉を付け加えます。 お祝い・感謝に何が素晴らしかったかを一言伝えると、招待した甲斐があったと思ってもらえます。招待した方もされた方も幸せな気持ちになるコミュニケーションです。 正しいマナーの土台にあるのは相手への気持ち 結婚式の招待状には、出席・欠席を知らせるハガキが同封されています。これを正しく記入できると、社会人として一目置かれることでしょう。 出席にしても欠席にしても、「御出席」「御欠席」と書かれている「御」の文字を消すのは知っていますよね。もし出席するなら「御出席」の「御」と「御欠席」を、欠席するなら「御欠席」の「御」と「御出席」を消します。同じように、「御住所」「御芳名」の「御」と「芳」も消します。 文字を二重線で消すのが一般的ですが、「御」や「芳」の上に「寿」を重ねて書くことで消す方法もあります。覚えておいて損はありません。 やむをえず欠席する場合は、余白に「おめでとうございます。出張中につきおうかがいできず大変残念です」と書き添えます。無言で欠席するのではなく、お祝いの気持ちと、本当は行きたいのにやむをえず欠席することを伝えるようにしましょう。 どんな場面でも、気持ちを言葉に乗せることが大事です。正しい言葉遣いやマナーは、気持ちという土台があってこそ生きるもの。気持ちと言葉は不即不離なのです。両方を的確に正しく表現できる人が「デキる人」であり、信頼されて出世できる人でもあるのです。 諏内 えみ(すない・えみ)「マナースクール・ライビウム」「親子・お受験作法教室」代表 VIPアテンダント業務を経てスクールを設立。上質なふるまいや会話、社交術、テーブルマナーが学べるオンライン講座『Class the SUNAI』を主宰。難関幼稚園、名門小学校合格率95%のお受験講座は「にじみ出る育ちの良さ」が身につくと話題に。映画やドラマで女優への所作指導のほか、テレビ出演多数。著書に『「育ちがいい人」だけが知っていること』(ダイヤモンド社)』など。
プレジデントオンライン
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賛同の嵐「育休で同僚に10万円」の三井住友海上 ネット記事の「至極真っ当」な書き込みで即改善も
育休をとりやすい職場環境づくりの一環として三井住友海上火災保険が新設する「育休職場応援手当」が大きな反響を呼んでいる。3月12日、読売新聞オンラインが「育休を取得した社員の同僚に最大10万円の一時金」と配信すると、掲載された「Yahoo!ニュース」や「NewsPicks」などに賛同するコメントが数多く書き込まれた。しかも、驚くべきことに、同社はたった数日でこれらの声を吸い上げ、制度内容を大きく改善したことがわかった。 * * * 「読売さんの記事が出たのが日曜でした。月曜の朝、出社すると、ヤフー(ニュース)などのコメントがすごいことになっていると言われた」 そう語るのは、「育休職場応援手当」制度を立案した三井住友海上火災保険人事部部長の丸山剛弘さんだ。 読売新聞の記事には、次のように書かれている。 <13人以下の職場で育休取得者が女性の場合、同僚に各10万円を支給する。取得者が男性の場合、育休期間が女性より短い実態を踏まえ各3万円とする。41人以上の職場で取得者が女性なら各1万円、男性なら各3000円とする> インターネット上のコメントにとどまらず、「直接、話をしたい」と、人事部にも電話がかかってきた。見知らぬ声の主は、こう訴えた。 「非常に素晴らしい仕組みだと思うし、期待している。ただ、男性と女性のどちらが育休をとったかで支給金額に差があるのは惜しい。ぜひ男女の差をなくしてほしい」 ■社長に見直しを進言 この声に丸山部長は耳を傾けた。 「ヤフーにも同様のコメントがあったのですが、もうおっしゃる通りというか、至極真っ当なご意見でした。制度をよりよいものにしたい、という気持ちがすごく伝わってきた。なので、経営会議にも出し、労組にも提案した内容だけれど、変えちゃえばいいじゃないか、と思った」 この制度案はすでに経営会議に付議され、労使協議の完了を条件に新設することが承認されていた。それをヤフー・ニュースのコメント(ヤフコメ)や直電の意見をもとに大幅に見直そう、というのである。 電話を終えた丸山部長は、すぐに上司の執行役員人事部長と人事担当役員(常務)に相談した。 「『すごい反響です。でも、男女差がないほうがもっといい、というお声もいただきました。私もそう思いますので、修正しませんか』と言ったら、『そうだよな。ぜひ変えよう』という話になった」 丸山部長は一晩考えて、男女で支給金額に差をつけない案に修正し、人事部内のダイバーシティ推進担当者たちにも意見を聞いたうえで、育休取得予定期間が3カ月以上か、3カ月未満かで区切って支給金額を変えるといった修正案を人事担当役員と人事部長に見せた。 「そうしたら、こちらのほうが絶対にいい、と言ってもらえた。翌日、労使協議中の労組に対しても、提案内容を修正したい旨を申し入れると、前向きに受けとめられ、よい感触を得た。そして15日、人事部長から、出張中の社長にも労使協議と内容見直しの動きをお伝えするようにと、私と部内の企画チーム長に対して指示があったので、企画チーム長から修正を進言するメールを社長に送ってもらった。すると、『見直す方向で進めてください』と、社長からすぐに返信があった」 三井住友海上火災保険の社員数は約1万7千人。大企業にもかかわらず、信じられないほどの柔軟性とスピードである。ネット記事の反応から、即座に制度を改善――。筆者はさまざまな企業を取材してきたが、このような事例は聞いたことがない。反響をさらにプラスに変えようとする前向きな意識が形を変えたのだ。 ※記事の後半<<同僚の育休で“まわりの人に一時金”の案に「それ、いいね!」 三井住友海上、背景に「産後うつ」のケア>>に続く (AERA dot.編集部・米倉昭仁)
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「厳しく怖い」伝説の大江健三郎 編集者が体験した冷や汗と忘れられない笑顔
対談や連載など週刊朝日はノーベル賞作家の大江健三郎さんと深いご縁をいただいた。担当だった山本朋史元編集委員が大江さんの優しさを記憶に刻んでいた。 * * * 「編集者に厳しく怖い」。そんな伝説めいた大江評がなぜか本誌編集部に語り継がれていて近寄りがたい存在と目されていた。代表作をいくつか読んだだけで大江文学についてほとんど知らない事件記者だったぼくに1994年にノーベル文学賞受賞の記事を作れと指示が下った。困り果てて作家丸谷才一さんに泣きつき寄稿していただくことで救われた。徒手空拳で向かう相手ではない。受賞直後に単独インタビューなど、とても無理だった。 でも、大江さんに本誌に登場願いたい。ない知恵をしぼり、作家井上ひさしさんと20世紀末を振り返る対談をお願いしたのはたしか1998年の暮れのことだった。 「井上さんとだったらいいですよ」 快諾をいただき朝日新聞東京本社で行った対談は当初は3時間ほどで終わる予定だったが、お二人とも準備したものを語り尽くせず場所を変えて深夜に及んだ。 この対談は1999年新年号から2回にわたって掲載された。 お礼の手紙を出すと丁寧な返事をいただき、何度かやり取りが続いた。葉書や便箋に大江さん独特の角張った文字でびっしり書かれていた。当時の編集長から、 「大江さんに何か目玉になるような連載をやってもらえないか」 なかなか直接は口に出せないでいた。ある時、大江さんのほうから、 「子どもにもわかる童話のようなエッセイなら書いてもいいな」 と。願ってもない話だった。 なぜ学校に行かないといけないの?といった子どもの疑問に答えるエッセイの構想だった。最初の原稿を見せていただいた。簡単だが全体像を伝えるレジュメもできあがっていた。大江さんの故郷、愛媛県内子町で子ども時代に体験した話などを盛り込むという話も魅力的だった。 挿絵をどうするか。相談すると妻ゆかりさんが描いた絵を見せてくださった。繊細で詩的なタッチの完成度に驚いたものだ。タイトルは『「自分の木」の下で』。この時すでに大江さんの頭の中ではすべてができあがっていたのだと思う。担当記者のぼくのやることといえば、毎週月曜日に世田谷区の自宅に原稿を取りに行くこと。文学オンチのぼくでも楽勝、と思ったのは束の間。実はそんなに簡単ではなかった。 大江さんはいつも目の前で原稿を渡して、私が読み終わるとじっと見つめられた。 「子どもでもわかるようにしたいので、あなたが読んで少しでもわかりにくい部分があったら遠慮なく言ってください」 原稿用紙をハサミで何度か切り貼りした跡があったり、原稿用紙の隅に小さな字で書き込みをしたり。何度も推敲されたに違いない。重厚だが難解と思い込んでいた大江さんの文体とはひと味違っていた。読み応えがある、しかもわかりやすい。 「週刊朝日の読者にピッタリ。すばらしいです」といった通りいっぺんの称賛だけでは足りない。ふさわしい言葉が出てこない。情けなくなった。何か言わねば。焦り狂って畏れ多くもある時、 「この部分が少しわかりにくいと思います。ぼくにはちょっと難しい」 と言ったことがあった。すると大江さんは表情を変えた。 「そこで待っていてください」 ■詩集と色紙 忘れがたい笑顔 私がゆかりさんと挿絵について話していると10分ほどで大江さんは、 「これでどうですか」 と文章を作り変えてこられた。この時ほど冷や汗をかいたことはなかった。 連載はモノクロ誌面なのに、ゆかりさんは毎回時間をかけて丁寧にカラーで挿絵を描いてくれた。 「毎回色がすばらしい。なんとかカラーで本にしたいですね」 というと大江さんは自分の原稿のこと以上に喜んでくれた。連載は一回4ページ。切り貼りや書き込みが多かったのに分量はいつも変わらずきちっとしていた。ゲラをファクスで送るのだが直しはほとんどなかった。編集部の手続きミスで叱られたことはあったが、理不尽な怒りではない。大江さんを怖いと思ったことはなかった。 16回続いた連載が単行本になると評判を呼び36万部を超えるベストセラーに。しばらくして続編もお願いすると、 「彼女さえよければ」 とゆかりさんを見た。主婦業をやりながら時間をかけて一回に2枚の絵を描くのは大変な作業であることは大江さんも認識していたのだろう。『「新しい人」の方へ』というタイトルで続編が始まったのは1年近く経った2003年新年号からだった。 私事で恐縮だが、連載期間中に私の父が咽頭がんで死亡。数カ月後に母が末期の肺がんとわかった。看病のドサクサで原稿受け取りの日を変えてもらったことがある。すると大江さんは、 「病床でこの本をお母さんに読んであげたらいいですよ」 と一冊の詩集をくれた。ゆかりさんの手料理をご馳走になって、長男の光さんに悲しみを癒やすCD音楽を聞かせていただいたのもその頃だった。 古新聞に包んだ色紙を2枚いただいたこともあった。新井白石の「折たく柴の記」からの一文を筆記したもので、 「学業の道ではどんなに辛いことがあっても、自分を甘やかすことなく、いつも堪えて、人が一やることは十やり、十やることは百やりなさい」 私の無知を見通して、人の十倍勉強せよという励ます言葉をくださったのだと勝手に理解した。大江さんには、こういう優しさがあった。私が同時期に取材していたKSD事件の話も熱心に聞いてくれた。ちゃめっけたっぷりの笑顔が忘れがたい。2冊の本を再び手にしながらなんだか頭の中を寂しい風が抜けていくような気がする。(山本朋史)※週刊朝日 2023年3月31日号
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75歳以上に安楽死を勧める制度ができたら…落合恵子が考えたこと
昨年公開のフィクション映画「PLAN75」はリアルな現実と架空の近未来が重なって観る人の心をかき乱した。理由は「75歳以上に安楽死を勧める制度ができたら──」という世界を描いていたから。作家で、クレヨンハウス代表の落合恵子さんに「映画のような社会を現実のものとしないために私たちに何ができるのか」について聞いた。 * * * ■「年金生活者も立ち上がっていい」 主役の倍賞千恵子さんといえば、私の世代にとって、1963(昭和38)年の映画「下町の太陽」(山田洋次監督が映画化)をまず思い出します。その方が、いま81歳で主役をされている。素敵に年齢を重ねられていますね。自然な老いによる表面的な変化もそのまま見せておられる。 作品を観て、私は「政治や社会から自らの最期を押し付けられることはお断りします」。そう、改めて強く感じました。人は誰もいつかは死を迎えますが、私はそれを国に管理されたくない。可能な限り、自分で自分の最期を決めたい。 私は長年、毎年1月1日に、おおまかに言うと「自然のまま、私を逝かせてください」という内容のリビングウィルを書いています。30代と40代で仲のいい友人を亡くしたときの宿題として、医療従事者や周囲の友人たちが後々「あれでよかったのか」と苦しまなくていいように、私の意思を文書で残しています。 弱者をないがしろにするような政治が続いて、生きにくさを感じる社会ですよ。私が国葬反対、原発反対、改憲反対とデモに参加しているのは、民主主義の基本である、私たちひとりひとりが社会に参加しているのだ、という感覚を確認したいからでもあります。 「パンとサーカス」という言葉があります。権力者は市民にわずかな食料と娯楽を与えておけばいいという意味ですが、私は「パンは自分で作ります、タネから。サーカスも勝手に示さないでください。自分たちで考えます」と。そうしないと、結局は政治や制度にからめとられてしまいます。 若い人たちにもっと声を上げていただきたいし、年金生活者も、もう少し立ち上がってもいいと思うんですよね。社会を変えることは大変ですが、私は「まだ、やってるよ」と言われる一人でいいのです。 昨年、国葬反対のデモの帰りに転んでしまって。医師に「なんて強い骨なんだ!」と褒められるほど、何でもなかったって喜んでいたのですが、寒くなると痛むようになって。老いは日々感じます。 でも、「だから、デモには行かない」というのはできないな。 ただ、ちょっとだけ「体も労わりなさい」って、自分の体から教えてもらう。体からの教えは贈り物と思っています。 最期まで生きていくために必要なことのひとつは、悔しいけど経済力ですよね。でも、大好きだったお年寄り(私も年寄りですが)が言っていました。「棺おけに持っていけるのは、菊の花だけだよ」。最後にプラマイゼロになればいい、と私は考えています。 そのために、みんなが、あるいは、みんなで、分かち合えるかどうか。分かち合うことは奪われることではない。分かち合うことがスムーズに機能しない社会では、すぐに自己責任という言葉が登場し、問われます。 昨年12月、クレヨンハウスの東京店は表参道から吉祥寺に移転しました。47年目を迎えたクレヨンハウスは、子どもも大人も自分であることに疲れた人の居場所になったらいいなって、空間作りをしてきました。次は小さな教室もやりたい。農福連携のような活動、さまざまな古今東西の本を読む、シュタイナーの教育や絵を描く、何でもいい。 血縁だけではなく、結び縁を大切にしたい。どうして、日本は養子が少ないのか。結び縁の家族があってもいいですよね。そんな結び縁を続けていくことが、この映画に対する答えでもあるのかなと思います。 (医療ジャーナリスト/介護福祉士・福原麻希)※週刊朝日 2023年2月10日号
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宇野昌磨「成長する感覚味わっていたい」 勝利を重ねて思う“今すべきこと”
グランプリシリーズスケートカナダ、NHK杯、グランプリファイナルと勝利を積み重ねてきた宇野昌磨選手。3月にさいたまスーパーアリーナで開幕する世界選手権に挑む。AERA 2023年3月27日号から。 * * * ――今季のフィギュアスケート男子の主役は、間違いなく彼だ。宇野昌磨(25)。グランプリ(GP)シリーズのスケートカナダとNHK杯を2連勝し、昨年12月のGPファイナル(イタリア)で初優勝。全日本選手権では5度目の優勝を果たした。 3月22日にさいたまスーパーアリーナで開幕する世界選手権では、日本勢初となる連覇がかかる。彼を阻むものは、今のところ見当たらない。「孤高」の王者が挑むのは、自分自身だ。 宇野昌磨(以下、宇野):もちろん、(連覇を)期待されていることに応えられる演技をしたいと思っています。けど、まず一番はケガをしないことだと思っています。万全な状態で試合に挑みたい。 日々の練習は絶対におろそかにせずやると思うので、そこはあまり心配はしていないです。気合を入れすぎてケガをしないように。それ以外は、何も考えなくても僕は絶対にやると思っています。 ――今季は10月のジャパンオープンから「無敗」で走り続ける。 宇野:それは偶然でもあり、偶然じゃない部分もあります。「偶然」というものを日々の練習で偶然じゃないものにしているのは、自分の成果だと思うんです。けど、フィギュアスケートは一発なんです。本当に一発勝負で、どれだけすごい選手でも失敗したら順位は落ちてしまう。いかに失敗しないパーセンテージを上げていくのかが、日々の練習からつながってくると思います。 ■失敗を恐れない理由 その一方で、あまり失敗というものを恐れていないのも事実です。今25歳で、20年間もスケートをやっているからなのか、あまり失敗を恐れなくなりました。実際に失敗しても、皆さんが思っているほど、大きなものを失うことはないと思う。 それは、周囲の方やファンの方々が、これまで僕が失敗してきた中でも応援してくださったり支えてくださったりして、それを経験したからこそ言えることだと思うんです。 ――「失敗」を恐れない。その意味で、5度目の優勝を果たした全日本が象徴的だった。フリーの前半に予定していた2本の4回転ジャンプに失敗し、後半にギアを上げた。宇野の顔つきが引き締まり、三つの連続ジャンプを今季初めて決めてみせた。 宇野:前半二つの失敗は、僕の気持ちを変えました。サルコーは仕方ないなと思っていましたけど、フリップは練習からずっとできていたので、気をつける部分が曖昧(あいまい)だったというか。ジャンプを跳びにいく時に気をつけないといけない部分が、成功しているのをいいことにちょっとおろそかになりました。 ■レベルを上げる感覚 僕の良くないところではあるんですけど、自分の番が来る前に全員の演技を見るんです。そして、「どんな演技をしたら優勝する」とか、演技中にもだいたい考えながら演技をしてしまうところがあるんです。前半二つ失敗したからこそ、「後半頑張らないといけない」と思っていました。前半にジャンプを成功していたら、後半は絶対に連続ジャンプは跳んでいなかっただろうなと思います。僕の良くないところだなと思いますけど……。 ――逆境を力に変える能力もある一方で、慎重な面も。一見相反するようだが、頂点に近づくための流儀。まじめに真摯(しんし)にスケートと向き合ってきた宇野だからこそなせることだろう。 宇野:何をもってまじめかはわからないですけど、僕は別にまじめな性格ではないですよ(笑)。もともと人の目を見計らってさぼったりするタイプだと思いますし。ただ、怖くてそういう度胸がないから、してこなかっただけです。今となっては、本当にゲームでいう“レベルを上げる”感覚で、その感覚がすごく楽しくてスケートをやっています。 だから、フィギュアスケートの魅力というものを僕自身がまだ言語化できないんです。もっともっとやっていく中で、フィギュアスケートの魅力が自分の中で見つかりそうな気もします。でも、まだまだ今はトップで争うことだったり、日々自分が成長する感触を味わったりしていたいんです。 自分の体と向き合って、練習したことがしっかり結果に反映されるのがスポーツのあり方だと思います。フィギュアスケートは技術や表現力、芸術性もありますし、求めるものによって考え方は変わると思います。 ただ、僕は競技者である以上、今はジャンプを頑張らないといけないという気持ちですね。もっと表現面を頑張りたいという思いもありますけど、それは競技者をやめてからなのかなとか考えてしまいます。 ■まだやれることある ――北京五輪金メダルのネーサン・チェン(米国)を筆頭に、時代は4回転の全盛期とも言える。頂点に立つためにジャンプを追究する日々はこれからも続く。 宇野:今できているジャンプでも、練習していく中でいろいろな発見があったり、成長したりしている部分があります。この1年でも明らかにジャンプの成功率が上がったりもする。昨季のジャンプと今のジャンプを比べても跳び方がどんどん良くなっているのが、動画を見ていてもわかる。いま跳べているジャンプの中にも、まだまだやれることがたくさんあると感じています。 4回転の種類を増やすのも視野に入れながら、練習はしていきたいなと思います。何をめざして今スケートをしているのかというと、毎日課題を見つけてそれをクリアにする日々を送って、その先に大会というものがあるという感じです。だから、僕にモチベーションのアップダウンはないんです。 ――25歳。頂点を極めた王者なりの悩みも最近出てきたという。 宇野:僕は何をめざしているんだろうな、と思う時もありますね。まったく悲観的なものではなくて、純粋な疑問というか、何をめざしているんだろう?というのはありますね。 絶対いつかは競技生活を終える時が来ると思うんです。大きなケガをするとか、トップにかなわないくらい周囲の成長が著しくなるとか、年齢とともに技術力が落ちるとか……。その後に、自分が何をするのかなとか考えてしまうこともあります。 ■自分が何をすべきか そうした時、今、自分は何をすべきなのかなというのは、ちょっとずつ考えるようになりました。まだ何も行動には移していないんですけど(笑)。僕があまりにもフィギュアスケートという競技だけにしか向き合ってこなかったので、もうちょっと視野を広げて、自分のためにもいろいろな道を考えていくことが必要なのかなと。そういうことを今季、考えることが多くなりました。 それは立場的な問題もあると思います。今まではずっと上を追いかける立場で、ただただ追いかけるだけでよかった。でも今は、自分が引っ張ることができているとは思ってはいないですけど、そういう立場に立たされたからこそ、考えるようになったのかな、と。 でも、僕にはやりたいことがなさすぎるんですよね……。何かしたいというものが。もし見つからないのであれば、せっかく今まで培ってきたフィギュアスケートを無駄にするのはもったいないなと思います。 ――宇野の澄んだ瞳の中には、世界の頂点以上の何か──。無限の可能性が広がっているようだ。 (構成/朝日新聞スポーツ部・坂上武司) ※AERA 2023年3月27日号
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管理職「なりたくない6割」時代の背景 出世より「持続可能な働き方」の価値観に変化
約6割が「管理職」に昇進したいと思わない──。目標であり、出世のための階段とされてきた管理職が揺らいでいる。責任の重さ、長時間労働、部下との関係。その憂鬱さ、つらさを訴える声が聞かれる。打つ手はないのか。AERA 2023年3月27日号の記事を紹介する。 * * * 【管理職 官公庁・企業・学校などで、管理または監督の任にある職。また、その任にある人】 辞書に載っている管理職の定義だ。かつては、出世コース上にあるとされ、多くの人が同期や先輩を出し抜き、我先にと目指したポジションに異変が起きている。 厚生労働省の「労働経済白書」(2018年版)によると、役職に就いていない職員や係長・主任相当の職員で「管理職に昇進したいと思わない」のは61.1%。「管理職以上(役員含む)に昇進したい」の38.9%を大きく上回っているのだ。 厚労省の元労働局長で、事業創造大学院大学の浅野浩美教授(キャリア論)は、 「管理職は、責任が重くなり、長時間労働になるので避けたいと考える傾向が強まっています。また、強く言えば、ハラスメントだと訴えられる可能性だってある。マネジメント力に自信がない人は手を挙げなくなっている」 と説明する。 ■「死にたい」と思った その言葉を痛切に受け止めるのは、東京都内のメディア関連会社員の男性(59)だ。21年、勤務先の副社長を自ら降りた経験がある。 副社長になって4年目のことだ。海外にいることが多い社長に代わって実質的な経営の指揮を執っていたが、相次ぐ新興メディアの台頭で業績が急速に悪化。ギスギスしていく社内の雰囲気が全身に突き刺さるうちに、次第に心のバランスを失ったという。男性は、 「なんとか出社はしていましたが、毎日死にたいと思っていた。限界でした」 と話す。うつ病と診断され、心療内科に通った。他の役員が「しんどいでしょう」と声をかけてくれた時、素直に降格人事を受け入れたという。 同じ頃、信頼し、評価していた部下のひとりからパワハラで訴えられた。 育てようという一心で叱咤激励しながらも、家族のように親しく付き合っていたが、部下には受け入れてもらえず、会社からは懲戒処分を受けた。 「ショックでしたね。約15年前に初めて管理職になった当時は、違う景色が見えたような気がして、高揚感がありました。優秀な部下とともに日夜問わず夢中で働き、休日は自宅に招いて食事会もしていたのに。自分にはリーダーシップがあると思っていただけに、コミュニケーションの取り方に悩むことが増えました」(男性) 20年に実施された厚労省の「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年以内にパワハラを受けたことがあると回答した人は31.4%。声をあげやすい環境が整いつつあるということでもあるが、前出の浅野教授は、こう指摘する。 「管理職は、部下の指導によりきめ細やかさを求められるようになりました。その上で、自分の仕事をこなしながら、この変化の激しい時代に職場のパフォーマンスも上げなければならない。大変なことばかりに見えて、敬遠されてしまうのは仕方がない面があります」 ■変化している意識 働き方の変化も「管理職離れ」を加速させている。 例えば、この5年ほどで急速に広がっている「ジョブ型雇用」。会社があらかじめ職務(ジョブ)と賃金を定め、それに見合う技能をもつ人を雇う制度だ。社員は原則その職務以外はせず、年齢が上がっても賃金は増えないとされている。働き方評論家で千葉商科大学准教授の常見陽平さんは、 「昇進はキャリアの断絶だと考えられるようになりました。管理職になることは、必ずしも好意的にとらえられていません。自分のやりたいこと、深めたいことを仕事にしたいと考える人が増えました。管理職になるということは、それまで夢中になってやっていたことができなくなるということです」 と話す。昇進や昇格は、仕事ぶりを評価されているからこそであり、会社からの期待の表れのはず。しかし、 「キャリア形成に対する人々の意識が変化しているということです。さらに、かつては部下といえば『男性新卒プロパー』しかいなかった企業で、非正規雇用、テレワーク、時短勤務など、雇用形態や勤務形態、給与も千差万別な部下をまとめる必要が出てきた。負担を感じる人は多いでしょう」(常見さん) 共働き家庭が増えたことも、管理職に対する意欲に影響を与えているようだ。 静岡県のメーカーで働く男性(60)は、かつて班長として部下を抱えていた時期があるが、課長への打診を断ったことがある。当時、45歳。とても忙しく、まだ保育園児だった2人の子どもの世話は、金融機関でフルタイム勤務をしている妻に任せがち。長期の海外出張に行った時に、妻が精神的にまいってしまったこともあったという。男性は、 「会社からはコストダウンを厳命されていたけれど、人を減らすことしか解決策がない状況だった。その分の仕事は、管理職がカバーしなければならないことは明らか。私がこれ以上忙しくなれば、妻が倒れてしまうと思いました」 と振り返る。妻が仕事を続けることを希望したことに加えて、右肩下がりの経済状況を考えると、共働きを続けられる「持続可能な働き方」を夫婦ともに選択する方が賢明だと判断したという。以来、イチ社員として定年までを過ごし、現在は再雇用の身だ。あの時の判断について男性は、こう話す。 「後悔は全くないです。管理職になっても、たいして給料は上がらない。休日もない状態で働き続けていたら、私自身の心身も家族もボロボロになっていたでしょう」 常見さんは、若い世代を中心に同様の価値観が広がっているとし、 「ストレスなく続けられるということは、働き方のひとつの答え。偉くなるより、一人前になりたいと考え、その選択ができるようになった」 と時代の変化を評価する。 けれど、管理職になりたくない人ばかりになると、組織が立ち行かなくなってしまうケースも出てくるだろう。打つ手はないのか。突破口になるかもしれない興味深いデータがある。 ■意欲が高いのは 21世紀職業財団(東京都)が22年、従業員101人以上の企業に勤務している20~59歳の正社員男女4500人を対象に行った調査によると、「管理職になりたい」割合は、総合職男性24.8%、総合職女性12.0%と、男性のほうが高かったが、「管理職に推薦されればなりたい」との回答は男性31.3%に対して女性は33.2%。わずかに、女性が上回っているのだ。 事業創造大学院大学の浅野教授は、 「上を目指したい気持ちのある女性は多いけれど、躊躇(ちゅうちょ)があることがわかる。自信が持てなかったり、子育てや夫との関係などを考えてしまったり。甘えているように見えるかもしれないけれど、その一方で、推薦されるなど後押ししてくれる理由があれば、管理職をやろうという女性はいるのです」 と話す。 また同財団の別の調査では、女性は男性に比べて、年齢が上がっても仕事への意欲が衰えないこともわかっている。内閣府によると、民間企業の女性管理職比率(課長相当職)は21年時点で12.4%だが、管理職のなり手不足に悩む企業は、この女性たちの意欲を見逃す手はないだろう。 「男女問わず、働く人は上司の言葉、態度、雰囲気で自分が評価されているか否かを感じ取り、それがやる気につながる。性別に基づくアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を取り除き、今こそ企業は本気を見せる時です」(浅野教授) (編集部・古田真梨子、小長光哲郎) ※AERA 2023年3月27日号より抜粋
AERA
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「立憲は大変な候補者出してきた」山口4区に有田氏参戦 安倍昭恵氏「主人の遺志継ぐ人を」
衆参5補欠選挙が、4月11日に告示される。昨年7月、安倍晋三元首相が凶弾に倒れ、空席となった衆院・山口4区に、前参院議員の有田芳生氏(71)が立憲民主党から立候補することを表明した。当初は、安倍元首相の「弔い選挙」で“無風”と見られていたが、有田氏の立候補表明で世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題が争点になりそうだ。 安倍元首相の銃撃事件以降、旧統一教会の霊感商法や献金問題がクローズアップされたのを受け、昨年末の臨時国会で不当寄付勧誘防止法(被害者救済新法)が成立した。世論の盛り上がりも一時に比べ、落ち着きを見せてきたなかでの補欠選挙。 自民党は山口4区で、安倍元首相の後援会が推す前下関市議の吉田真次氏(38)を公認すると2月10日に発表した。吉田氏は、安倍元首相が使っていた場所で事務所開きをし、「安倍元総理の思いをしっかり引き継いでいく」と安倍元首相の後継であることを強く訴えた。安倍元首相の妻・昭恵さんも知名度を生かし、吉田氏とミニ集会にも参加。「主人の遺志を継いでくれる吉田氏を応援してほしい」と訴えているようだ。 吉田氏の公認が発表された以降も、野党は山口4区の公認候補がなかなか決まらない状況が続き、当初は“無風”との見方が強かったが、有田氏の立候補表明で局面が変わった。 自民党としては、沈静下していた旧統一教会の問題が蒸し返され、争点になるのは避けたい算段だったようだが、有田氏は出馬表明の会見で「旧統一教会と安倍元首相の長期政権の審判が争点」などと強調した。 自民党の山口県連のある幹部は、「立憲民主党は大変な候補者を出してきた、というのが正直なところ」と語った。 有田氏は、フリーのジャーナリストとして約40年も前から旧統一教会問題を追及し、昨年7月まで参院議員を2期務めた。 立憲民主党の大串博志・選対委員長は、 「昨年夏に参院選が終わり、しばらく国政選挙はないと見られていたなかで、補選が衆参で計五つもある。野党としてなんとか一矢報いたい。とりわけ安倍元首相の地元、山口4区は保守王国ということもあり、候補者を探したけど手を挙げる人がいない。そうした状況のなか、1月末に私が直接有田氏に『旧統一教会問題を訴えるには最高の場ではないか』と出馬をお願いし、決断していただいた」 と党本部主導の擁立だったと明かした。 さらに、自民党にとって山口4区は、野党との戦いとは別に党内の派閥争いもはらんでいる。 山口4区で有権者が多いのは、人口25万人ほどの下関市だ。安倍元首相の地盤だったが、林芳正外相も下関市が「おひざ元」と公言してはばからない。 中選挙区制の時代は、安倍元首相の父、安倍晋太郎元外相と林外相の父、林義郎元蔵相(現・財務相)が激しく争った。 その流れを顕著に表すのが下関市議会だ。自民党会派は「安倍派」といわれる「創世下関」と、「林派」といわれる「みらい下関」という大きな勢力に分かれている。 今年2月の市議選で、安倍派は9人から6人に減ったが、林派は12人から13人に増えた。山口県は次の総選挙では小選挙区の区割り変更「10増10減」で四つの小選挙区が三つになる。 山口4区は山口3区と一体となるような区割りとされ、外相という要職を務める林氏が新山口3区の候補者として有力視されている。 ただ、今回の補欠選挙は「10増10減」の対象にならず、現行のままなので吉田氏が公認となる複雑な状況だ。 「勢いの差というのか、下関市議選では林派が台頭し、親分の安倍元首相を失った安倍派は後退という結果に。その後、林派が議長選でも勝利した。しかし、吉田氏が圧勝すれば、新山口3区に出たいと言ってくるのは間違いない。新山口3区にほぼ内定している林氏としては面白くないでしょう。統一地方選と同じタイミングでの補選だけど、林派はあまり力が入っていない。安倍派も親分がいないので、まとまりに欠ける。そこに有田氏という知名度がある候補者が来たので、選挙戦は楽勝ムードが一転して混沌(こんとん)としている」(前出・自民党山口県連幹部) 2月26日の自民党の党大会で、岸田文雄首相は総裁として、 「補欠選挙は今後の国政に大きな影響を与えるかもしれない、大変重要な選挙。なんとしても自民党の議席を守り抜いていこう」 などと力説した。 支持率低迷にあえぐ岸田政権にとって、補欠選挙はどの選挙区も落とすわけにはいかないが、野党が強い地盤といわれる参院・大分選挙区や、政治とカネの問題で薗浦健太郎氏が辞職した衆院・千葉5区については、厳しい見方をする自民党幹部もいる。 「大分と千葉は厳しい戦いになるでしょう。残る三つをとらなければ、岸田政権の存亡にかかわります。しかし和歌山1区も維新が候補者を擁立したので激しい争いになります。もし負け越しとなれば、岸田降ろしの序章となりかねません。岸田首相が前倒しで救済新法を成立させて沈静化したのに、山口4区に有田氏が出馬することで再び旧統一教会問題がクローズアップされ、政局になる危険性もはらんでいます。それが起爆剤になって、旧統一教会問題がまた広がって大騒ぎになり、統一地方選でも結果が出なければ、岸田政権が瀬戸際に追い込まれかねません」 と険しい表情だ。有田氏は、 「(自身の出馬で)選挙が面白くなってきたでしょう。旧統一教会問題は救済新法ができたといってもまだ終わったわけじゃない。山口4区で旧統一教会問題を語ることがタブーともされています。しかし私は旧統一教会問題を争点に掲げて、積極的に訴えていきます」 山口4区には、吉田、有田両氏のほか、政治家女子48党幹事長の黒川敦彦氏(44)も立候補を表明している。 (AERA dot.編集部 今西憲之)
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天龍さんが語る“プレゼント” ジャイアント馬場からの贈り物はまさかの「年金」!
9月に「環軸椎亜脱臼(かんじくつい あだっきゅう)に伴う脊髄症・脊柱管狭窄症」であるということがわかり、現在は入院してリハビリ中の天龍源一郎さん。今回は入院先から主治医の許可をもらいながら、プレゼントにまつわる思い出を語ってもらいました。 * * * プレゼントと言っても、俺は相撲時代、スポンサーやタニマチにいい顔をしていなかったから、ほかの力士と違って、たいしてプレゼントをもらってないんだよ。 そんな中で、相撲時代にもらったものといえば、化粧まわしに尽きるね。前にも話したことがあると思うが、俺の場合は21歳のときに十両に上がったその場所で、地元・福井の後援会の人達が手配してくれたんだ。 ところが、化粧まわしの代金の支払いが遅れていたらしく、場所が始まっても肝心の化粧まわしがなかなか届かなかったんだ。「代金は自腹で払うしかないのか……」と100~200万円の金の算段をし始めた 13日目にようやく届いてね。そのときは嬉しかったよ! 初めての化粧まわしは、四股名にちなんで登り龍がデザインだ。まあ、当時も“龍”がつく四股名の力士は俺以外にも多かったから、インパクトはそんなに無かったけど(笑)。それ以降もいくつか化粧まわしを作ってもらったけど、デザインはだいたい登り龍だね。 化粧まわしは、引退後は作ってくれた人にお返ししたり、誰かにプレゼントしたりした。俺だけじゃなく、化粧まわしは作ってくれた人にお返しすることは多いんだ。それでもいくつかは倉庫にしまっていたり、少しは手元に残っているものもある。廃業してちゃんこ屋をやっている人とか、自分の店に飾ったりしているだろう。俺も寿司屋をやっていた頃は店に飾っていたよ。やっぱり、普通の人からしたら珍しいから、お客さんも喜んでいたね。 全日本プロレスに入って、最初にジャイアント馬場さんからもらったのは、馬場さんが着なくなった服なんだけど、俺でもサイズが大きくて、どうしようもなかったね(笑)。 そんな馬場さんからのプレゼントで大切にしているのは、モノではなくプロレスラーとしての姿勢を教えられたことだ。直接「プロレスラーとはこうあるべき」というものではなく、馬場さんの何気ない仕草や態度を見て覚えたもんだよ。 例えば、飯を食うときも常にファンに見られていることを意識して、立ち食いそばなんか食べない。ホテルに行ったらレストランできちんとしたものを食べる、ケチらないということだったり。俺も相撲上がりだから馬場さんの考えはカッコいいなと思ってマネするようにしたんだ。だから俺は引退するまでファミレスやコンビニに全くといっていいほど行ったことはない。 実際に行ってみるとファミレスもコンビニもなかなかいいところだし、コンビニのホットスナックは美味しいよね(笑)。馬場さんは「プロレスラーとしてこうしろ」と口うるさく言わないタイプだから、周りのレスラーはそんなことしていなかったけど、威厳を落とさないという姿勢は馬場さんからもらった大切なもののひとつだ。 馬場さんはニューヨークでトップを取ったから、アメリカナイズされていることを匂わせていたと思う。「俺は田舎じゃなくてニューヨークでメインを取っていた」という雰囲気をプンプンさせていたよ。アメリカ時代に培ったトップとしての振る舞い方をしていたね。 そんな馬場さんからもらったもので、一番なのが「年金」なんだ。全日本プロレスのレスラーは俺も含めてみんな知らなかったのだが、実は所属している期間、馬場さんは会社としてみんなの厚生年金を払っていてくれていたんだ。当時は年金のことなんて全然考えていなかったし、そもそも個人事業主としての契約だと思っていたから、そんなことをしているとはまったく思わなかったよ。 俺もほかのレスラーも年金をもらう歳になって初めて気が付くんだ。今でも数万円の年金が入り続けていて、本当にありがたいことだよ。グレート小鹿ともこの年金のことで話をしたことがあって、そのとき小鹿は「そうなるまでいろいろあったんだよ……」となんだか含みを持たせた言い方をしていたが。俺はどんなことがあったのか知る由もないが、今となっては年金が馬場さんからの一番のプレゼントだ。 俺がプレゼントをもらった相手は、昨年亡くなった妻のまき代がやっぱり多いし、印象的なものもすべて彼女からのものだ。思い出深いプレゼントはいくつかあって、ひとつは、まき代が「駐車場まで来て」と言うから行ってみたら、ベンツの300クーペが置いてあったこと。これはさすがにびっくりしたよ。 当時は国産の車に乗っていたんだけど、ジャンボ鶴田がベンツに乗っていたのを見て、プロレスラーとしてはこれくらいのクラスの車に乗らないと、恰好がつかないと考えたんじゃないかな。SWS時代は同じように「駐車場まで来て」と言われて行ってみたら、ベンツ560SECが停まっていたこともあったね。まき代からのプレゼントはいつもサプライズで、彼女は本当に人を驚かせるのが好きなんだ。 車以外で印象的だったのは腕時計。俺がいつも「馬場さんがプラチナのロレックスをしていてさぁ」なんて、ことあるごとにまき代に話していてら、誕生日に「はい、これ」って同じ時計をプレゼントしてくれたこともあった。 馬場さんが買った当時は1000万円くらいしたようだから、かなり高価だよ。本当は1000万円もする腕時計をはめる必要なんてないのに、さすが「天龍源一郎を一等賞にする」と公言した女房だ。そのロレックスも寿司屋の経営が悪くなって手放しちゃったけど、もったいないとは思わなかった。それでまき代の負担が少しでも楽になるといいなという気持ちが強かったからね。 だから、俺がもらった一番のプレゼントはまき代が俺の嫁になってくれたこと。それが最高のプレゼントだ。結婚当初は俺もやんちゃでいい加減だったけど、それでもずっと家庭を守ってくれて、子どもを育ててくれて、本当に俺は幸せだったと思う。まき代の男前さには誰も勝てないよ。 彼女のそんな姿を見ていたからか、娘の紋奈が一度もプロレスラー天龍源一郎のことを嫌うことがなかったことも嬉しいし、俺にとっての大切なプレゼントでもある。紋奈が小学生のころは「プロレスなんて八百長だ」とか、よくイジメられていたんだけど、イジメられても一人で怒って立ち向かっていたんだって。 娘のそんな姿を見ると俺も勇気づけられるし、プロレスなんて八百長といってしまえばそうかもしれないが、娘を見ていると、それ以上のものがプロレスにはあって、彼女たちにも大きな影響を与えてくれているんじゃないかと思うんだ。家族は俺にとっての最高のプレゼント。皆さんもにもそれぞれ思い出のプレゼントがあると思うけど、大切にしてください! (構成・高橋ダイスケ) 天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。
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“最も口がクサい芸能人”クロちゃんが語る「口臭」 キス直前に彼女が見せる意外な反応とは
安田大サーカスのクロちゃんが、気になるトピックについて"真実"のみを語る連載「死ぬ前に話しておきたい恋の話」。今回のテーマは「口臭」。「水曜日のダウンタウン」をはじめ、さまざまなバラエティー番組やSNSなどで、「口臭」についてイジられる機会が多いと話すクロちゃん。もっぱら「クサい」という評判だが、本人はどう感じているのだろうか。そして、彼女のリチさんの反応は? クロちゃんが「口臭」について語った。 * * * 数年前から、ボクはよく「口臭」をイジられている。もちろん、そのほとんどが「クサい」という、ひどいものばかり。バラエティー番組やYouTubeでは罰ゲーム的な扱いをされることもあるし、SNSでのイジりはもう恒例。「ペンギンの臭いがする」とか「水族館の臭いがする」などと指摘を受けたり、イベントなどの仕事にいくと、お客さんから、「息をハァーって吹きかけてもらえませんか?」という変なリクエストされることもある。気づけば、なぜか「日本一口がクサい人」みたいになってしまっている(笑)。みんな、ひどいしん! ボクだったら、そんなこと、絶対他人には言わないのに……。 振り返ってみると、口臭をイジられるようになったのは、「水曜日のダウンタウン」の企画「モンスターアイドル」がきっかけだと思う。その企画に参加していた、のちに「豆柴の大群」のメンバーになるアイカに、「口が少し臭いです」と、面と向かってハッキリと言われたんだよね。どうやら、あのカミングアウトが、視聴者的に、めちゃくちゃ面白かったみたい(笑)。あのオンエア後から、口臭をイジられることが急激に増えた。芸人として「面白い」と言われることはもちろんうれしいんだけど、「クサい」ってことで笑ってもらうのは、なんかちょっと違うというか、どうも素直に喜べない、複雑な気持ちになったのを覚えている。 ちなみに、ボクは、口臭について、実は、そこまで気にしてはいない。そんなに、みんなが騒ぐほど、絶対「クサくない」と思っている。だって、親友のたかみな(高橋みなみ)や、仲の良い後輩芸人の菊地(ワンワンニャンニャン)、サンミュージックのマネージャー・オオゼキさんには、「クサい」なんて、一度も言われたことがないからね。 だから、みんながイジってくることも、そこまで信じていないというか、「そうやってイジることで、ボクと仲良くなりたいんだろうな」くらいにしか考えていない。 ただ、もちろん、ボクだって、そりゃ人間なんだから、状況によっては、多少臭うことはあるだろうなとは、思っている。 若手の頃は、安田大サーカスのネタ合わせの時に、団長から「お前口クサいな!」とよく指摘はされていた。新ネタを練習していたりすると、緊張のせいで口が乾いてしまうからね。でも、それは仕方ないでしょ。みんなだって、同じ状況になれば、そんな風になってしまう時もあるはずだから。 まあ、でも、正直に白状すると……若手の頃は、団長以外の人にも、ちょくちょく口臭については指摘をされていた。 原因は、まあ、わかっている。当時のボクは、あまり歯磨きをしていなかったからね。 こんなことを言うと、またイジられそうだろうけど、あの頃は、歯磨きが、めっちゃ面倒くさくて、大嫌いだったんだ。だから、1~2週間、歯を磨かずに放置するなんてことはよくあった。最長では1カ月くらい放置していたこともある。ひとり暮らしだし、別に誰かに怒られるわけじゃないから、ついついおろそかになってしまっていたの。 だから、当時のボクは虫歯だらけで、歯がボロボロ。そんな状態だったし、もろもろの条件がそろえば、多少臭うことはあった……とは思う(笑)。 でも、そんな状態も、「いいかげんヤバいな」って思ったから、ある時から、ちゃんと近所の歯科医院にも通うようになったんだ。口の中もお掃除してもらったし、虫歯も全部治療してもらった。歯磨きだって、ちゃんとするようになったの。 「もう、これで大丈夫」 そんな風に思えて、安心していたのに、「モンスターアイドル」の影響で、「口クサい人=ボク」みたいなイメージが完全に定着してしまった。 改めて確認するけど、ボクの「口臭」については、みんな大げさに言っているだけだよね?(笑)。 だって、虫歯はもう治療しているんだから、臭うはずないでしょ。もし、それが本当なら、原因は歯じゃなくて、臓器が悪いってことなのかな。 もう対処法が分からない。というか、みんなの本音が分からない(笑)。 ちなみに、彼女のリチはどう思っているのか。 実は、最近、リチと過ごしていて、「ん?」と少し気になることがあった。 それは、ボクとリチがキスをする時なんだけど……リチは、キスをする直前に、毎回、息を「スー」って吸い込むんだ。毎回、必ずね。そんな謎の行動、普通はしないよね? 最初、気にはなったけど、とくに問い詰めることもなく、ボクは「あ~♪口の中に吸い込まれる~」みたいなことを言って、コントチックな雰囲気にしてから、キスをしていた。リチは、そういう面白いキスが好きなんだなって思って。 でも、ほんとに毎回それをやるから、「息を吸い込んでからキスをするのが好きなの?」ってリチに聞いてみたの。 そしたら、「違う違う、好きとかじゃなくて、まず息を吸ってからキスをするとクサくないから」だって(笑)。 もうびっくり。 「クサイと思ってるのかよ!!!」って、心で何度も叫んだよ(笑)。 まさか、口臭の対処法だったとは……なんなの、もう! ボクの口は、クサくないからーーー!! (構成・AERA dot.編集部・岡本直也)
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脳卒中の5つのサイン 症状が出たら迷わず救急車を呼んで 脳梗塞には前兆がみられることも
日本人の死因第4位(2021年厚生労働省「人口動態統計」)、寝たきりの大きな原因となる脳卒中。その多くを占める脳梗塞は、生活習慣と深く関わる。万が一のとき、迅速に治療を受けられるよう原因や症状を理解しておきたい。 * * * 「脳卒中」は脳の血管の病気であり、血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」と血管が詰まる「脳梗塞」に大別される。脳梗塞は、脳の血管が詰まって血流が途絶えることで神経細胞が壊死し、その働きが失われる病気だ。 厚労省の統計では脳卒中の患者数は111万5千人(2017年)とされているが、国立循環器病研究センター病院副院長の豊田一則医師は「実際にはもっと多いと推察される」と話す。 「国で定めた統計の方法により、このデータには、リハビリ施設に移行した回復期の患者さんや、施設・在宅で療養している患者さんは含まれておらず、実際には約300万人という報告もあります。ただし、いずれも推計であり、正確なデータは今のところありません」 昔は、脳卒中のなかでも脳出血の割合が圧倒的に高かったが、現在は脳梗塞のほうが多い。その理由について豊田医師は、画像診断技術の進歩で両者の正確な区別が可能になったこと、国民の健康意識の高まりによる塩分摂取量の減少、高血圧治療薬の進歩などを挙げる。 「血圧が高いと血管が破裂する脳出血が起こりやすくなります。高血圧の管理ができるようになったことで1980年代に脳出血と脳梗塞の割合が逆転し、日本脳卒中データバンクによると、現在は脳卒中の75%が脳梗塞とされています」(同) 脳梗塞は、「ラクナ梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」「心原性脳塞栓症」の3タイプに大別される。前者二つは、首や脳の動脈硬化により起こる。ラクナ梗塞は、脳内の細い血管が詰まるもので、症状が起こりにくく比較的軽症なことが多い。アテローム血栓性脳梗塞は、首や脳の太い動脈で起こる。血管の内側にコレステロールなどが沈着したかたまり「アテローム」ができることで血管が閉塞する。 ■生活習慣病や心臓病に注意 心原性脳塞栓症は、心房細動など心臓の病気が原因で起こる。心臓でできた血のかたまり(血栓)が血流にのり脳に運ばれ血管を詰まらせる。このタイプは脳梗塞のなかでもとくに重症化しやすい。 脳梗塞の主な原因は、加齢や生活習慣だ。60歳代から増え始め、発症のピークは男性が70代前半、女性は80代前半とされる。東京慈恵会医科大学病院脳神経内科教授の井口保之医師はこう話す。 「加齢にともなう血管の老化や動脈硬化、脳梗塞のリスク因子となる生活習慣病の増加・悪化など、さまざまな要因が重なって脳梗塞が起こりやすくなると考えられます」 高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病、心臓の病気、喫煙、飲酒など、脳梗塞のリスク因子のほとんどが生活習慣に関わるもの。「総コレステロール値が1ミリモルパーリットル増加すると脳梗塞の発症率が25%増加する」「心房細動のある人は、ない人と比べて脳梗塞発症リスクが5倍高い」という報告も。一方で、高血圧や脂質異常症の適切な治療、禁煙で脳卒中のリスクが低下するというデータもある。 「遺伝的な要因など予防が難しいリスク因子もありますが、ほとんどが生活習慣に関わるものです。言い換えれば生活習慣の改善や生活習慣病の治療により脳梗塞のリスクを減らせるということです」(豊田医師) また、一般的に心臓や血管の病気は冬に多いとされるが、豊田医師が実施した研究によると、脳梗塞の発症率は秋だけがやや少なく、それ以外の季節では差がなかった。ただし重症例は冬が多く、これは、季節により起こりやすい脳梗塞のタイプが異なるためだという。 「冬は、脳梗塞のなかでも重症化しやすい心原性脳塞栓症が多い傾向があります。冬は血圧が高くなることや血圧の変動が多く、心房細動が起こりやすくなることが主な理由です。一方、動脈硬化が原因の脳梗塞は脱水がきっかけとなることが多く、夏に起こりやすくなります」(同) ■症状がみられたら迷わず救急車を 井口医師は、「脳卒中の5大症状」として、図の症状を挙げる。脳の障害される場所により、症状はひとつのことも、複数が重なることもある。 「脳梗塞は、発症後いかに早く治療するかで予後が異なります。症状がみられたら迷わず救急車を呼んでください」(井口医師) また、脳梗塞には前兆がみられることもあり、これを「一過性脳虚血発作(TIA)」という。脳の血管が一時的に詰まり、脳梗塞の症状が出るが、自然に血流が改善することで短時間のうちに症状が消失する。TIAが起こると3カ月以内に10~15%の人が脳梗塞を発症し、その半数が48時間以内に発症するといわれる。「治まったから大丈夫」と考えず、すぐ受診することが必要だ。 日本脳卒中学会や日本脳卒中協会も「ACT−FAST」を合言葉に、「F(Face:顔のゆがみ)、A(Arm:腕の力が入らない)、S(Speech:言葉が出ない)などの症状がみられたら、症状が出た時間(Time)を確認し、すぐに(FAST)救急車を呼ぶ(ACT)こと」をすすめる。 一方、脳梗塞には「無症候性脳梗塞」という、症状がないものもある。そのときは症状が出なくても、放置して神経細胞のダメージが積み重なると、意欲や認知機能の低下、大きな脳梗塞やほかの神経の病気につながる可能性も。むやみに恐れることはないが、「5大症状」を忘れず、「おかしい」と思ったらすぐに専門医を受診してほしい。 (文・出村真理子) ※週刊朝日2023年3月24日号より
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