ランキング

  • 1

    「高市氏の昔を知っているよ」 総裁選候補者3人で最も優れているのに胸がザワつく理由

     作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、自民党総裁選に立候補を表明している3人の議員について。 *  *  * 連日、自民党総裁選関連のニュースがメディアを占めている。この国に暮らす人々の生存をかけた衆議院選挙のほうがよほど重大なはずなのに、無駄に自民党の生存をかけた総裁選につきあわされているようでつらい。災害レベルのコロナ禍で重要なときに臨時国会を開かず、自党の人事に時間を費やす自民党の体質が、トップが代わったところで変わるとは思えない。とはいえ、あと一歩で総理の椅子に座る3人の候補者に女性が入っていること、その女性が候補者の中で最も右寄りであること、容姿を誹謗中傷する批判が“彼女にだけ”されていることなど、日本の女性政治家が置かれている現実を生中継で日々見せられているようで、それはそれで気になってしまうのだ。 候補者3人の出馬表明記者会見を見た。それぞれ力のこもった熱弁を見ながら、改めて菅さん (菅義偉首相) は、相当なレベルで話が下手だったのだと気づかされる。滑舌が悪いうえに自分の言葉で話さない、原稿すらうまく読めないので頭に入ってこない。東京五輪・パラリンピック開催に疑問を投げかける記者には、「安全安心」と繰り返すだけで誠実さのカケラもなかった。さらに記者に対して威圧的であり、社名を名乗らない記者に対していら立つなど、器の小ささを露呈してしまう場面を幾度となく見てきた。喋れば喋るほど、人の心が離れていく総理大臣だった。 菅さんに比べると3人の候補者の話は、フツーにまともだった。……と、「底」を強いられてきた者として認知の歪みが生じてしまっているのだろうかと自分でも不安になるが、今回、高市早苗氏の会見を初めて長時間聴いてみて驚いた。テンポ、滑舌、論理性、具体性において出馬表明記者会見としては3人の中で最も優れていたからだ。記者からの質問に逃げずに丁寧に答えていたのも好感を持てた。  例えばTBS「報道特集」のキャスター膳場貴子氏が、高市氏が過去にしていたサイテーの発言「(生活保護を)さもしい顔をしてもらえるものはもらおうとか、弱者のふりをして少しでもトクをしようと、そんな国民ばかりいたら日本が滅びる」を引き、「困窮する国民をどういう目で見ているのか確認をさせてください。弱者への視点が欠けている不安、批判の声があるが、どう受け止めているか聞かせてください」と迫った。高市さんに対する強い批判を含んだ良い質問だった。 もしこれが、安倍さん (安倍晋三前首相) だったらと想像する。女性アナウンサーからの質問にまずニヤニヤと冷笑し、しかし顔色は変わり、早口でまったく方向違いの旧民主党政権批判を延々繰り返し「それはですね、民主党政権時代の批判の流れでの発言だったのでございます。文脈をですね、私の発言の文脈をですね、いいですか、きちんと見ていただいたうえでですね、そのようなご質問をしていただきたきたいのでございます」とか言いそうだし、麻生さん (麻生太郎財務相) だったら「そうかね、覚えてねぇな」とか言いかねず、菅さんだったら「えー、私はこれまで通り全力で国民の安全安心を最大限に考えて、政治を行っていくことに変わりはありません」とか言うのでは。テレビカメラの前で“女性”記者に批判された、ということで頭がいっぱいになり、誠実に答えようともしない“男性”政治家の振る舞いに私たちはあまりにも慣れてしまっていた。 その日、高市氏は膳場氏の批判質問に顔色も声のトーンも変えることはなかった。にこやかなまま、その発言がいつ、どの場で行われたものかを記憶の中で語り、「これは皆様の大切な税金。福祉というものは公正、公平が原則であるべきだと私は考えています」とし、さらに子どもの貧困問題等について語り、そのうえで「これが私。素直なほうなので、さまざまなアドバイスには柔軟に対応する」とも言った。  このやりとりに、私は見入ってしまったのだった。威圧的だったり、不誠実だったり、中身のない政治家答弁にあまりにも慣れ過ぎていたからこその驚きであるのだが、ただ新鮮だった。もちろん、高市氏のような政治家の言動が生活保護受給者に対する社会の偏見を生み、貧困を再生産し、生活保護を受けられずに餓死するような人々を生み出す現実をつくってきた。そういうリアルが見えない高市さんが与党の政治家であることが私は恐いが、それでも「どのような考えに立っているのか」ということを説明することをこの人は逃れなかったという印象は残った。 一方、岸田氏は国民の声を聞いてきたという薄く小さなノートを振りかざして「私にとりまして大切な財産。このノートを読み返した上で、私は改めてやるべきことがあると感じています」と豪語する。外国特派員協会で記者会見を開くなど、去年の総裁選よりもパフォーマンス力があがっているように見えるが、選択的夫婦別姓についての意見を問われ、「引きつづき議論しなければならない課題」と言うなど、いったい誰の声を聞いてきたのか問いたい。今年の共同通信の調査によれば選択的夫婦別姓は国民世論で6割が賛成している(30代では7割)。だいたい選択的夫婦別姓は80年代からずっと提案され、深く積み重なった議論の歴史があるのだ。国会での議論を拒否し続けてきた自民党の単なる勉強不足が、選択的夫婦別姓を邪魔しているだけ。まだ、「自分ごと」として通称使用拡大の具体的実践に全力を尽くしてきた高市氏のほうが勉強しているし、わかっているように見える。 河野太郎氏の記者会見が一番、今までの自民党の威圧的政治家の流れをくんでいるように見えた。質問は1社一つというルールを一方的に強いては、「(河野さんは)脱原発派ですか?」という質問に対して「どういう定義で脱原発というか人によって違うので、何か一つの言葉でくくるのはやめておいたほうがいい」と打ち切り、それ以上の質問を許さなかった。記者が本当に聞きたいことは分かっているはずだし、そこから深まる議論もあるはずなのに、意味のない答えを短めに返すのが目立った。  河野氏は若手からの期待が大きいと、報道では言われている。「河野さんは発信力があります」と30代の議員が胸を張るようにテレビカメラに向かって話しているのを見た。発信力とは単純にテレビに出る回数とか、Twitterのフォロワー数とか、なんとなくの人気のことを言っているのではないかと思うが、それは政治家にとって必要な力なのだろうか。記者会見で衝撃だったのは、韓国メディアの記者が「特に韓国を含めた、近隣国に向けての外交政策のビジョンを聞かせてほしい」と質問した時の答えだ。外務大臣を務めたこともある河野氏の答えは、こういうものだった。「G7の中で日本はユニークな立ち位置。キリスト教をベースとした文明の上に成り立っていない国は日本だけ。だから外務大臣として自分はアジア、中近東、アフリカといった国々の思いを代弁できる日本でありたーい、と思ってきた。自由民主主義、基本的人権、法の支配、こうした価値観を共有して一緒に前に進みたーいと思っている。それぞれの国にはそれぞれの歴史がある。一足飛びにみんなが同じことをできるわけではありませんー。そういうなかで、ヨチヨチ歩きであっても同じ方向を進もうとしている国にしっかりと寄り添える、そういう日本でありたーいと思っている」 ……これは外交政策なのでしょうか。ヨチヨチ歩きだけど一緒に寄り添っていこうね、って。これは元外務大臣による総裁選立候補の時に語るような言葉なのだろうか。高市氏を推すわけでは決してないが(というか、私にその権利もないが)、高市氏だったら具体的に質問に正確に答えようとするのではないか、大人の言葉で。 最近、「高市早苗の昔を知っているよ」という人と立て続けに話をする機会があった。20代のころ、高市氏は400ccのバイクを乗り回していたという。30年以上前、400ccのバイクに乗る女性は少なかった。私も10代のころ、400ccのバイクに乗りたくて教習所に行ったのだが、「女は小型から」と中型免許すら取らせてもらえない空気があり、一日でやめた。「中型取りに来たんです」と言っても、「じゃあ、起こしてみな」と道路に転がる400ccをコツも教えてもらえず起こせと言われて憤慨した。あの時の悔しさは今もまだ心のどこかに残っている。80年代のことだ。そういう時代のなかで、中型・大型バイクに乗る女性たちは道で出会っては、自然に話しかけるようなことがあったという。当時のバイク仲間の女性は、若かった高市さんが目を輝かせながら「私は保守系の政治家になるんだ」と、夢を語っていたのを覚えている。   高市氏を見ていると、胸がざわつく。「政治家を知るためには、その人の選挙区と選挙歴を知らなければならない」とは、無戸籍問題に取り組み続け衆議院議員になった井戸まさえ氏の言葉だが、高市氏がもし、奈良という保守が強い土地ではなく、都市部の選挙区の人だったらどうだったろうか。選択的夫婦別姓、女性天皇・女系天皇容認などについて肯定派の多い都市部のような場所で保守派の政治家として立っていたら、どうだったろうか。安倍さんへの、悲しいほどのすり寄りは、二世議員である小渕優子議員や、祖父が政治家だった野田聖子議員だったらしなくてもよい媚びにも見える。高市氏自身の葛藤を勝手に想像しながら、そういう女性議員の姿を見てこちらも引き裂かれるような葛藤を味わう。女性がのびのびと政治ができる国になってほしい、そして正当に評価されるようになってほしい。今起きているのは、自民党の大物男性の庇護のもとでの自由と、それでも女性であるゆえに正当に評価されない日本社会の女性嫌悪だ。精神衛生上よくないので、早く終わらせて、衆議院選挙で自民党政治は終わってほしい。■北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

    dot.

    9/15

  • 2

    木村拓哉が外した“仮面”  SMAP時代「彼女いんのー?」にマジ回答

     圧倒的なオーラに、クールな孤高の人というキャラクター、そして美しいルックス。誰もが認めるトップスター、木村拓哉さんは「木村拓哉」を演じる努力を人知れず続けてきたのか? 映画「マスカレード・ナイト」で主演を務める木村さんに、素の自分を隠すマスカレード(仮面)は必要なのかと尋ねると──。 【前編/木村拓哉「この年になってもまだこんな思いをするんだ」と落ち込んだ】より続く *  *  * ──「マスカレード」は仮面の意味。世間が期待する木村拓哉像に応えるため、素の自分に仮面をかぶせることは?  みんなが木村拓哉をどんなふうに見てくれているのかはわからないけど、素の自分とそんなに離れていないと思います。心にシールドをつけて無理して仕事をしている感覚は全くないので。  でも、昔はそうじゃなかったかな。ペンライトを振って声援を送ってくれるファンの子たちに笑顔で手を振り返していた20代前半の頃は、知らず知らずのうちに仮面をつけていた気がします。自分からかぶるというよりは、現場に行くと必ず用意されているんですよ。「これが君の衣装で、キャラで、イメージだからね」って感じで。最初はそんなものかと思っていたけど、だんだん「これ変じゃね?」って思い始めて、外していった。  当時の自分はハードロックにド影響を受けていました。あんなに髪を伸ばしてる奴は他にいなかったでしょ。目見えてんの?ってくらい額のバンダナをずり下げたり。でもそうやって、かっけーな、素敵だなって思うものを自分のサイドに引きずり込んで表現していったら、仮面なんて必要なくなった。嘘っぽいのが嫌になったんです。  一つ、懐かしいエピソードがあって。SMAPのコンサートの途中、お客さんからの質問コーナーになったんですよ。「3階席の白いブラウスを着てる、そう、今うちわ振ってくれた君、でっかい声で質問言って」っていう感じで振ってみたら、「彼女いんのー?」って。 「いるに決まってんでしょ」って答えたら、会場中がキャーッて大変なことになり。終わってから、事務所の人に「何言ってんのあんた」って怒られました(笑)。 ──自分を自由に表現できるようになったきっかけは?  20代半ばでドラマ「ロングバケーション」(フジテレビ系)に出たことですね。それまで、自分にとって役を演じることはどこかポージングだった。でもヒロインの山口(智子)さんをはじめ共演者の方に恵まれて、生の現場を楽しむ感覚を知ったんです。  相手がこっちを見ているから、何が言いたいんだろうって見返す。目をそらしたら、なんでそらしたのか考えて反応する。変に計算して予定調和にプレイするのではなく、目の前の相手を全身で感じとるんです。  それと同時に、自分の中に生まれる、悲しいつらい楽しい好きといった感情をすべてひっくるめて思いっきり味わい、楽しむ。あの時あの現場であのメンバーに出会ってから、自分はやたら変わった気がします。  本当の表情や気持ち、自分というものを提示しなくても物事が進んでいくことに対して違和感をおぼえるようになった。それが、結果的に仮面を外すことにつながっていったんじゃないかな。  ファンの方との関わり方も変わりました。キャーッて手を振ってくれる人に、あえて「え?」「あ?」とかって意地悪したり(笑)。本当は、笑顔で手を振り返せばより喜んでもらえるんだろうけど、それってその場にいるみんなに向けたポーズだと思うんですよ。選挙前の政治家みたいな。でも、自分は一瞬だけでも相手とタイマンになりたいから、そういうリアクションになるんです。 ──休みの日は仕事モードをオフに?  完全にだらっとリラックスしちゃうと逆にストレスになるんです。少し緩めたい時は、ゆったり腰を下ろして真剣に映画を見るくらいの感じでバランスをとってます。  基本的には休みの日のほうが動いてますね。1万歩以上は歩くかな。動いている状態が一番快適なんです。じっとしていたら自分が澱んで濁っていく感じがして、歩くことで循環させている。頭がクリアになるので考え事にもいいですね。  ただ、一人で黙々と散歩するのは嫌なのでパートナーと一緒に。うちの犬ですよ。外に出ると喜んでくれるんだから、最高の相棒です。 (構成/本誌・大谷百合絵)※週刊朝日  2021年9月24日号より抜粋

    週刊朝日

    9/21

  • 3

    室井佑月「安倍さんの党ですね」

     作家・室井佑月氏は、自民党総裁選の候補者に突っ込みを入れる。 *  *  *  9月8日付の「朝日新聞デジタル」によれば、 「立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組の野党4党は8日、野党共闘を呼びかけている市民団体『安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合』(市民連合)との政策合意に調印した」  よかった。これで、衆議院選挙、いい感じで闘える。野党を応援している者として、1、2カ月後に衆議院選挙があるのになにをやってるんだ、とヤキモキしていた。共闘し、小選挙区で候補者を一本化できたら、かなり勝ち目が出てくるんじゃない? 「政策の柱は、(1)憲法(2)コロナ対策(3)格差是正(4)エネルギー(5)ジェンダー平等(6)行政の透明化の6項目。具体的には、安保法制、特定秘密保護法、共謀罪法などの違憲部分を廃止し、コロナ禍に乗じた憲法改悪に反対する。消費税減税や富裕層の負担強化など公平な税制を実現する。また、原発のない脱炭素社会や選択的夫婦別姓の実現、森友・加計問題、桜を見る会など疑惑の真相解明などが盛り込まれた」  これもいい。  今、テレビは自民党の総裁選一色だ。自民党のCMみたいな。  これについて、この後すぐに衆議院選挙があるというのに、メディアの公平性は保たれているのかなどと、いいたいことはたくさんある。  しかし、日本のトップを決める(今のところ)そのための争いは、下世話で、くだらなさ満載で、だからこそやじ馬根性がそそられてしまうのも事実。  ま、放送局と個人のあたしでは、立場がまるで違うので。  それに、今回の自民党の総裁選というメディアジャック、逆効果じゃね、と思えてきたし。  今のところ、微妙に自民党の支持率は上がってるみたいだが、さてこの後はどうなるだろう?  河野太郎さん、高市早苗さん、岸田文雄さん。総理大臣の椅子に座りたいのはわかるが、そのために、派閥を仕切っている安倍晋三さんや麻生太郎さんの顔色をうかがいすぎ。その目に国民は映っているのか? そう見えない。白けている人も多いのではないか?  候補者のお三方とも、森友問題などの疑惑の追及はしないといっている。なんで? 疑惑は追及すべきだろう。安倍さんへの、おもねり方がハンパない。安倍さん=日本ではないのに。見ているこっちはかなり引く。脱原発で飛ばしていた方も、その説をかなりトーンダウンさせたし、どんだけ安倍氏が怖いのか?  かつて「自民党をぶっ壊す」といって総理になった人がいた。それが良いか悪いかは置いといて、自民党内において、もうそんなことはいい出せないのだろう。安倍さんの党なのだから。彼らに自浄作用などない。 室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中※週刊朝日  2021年10月1日号

    週刊朝日

    2時間前

  • 4

    【独自】小室圭さん、米大手事務所から断られていた 弁護士が語る“厳しい現実”

    「小室圭さんの実力では無理だと思います」 こう話すのは、全米で「トップ100」と呼ばれる大手弁護士事務所(ビッグロー)のパートナー弁護士のA氏。専門は、海外企業同士のM&Aなど。米国を拠点に世界を飛び回り、収入も桁違い。この姿こそ、小室さんが思い描く将来でもあるようだ。 昨年の秋ごろ、A氏の事務所に、働かせてほしい、と小室さんの「経歴書」のようなレジュメが別の弁護士を通じて届いたという。小室さんは、ニューヨークなど大都市での弁護士の仕事を探しており、ビッグローか、その下の規模のミッドローでM&Aなどをやりたいという。 A氏がそのレジュメを見て思ったのが、冒頭の言葉だ。なかでも、A氏が首をかしげたのがニューヨークのフォーダム大ロースクール(法科大学院)への留学の部分だ。「疑問なのは、彼がLLM(法学修士)のコースに入ったことです。しかも1年学んだ後に、JD(法務博士)コースに編入している。大きな事務所を目指してて、こんな動き方をするなんて聞いたことがない」 LLMとJDというのは、ロースクールでのコース名だ。米国の大学には法学部がなく、弁護士を目指す人は、大学卒業後にJDに入る。ここで3年間学び、事務所に入るのが一般的なパターンだという。 一方、LLMは、法律の資格を持つ外国人留学生が多いといい、「表現として正しいかわかりませんが、キャリアに“箔(はく)をつける”ようなイメージです」。 A氏によると、米国で弁護士となるのに重要なのはJDでの1年目だ。「米国での就職活動は、2年生の終わりの夏休みで終わります。事務所のサマープログラム(インターン)で働き、その後よほどのことがない限り、その事務所からオファーを受けて就職します。どの事務所のプログラムに入れるかは、1年時の成績で決まります。だから学生の競争も壮絶です。本を隠すなどの足の引っ張り合いもあります。小室さんはその1年をLLMに入っています」 ビッグローのインターンの募集は、ハーバードやエール、コロンビアといった有名大学で公募し、最初の書類選考で成績優秀者に絞り、次の面接で決まる。A氏が言う。「採用された学生には、1年目から19万数千ドル(2千万円以上)の給与が支払われます。それも5年くらいは半人前で、彼らから利益は出ません。それでも欲しい人材ということなんです。だから相当厳選します。原則でいえば、ビッグローはインターン以外の方法では採用しないです」 チャンスをつかめる学生は、ほんの一握りだ。小室さんは、そもそもLLMに入った時点で、希望するビッグローへの道は閉ざされたといっていい。なぜLLMに入ったのだろうか? A氏が話す。「こう言っては何ですが、彼の経歴に目を見張るモノはありません。あるとすれば眞子さまのフィアンセという一点。それでも奨学金を取得できたり、JDへ編入したり、弁護士が出てきて仕事を探したり。知恵をつけている人がいるんでしょう」 では、ビッグローは無理でも、M&Aは他でもできるのだろうか?「米国には約43万の事務所がありますが、M&Aの70%超は『トップ100』が扱っています。小室さんが弁護士として働くにはM&Aにこだわらないことですね。移民法の弁護士などは圧倒的に多い。日本人も多いです。もうからないので人気はないのですが」 そして、こう続けた。「詳しいことは申し上げられませんが、彼の『経歴書』を見る限り、とても“権威”が好きなんだと思います。M&Aも彼からすれば格好良く見えるんでしょうけど、実際は相当厳しい世界です。パートナー弁護士になるのは10年後くらい。それまで生き残っているのはわずかです。彼がそもそも弁護士という職業に向いているのか……。野心家だと思うので、ベンチャーのような起業家とかが向いているような気がします」(本誌・矢崎慶一)※週刊朝日  2021年9月17日号に加筆

    週刊朝日

    9/8

  • 5

    眞子さまの結婚どう思う? 瀬戸内寂聴が27歳スタッフに質問した結果

     半世紀ほど前に出会った99歳と85歳。人生の妙味を知る老親友の瀬戸内寂聴さんと横尾忠則さんが、往復書簡でとっておきのナイショ話を披露しあう。*  *  *■横尾忠則「スジ金入りの肉体的朦朧体、大観より本格派です」 セトウチさん 耳が聴こえなくなったと言うと、「きっと作品が変るわよ」と、ベートーベンじゃあるまいし、変なことおっしゃると、その時はそう思いましたが、本当に変ったんです。その変り方が理に適(かな)っているといえば適っている。つまり聴こえないことは、音の輪郭が失くなることです。そうなると音が朦朧(もうろう)となって、横山大観の朦朧体の絵のように音がボケて聴こえるんです。耳がボケると、日常生活もボケて、曖昧模糊(あいまいもこ)となって、したことと、してないことの区別もわからなくなるんです。つまり虚実の区別ができなくなって、夢で見た仕事の依頼を、本当に依頼されたと思って、やっちゃったりするんです。ボケの症状に似てるけれど、ボケ老人になったんではなく耳のせいだと理解しているので、そこはまだ理性がコントロールしています。 ハイ、絵の話だったです。大観は思想で朦朧体を描きましたが、僕はスジ金入りの肉体的朦朧体なので、思想のようなチョロコイ考えではなく、肉体的ハンデキャップによる堂々たる自然体派です。大観よりこっちの方が本格派です。そんなわけでセトウチさんの大予言は的中しました。 先っきも言いましたが境界線が失くなるということは自由のキャパシティも拡張したことになります。近代人は何でもかんでも境界線を引いて、全てを分業化します。縄文時代はひとりの人間が、多面的に物事をこなしていました。狩猟(しゅりょう)も農業も、漁業も工芸も、子育ても、教育もひとりでするという、境界線をはずした労働生活です。現代のような役割分担などしません。正に多義的です。越境した狩猟社会です。 難聴が与えてくれた神の恩寵です。だから病気の高徳です。僕が度重なる病気によって救われてきたということはこういうことです。神は人間に色々な苦難を与えますが、病気は罪ほろぼしでもカルマ落としでもなんでもないのです。人間の進化向上のためのカリキュラムだと思えばどうでしょう。難聴のほかに、腱鞘炎(けんしょうえん)にもなりました。もう、セトウチさんの「幻花」のような繊細(せんさい)な描写の絵など描けません。今は太い筆やハケを握りしめて、キャンバスにバンバン叩きつけるように描いています。それも痛いので、左手で描きます。左手は思うような形が取れません。幼児の絵より下手くそになります。でも、デュビュッフェは幼児の絵のマネをして、幼児風に描きますが、そんな意図的なことをしなくても、僕の左手はそのまま幼児以上に下手に描けます。これもハンデキャップから来た自然体です。 今書いている手紙では、前にも同じことを書きましたかね。境界を越えると時間差もなくなって、やったことと、やらないことの区別がわからなくなるのです。いよいよ本格派老人です。100歳老人のセトウチさんにも負けていません。ただ僕はセトウチさんのように年齢には拘っていません。拘っているのは他人の方で、今行っている展覧会では「85歳、85歳」と年齢を売り物にされています。歳のことは言うな! アーティストには年齢はないのです。昨日の続きが今日、今日の続きが明日です。原始社会では年齢など無関係です。アーティストは原始人です。■瀬戸内寂聴「私もヨコオさんに負けないように!」 ヨコオさん 何だか、ずいぶん久しぶりにこの往復手紙を書いているような気がします。 それにしても相変わらずコロナは豪勢を極め日本はおろか、世界的にその力を奮っています。 コロナのせいで、人に会えず、寂庵はずっと門を閉めっぱなしです。コロナになる前はもちろん、一も二もなく門内に入ってもらっていました。 大抵遠く九州や東北から来られた人で、まだ生きている私に逢えたと言って、抱きついて泣き出します。もちろん、私は丁寧にお迎えして、写経などしてもらい、お茶菓子を一緒に食べて、しばらくその人のお話を聞きます。つきあいの人もあれば、寂庵の信者を自称する人もあり、初めて門内に入ったという人もいます。「まさか、門内に入れてもらえると思わなかった」と泣き出す人もあれば、「生きている寂聴さんに逢えた!」と、子供のように足を踏み鳴らす人もいる。「とても百歳には見えない!」と誰もが感嘆してくれるが、終日ベッドに横になり、本ばかり読んで、一日を過ごしている私の毎日の状態など話せない。私は、人に逢っている間だけは、必死になって元気らしさを演じ、声を張り上げる。客の帰る時は、長い廊下の途中で、へばってしまい、さっさと歩く客の跡がおえない。 ──だって百だもの……──と、私は廊下の途中で、ペシャンコに座り込み、つくづく、自分に向かって言う。 食事だけは時間が来ると、しゃきっと体がのび、食卓の自分の位置に早々と座り込んでいる。「あら、お昼はもう召し上がりましたよ!」 スタッフの一人が、わざと大きな声を張り上げる。「私のスパゲティは、どうしてこんなに美味しいのだろうなんて、お世辞までいただいて」「そうよ、ほんとに! でも今ここに座ったのは、食べるためでなくて、眞子さんの結婚をどう思うかって、寂庵で一番若い二十七歳のP子の意見を聞きたいのよ」「ああ、眞子さん、ほんとに、よかったですね。大体、みんなあんまりこの結婚に意地悪すぎましたよ。でも、どうして一時金を眞子さんは辞退なさるのかしら? 貰う権利のあるお金でしょう? あんまり弱気にならない方がいいと思うけど……」 ヨコオさん、今、寂庵の中は、こんなにのんびりしています。耳が聞こえないのは、私も同然です。テレビの時なんか、びっくりするほど大きな声にしてくれるので、何とか会話が出来ています。鶯も、秋の夜の虫の音も、私の耳にはさっぱり聞こえません。ヨコオさんとTELしてるのを横で聞いてる人があれば、どんなにおかしいでしょうね。耳だけでなく体のあちこちがどしどし衰えてきます。 そのうち、きっと、自分の死んだこともわからなくなって、──ヨコオさんにTELして!──など叫んでる日が来るのでしょうね。でも目がよく見えているので、一日に二冊は厚い本を読み切っています。ヨコオさんの展覧会、ますます人気上昇でおめでとうございます。私もヨコオさんに負けないよう、あっとこれまでと変わった小説を二つくらい書き残して死にたいものですね。 では、また。※週刊朝日  2021年9月17日号

    62

    週刊朝日

    9/11

  • 6

    眞子さま「駆け落ち婚」の何がいけないのか 森暢平教授、国民「小姑」化を憂う

     婚約内定発表から約4年のときを経て、ようやく成就する眞子さまの結婚は、手放しの「祝福ムード」とはいかぬままゴールを迎えそうだ。2人の結婚をどうとらえればいいのだろうか。皇室の結婚に詳しい森暢平教授に寄稿してもらった。 *  *  *  眞子さまとの婚約が内定している小室圭さん(29)が近く、米国から帰国する。10月中にも自治体に婚姻届が提出されるはずである。  週刊誌やSNSにはいまだに「駆け落ち婚」への非難が多いが、バッシングを続けても2人が結ばれることには変わりがない。  それよりも、なぜ2人が結婚し、それに対し、あまりよくない思いを持つ人が多いのはなぜかを考える方が、生産的ではないか。 「『私』を抑えて国民のために尽くしてきたことで敬愛され、信頼を得てこられたのが皇室です。ところが眞子さまは『好きだから結婚する』というお考えを最後まで崩しませんでした。(略)『わがままを通した』ということ。『私』を優先したことにより、裏切られたと感じる国民も少なからずいます」  静岡福祉大の小田部雄次名誉教授のコメントである(『週刊新潮』9月16日号)。申し訳ないが、共感できない。この論理に沿うと、滅私奉公が皇室の務めだということになる。結婚においても好きな人を選んではならないということになる。天皇・皇族の自由意思は否定されるべきなのか。  皇室にはかつて「同等性の原則」「婚姻勅許(ちょっきょ)制」というルールがあった。同等性の原則は、明治の皇室典範が「皇族の婚嫁(こんか)は同族、又は勅旨(ちょくし)に由り特に認許せられたる華族(かぞく)に限る」(39条)と定めたものである。皇族は、同族(つまり皇族同士)か、認められた華族としか結婚できなかった。さらに、40条が「皇族の婚嫁は勅許に由る」と婚姻勅許制を明記した。皇族の結婚は、天皇の許可が必要だった。  明治日本は2つのルールを主にドイツから取り入れた。同等性の原則は、ドイツ皇帝が連邦諸侯の王女と結婚するように、身分が近い者と結婚しなければならないと限る通婚制限原則である。上位貴族以外との通婚は許されない。婚姻勅許制は、身分違いの結婚を望んでも国王から許可されないし、それでも結婚したいのならば、生まれた子に王位継承権は与えられないという決まりである。いずれも帝位・王位の正統性を保つために定められた。  ルールにもとる婚姻は、貴賤結婚・不正結婚である。英語ではレフト・ハンディッド婚(左手の結婚)と呼ばれた。こうした19世紀的通婚制限は、20世紀になると欧州でも古びた慣行になっていった。  日本においても、1928(昭和3)年、秩父宮が平民籍にあった松平節子(のち勢津子妃)と結婚するなど規制緩和が進んでいく。戦後の正田美智子(現・上皇后さま)の結婚が、非華族(平民)との通婚だとして国民的祝賀を受けたのは、ご存知の通りである。  婚姻勅許制は現在も形式的に残っている。2017年、眞子さまと小室さんの結婚について天皇の裁可(さいか)があったと報じられたことである。  この件は、戦後初めての女性皇族の結婚、和子内親王の事例に遡(さかのぼ)る。1950年、鷹司平通(たかつかさとしみち)との結婚が裁可されるとき、婚姻は両性の合意のみに基く、と定めた日本国憲法24条との整合性が問題となった。そこで、裁可は皇室内部の手続きとして簡略化し、外部に公表しないことを決めた。  だから、その後の女性皇族の結婚で裁可が公表された例はない。眞子さまのときだけ、なぜか公表されたのである。  近代の皇室の歴史は、国民とのフラットな関係への志向(皇室平民化路線)と、権威化路線とのせめぎ合いのなかにあった。戦後皇室は基本的には、平民化路線へと向かっていた。  だが、近年、怪しくなってきた。それは、災害や経済的苦境が続き、日本の国際的地位が低下したことと無関係ではない。人は、何かに確信が持てないとき、過去とのつながりを確認したくなる。正統性、伝統、国家というアイデンティティーにすがりたくなるのだ。従来の通婚範囲から大きく外れた場所から出現した小室さんを受け入れにくいのは、私たちが、不安の時代を生きているからである。  眞子さまの結婚の裁可が公表されてしまったのは、宮内庁が前例を忘れたという単純な理由によるものだろう。 ありのままであるために必要  だが、その深層には、天皇に権威性を求めてしまう社会の変化がある。不安定な政治に飽き飽きする私たちは、不変なものを皇室に求めてしまう。皇室は無私(わがままを言わない存在)だと信じたくなってしまうのだ。  そもそも、孫娘の結婚に、祖父の許可が必要な家庭など今の日本にはほぼ存在しない。皇室の存在意義は、日本の家族の鏡であることだ。そこからの逸脱こそ、皇室の存続にかかわる。  確かに、小室さんは同等性の原則からは大きく外れる。しかし、21世紀の私たちは、100年以上前の原則を皇族に押し付け続けるべきなのか。  息苦しい日本で、若者たちは、相手の地位や年収や容姿といったステレオタイプ化した異性の魅力を重視していない。一緒にいて居心地のいいこと、ありのままの自分でいられることが最も重要である。社会学はこれをコンフルエント・ラブ(融合する愛)と呼び、従来型の恋愛と区別している。  眞子さまが選んだ小室さんは、まさに、ありのままの眞子さまであるために必要な存在である。眞子さまの言葉を借りれば、小室さんは「かけがえのない存在」であり、2人の結婚は「自分たちの心を大切に守りながら生きていくために必要な選択」である。この言葉に、国民は戸惑っていると言う人がいる。社会の不安を眞子さまの結婚への期待に置き換えるべきではない。  国民と皇族は違うという人もある。同じである。逆に、同じであろうとしたことこそ皇室と国民を結ぶ回路であった。皇族にもプライバシーもあれば、個人的な欲望もある。恋もする。  国民が総小姑(こじゅうと)状態になり、眞子さまの結婚に注文を付けること自体、異様である。『週刊朝日』を含めたメディア報道もおかしかった。  結婚を両親が認めたことも明らかで「駆け落ち婚」と呼ぶのはもはや適切ではない。仮に「駆け落ち婚」だとしても、そのどこが問題なのか。  彼女の結婚を見守ることしか、私たちがなしうることはない。※週刊朝日  2021年10月1日号

    週刊朝日

    21時間前

  • 7

    恩師が語る 小室圭くんは「モテていました。人を引きつける何かがあった」

     小室圭さん(29)は国立音楽大学附属小学校(音小、東京都国立市)の卒業生だ。小学校時代の恩師は、一連のバッシングに心を痛めていたという。約3年ぶりに帰国して、小室さんは何を語るのか。教え子を案じる恩師に、思いを聞いた。 ──小室圭さんはどんなお子さんでしたか。  圭くんのことは、よく覚えています。小さいころはおかっぱ頭でね、とても可愛かったですよ。悪い印象なんて一つもないです。担任の先生の指導もあり、礼儀正しくて職員室や校長室に入るときのあいさつもしっかりしていました。週刊誌やテレビなんかでいろいろ言われているようですが、私の記憶では、全くそんなイメージはありません。  優しい子でした。特に女子からは人気がありましたね。モテていました。何でしょうね、目立つわけではないんだけれど、今の言葉で言うと「持ってる」というのかな。圭くんには人を引きつける何かがありました。 ──婚約内定の発表時には。  お名前で「圭くんと同じ名前だ」と思い、テレビで顔を見てすぐ気が付きました。学校関係者で一番早く気が付いたんじゃないでしょうか。 ──ある報道では、小学校時代に小室さんからいじめ被害にあったという告発がありました。  音小は1クラスに男子が4~6人と少ないのですが、子ども同士のトラブルはそれなりにあったかもしれません。ただ、当時はいじめ的なものとしてはとらえていませんでした。時代もあるのかもしれませんけれども……。私たちに見えていない部分もあるでしょうし、深い内面まではわかりません。それを前提として言えば、私たちにとってはごく普通の子どもです。リーダーシップを発揮して皆を引っ張っていくというタイプでもありませんし、特別目立つということもありません。 ──小室さんが4年生のころ、父親が亡くなっています。  子どもながらに大変だったと思います。国立の家から横浜に引っ越すことになって、通い続けられるか、学費のこともありますし、お母さまを含めて心労も大きかったと思います。でも、最終的にはお母さまは「圭は音小が大好きだし、通い続けられるようにしたい」とおっしゃり、いろいろ尽力されたのだと思います。圭くんは卒業まで横浜から国立まで毎日通ってきていました。 ──小室さんの親御さんはどんな方でしたか。  子どもとは別人格ですから、そのことはコメントはしません。深いことはわかりません。お母さまが「外車を乗り回して服装も派手で……」なんていう報道があるようですが、音小には外車に乗る親御さんはいらっしゃいますし、特別視されるようなことはないです。インターナショナルスクールへの進学も、彼だけではありません。卒業生には何人かいます。 ──卒業後の交流は。  卒業後に一度かな、会いました。中学受験して国際的な学校に進学して、多国籍の人たちのなかで切磋琢磨しながら、大変な努力をしたのでしょう。幸せになってほしいと思います。 (本誌取材班)※週刊朝日  2021年10月1日号

    週刊朝日

    1時間前

  • 8

    自宅放置死250人は「人災」 英米のコロナ対策を知る日本人医師が指弾

     ワクチンの2回目接種が進んできたことも影響しているのか、「第5波」も収まりつつある日本。だが、医療崩壊により多くの自宅死を招いた結果について、英米の対策を知る医師は“人災”と指摘する。海外に学ぶべきこととは──。 *  *  *  これは“コロナ棄民”政策による犠牲ではないのか。新型コロナウイルスに感染し、自宅などで死亡した人が、8月に全国で250人に上った。7月の31人から急増し、過去最多となった。第5波が猛威を振るった8月、政府は重症患者や、中等症でも重症化リスクの高い患者以外は自宅療養を基本とする「入院制限」を打ち出した。デルタ株による感染爆発から医療逼迫(ひっぱく)を防ぐ狙いだ。本来、入院や宿泊療養をするべき状態なのに、自宅療養を余儀なくされる人が続出する結果となっている。  この春まで英キングス・カレッジ・ロンドンの教授を務め、5月に帰国した渋谷健司医師は、日本の現状について怒りを滲ませながら、こう語る。 「保健所の職員が自宅療養の患者さんを観察し、入院が必要かどうかを判断するなんて無理です。最初から医療にかからなければ症状の急変には対処できません。酸素ステーションの設置も、後手の対策を象徴している。酸素が取り込めなくなった人に、酸素だけ投与して回復するわけがない。入院してきちんと治療しなければなりません。ネックとなっているのは病床不足で、大規模な専門病院が必要なことは昨年からわかっていたこと。お手上げになったら患者を自宅放置なんて、あり得ないくらいひどい話です」  政府はコロナ患者の受け入れを促すため、重症患者向けの急性期ベッドを新たに確保した医療機関に対し、1床当たり最大1950万円を補助しているが、機能していない。中小規模が多い民間病院がコロナ診療のために一般診療を制限し、さらに院内感染が起きれば大きな打撃を受ける。医療スタッフのやり繰りにも限界がある。  渋谷医師が続ける。 「中小の民間病院にコロナ患者の受け入れを求めるのは酷です。やはり大きな急性期病院でベッドを50床、100床と確保しないと対応できません。その役割は当然、公的病院が負うべき。国立病院機構や、尾身茂さんが理事長を務める地域医療機能推進機構(JCHO)はすぐにでもコロナ対策病院としてベッドを確保すべきです」  冬にかけて「第6波」が始まることが予測される。重症者用に既存の病院の病床を確保するとともに体育館やイベント会場などの臨時の施設を使って野戦病院をつくり、中等症の患者を収容する態勢づくりが求められる。 「いま専門家からロックダウン(都市封鎖)法制化を求める声が上がっていますが、ワクチン接種が進み、病床を確保して医療崩壊が防げればその必要はありません。英国のような罰則もないのに日本の国民は我慢強く行動制限しています。その真面目さに胡坐(あぐら)をかいて、国や専門家はやるべき対策を怠った。飲食店をスケープゴートにして自粛や緊急事態宣言をくり返しても社会が傷むだけです」  現在、日本では変異株による子どもの感染が急増している。渋谷医師はいま最も重要なのは学校対策だと話す。 「コロナは無症状感染があるので、症状がなくとも学校で定期的に検査を実施すること。日本はいまだにマイクロ飛沫と言っているが、主な感染ルートはエアロゾルによる空気感染です。教室にCО2モニターを置いて換気を見える化し、12歳以上の子どもと保護者、教師はワクチンを接種する。ワクチン、検査、換気、不織布マスクの4点セットで学校を成り立たせていくのです」  米国の事例にも学ぶべき点は多い。米国在住で、星槎グループ医療・教育未来創生研究所・ボストン支部研究員の大西睦子医師はこう説明する。 「米国では最も多い時で1日30万人もの感染者を出しましたが、医療崩壊を免れています。ライバル病院が協力して次々と臨時病院を開設し、患者さんの入院先を調整し合ってパンデミックに立ち向かったのです」  大西医師が住むマサチューセッツ州では、ハーバードの教育病院・マサチューセッツ総合病院(MGH)を擁する「マスジェネラルブリガム」が州最大の病院グループだ。昨年4月、ボストンに第1波が押し寄せた時に、コンベンションセンターを使用して約1千床の臨時病院を開設。ICU(集中治療室)ベッドも州全体で約1200床増やした。ICUでの治療から回復した患者は臨時病院で経過を見る。無症状者はホテルで健康観察するシステムが早期に確立した。 「マスジェネラルブリガムは長年のライバル関係にある他の病院グループと一致団結し、どこの病院に何人分のベッドが空いているかなど、お互いに情報を開示・共有し合いました。インターネットでも確認でき、患者さんがたらい回しされることはありません。救急車もすぐに搬送できるので、時間的なロスもありません。医療スタッフは定期的な検査など緊急性のない医療をやめて、コロナに集中しました。ワクチン接種が進んでから順次、元の診療科に戻りました」(大西医師) 情報を隠したら罰金100万ドル  コロナ対策においてこうした画期的な取り組みが実現できたのは、オバマ政権が2016年に制定した「21世紀治療法」があるからだ。パンデミックなどの危機に備え、公衆衛生のために電子記録を作成する医療従事者や企業は、他の医師や事業者と情報を共有することが義務付けられた。情報のブロックは禁止され、違反した場合は最大100万ドルの罰金が科せられることがある。大西医師が解説する。 「患者さんの電子カルテも共有化が進み、コロナによってさらに加速しました。もちろん、プライバシーは法律によって保護されます。まず、かかりつけ医であるホームドクターに行き、必要であれば専門の病院にかかる。データはシェアされているので診療はスムーズに進みます。患者は自分の情報はすべてオンラインで知ることができ、セカンドオピニオンが必要かどうかも判断できます」  日本でも医療情報の開示を導入すれば、閉塞したコロナ対策を打開する一助になるのではないか。(本誌・亀井洋志)※週刊朝日  2021年10月1日号

    週刊朝日

    1時間前

  • 9

    総裁選と総選挙の二つのシナリオ 古賀茂明

     先週の本コラムの最後に、(自民党総裁選で)「河野・石破、さらに小泉進次郎環境相の三者によるKIK連合ができれば、国民は熱狂し、河野氏勝利となる。」「ただし、河野氏が森友問題の再調査と脱原発を明言することが条件だ」と書いた。  14日に小泉進次郎環境相が、15日には石破茂元党幹事長が、正式に河野太郎行革担当相支持を表明し、予想通りKIK連合ができた。しかし、河野氏は、森友問題に関する再調査を否定し、原発再稼働を容認する姿勢を明らかにしている。多くの新聞・テレビでは、「河野氏変節」という報道が相次ぎ、疑念の目が向けられた。安倍忖度をしているように見えるからだ。このイメージのままでは、総裁選の一回目の投票で河野氏が過半数を制することはできない。有力候補である岸田文雄元外相との決選投票になれば、一般党員の投票がないため、国会議員票で有利とみられる岸田氏に敗れるかもしれない。  それは、野党にとっては最高の展開だ。岸田氏が、決選投票で安倍晋三前総理の出身派閥である細田派と麻生太郎財務相の派閥である麻生派の多くと岸田派の大部分の議員票に支えられて当選すれば、誰が見ても、安倍麻生傀儡政権だ。河野氏勝利でも僅差になれば、安倍氏の影響力は残り、自民は変われない。  その後に行われる総選挙では、野党側は、「安倍政治との決別」を掲げ、新政権は安倍傀儡政権だと叩く。総裁選フィーバーで回復した自民党支持率も再び低下。自民党単独過半数割れもありうるという展開で、野党支持層に「ワクワク感」が生まれる。投票率は上がり、その結果、野党大勝利が現実のものとなるかもしれない。  だが、全く反対のシナリオもある。  河野氏は党内の国会議員票を意識して、保守層に配慮する姿勢を見せた。これに対してリベラル層からは「変節だ」と疑われるが、右翼層からは、「これは偽りだ。本当はバリバリのリベラルで、脱原発派だ!」という批判がなされている。つまり、変わっていないというのだ。  すると、リベラル層は、「それなら河野を支持しよう」と思う。また、細田派が岸田氏または高市早苗氏の支持を打ち出し、河野氏と敵対する姿勢を見せたのも、やはり、河野は安倍と闘っているという認識につながる。さらに、石破氏が、森友問題再調査の重要性を強調しながら河野氏を推したことは、河野氏は再調査に賛成なのではないかという憶測を呼び、だから安倍氏が河野潰しに必死なのだとの連想を生む。  さらに、ここに来て、トヨタの社長が電気自動車へのシフトに声高に異論を唱えた。これは、河野氏が提唱するグリーン革命の否定だととらえられる。電力会社を含め、これら大企業が、利権を守るために、経産省と組んで反河野キャンペーンを強化しているのだ。  河野氏が如何に穏健路線を演出しても、周りは、長老支配の安倍麻生利権政治に立ち向かう河野太郎と囃し立てる。それが判官贔屓の河野大フィーバーとなり、総裁選大勝利につながる。その勢いで総選挙に突入すれば、KIKがリベラルや無党派層の票を集め、自民が圧勝するかもしれない。   総裁選が「安倍政治の終焉」となるのかどうか。そこが一番の見どころである。※週刊朝日  2021年10月10日号

    週刊朝日

    9/21

  • 10

    高市早苗に「プリテンダー」の声 女性の悔しさ知るはずなのに「この道しかない」のか

     高市早苗という政治家の原点は、自分に真っすぐな「シスターフッドの人」ではなかったか。「わきまえて」見える彼女のいまをつくったものは何か。AERA 2021年9月27日号から。 *  *  *  高市早苗前総務相が自民党総裁選への立候補を正式に表明した9月8日夜、テレビ各局の報道番組をはしごした。 「日本経済強靱化計画、いわゆるサナエノミクスの3本の矢は」  そう力強く語る高市さんの声を、何度も聞いた。「金融緩和、緊急時の機動的な財政出動、大胆な危機管理投資、成長投資」と続くのだが、それよりも気にかかったことが二つあった。  その1 自分で名付けておいて、「いわゆる」って言う?  その2 「アベノミクス」の継承・発展なら「タカイチノミクス」じゃない?  1からは権力者特有の図々しさを、2からはそのくせ「女子アピール」をする残念さを感じた。そしてこう思う。あーあ、結局、高市さんかー。  高市さんは2006年、第1次安倍内閣で内閣府特命担当大臣として初入閣した。以来、彼女の言動はずっと安倍さんへの「ですよねー」だったと思う。選択的夫婦別姓→反対、皇統→男系男子、靖国神社→参拝。「信念だ」と言うだろうが、指さし確認で従っている感じ。で、その甲斐あっての立候補。菅首相が引っ込んだ途端、彼女への支持を表明する安倍さんに、どんよりする。 ■シスターフッドの人  高市さんは1961年3月生まれで、私は1月生まれだ。同学年だけに自分の会社員人生が重なる。わきまえることが大切と教えてくれたのは森喜朗元首相だった。はい、よくわかりました。それが高市さん。  自分の話をもう少し続けると、30歳で結婚した。「そのうち別姓が選べるさ」と軽い気持ちで婚姻届を出さずにいたら、還暦を迎えてしまった。もし高市総裁なら、事実婚のまま古希か。もっと深刻なのは、日本中の若い女性が「わきまえないとダメだ」と思うことだ。いかーん。  そんなある日、作家で経営者の北原みのりさんと元衆院議員でジャーナリストの井戸まさえさんがクラブハウスで高市さんについて語り合っているのを発見、即、聞いてみた。高市批判が飛び交うことを期待したのだが、違った。2人は、彼女がまだ政治評論家だった92年に出した『30歳のバースディ』という本の話で盛り上がっていた。  厳しい母から逃れたくて早稲田にも慶応にも受かったのに、弟が私立中学に受かったからと断念させられ、奈良から神戸大学に往復6時間かけて通学した。ロックバンドでドラムを叩き、オートバイを操った。松下政経塾から突如、米国大統領選初の女性候補と目された民主党のパトリシア・シュローダー下院議員のインターンになった。合間合間に必ず挟まる、赤裸々な恋愛話……。そんな内容を語る調子に、彼女への共感がにじむ。2人が何度も引用していたのが、最後の一節だった。 「頑張っている同性の皆さん、一度っきりの人生だもの、自分に気持ちいいように生きようネ! GOOD LUCK、GIRL FRIENDS!」。高市さんはシスターフッドの人で、今の彼女はプリテンダーではないか。2人の一致した意見だった。 ■女性は「お察しします」  なるほどプリテンド(装う)か。シスターフッドは隠し、「安倍好み」のふりをし、総裁選へ。作戦としてはわかる。が、それでいいのかと割り切れない。2人に話を聞くことにした。  北原さんは高市さんを悪く語る人(とりわけリベラル系の男性)に、「女性嫌悪」を感じたという。極端な右寄りで問題ありの人だが、それにしてもひどい、と。そこで本を読み、原点を知り、驚いたという。 「安倍さんにすり寄って、実力以上に評価されている人というイメージだけど、これだけ2世、3世の多い政治の世界で、サラリーマン家庭出身の女性があそこまでの地位をつかんだ。そのためには野田聖子さんや小渕優子さんがしなくてもいいことを、たくさんしたと思う」  確かに、今回の総裁選へ立候補を表明している岸田文雄さんも河野太郎さんも、立候補を断念した石破茂さんも、みんな政治家の家に生まれている。 「高市さんは税金や軍事など、女が苦手とされるところに政治家としての自我を求めた。女だからと舐められないための戦略でもあり、舐められないために『女の味方ではない』と肩ひじを張った。それで保守の王道を歩みたいという思いはわかるけど、それにしてもあっちに寄りすぎちゃったよね、と思う」。そう言って、こう続けた。 「でも、そうなったのには訳がある。お察しします、と思います。女性だったらみんな、お察ししますなんじゃないかな」  井戸さんは元衆院議員。次期衆院選に立憲民主党から立候補する。政策は相容れないが、「高市さんは人として、信用できる」と言う。井戸さんは松下政経塾出身で、高市さんの後輩。卒塾式での体験があるからだ。 ■彼女だから候補に  研修担当者が塾生の思い出を語るのだが、そこで井戸さんはいきなり「香水がきつかった」と言われた。激しく傷つき何も言えずにいたら、「そんなこと、ここで言うことじゃない」と抗議してくれたのが高市さんだった。  それから10年以上経ち、井戸さんは自分の経験から「民法772条による無戸籍児家族の会」代表として活動していた。06年、高市さんが入閣、少子化担当でもあったので、民法改正を訴える手紙を送った。他にも法務相、総務相(菅義偉さんだった)らにも送ったが、返事があったのは高市さんだけだった。雛型にあてはめたものでなく、きちんと内容に則していて、手書きの署名が添えられていた。誠実に働き、きちんと事務所を運営している政治家だと思った。 「彼女を今の高市早苗にしたのは有権者であり自民党。彼女はそのルールブックに則ってきただけとも言えます。『女性の総理大臣候補が高市早苗なの?』っていろいろな人が言うけれど、彼女だから候補になれたというのが現実なんですよね」  その現実をはっきり見せられるのがつらい。そう井戸さんに言うと、こう返ってきた。 「多くの女性が結局、上に行くには彼女の道しかないことに気づいている。それで責任を感じるとまでは言わないけれど、自民党を、この社会を変えられなかったことがどこかやましく、だからつらいんじゃないでしょうか」 『30歳のバースディ』を読んだ。そこにいる高市さんは、自分に正直でまっすぐな人だった。その印象は、衆院選に初当選した2年後に出した『高市早苗のぶっとび永田町日記』でも変わらず、2章が抜群に面白かった。 ■悔しさ知っているのに  92年、地元奈良県から参院選に無所属で立候補、落選した顛末(てんまつ)が書かれている。当初、自民党公認で出るはずが、党県連会長に阻まれる。その経緯を一言でまとめるなら、「会議の場で言われたことを額面通りに受け取ったが、実は裏で違うことが進んでいた」というもの。怒り、悔しがる高市さん。だが、その翌年衆院選に無所属で立候補、トップ当選する。たくましい。  この時、高市さんが落ちたのは、「ボーイズクラブ」の陥穽(かんせい)だった。女性は立ち入り禁止の所で物事が決まり、今もあちこちで女性を待ち受けている。その悔しさを知っているのに、何で? と、思った端から思う。だからなのか、高市さん。  総裁選は、どうなるだろう。(コラムニスト・矢部万紀子)※AERA 2021年9月27日号

    6

    AERA

    22時間前

  • 11

    羽生結弦が3度目の五輪シーズンへ…目指すは「誰も跳んだことがない大技」

     2014年ソチ五輪、2018年平昌五輪で連覇を果たし、3度目となる五輪シーズンを26歳で迎える羽生結弦。唯一無二の存在感を持つスーパースターとなった今の羽生が目指すのは、誰も跳んだことがない大技の成功と、自分らしさを追求する表現だ。 「早く4回転半の練習をして、誰よりも早く4回転半を公式(の試合)できれいに決める人間になりたいです」  銅メダリストとして臨んだ昨季の世界選手権(3月)の記者会見で「この大会の後に何をしたいか」と問われた羽生は、4回転アクセルへの強い思いを口にしている。「ここに来るまでに4回転半の練習をたくさんしてきて、体もかなり酷使してきた」とも話している羽生が世界選手権で4回転アクセルを跳ぶことを断念したのは、出発の約3日前だったという。  また一夜明け会見で北京五輪への思いを問われた際も、強調したのは4回転アクセルへの思いだった。 「最終目標はオリンピックで金メダルではなくて、あくまでも4回転半を成功させることが僕にとっての一番の目標」 「(あと)8分の1(回転)回れば立てますね、間違いなく。ランディングできます」  さらに、世界選手権が行われたスウェーデン・ストックホルムから帰国後、隔離期間を経て臨んだ国別対抗戦(4月)では、練習中に4回転アクセルに挑む姿もみせている。4回転アクセルを組み込むつもりで作ったという昨季のフリー『天と地と』は今季も継続する予定で、大技を入れた形での真の完成を目指す。  また、羽生には表現面での進化もみられる。昨季のプログラムはコロナ禍により振付師と共に滑りながら創ることがかなわなかったことで、羽生は多くの部分を自分で振り付けたと語っている。また、シーズン終了後の4月に出演したアイスショー『スターズ・オン・アイス2021』では、オープニングナンバーでセルフコレオによる滑りを披露した。スポットライトを背負い、シルエットとなって登場した羽生の動きは以前にも増して鋭さが増し、ダンサーのような雰囲気を漂わせていた。羽生は今はまっているものとしてBTS(防弾少年団)を挙げているが、世界的なポップスターのダンスから取り入れているエッセンスも感じられたように思う。  ただ『スターズ・オン・アイス2021』オープニングのセルフコレオにあたり、羽生は自らの良さが出る振付を考えたとも話している。10代の頃から音楽をとらえる感性に非凡なものを感じさせていた羽生は、クラシックからロックまで様々な曲を使ったプログラムを滑り、そのすべてで羽生ならではの表現をみせてきた。その結果、自分らしいプログラムとして羽生が滑っているのが『天と地と』であり、今季新しく用意する予定のショートプログラムになるはずだ。競技人生をかけて様々なものから学び、なおかつ羽生らしさを追求してきた表現の到達点が今季のプログラムになるだろう。  五輪連覇というこの上ない経歴を既に手にしている羽生は、誰も跳んだことがないジャンプと自分にしかできない表現を追求することで、フィギュアスケートの真髄を究めようとしているのかもしれない。(文・沢田聡子) ●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」

    dot.

    15時間前

  • 12

    ミュー株、イータ株…変異株で気を付けるべきこと 専門家はデルタ株の新変異を警戒

     ミュー株やイータ株など、さまざまな新型コロナウイルスの変異株が国内で検出されている。気を付けるべきこと、知っておくべきことは何か。AERA 2021年9月27日号の記事を紹介する。 *  *  *  厚生労働省は9月1日、新型コロナウイルスの変異株「ミュー株」が6月と7月に国内で計2例検出されたと発表した。世界保健機関(WHO)が8月30日付で同株を「注目すべき変異株」に指定したため、検疫で採取した検体をさかのぼって調べたところ、判明した。9日には、「イータ株」が昨年12月以降、国内の検疫で18例見つかっていたことを明らかにした。 ■ミュー株で抗体効果減  国内で新たな変異株が次々と報告され、「ミュー株」や「イータ株」がSNSでトレンド入りするなど注目を集めている。  実は新型コロナウイルスの流行株は変遷している。7月下旬からの第5波で猛威をふるっているのはインド由来の「デルタ株」だ。だが、2021年1月をピークとする第3波までは従来株が中心で、同年4月上旬からの第4波では英国由来の「アルファ株」が広がっていた。  デルタ株の感染性は高く、アルファ株の1.5倍ともいわれる。子どもたちへの感染も広がり、ワクチン接種後のブレークスルー感染も起きている。  今後、もっと手強い変異株が流行する可能性はあるのか。  WHOは、変異株のうち、感染性が強まるものや、感染した際の重篤度が高まるもの、ワクチンの効果を弱めるものを「懸念される変異株」に分類。現在、アルファ株やデルタ株など4株を挙げ、国際的に警戒するよう呼び掛けている。  そのほか、感染性や重篤度、ワクチンの効果などに影響を与える可能性があるものを「注目すべき変異株」として、現在は五つを挙げている。  ミュー株はまだわかっていないことが多いが、ワクチン接種などで得られた抗体の効果が弱まるという研究報告がある。東京大学医科学研究所などのチームが、ワクチンを接種した人や感染して治った人の、感染や重症化を防ぐ「中和抗体」の効果を調べたところ、従来の株に比べて7分の1以下になったという。 ■個人の対策変わらない  ただ、中和抗体の効きが悪くなっても、ワクチンが全く効かないということではない。東大医科研の佐藤佳准教授(ウイルス学)はこう説明する。 「ワクチンは血中の中和抗体の量を高く保つためだけに打つわけではなく、免疫の記憶をつくり、次に感染した際に免疫がウイルスを排除できるようにするために打つもので、血中の抗体が低くてもワクチンがミュー株に全く効かないわけではない」  感染性の高さはどうか。コロンビアでは以前は主流だったガンマ株をミュー株が凌駕した。だが、日本と同様にデルタ株が主流の米国では、ミュー株が2千例以上流入したが、デルタ株を凌ぐ事態にはなっていない。このことからデルタ株ほどの強い感染力はないと見られている。  佐藤准教授は新たな変異株の出現以上に、デルタ株が新たな変異を獲得し、流行する可能性を懸念する。実際、東京医科歯科大学は8月30日、国内で新たな変異が加わったデルタ株の市中感染事例が確認されたと発表した。また、大阪大学微生物病研究所は、デルタ株に特定の変異が四つ加わると、現在のワクチンの効果が大きく弱まる可能性があるとする研究結果をまとめている。 「どの変異株も新型コロナウイルスであることは変わらず、個人でとるべき対策は変わりません。ただ、どの株が流行しているのか把握することは、国の感染症対策として極めて重要。現在一部にとどまっているゲノム解析の体制を拡充することが必要です」(佐藤准教授) (編集部・深澤友紀)※AERA 2021年9月27日号

    AERA

    1時間前

  • 13

    前代未聞!派閥から3人候補推し「キングメーカー」二階幹事長の評判 地元の「引退勧告」もどこ吹く風

     9月29日に投開票の自民党総裁選は折り返し点を迎え、終盤戦に突入した。河野太郎ワクチン担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行が火花を散らす。メディア各社では投票権がある自民党の党員に対しての世論調査も実施された。  集計された数字をみると、河野氏がダブルスコアで岸田氏を引き離し、次いで高市氏、野田氏という順番だ。この数字を見て、ご機嫌なのが二階俊博幹事長だという。 「河野氏が大差リードと聞かされて『これでいい』『河野でいける』と嬉しそうに二階氏は話しています。キングメーカーが続くと夢見ているんでしょうかね」(二階派の国会議員)  二階派は今回の総裁選で派閥で特定候補者は推さずに自主投票となった  推薦人を出したのは、河野氏に2人、高市氏へ3人、野田氏には8人だ。出馬会見で党役員人事の改革案を発表し「二階外し」に打って出た岸田氏にはゼロというわかりやすい対応だ。  自民党の幹事長になって5年以上、在任記録を更新し続ける二階氏。菅義偉首相が辞めると同時に、二階氏も幹事長の座から降りることになる。二階氏の存在は一気に小さくなっているというのだ。  野田氏に8人もの推薦人を出したのは、推薦人集めに汗をかいた二階派の幹部・鶴保庸介参院議員が野田氏の元夫という背景もある。しかし、あまりに突出している。 「野田氏に推薦人を多く出したことで、高市氏を推す安倍前首相に女性票が分散すると不評を買っています。二階氏は河野氏が優勢と喜んでいるのですが、派閥内ではあまり反応がありません。総裁選後、二階氏は幹事長という大きな権力を手放すわけで、派閥内では2人寄れば、今後は誰が派閥を仕切るのか、という話題ばかりですよ」(前出・二階派の国会議員)  二階氏には派閥内でも冷たい風が吹きつつある。それは二階氏の地元、衆院和歌山3区でも同様だ。10月に衆院議員の任期は満了となり、総選挙が行われる。      今回は大島理森衆院議長や二階派でもある伊吹文明元衆院議長、塩崎恭久元官房長官など大物が次々と高齢を理由に引退を表明している。だが、82歳の二階氏はどこ吹く風。次期衆院選への出馬意向は変わらないという。和歌山3区の地方議員は地元の「二階離れ」をこう語る。 「二階先生は昔から口癖のように『副総裁とか、そういうのはやらん』と言っていた。要するに名誉職はイヤ、幹事長のように権力がないとダメということです。次、誰が首相になっても二階先生が幹事長になることはない。引退にはいいタイミングと地元ではささやかれている」  和歌山3区は「一票の格差」問題で、いずれ選挙区が2つになり、定数減となる公算が大きい。そうなれば、選挙区が広くなり、より幅広い活動が必要になってくる。和歌山3区では圧倒的な強さを誇る二階氏も、油断できない情勢だ。  二階氏の地元、御坊市の市長選では16年に二階氏の長男が立候補。二階氏の威光もあって小泉進次郎環境相まで応援にやってきたが、大差で敗れた。この敗北が二階氏の後継問題に大きな影響を与えているという。 「今の感じでは二階先生の秘書の三男が後継でしょう。しかし、二階後援会を地元で仕切っているのは長男で、選挙に出たがっている。二階先生もなかなか、後継を決めることができない感じですよ」(前出・地方議員)  また、参院和歌山選挙区には衆院への転出が噂される世耕弘成・自民党参院幹事長がいる。 「世耕氏は参院のライバル、林芳正氏が衆院山口3区に転出することになり、いろいろと考えることもあるようです。無派閥の高市氏が総裁選に出馬し、所属する派閥・清和会を率いる安倍晋三前首相が熱心に推している状況もある。世耕氏がもともと強い地域は和歌山3区です。二階氏本人がいる間は我慢するでしょうが、世襲で息子が出るとなれば、考えるでしょう。二階氏も心配で仕方ないでしょう。また地元では『陳情は世耕氏に』という二階離れの流れになりつつありますね」(自民党幹部)  総裁選でリードしている河野氏がそのまま総裁、首相になった際、二階氏は菅義偉首相の時と同様に、キングメーカーとして振る舞えるのか?河野陣営の国会議員は冷淡な評価だ。 「二階派の支援はありがたいが、寝技師、権謀術数的な派閥で河野氏のカラーとは相いれない。推薦人を出してもらっているので、無下にできないが、菅首相の継承と言っても、二階派を厚遇とはいかないでしょう。キングメーカーもあり得ない。それに野田氏へ推薦人を8人も出してあまりに風見鶏じゃないですか。党員票が分散するので、河野氏の形勢が不利になった。うちが負けたら、勝つのは岸田氏じゃないのかな。二階派はいったい、何をやりたいのか…」  安倍前首相、菅首相と長く勝ち馬に乗り続け、キングメーカーとして権勢を振るってきた二階氏。だが、今回は永田町、地元で強烈な逆風にさらされているようだ。総裁選後、新たなキングメーカーとして誰が君臨するのか。(AERAdot.編集部 今西憲之)

    dot.

    22時間前

  • 14

    高市早苗氏の意外な過去にフェミニストも震えた 総理の座を狙う過程で何があったのか

     作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、自民党総裁選に正式に出馬表明した高市早苗氏について。*    *  * 近しい人がデルタ株のコロナ陽性になったり、友人の同僚や、通っている美容院のお客さんが亡くなったりなど、夏以降、急速にコロナの危機が迫っているのを実感している。健康観察をされずに自宅で死亡した50代の方の話などを聞くと、東京五輪・パラリンピックに時間とお金と人材を費やすべきではなかったのではないかとつくづく悔しい思いになる。適切な処置を医療機関で受けられていたら、亡くならないですんだかもしれない命は少なくない。 Go Toキャンペーンやオリパラを強行することに専念してきた自民党政権が、トップの顔を代えただけで変われるとは思えず、期待には程遠い自民党総裁選。岸田文雄さんは、ボロボロの小さいノートを振りかざしては「国民の声を書き留めてきた、1年間で3冊、10年間で30冊」と様々なメディアでアピールしているが、正直、少ないと思う。薄いノートを1年でたった3冊埋めたくらいで、国民の声を聞いたとか言えるって、どんだけ聞いてこなかったかという話なのでは。河野太郎さんは、先日週刊誌でそのパワハラ言動が取りざたされていたが、ワクチン接種という、申し訳ないが素人目線でそこまで難しいとも思えない仕事でつまずいている人に期待するのはムリという話だし、高市早苗さんにいたっては、選択的夫婦別姓に強硬に反対するアンチフェミ女のイメージしかない。女性の人権に無関心な女性総理候補にいったい何の価値があるというのでしょう。 とはいえ、高市早苗議員、いったいどんな人なのか。32歳で衆議院議員に若くして初当選(※)。しかも同期の田中真紀子議員や野田聖子議員のように、親や祖父が国会議員だったというわけではなく、自民党員だったわけでもなく、サラリーマンの父と警察官の母という一般家庭から出てきた無所属の女性議員が、今、最も総理の椅子に近い女性となっている。なぜ高市さんは、政治家の道を選んだのだろう。どのように政治の道を歩いてきたのだろう。政治家としては多い著作のなかから国際政治評論家としてテレビで活躍していた頃に書かれた『30歳のバースディ―その朝、おんなの何かが変わる』(大和出版)、政治家2年目に記された『高市早苗のぶっとび永田町日記』(サンドケー出版局)を読んだ。 高市氏が大学を卒業したのは1984年。1986年に男女雇用機会均等法が施行されるが、この2年の差はやはりとても大きいものがある。女性が生涯にわたる仕事を手にすることも、そもそも親が大学に行かせてくれるかどうかも「女の子」であるというだけで諦めることがまだまだ当たり前にあった世代だ。特に地方であればなおのこと。保守的な奈良に育った高市氏も、当然のように「諦めさせられて」きた。例えば大学もそうだ。高市氏は第1希望だった早稲田と慶応のどちらも合格したにもかかわらず、「女の子のあなたを東京の私学で学ばせる余裕はない。弟の学費に回してほしい」と親に諦めさせられ、「女の子だから一人暮らしはさせられない」と通学に往復6時間かかる神戸大学に入学するのだ。 たとえ難関国立大学出身であっても、女性がその能力と希望に見合う就職先を見つけるのが難しい時代だった。「身の丈」よりもずっと小さく窮屈な型に押し込められる女性たちの悔しさは計り知れないが、高市氏の著書からはその類いの悔しさは強調されない。それは高市氏に並外れた行動力と決断力があり、自らの人生を切り開いてきた自負があるからだろう。たとえば、たまたま大学で目にした松下政経塾のポスターを目にして、直感に導かれるように松下政経塾に“就職”したり。たまたまテレビで見た女性議員で史上初の米国大統領候補指名争いに立候補準備を進めていたパトリシア・シュローダーに惹かれ、その2週間後にはワシントンに旅立ち、その情熱だけでシュローダー議員のオフィスで働き始めたり……若さゆえの大胆さと希望に満ちあふれた当時の高市氏のエピソード一つひとつに圧倒されてしまう。「女だから」と諦めさせられてきたのは大学まで、それ以降は絶対に諦めないという粘り強さで今の地位を築いていくのである。『30歳のバースディ』は文字通り30歳を迎えた高市氏がそれまでの人生を「ポップ」に振り返る本である。「BGMはいつもユーミンだった」「寂しいのはあなただけじゃない」「空港でまたまた恋人と涙の別れ」「男かペットがいなくちゃダメな私」「女と日の丸と視聴率の相関関係」「三〇女が孤独を感じるとき」といった目次からもわかるように、女友だちに話しかけるように書かれた軽く、優しいノリのものだ。アメリカから帰国し、若い政治評論家としてメディアに露出していたころで、日本の男性社会へのいら立ちも率直に記されている。「アメリカ議会では日本流のバカバカしい会議がないのが良かった。(略)ところが日本の企業では会議の場では何も決められない。本当は既に決まっているし、とっくに根回しが済んでいることを確認しあうだけの、儀式的な会議のなんと多いことか。でも、私たち女性は妙に正義感が強いので、このような巧妙な人間関係のテクニックとは相性が悪い」 90年代に若い女性が書いたテキストを追いかけながら、私は何度か噴き出したり、そうそうと共感したりと震えるような思いになる。ねぇ、高市さん、「女が入ると会議が長くなる」とほざく森喜朗さんに「あんたの会議はバカバカしい」とはやっぱり言えないものだったの? こういうまっとうないら立ちを文章にしてきた女性が、最も「わきまえる女」になっていく過程に、いったい何があったというの? さらにこういう率直さは、国会議員になった後に書かれた「高市早苗ぶっとび永田町日記」にも残っている。高市氏は歯に衣着せずに永田町のダメなところをきちんと切っている。「この一年間に永田町で一番多く耳にした言葉は次の二つ。『挨拶がない』『俺は聞いてないぞ』。委員会の審議日程が流れたり、大切な法案の採決がパーになったりする理由は大抵この二つだったりする」「笑い話のようなことばかりだが、事実、永田町政治は『理屈』ではなく、『メンツ』で動いている」 さらに、夜の会食や女性がいるクラブなどで行われる男たちの根回しで物事が決まっていく永田町で、女の自分が不利であることも記し、サッチャーのこんな言葉を引用し共感を表明するのだ。「私は最後まで党内基盤が弱かった。それは男性の世界の根回しに加えてもらえなかったからよ」 なにこの人……すごくまともな「一般人」の感覚で、すごくまともな「女の悔しさ」をストレートに出すフェミじゃないの? しかもそのまともさで、「総理大臣の資質」というものを論じ、当時の村山政権を真っ正面から批判している。明言しているわけではないが、高市氏自身が政治家として一番になること=総理になることを30代から目指しているのも伝わってくる内容なのだった。根回しから排除されてきたサッチャーが首相になれたように、パトリシア・シュローダーが80年代に大統領を目指したように、高市氏は政治家としてトップに行くことを最初から視野に入れていたのだ。 ……と、昔の高市氏の本を読んでいると、うっかり「がんばれ、早苗!」と言いたくなってしまう私がいるのだった。「総理になろうよ!!」と早苗の女友だちポジションに立って拍手したくもなってしまうのであった。まずい、まずい。正気に戻るために2011年に出版された『渡部昇一、「女子会」に挑む!』(WAC)も読んだ。櫻井よしこ氏、山谷えり子氏、高市早苗氏、小池百合子氏、丸川珠代氏・・・といった早々たる「わきまえ女」(帯には「なでしこ軍団」とある)たちと渡部昇一氏との対談本だ。 渡部氏との対談で、「総理になったら、まず何をしますか?」と聞かれた高市氏はこう答えている。「最初に、政府歴史見解の見直しをします。新たな歴史見解を発表して、村山談話を無効にします」 東日本大震災のあった年の9月に出版されている本だ。震災後から、こういう歴史修正主義を堂々とうたう本や、韓国ヘイト、「慰安婦」運動への過剰な攻撃は度を越していったという実感が私にある。保守政治家から極右政治家に舵を切るように発言をより過激化させていく高市氏の横顔が、対談にはしっかりと刻まれている。夫婦が別の姓を名乗ったら家族が崩壊すると適当なことを言い、戦時性暴力の責任を問わないどころかなかったことにすることが、高市さんの「目指した政治」だったのだろうか。この国の女性たちが権力に近づこうとするならば、率先して選択的夫婦別姓を批判し、「慰安婦」被害者をおとしめる発言をいとわず、女性の権利を口にするフェミを冷笑するというマニュアルでもあるのだろうか。 今いる自民党の女性議員の顔を、一人ひとり思い浮かべてみる。わきまえなければ権力に近づくこともできなかった女性たち。夜の会議や根回しから排除されながらも、その立場を維持するための努力は、二世・三世の男性議員たちとは全く違うものがあったはずだ。それでも、それほどの努力をしても、彼女たちが自らの後ろを振りかえったとき、彼女たちの後ろを歩きたいと思う女性はどのくらいいるだろうか。というかそもそも、その道は後続の女性のために開かれていたことはあったのだろうか。 かつて高市氏が憧れ渡米したパトリシア・シュローダーはテレビカメラの前で涙を流した。そのことによって20年以上「女の政治家は感情的だから、ダメだ」と言われ続け、「あなたの涙のせいで、女の地位が悪くなる」と責められ続けたという。女であるというだけでその「涙」が事件になるのは、昔のアメリカも今の日本も変わらない。そういう政治の世界でトップを目指す女性たちが、女性の味方であることを忘れるのは「仕方ない」ことなのだろうか。それとも、アンチフェミニズムの顔で女性をたたくような女性政治家しか出せない自民党政治そのものが終わっている、ということなのか。※訂正配信時の「32歳で衆議院議員に初当選、女性議員としては、当時憲政史上最年少だった」という一文を、「32歳で衆議院議員に若くして初当選」と訂正しました。高市氏の著書『高市早苗のぶっとび永田町日記』に「女性として憲政史上最年少当選」と記してありましたが、実際は1946年4月10に三木キヨ子氏が20代(当時)で当選していたため削除、修正します。■北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

    dot.

    9/9

  • 15

    木村拓哉「この年になってもまだこんな思いをするんだ」と落ち込んだ

     映画「マスカレード・ナイト」で主演を務める木村拓哉さん。続編となる本作に挑んだ感想や、アルゼンチンタンゴを踊るシーンの苦戦などを明かした。 *  *  * ──大ヒット作「マスカレード・ホテル」の続編に挑む心境は?  プレッシャーは全くないです。映画会社の方や世間は大コケとかヒットとかおっしゃいますけど、僕にとって大事なのは、現場でスタッフや共演者の方と納得のいく作業ができたかどうか。現場が全てです。続編だからどうこうという意識はないですね。 「マスカレード・ナイト」では、アルゼンチンタンゴを踊るシーンがあるんです。原作を読んだ段階で「うわ、やべー内容書いてあるよ」とは思いました(笑)。今まで経験したことがなかったので。  ただ、言っちゃなんですけど「踊りでしょ?」という気持ちも内心あって。色々なスタイルを一通りかじってきたので何とかなるだろうと。  でも……甘かったです。自負という荷物を携えてよろしくお願いしまーすって現場に入ったら、「お持ちのもの全部必要ないので置いといてください」って言われた感じでした。まさにゼロからの挑戦で、「この年になってもまだこんな思いをするんだ」と、久々に落ち込みました(笑)。 ──殺人犯の正体を突き止める捜査官を演じましたが、ご自身も人間観察は得意?  意識して観察するというよりは、日常的に自然とやっているかな。仕事の時は、相手の熱量を感じ取りやすいと思います。「この人、本当に現場が好きなんだな」とか、「仕事でやってるだけだな」とか。  後者の場合は、その人との間に一定の距離ができてしまいますね。でも良い仕事をするために必要なら、おせっかいおじさんになる時もあります。  たとえば、モチベーションが低いスタッフさんって道具を雑に扱う方が多い。撮影用の機材をガシャーンって床に置いたりする。そういう場面を見ると、「ん?」って引っかかるんですよね。最初は何も言わないけど、4回目くらいで「自分のものだと思って運んでよ」って注意しちゃったり。 (構成/本誌・大谷百合絵) >>【後編/木村拓哉が外した“仮面”  SMAP時代「彼女いんのー?」にマジ回答】へ続く※週刊朝日  2021年9月24日号より抜粋

    2

    週刊朝日

    9/21

  • 16

    コロナ新規感染者が減少している今、なぜ規制を解除しない? 女医の見解は

     日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「日本の隔離制限などの解除はいつになる?」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。*  *  *「2週間の隔離がとても辛い。時差ぼけが全く治らないよ……」そう連絡があったのは、ポーランドに一時帰国していた友人が日本に帰ってきた後に自宅で自主隔離している最中でした。 ポーランドでは、新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいたこともあるのでしょうか。マスクを着用する人を見かけることは滅多になかったようで、「もうコロナを忘れちゃったよ」とポーランドにいた彼女から電話がかかってきたこともありました。「家族が皆ワクチン接種を済ませていたから安心して旅行にも行くことができた。リフレッシュできた」と旅行先の写真と共に連絡が来たこともありました。 東京オリンピック・パラリンピックの影響か、なかなか飛行機のチケットが取れなかった彼女が帰国したのは、9月の初旬。ちょうどその頃、曇りや雨の日が続いた時が隔離期間と重なったこともあり、太陽の光を浴びることも外でのびのびすることもできなかった彼女は、ずっと昼夜逆転したままだったといいます。2週間の隔離生活を終え、先日彼女に会うことができましたが、「日本に帰ってきた途端に、マスクしている人をたくさん見て、またコロナを思い出したよ」と話す彼女の言葉を聞き、ワクチン接種が進む国と日本との空気感の違い政府の対応の違いを感じざるをえませんでした。 世界各国でワクチン接種が進む一方で、デルタ変異株が世界中で猛威を振るっています。そんな中でわかってきたのが、「ワクチンを接種すること」の意味です。 Kasen氏らの米国ウィスコンシン州での調査の結果、ワクチン接種を完了した人が新型コロナウイルスに感染したときのウイルス量と非接種者のウイルス量に違いはなく、デルタ変異株に感染したワクチン接種完了者から他の人へ感染が移行しうることがわかりました。また、Revat氏らによるインドの新型コロナウイルス感染患者205人を調べた結果から、ワクチン接種が完了していた人は、新型コロナウイルスに感染を免れなかったとしても重症は減ることが示唆されました。 実際に、ワクチン接種を2回終えた人が人口の77.2%を占めるシンガポールでは、9月に入り感染者が増加しています。「ワクチンが感染を防ぐ割合は、4割程度にとどまるようだ」と、オン・イエクン保健相はコメントしています。ワクチン接種を2回終えた人が人口の63.6%を占めるイスラエルでも、同様のことが生じています。イスラエル保健省が7月下旬に公開したデータによると、イスラエルにおけるファイザー製のコロナワクチンの感染予防効果は1月から4月上旬の95%に対し、6月下旬から7月上旬には39%まで下がっていたといいます。 さらに、Yinon氏らの報告により、ファイザー製のコロナワクチンの2回目の接種から5カ月以上過ぎた60歳以上の高齢者への3回目接種によって、3回目の接種をしていない群に比べて感染率が11分の1ほどに低下したことがわかりました。 これらの知見は、コロナワクチンの2回接種では重症化は防ぐものの予防効果は低下する、3回目の追加接種を行えば、予防効果をあげることができそうだ、ということを示しています。すでに世界の多くの国で3回目の追加接種が検討されており、イスラエルでは3回目の接種が開始されています。 ワクチンを打てば、少なくとも死亡するリスクは大幅に減るため、接種率が進んできた今、世界では、感染対策と経済活動の両立をどう行なっていくかという議論に進んできています。コロナの治療薬の開発も進んでおり、年内には申請される見通しです。こうした状況を受けて、定期的なPCR検査を継続した上で、ワクチン接種を済ませた人から制限を解除して経済を回していこうと、世界は動き出しているのです。 実際に、ワクチン接種の進む欧米では、ワクチン接種が完了した人に対する行動制限の解除がすでに進んでいます。9月17日時点で人口の65.0%が2回の接種を完了しており、人口の71.2%が1回の接種を終えている英国では、来月にも渡航制限が大幅に緩和される見通しです。先日、英国政府は、「10月4日午前4時より、イングランドへの国際渡航の規則は、赤・黄・青の3段階に対象国を分類していたシステムから、赤リスト国のみの設定と、それ以外の国からの入国については簡素化した渡航手順へと変更する」ことを発表しました。日本から英国に入国する14日前に対象国の保健当局が定めたワクチン接種を終えている日本人は、出発前のウイルス検査や入国後の10日間の自主隔離が不要となり、入国後の検査2回のみに大幅に緩和されることになります。また、50歳以上の人らを対象に3回目の追加接種を行うこともすでに発表されています。 9月18日時点で人口の53.7%が2回の接種を完了しており、人口の62.9%が1回の接種を終えているものの、接種率が伸び悩んでいるアメリカでは、ワクチン接種を義務化する動きが進んでいます。バイデン大統領は、9月9日の演説で、100人以上の従業員を雇用する企業の雇用主がワクチン接種または週1回の検査を確認するよう要請しました。また、外国人の米国への入国条件として、新型コロナウイルスワクチンの接種を義務付ける方向で調整に入っていると報じられています。さらに9月下旬からは、2回目の接種を終えてから8カ月が経過した人を対象に、3回目の追加接種も始まる予定です。 9月14日には、ワクチン接種証明の提示やマスク着用などのルール下のもと、1年半ぶりにニューヨークのブロードウェイミュージカルが再開しました。ワクチン接種者に対する規制の緩和が進むにつれて、街には活気が戻りつつあるようです。 一方の日本はというと、規制緩和は進んでいるようには思えません。緊急事態宣言が続いており、議論すら進んでいません。接種開始が大幅に遅れたワクチン接種はというと、幸いにも順調に接種率は伸び、9月16日時点で人口の53.3%が2回の接種を完了しており、人口の65.6%が1回の接種を終えました。英国の接種率には及びませんが、アメリカの接種率をすでに超えたことは注目に値すると思います。さらに、新規感染者数は、2021年8月26日の24317人をピークに減少を続けており、9月19日時点で3408人と前回のピーク(2021年5月15日の6331人)を下回っています。 ワクチン接種が順調に進み、また新規感染者数が減少している今、規制緩和せずして、いつ行うつもりなのでしょうか。外来診療の現場でも、風邪症状を訴えて受診する人は8月中旬から比べると激減しており、PCRの検査数も、陽性が出る割合も減っています。 通勤電車は、満員とまでは行かずとも乗っている人の数が増え、座れないことが多くなってきました。「時差出勤のお願い、会話を控えて、緊急事態発令中……」なんていう車内アナウンスが流れる一方で、乗客も増え、マスクを着用しながら会話する声で少々賑やか、なんていうことも増えてきた印象を受けます。 南カリフォルニア大学のFrancisco氏らの報告によると、2020年3月10日から2021年3月31日にかけて米国の成人8003人を調べたところ、新型コロナウイルスワクチンの1回目の接種を境に、気分の落ち込みが改善していたといいます。9月の3連休は、各地で人出が増加し、高速道路の渋滞も発生しました。ワクチン接種を済ませたことや感染者減少による安堵感や、気分の落ち込みの改善が影響しているのかもしれません。  ワクチン接種が進み、新規感染者数が大幅に減少している今こそ、ワクチン接種を済ませた人から規制を解除していくタイミングだと思います。コロナのワクチン接種を終えているにもかかわらず、PCR検査で陰性が出ているにもかかわらず、入国時に2週間の隔離を要求するという規制のままでは、「日本に来るな」と言い続けるのと変わりないのではないでしょうか。

    dot.

    9/22

  • 17

    サカナ界の三つ子「ブリ」「カンパチ」「ヒラマサ」の見分け方にコツあり。さて、 海獣界の三つ子は「アシカ」「アザラシ」と、もうひとつは?

     筆者の息子の幼なじみに一卵性の三つ子ちゃんがいます。今ではもうアラサーなので、三つ子ちゃんという呼び方が適切かどうかはわかりませんが。一卵性の三つ子というのは非常に珍しいとのことで、子供の頃にはテレビCMにも出ていました。顔を見たら覚えている方もいらっしゃるかもしれませんね。  顔はもちろん背格好からしぐさまでそっくりで、筆者も比較的よく会っていましたが、まったく見分けがつきませんでした。それどころか、彼らの父親と話した時も「いやぁ~、正直私にもよく見分けがつかないんですよ」と苦笑いされていました。  彼らはそれをいいことに、いたずらをして父親から「こら!○○!」と怒られた際に、「違うで~、俺は△△やで~」とうそを言ってごまかすこともあったとのことです。さすがに母親には通用しないとのことでしたが…。  そこまでそっくりな三つ子ちゃんですが、幼いころからしょっちゅう一緒に遊んでいる息子には見分けがつくとのことです。どうやって見分けるのか聞くと、「具体的に説明するのは難しいけど、ぱっとみた雰囲気かな」とのことでした。 「○○は、ちょっとおっとりした感じで、△△はやんちゃな感じ、□□はしっかりした感じかな」と、極めてあいまいな基準ながら、ほぼ間違うことはないとのことでした。  余談が長くなってしまいましたが、魚界にも、三つ子ちゃんのように実際は違う魚なのに、見た目がそっくりで簡単には見分けがつかない魚たちが結構います。  その中でも有名なのが、「ブリ」と「ヒラマサ」と「カンパチ」ではないでしょうか。  この3種の魚は、いずれも大型のアジの仲間で、寿司ネタとしても、釣りのターゲットとしても人気があります。天然の「ブリ」の旬が秋から冬であるのに対し、「カンパチ」と「ヒラマサ」の旬は夏から秋になっています。  一般的な見分け方としては、「カンパチ」は他の2種に比べて体高が高くなっている他、目の上に黒い縞模様があります。そして「ブリ」と「ヒラマサ」については、口の角の形やヒレの長さや体側の黄色い線の鮮明さなどで見分けられるとのことです。  ちなみに筆者は、パッと見た瞬間に、体が赤っぽかったら「カンパチ」、丸みを帯びていたら「ブリ」、しゅっとしていたら「ヒラマサ」と感覚的に判断していますが、間違えることはほとんどありません。息子が三つ子ちゃんを見分ける時の感覚と似ていますね。  肝心の味ですが、いずれも適度な歯ごたえと脂乗りが特徴で、くら寿司でも人気のネタです。最も脂乗りが最もいいのが「ブリ」で、「ヒラマサ」は、すっきりとした脂乗りとより歯ごたえを楽しめるネタです。「カンパチ」は、その中間で、脂乗りと歯ごたえの両方を堪能できるといった感じでしょうか。  最近では3種類とも養殖が行われていますが、天然物の値段でいえば、ヒラマサ>カンパチ>ブリの順になっています。  この3種は、近縁種ということから、ブリを母親に、ヒラマサを父親にもつ「ブリヒラ」や、同じくカンパチを母親にして、ヒラマサを父親にした「カンヒラ」などの交配種も養殖されています。交配することによって、それぞれの味の「いいとこどり」をしたり、養殖効率がよかったりするなどのメリットがあるそうです。  また余談になりますが、3年ほど前に羽田空港に向かうモノレールの中で、向かいに座った女子高校生たちが、 「今日、水族館で何を見るんだっけ?」 「アシカじゃなかった?」 「そっか~」 「そういえば、アザラシって、アシカの子供なのかな?」 「確かによく似てるよね。そうだと思うよ~」 「へぇ~そんなんだ。勉強になったわ」  といった会話をしていました。  彼女たちはその後、ちゃんとした正解を聞くことができたのでしょうか…。  確かに、「アザラシ」と「アシカ」もよく似ていますよね。さらにもうひとつ「オットセイ」も含めて、海獣界の三つ子ちゃんと呼べるレベルですよね。これらの見分け方については、その道に詳しい方にお願いできればと思います。  くら寿司でも、時期によって種類は変わりますが、ハマチやブリ、カンパチ、ヒラマサのお寿司を販売しています。食べただけでこの3つの魚種を当てることができたら、寿司マスターレベルだと思います。ぜひチャレンジしてみてください。 ○岡本浩之おかもと・ひろゆき/1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長。

    AERA

    17時間前

  • 18

    ミッツ・マングローブ「『保守で朗らかな荒くれ者』高市早苗始動!」

     ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、自民党総裁選出馬を決めた高市早苗さんについて。 *  *  *  実に弁舌さわやか。しかも努めて朗らかに振る舞う姿に、ただならぬ戦慄を見た高市早苗さんの自民党総裁選出馬会見。次期総理の適性云々はさておき、無性に人の心を躍らせる何かを持っている女性(ひと)です。良くも悪くも。「早苗の本格始動」を長く心待ちにしていた私としては、いきなり濃厚なショータイムを観たような気分です。  後に「55年体制の崩壊」と呼ばれるようになった1993年の衆議院選挙。自民党が38年ぶりに下野し、連立内閣(細川内閣)が誕生した歴史的大政変の中で高市早苗(当初は無所属)という国会議員は産声を上げました。ちなみに今回の総裁選を争う野田聖子さんや岸田文雄さん、また田中真紀子さんや安倍前総理も皆「同期」。さらにはあの小池百合子さんも、衆議院に鞍替え初当選したというまさに超豊作回。その後の女性議員の活躍という側面においても、間違いなく大転換点となった選挙と言えるでしょう。  当時私は18歳。いよいよ選挙や政治が「自分事」になってくる年頃でした。そこへ知性と血筋と化粧の匂いをプンプンさせながら田中真紀子や小池百合子が登場したわけです。ただ「華やか」では済まされない、女たちの「睥睨(マウンティング)」にとてつもない興奮を覚えました。  今日の女性政治家たちの繚乱ぶりを、最初から具(つぶさ)に観て来られたのは、オカマ的には「恵まれた世代」なのかもしれません。土井たか子・山東昭子・森山真弓・扇千景といった先人たちが築いてきた「女性議員」とは似て非なる、「女性政治家」という新しい女の生き様。バーキンもどきのバッグに、その情熱と性(さが)を詰め込んで、爺さん多めの男社会をカツカツと細い踵で音を立てながら掻き分けていく。爺さんたちに取り入り、手懐け、論破し、やがて時代が進むとともに、それは女同士の戦いになっていきました。皮肉なもので「女性の躍進」というのは、得てして「女性の潰し合い」です。褒め合い、睨み合い、足を引っ張り合う。女に生まれず、そしてオカマに生まれて本当に良かったと思うばかりです。  さて、初当選から一貫して高市早苗氏は、根っからの「叩き上げ」「荒くれ者」感に満ちていました。自分の政策にケチをつけたがる同期の野田聖子がウロウロしようと、「女帝」の名を最初に勝ち取った小池百合子が緑色の服を着て流行語大賞を獲ろうと、聖子ちゃんカットの片山さつきがガーガーとしゃしゃり出てこようと、三原じゅん子が24時間メンチ切ってこようと、女全開の稲田朋美が「靖国参拝」でポジション捕りを仕掛けてこようと、早苗は決して焦らず、動揺せず、巧みに使い分ける関西弁のノリを武器に、「超保守的で分別とユーモアのある荒くれ者」として綽々(しゃくしゃく)と君臨してきたのです。40オーバーのオカマは、皆ちゃんと貴女を見ていましたよ。  彼女の最大の強みは、あの「顔力」でしょう。ミサイルのひとつやふたつであれば飲み込んでしまいそうな重厚感。彼女の顔の奥には、常に「信念」という名の表情筋が存在しています。それは相当な自制心によって培われた筋肉です。女の戦いというのは己との戦い。  早苗×聖子×百合子。93年組の戦争はまだまだこれからです。 ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する※週刊朝日  2021年9月24日号

    週刊朝日

    17時間前

  • 19

    小林麻耶が離婚へ 夫から解放されても修復が難しい「海老蔵一家」と「TBS」

     今年3月から別居状態にあった小林麻耶(41)と夫の國光吟氏(37)が離婚に向けて協議を始めたという。7月1日発売の「女性セブン」によると、当初は麻耶自身も別居が一時的なものになるか、離婚への準備期間となるかはわかっていなかったが、周囲のサポートもあり自分の意思で結論を出す段階に入ったようだ。 2人が結婚を発表したのは2018年7月。出会って2カ月、“交際ゼロ日”での電撃婚は周囲を驚かせたのはもちろんだが、國光さんの行うスピリチュアル色の強いセラピーやカウンセリングなどに傾倒する麻耶を心配する声も少なくなかった。「それ以降の2人の行動といえば、まるで麻耶さんのマネジャーのようにどこへ行くのにも國光さんが同行し、次第に仕事場でも國光さんが口を出すようになったといいます。そして昨年11月に『グッとラック!』(TBS系)の電撃降板と所属事務所との契約解除があり、麻耶さんの彼への依存ぶりが心配され始めました」(女性誌記者) 一時期は麻耶が「洗脳状態」にあるのでは?などと心配もされたが、次第に2人の関係は冷めていったようだ。結局、3月には別居となったが、國光氏と距離をとった麻耶を誰よりもサポートして見守り続けたのは、麻耶の母親だったという。「お母さんの元に戻ってからは、麻耶さんも徐々にこれまでのことを冷静に振り返ることができるようになったそうですが、最も彼女の心を揺り動かしたのは麗禾ちゃん(9)と勸玄くん(8)の存在です。國光さんと結婚してからは、海老蔵さん一家とも以前のように頻繁に関わることがなくなり、あれほどかわいがっていた子どもたちともここ1年ぐらいは会っていないといいます。お母さんは、麻央さんの闘病中には麗禾ちゃんと勸玄くんの面倒を見て家事一切を取り仕切っていました。お母さんから伝え聞く2人の様子やYouTubeで見る成長ぶりに会えない辛さが募ったのでしょう。そんな麻耶さんの異変に気づいて、お母さんはメンタル面も含めてフォローし続けているそうです」(同前) だが、仮に離婚が成立したとしても、今後の麻耶の状況が元通りになるかといえば、「すぐには難しいかもしれない」と芸能ジャーナリストは話す。「まずは麗禾ちゃんと勸玄くんとの関係です。麻央さんの闘病中はお母さんと共に彼女もよく面倒を見ていて、子どもたちも懐いていましたが、海老蔵さんが現在の状態のまま、麻耶さんと距離をとり続けるのであれば、以前のような家族ぐるみの関係に戻るには時間がかかるでしょう。海老蔵さんはこれからは『十三代目市川團十郎白猿』と『八代目市川新之助』の襲名披露公演も控えていますから、あまり“雑音”は入れたくないのではないでしょうか」 また、広告代理店関係者は麻耶の復帰をこう心配する。「いずれ麻耶さんも仕事復帰を考えているでしょうが、義理を欠くようなことをしてしまった古巣のTBSや前の所属事務所からのバックアップは期待できないでしょう。それ以上に、はたしてタレントとして需要があるのかも疑問です。國光氏とのお騒がせカップルのイメージがまだ根強く残っていますから、CMや司会などで起用するのは厳しいのでは」 麻耶はこの日、自身のブログを更新したが、離婚報道には言及しなかった。“目が覚めた”麻耶が目の前に待ち受ける新たな壁に気づき、それを乗り越えた時に、彼女は本当に自由になれるのかもしれない。(宮本エミ)

    dot.

    7/1

  • 20

    河野太郎“電撃出馬”は「3A」に見捨てられた菅首相の逆襲?小泉「隠密説」も

     菅首相の電撃的な総裁選不出馬表明、退陣のニュースが9月3日、駆け巡った。そして測ったように、河野太郎ワクチン担当相が総裁選に出馬する意向が大々的に報じられた。「絶妙のタイミングで河野氏は、マスコミに情報を流したね。狙いすましたようだ。こうも段取りよく出馬を言えるものかな。早い段階から菅首相から辞意を聞いていたんじゃないか」 自民党幹部はこう首を傾げる。菅首相と河野氏、そして小泉進次郎環境相は同じ神奈川が選挙の地盤とあって、緊密な関係だ。小泉氏は5日連続で菅首相と官邸で面会している。3日の会見で小泉氏は「首相から引くと聞いたのは今朝」「首相の花道を作りたい」と涙ぐんで話した。しかし、自身の総裁選出馬には言及しなかった。 河野氏とすでに総裁選出馬を表明している岸田派の岸田文雄会長以外で候補者として名前が出ているのは、石破茂元幹事長、高市早苗前総務相、茂木敏充外相、野田聖子幹事長代行らだ。「小泉氏は『菅首相ほど1年間で仕事をした人はいない』とねぎらったが、幹事長就任の求めを断った。目玉人事の引き受け手がなく、菅首相は辞任に追い込まれた。小泉氏は菅首相の政策を一定、引き継ぐ人物が次の首相になるべきだという趣旨の発言をしている。それに適任なのは、河野氏だと聞こえましたね。これまで総裁選に消極的だった河野氏が一転して出馬に舵を切った。小泉氏からも支援を取り付けた上で河野氏が動いたという噂で持ち切りだ。普段は取り巻きから耳障りよい話しか聞かない菅首相が5日間も続けて、小泉氏と話し込んだ。小泉氏が”隠密”になれば、河野氏は菅首相の意向を把握できますからね」(前出・自民党幹部) 河野氏は3日午後、所属する派閥のボスである麻生太郎副総理兼財務相と手際よく、会談した。総裁選出馬の了解を取り付けようと動いている。「菅首相は関係が深い河野氏、小泉氏なら溝が深い岸田氏や石破氏より安心して政権を渡せる」(官邸関係者)  菅首相自身も地元後援者との不透明な疑惑、長男の接待問題など“ヤバイ“ネタがいくつもある。菅首相に公然と反旗を翻す岸田氏より、河野氏なら安心できるはず。 しかし、河野氏が政権を引き継ぐには、ボスである麻生氏と安倍晋三前首相の支持が不可欠だ。だが、河野氏が2人から承諾を得られるか、まだ不透明だ。麻生氏は以前から河野氏の総裁選出馬は「まだ先でいい」と派閥内で話していたという。「河野氏が総理総裁となって、小泉氏が要職に就くとなれば、世代交代が加速する。麻生氏や再々登板まで視野に入れている安倍氏が簡単に受け入れられる話ではない。二階幹事長と決別したものの、安倍、麻生、甘利明氏の『3A』から支持を得られず、出馬断念に追い込まれた菅首相が小泉―河野ラインを使って逆襲に出たのではないだろうか」(前出・官邸関係者) しかし、河野氏の出馬意向、小泉氏の支援という情報は派閥を超えて歓迎されている。清和会所属の若手国会議員はこう話す。「選挙が厳しい若手議員にとっては河野氏と小泉氏は最強コンビでしょう。コロナ対策で後手を踏み、批判されるばかりの菅政権と自民党。これで攻勢に出ることができる」 しかし、総裁選の投開票は9月29日。今の勢いで河野氏が最後まで突っ走ることができるのか、わからない。石破氏も世論調査では「次の総理」として、河野氏よりも高い数字を獲得することもある。「石破氏は二階派の支援を得て出馬しそう。菅首相は岸田氏だけは許さんという心境だ」(官邸関係者) 最初に出馬表明した岸田氏も連日、公約を積極的に発信。党内での支持も確実に増やしている。「安倍氏、麻生氏が派閥をまとめきれない可能性もある。勝負はまだまだわからない」(自民党幹部) 最高権力者だった菅首相は地元の神奈川2区で「小選挙区で勝てない」とまで言われ、政界引退を勧める支援者もいるという。一寸先は闇の永田町。9月末にその頂点に立つのは誰だろうか。(AERAdot.編集部 今西憲之)

    13

    dot.

    9/3

  • 1

    「高市氏の昔を知っているよ」 総裁選候補者3人で最も優れているのに胸がザワつく理由

     作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、自民党総裁選に立候補を表明している3人の議員について。 *  *  * 連日、自民党総裁選関連のニュースがメディアを占めている。この国に暮らす人々の生存をかけた衆議院選挙のほうがよほど重大なはずなのに、無駄に自民党の生存をかけた総裁選につきあわされているようでつらい。災害レベルのコロナ禍で重要なときに臨時国会を開かず、自党の人事に時間を費やす自民党の体質が、トップが代わったところで変わるとは思えない。とはいえ、あと一歩で総理の椅子に座る3人の候補者に女性が入っていること、その女性が候補者の中で最も右寄りであること、容姿を誹謗中傷する批判が“彼女にだけ”されていることなど、日本の女性政治家が置かれている現実を生中継で日々見せられているようで、それはそれで気になってしまうのだ。 候補者3人の出馬表明記者会見を見た。それぞれ力のこもった熱弁を見ながら、改めて菅さん (菅義偉首相) は、相当なレベルで話が下手だったのだと気づかされる。滑舌が悪いうえに自分の言葉で話さない、原稿すらうまく読めないので頭に入ってこない。東京五輪・パラリンピック開催に疑問を投げかける記者には、「安全安心」と繰り返すだけで誠実さのカケラもなかった。さらに記者に対して威圧的であり、社名を名乗らない記者に対していら立つなど、器の小ささを露呈してしまう場面を幾度となく見てきた。喋れば喋るほど、人の心が離れていく総理大臣だった。 菅さんに比べると3人の候補者の話は、フツーにまともだった。……と、「底」を強いられてきた者として認知の歪みが生じてしまっているのだろうかと自分でも不安になるが、今回、高市早苗氏の会見を初めて長時間聴いてみて驚いた。テンポ、滑舌、論理性、具体性において出馬表明記者会見としては3人の中で最も優れていたからだ。記者からの質問に逃げずに丁寧に答えていたのも好感を持てた。  例えばTBS「報道特集」のキャスター膳場貴子氏が、高市氏が過去にしていたサイテーの発言「(生活保護を)さもしい顔をしてもらえるものはもらおうとか、弱者のふりをして少しでもトクをしようと、そんな国民ばかりいたら日本が滅びる」を引き、「困窮する国民をどういう目で見ているのか確認をさせてください。弱者への視点が欠けている不安、批判の声があるが、どう受け止めているか聞かせてください」と迫った。高市さんに対する強い批判を含んだ良い質問だった。 もしこれが、安倍さん (安倍晋三前首相) だったらと想像する。女性アナウンサーからの質問にまずニヤニヤと冷笑し、しかし顔色は変わり、早口でまったく方向違いの旧民主党政権批判を延々繰り返し「それはですね、民主党政権時代の批判の流れでの発言だったのでございます。文脈をですね、私の発言の文脈をですね、いいですか、きちんと見ていただいたうえでですね、そのようなご質問をしていただきたきたいのでございます」とか言いそうだし、麻生さん (麻生太郎財務相) だったら「そうかね、覚えてねぇな」とか言いかねず、菅さんだったら「えー、私はこれまで通り全力で国民の安全安心を最大限に考えて、政治を行っていくことに変わりはありません」とか言うのでは。テレビカメラの前で“女性”記者に批判された、ということで頭がいっぱいになり、誠実に答えようともしない“男性”政治家の振る舞いに私たちはあまりにも慣れてしまっていた。 その日、高市氏は膳場氏の批判質問に顔色も声のトーンも変えることはなかった。にこやかなまま、その発言がいつ、どの場で行われたものかを記憶の中で語り、「これは皆様の大切な税金。福祉というものは公正、公平が原則であるべきだと私は考えています」とし、さらに子どもの貧困問題等について語り、そのうえで「これが私。素直なほうなので、さまざまなアドバイスには柔軟に対応する」とも言った。  このやりとりに、私は見入ってしまったのだった。威圧的だったり、不誠実だったり、中身のない政治家答弁にあまりにも慣れ過ぎていたからこその驚きであるのだが、ただ新鮮だった。もちろん、高市氏のような政治家の言動が生活保護受給者に対する社会の偏見を生み、貧困を再生産し、生活保護を受けられずに餓死するような人々を生み出す現実をつくってきた。そういうリアルが見えない高市さんが与党の政治家であることが私は恐いが、それでも「どのような考えに立っているのか」ということを説明することをこの人は逃れなかったという印象は残った。 一方、岸田氏は国民の声を聞いてきたという薄く小さなノートを振りかざして「私にとりまして大切な財産。このノートを読み返した上で、私は改めてやるべきことがあると感じています」と豪語する。外国特派員協会で記者会見を開くなど、去年の総裁選よりもパフォーマンス力があがっているように見えるが、選択的夫婦別姓についての意見を問われ、「引きつづき議論しなければならない課題」と言うなど、いったい誰の声を聞いてきたのか問いたい。今年の共同通信の調査によれば選択的夫婦別姓は国民世論で6割が賛成している(30代では7割)。だいたい選択的夫婦別姓は80年代からずっと提案され、深く積み重なった議論の歴史があるのだ。国会での議論を拒否し続けてきた自民党の単なる勉強不足が、選択的夫婦別姓を邪魔しているだけ。まだ、「自分ごと」として通称使用拡大の具体的実践に全力を尽くしてきた高市氏のほうが勉強しているし、わかっているように見える。 河野太郎氏の記者会見が一番、今までの自民党の威圧的政治家の流れをくんでいるように見えた。質問は1社一つというルールを一方的に強いては、「(河野さんは)脱原発派ですか?」という質問に対して「どういう定義で脱原発というか人によって違うので、何か一つの言葉でくくるのはやめておいたほうがいい」と打ち切り、それ以上の質問を許さなかった。記者が本当に聞きたいことは分かっているはずだし、そこから深まる議論もあるはずなのに、意味のない答えを短めに返すのが目立った。  河野氏は若手からの期待が大きいと、報道では言われている。「河野さんは発信力があります」と30代の議員が胸を張るようにテレビカメラに向かって話しているのを見た。発信力とは単純にテレビに出る回数とか、Twitterのフォロワー数とか、なんとなくの人気のことを言っているのではないかと思うが、それは政治家にとって必要な力なのだろうか。記者会見で衝撃だったのは、韓国メディアの記者が「特に韓国を含めた、近隣国に向けての外交政策のビジョンを聞かせてほしい」と質問した時の答えだ。外務大臣を務めたこともある河野氏の答えは、こういうものだった。「G7の中で日本はユニークな立ち位置。キリスト教をベースとした文明の上に成り立っていない国は日本だけ。だから外務大臣として自分はアジア、中近東、アフリカといった国々の思いを代弁できる日本でありたーい、と思ってきた。自由民主主義、基本的人権、法の支配、こうした価値観を共有して一緒に前に進みたーいと思っている。それぞれの国にはそれぞれの歴史がある。一足飛びにみんなが同じことをできるわけではありませんー。そういうなかで、ヨチヨチ歩きであっても同じ方向を進もうとしている国にしっかりと寄り添える、そういう日本でありたーいと思っている」 ……これは外交政策なのでしょうか。ヨチヨチ歩きだけど一緒に寄り添っていこうね、って。これは元外務大臣による総裁選立候補の時に語るような言葉なのだろうか。高市氏を推すわけでは決してないが(というか、私にその権利もないが)、高市氏だったら具体的に質問に正確に答えようとするのではないか、大人の言葉で。 最近、「高市早苗の昔を知っているよ」という人と立て続けに話をする機会があった。20代のころ、高市氏は400ccのバイクを乗り回していたという。30年以上前、400ccのバイクに乗る女性は少なかった。私も10代のころ、400ccのバイクに乗りたくて教習所に行ったのだが、「女は小型から」と中型免許すら取らせてもらえない空気があり、一日でやめた。「中型取りに来たんです」と言っても、「じゃあ、起こしてみな」と道路に転がる400ccをコツも教えてもらえず起こせと言われて憤慨した。あの時の悔しさは今もまだ心のどこかに残っている。80年代のことだ。そういう時代のなかで、中型・大型バイクに乗る女性たちは道で出会っては、自然に話しかけるようなことがあったという。当時のバイク仲間の女性は、若かった高市さんが目を輝かせながら「私は保守系の政治家になるんだ」と、夢を語っていたのを覚えている。   高市氏を見ていると、胸がざわつく。「政治家を知るためには、その人の選挙区と選挙歴を知らなければならない」とは、無戸籍問題に取り組み続け衆議院議員になった井戸まさえ氏の言葉だが、高市氏がもし、奈良という保守が強い土地ではなく、都市部の選挙区の人だったらどうだったろうか。選択的夫婦別姓、女性天皇・女系天皇容認などについて肯定派の多い都市部のような場所で保守派の政治家として立っていたら、どうだったろうか。安倍さんへの、悲しいほどのすり寄りは、二世議員である小渕優子議員や、祖父が政治家だった野田聖子議員だったらしなくてもよい媚びにも見える。高市氏自身の葛藤を勝手に想像しながら、そういう女性議員の姿を見てこちらも引き裂かれるような葛藤を味わう。女性がのびのびと政治ができる国になってほしい、そして正当に評価されるようになってほしい。今起きているのは、自民党の大物男性の庇護のもとでの自由と、それでも女性であるゆえに正当に評価されない日本社会の女性嫌悪だ。精神衛生上よくないので、早く終わらせて、衆議院選挙で自民党政治は終わってほしい。■北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

    dot.

    9/15

  • 2

    前代未聞!派閥から3人候補推し「キングメーカー」二階幹事長の評判 地元の「引退勧告」もどこ吹く風

     9月29日に投開票の自民党総裁選は折り返し点を迎え、終盤戦に突入した。河野太郎ワクチン担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行が火花を散らす。メディア各社では投票権がある自民党の党員に対しての世論調査も実施された。  集計された数字をみると、河野氏がダブルスコアで岸田氏を引き離し、次いで高市氏、野田氏という順番だ。この数字を見て、ご機嫌なのが二階俊博幹事長だという。 「河野氏が大差リードと聞かされて『これでいい』『河野でいける』と嬉しそうに二階氏は話しています。キングメーカーが続くと夢見ているんでしょうかね」(二階派の国会議員)  二階派は今回の総裁選で派閥で特定候補者は推さずに自主投票となった  推薦人を出したのは、河野氏に2人、高市氏へ3人、野田氏には8人だ。出馬会見で党役員人事の改革案を発表し「二階外し」に打って出た岸田氏にはゼロというわかりやすい対応だ。  自民党の幹事長になって5年以上、在任記録を更新し続ける二階氏。菅義偉首相が辞めると同時に、二階氏も幹事長の座から降りることになる。二階氏の存在は一気に小さくなっているというのだ。  野田氏に8人もの推薦人を出したのは、推薦人集めに汗をかいた二階派の幹部・鶴保庸介参院議員が野田氏の元夫という背景もある。しかし、あまりに突出している。 「野田氏に推薦人を多く出したことで、高市氏を推す安倍前首相に女性票が分散すると不評を買っています。二階氏は河野氏が優勢と喜んでいるのですが、派閥内ではあまり反応がありません。総裁選後、二階氏は幹事長という大きな権力を手放すわけで、派閥内では2人寄れば、今後は誰が派閥を仕切るのか、という話題ばかりですよ」(前出・二階派の国会議員)  二階氏には派閥内でも冷たい風が吹きつつある。それは二階氏の地元、衆院和歌山3区でも同様だ。10月に衆院議員の任期は満了となり、総選挙が行われる。      今回は大島理森衆院議長や二階派でもある伊吹文明元衆院議長、塩崎恭久元官房長官など大物が次々と高齢を理由に引退を表明している。だが、82歳の二階氏はどこ吹く風。次期衆院選への出馬意向は変わらないという。和歌山3区の地方議員は地元の「二階離れ」をこう語る。 「二階先生は昔から口癖のように『副総裁とか、そういうのはやらん』と言っていた。要するに名誉職はイヤ、幹事長のように権力がないとダメということです。次、誰が首相になっても二階先生が幹事長になることはない。引退にはいいタイミングと地元ではささやかれている」  和歌山3区は「一票の格差」問題で、いずれ選挙区が2つになり、定数減となる公算が大きい。そうなれば、選挙区が広くなり、より幅広い活動が必要になってくる。和歌山3区では圧倒的な強さを誇る二階氏も、油断できない情勢だ。  二階氏の地元、御坊市の市長選では16年に二階氏の長男が立候補。二階氏の威光もあって小泉進次郎環境相まで応援にやってきたが、大差で敗れた。この敗北が二階氏の後継問題に大きな影響を与えているという。 「今の感じでは二階先生の秘書の三男が後継でしょう。しかし、二階後援会を地元で仕切っているのは長男で、選挙に出たがっている。二階先生もなかなか、後継を決めることができない感じですよ」(前出・地方議員)  また、参院和歌山選挙区には衆院への転出が噂される世耕弘成・自民党参院幹事長がいる。 「世耕氏は参院のライバル、林芳正氏が衆院山口3区に転出することになり、いろいろと考えることもあるようです。無派閥の高市氏が総裁選に出馬し、所属する派閥・清和会を率いる安倍晋三前首相が熱心に推している状況もある。世耕氏がもともと強い地域は和歌山3区です。二階氏本人がいる間は我慢するでしょうが、世襲で息子が出るとなれば、考えるでしょう。二階氏も心配で仕方ないでしょう。また地元では『陳情は世耕氏に』という二階離れの流れになりつつありますね」(自民党幹部)  総裁選でリードしている河野氏がそのまま総裁、首相になった際、二階氏は菅義偉首相の時と同様に、キングメーカーとして振る舞えるのか?河野陣営の国会議員は冷淡な評価だ。 「二階派の支援はありがたいが、寝技師、権謀術数的な派閥で河野氏のカラーとは相いれない。推薦人を出してもらっているので、無下にできないが、菅首相の継承と言っても、二階派を厚遇とはいかないでしょう。キングメーカーもあり得ない。それに野田氏へ推薦人を8人も出してあまりに風見鶏じゃないですか。党員票が分散するので、河野氏の形勢が不利になった。うちが負けたら、勝つのは岸田氏じゃないのかな。二階派はいったい、何をやりたいのか…」  安倍前首相、菅首相と長く勝ち馬に乗り続け、キングメーカーとして権勢を振るってきた二階氏。だが、今回は永田町、地元で強烈な逆風にさらされているようだ。総裁選後、新たなキングメーカーとして誰が君臨するのか。(AERAdot.編集部 今西憲之)

    dot.

    18時間前

  • 3

    木村拓哉が外した“仮面”  SMAP時代「彼女いんのー?」にマジ回答

     圧倒的なオーラに、クールな孤高の人というキャラクター、そして美しいルックス。誰もが認めるトップスター、木村拓哉さんは「木村拓哉」を演じる努力を人知れず続けてきたのか? 映画「マスカレード・ナイト」で主演を務める木村さんに、素の自分を隠すマスカレード(仮面)は必要なのかと尋ねると──。 【前編/木村拓哉「この年になってもまだこんな思いをするんだ」と落ち込んだ】より続く *  *  * ──「マスカレード」は仮面の意味。世間が期待する木村拓哉像に応えるため、素の自分に仮面をかぶせることは?  みんなが木村拓哉をどんなふうに見てくれているのかはわからないけど、素の自分とそんなに離れていないと思います。心にシールドをつけて無理して仕事をしている感覚は全くないので。  でも、昔はそうじゃなかったかな。ペンライトを振って声援を送ってくれるファンの子たちに笑顔で手を振り返していた20代前半の頃は、知らず知らずのうちに仮面をつけていた気がします。自分からかぶるというよりは、現場に行くと必ず用意されているんですよ。「これが君の衣装で、キャラで、イメージだからね」って感じで。最初はそんなものかと思っていたけど、だんだん「これ変じゃね?」って思い始めて、外していった。  当時の自分はハードロックにド影響を受けていました。あんなに髪を伸ばしてる奴は他にいなかったでしょ。目見えてんの?ってくらい額のバンダナをずり下げたり。でもそうやって、かっけーな、素敵だなって思うものを自分のサイドに引きずり込んで表現していったら、仮面なんて必要なくなった。嘘っぽいのが嫌になったんです。  一つ、懐かしいエピソードがあって。SMAPのコンサートの途中、お客さんからの質問コーナーになったんですよ。「3階席の白いブラウスを着てる、そう、今うちわ振ってくれた君、でっかい声で質問言って」っていう感じで振ってみたら、「彼女いんのー?」って。 「いるに決まってんでしょ」って答えたら、会場中がキャーッて大変なことになり。終わってから、事務所の人に「何言ってんのあんた」って怒られました(笑)。 ──自分を自由に表現できるようになったきっかけは?  20代半ばでドラマ「ロングバケーション」(フジテレビ系)に出たことですね。それまで、自分にとって役を演じることはどこかポージングだった。でもヒロインの山口(智子)さんをはじめ共演者の方に恵まれて、生の現場を楽しむ感覚を知ったんです。  相手がこっちを見ているから、何が言いたいんだろうって見返す。目をそらしたら、なんでそらしたのか考えて反応する。変に計算して予定調和にプレイするのではなく、目の前の相手を全身で感じとるんです。  それと同時に、自分の中に生まれる、悲しいつらい楽しい好きといった感情をすべてひっくるめて思いっきり味わい、楽しむ。あの時あの現場であのメンバーに出会ってから、自分はやたら変わった気がします。  本当の表情や気持ち、自分というものを提示しなくても物事が進んでいくことに対して違和感をおぼえるようになった。それが、結果的に仮面を外すことにつながっていったんじゃないかな。  ファンの方との関わり方も変わりました。キャーッて手を振ってくれる人に、あえて「え?」「あ?」とかって意地悪したり(笑)。本当は、笑顔で手を振り返せばより喜んでもらえるんだろうけど、それってその場にいるみんなに向けたポーズだと思うんですよ。選挙前の政治家みたいな。でも、自分は一瞬だけでも相手とタイマンになりたいから、そういうリアクションになるんです。 ──休みの日は仕事モードをオフに?  完全にだらっとリラックスしちゃうと逆にストレスになるんです。少し緩めたい時は、ゆったり腰を下ろして真剣に映画を見るくらいの感じでバランスをとってます。  基本的には休みの日のほうが動いてますね。1万歩以上は歩くかな。動いている状態が一番快適なんです。じっとしていたら自分が澱んで濁っていく感じがして、歩くことで循環させている。頭がクリアになるので考え事にもいいですね。  ただ、一人で黙々と散歩するのは嫌なのでパートナーと一緒に。うちの犬ですよ。外に出ると喜んでくれるんだから、最高の相棒です。 (構成/本誌・大谷百合絵)※週刊朝日  2021年9月24日号より抜粋

    週刊朝日

    9/21

  • 4

    眞子さまの結婚どう思う? 瀬戸内寂聴が27歳スタッフに質問した結果

     半世紀ほど前に出会った99歳と85歳。人生の妙味を知る老親友の瀬戸内寂聴さんと横尾忠則さんが、往復書簡でとっておきのナイショ話を披露しあう。*  *  *■横尾忠則「スジ金入りの肉体的朦朧体、大観より本格派です」 セトウチさん 耳が聴こえなくなったと言うと、「きっと作品が変るわよ」と、ベートーベンじゃあるまいし、変なことおっしゃると、その時はそう思いましたが、本当に変ったんです。その変り方が理に適(かな)っているといえば適っている。つまり聴こえないことは、音の輪郭が失くなることです。そうなると音が朦朧(もうろう)となって、横山大観の朦朧体の絵のように音がボケて聴こえるんです。耳がボケると、日常生活もボケて、曖昧模糊(あいまいもこ)となって、したことと、してないことの区別もわからなくなるんです。つまり虚実の区別ができなくなって、夢で見た仕事の依頼を、本当に依頼されたと思って、やっちゃったりするんです。ボケの症状に似てるけれど、ボケ老人になったんではなく耳のせいだと理解しているので、そこはまだ理性がコントロールしています。 ハイ、絵の話だったです。大観は思想で朦朧体を描きましたが、僕はスジ金入りの肉体的朦朧体なので、思想のようなチョロコイ考えではなく、肉体的ハンデキャップによる堂々たる自然体派です。大観よりこっちの方が本格派です。そんなわけでセトウチさんの大予言は的中しました。 先っきも言いましたが境界線が失くなるということは自由のキャパシティも拡張したことになります。近代人は何でもかんでも境界線を引いて、全てを分業化します。縄文時代はひとりの人間が、多面的に物事をこなしていました。狩猟(しゅりょう)も農業も、漁業も工芸も、子育ても、教育もひとりでするという、境界線をはずした労働生活です。現代のような役割分担などしません。正に多義的です。越境した狩猟社会です。 難聴が与えてくれた神の恩寵です。だから病気の高徳です。僕が度重なる病気によって救われてきたということはこういうことです。神は人間に色々な苦難を与えますが、病気は罪ほろぼしでもカルマ落としでもなんでもないのです。人間の進化向上のためのカリキュラムだと思えばどうでしょう。難聴のほかに、腱鞘炎(けんしょうえん)にもなりました。もう、セトウチさんの「幻花」のような繊細(せんさい)な描写の絵など描けません。今は太い筆やハケを握りしめて、キャンバスにバンバン叩きつけるように描いています。それも痛いので、左手で描きます。左手は思うような形が取れません。幼児の絵より下手くそになります。でも、デュビュッフェは幼児の絵のマネをして、幼児風に描きますが、そんな意図的なことをしなくても、僕の左手はそのまま幼児以上に下手に描けます。これもハンデキャップから来た自然体です。 今書いている手紙では、前にも同じことを書きましたかね。境界を越えると時間差もなくなって、やったことと、やらないことの区別がわからなくなるのです。いよいよ本格派老人です。100歳老人のセトウチさんにも負けていません。ただ僕はセトウチさんのように年齢には拘っていません。拘っているのは他人の方で、今行っている展覧会では「85歳、85歳」と年齢を売り物にされています。歳のことは言うな! アーティストには年齢はないのです。昨日の続きが今日、今日の続きが明日です。原始社会では年齢など無関係です。アーティストは原始人です。■瀬戸内寂聴「私もヨコオさんに負けないように!」 ヨコオさん 何だか、ずいぶん久しぶりにこの往復手紙を書いているような気がします。 それにしても相変わらずコロナは豪勢を極め日本はおろか、世界的にその力を奮っています。 コロナのせいで、人に会えず、寂庵はずっと門を閉めっぱなしです。コロナになる前はもちろん、一も二もなく門内に入ってもらっていました。 大抵遠く九州や東北から来られた人で、まだ生きている私に逢えたと言って、抱きついて泣き出します。もちろん、私は丁寧にお迎えして、写経などしてもらい、お茶菓子を一緒に食べて、しばらくその人のお話を聞きます。つきあいの人もあれば、寂庵の信者を自称する人もあり、初めて門内に入ったという人もいます。「まさか、門内に入れてもらえると思わなかった」と泣き出す人もあれば、「生きている寂聴さんに逢えた!」と、子供のように足を踏み鳴らす人もいる。「とても百歳には見えない!」と誰もが感嘆してくれるが、終日ベッドに横になり、本ばかり読んで、一日を過ごしている私の毎日の状態など話せない。私は、人に逢っている間だけは、必死になって元気らしさを演じ、声を張り上げる。客の帰る時は、長い廊下の途中で、へばってしまい、さっさと歩く客の跡がおえない。 ──だって百だもの……──と、私は廊下の途中で、ペシャンコに座り込み、つくづく、自分に向かって言う。 食事だけは時間が来ると、しゃきっと体がのび、食卓の自分の位置に早々と座り込んでいる。「あら、お昼はもう召し上がりましたよ!」 スタッフの一人が、わざと大きな声を張り上げる。「私のスパゲティは、どうしてこんなに美味しいのだろうなんて、お世辞までいただいて」「そうよ、ほんとに! でも今ここに座ったのは、食べるためでなくて、眞子さんの結婚をどう思うかって、寂庵で一番若い二十七歳のP子の意見を聞きたいのよ」「ああ、眞子さん、ほんとに、よかったですね。大体、みんなあんまりこの結婚に意地悪すぎましたよ。でも、どうして一時金を眞子さんは辞退なさるのかしら? 貰う権利のあるお金でしょう? あんまり弱気にならない方がいいと思うけど……」 ヨコオさん、今、寂庵の中は、こんなにのんびりしています。耳が聞こえないのは、私も同然です。テレビの時なんか、びっくりするほど大きな声にしてくれるので、何とか会話が出来ています。鶯も、秋の夜の虫の音も、私の耳にはさっぱり聞こえません。ヨコオさんとTELしてるのを横で聞いてる人があれば、どんなにおかしいでしょうね。耳だけでなく体のあちこちがどしどし衰えてきます。 そのうち、きっと、自分の死んだこともわからなくなって、──ヨコオさんにTELして!──など叫んでる日が来るのでしょうね。でも目がよく見えているので、一日に二冊は厚い本を読み切っています。ヨコオさんの展覧会、ますます人気上昇でおめでとうございます。私もヨコオさんに負けないよう、あっとこれまでと変わった小説を二つくらい書き残して死にたいものですね。 では、また。※週刊朝日  2021年9月17日号

    62

    週刊朝日

    9/11

  • 5

    改革者か暴君か…河野太郎の素顔  側近議員は「脱原発封印」批判に反論「主張変わっていない」

     4人の候補者による舌戦が続く自民党総裁選。中でも台風の目と見られているのが河野太郎行革担当相だ。はたして河野氏とは一体何者なのか。 >>【前編:河野太郎氏「小石河連合」結集で党内勢力図に大異変 決選投票で勝つのは…】よりづづく  河野氏が生まれ育ったのは神奈川県平塚市。父は自民党総裁も務めた河野洋平・元衆院議長だ。祖父は河野派を率い、農林相や建設相を歴任した河野一郎氏で、3代続く政界のサラブレッドだ。  小学校は地元の花水小学校に6年間通った後、慶応義塾中等部、高等部と進んで慶大経済学部に入ったが、留学のためにわずか2カ月で退学。渡米後に、ジョージタウン大学に入学した。この頃に知り合ったのが、元自民党参院議員の山本一太群馬県知事だ。  「一番最初に会った時に『総理大臣になりたい』と言われて、『何だコイツは』と思ったのを今でも覚えています。当時から大胆で、決めたらすぐに行動に移す。良い意味で、情熱で突っ走る人でした」   85年に大学を卒業し、富士ゼロックスに入社。その後、96年の衆院選に33歳で初当選した。当時は父の洋平氏が現職。選挙前は河野家から2人の候補者が出ることに、洋平氏が猛反対したという。地元の後援者は言う。  「洋平さんとは選挙区は違っても、世襲議員ということで最初は批判があったのも確かです。それでも、本人は1期目から『総理大臣になる』と言い続け、努力を重ねてきた。そのことは地元の人もよく理解していて、次第に世襲で批判されることはなくなりました」   河野氏の代名詞となった原発政策批判は、2011年に東日本大震災が発生する前から取り組んでいたライフワークだ。   だが、これが党内で嫌われる原因になる。原発推進派を厳しく批判していた河野氏は、身内の自民党の政治家も容赦なく攻撃したからだ。   11年5月には、朝日新聞のインタビューで甘利明衆院議員(現・党税調会長)を批判。「次の選挙でそういう議員を落とすしかない」とまで言い放った。   この発言への反発は激しかった。今回の総裁選でも、甘利氏は河野氏について「(菅首相への批判の原因が)ワクチンの迷走と言われ、ワクチン担当相の評価が上がるってどういう構図になっているのかよくわからない」と、皮肉交じりに語っていた。その背景には、原発をめぐる対立があったのだ。   官僚への当たりも強い。最近も「週刊文春」が、河野氏がオンライン会議で資源エネルギー庁の幹部職員に対し「日本語わかる奴出せよ」などと高圧的に迫った一件を「パワハラの疑い」と報じた。ある経産官僚が語る。  「河野さんは強引で人の話を聞かずにああいう物言いをするから嫌われている。官僚の言うことを何でも聞く必要はないが、聞く耳を持たないと、安倍前首相や菅首相のように周りを自分のブレーンで固め、もっと官邸主導が強まるのではないか」   苛烈な性格ゆえに官僚から恐れられる一方、“激しさ”が突破力となり、改革につながることもある。飯塚盛康全経済産業労働組合中央執行委員は言う。  「国家公務員の残業は予算で限度額が決まっているので、100時間残業しても30時間分しか出ないなんてことは当たり前でした。それが、河野さんが『公務員の働き方を変えよう』と旗を振ってくれたおかげで無駄な残業が減り、人事院も残業未払いの人の名前を調査して、省庁に指導してくれるようになりました」   派閥を嫌う河野氏だが、仲間がいないわけではない。秋本真利衆院議員は、市議時代に河野氏からエネルギー政策の知識の深さを評価され、国会議員になるよう助言された。秋本氏は言う。  「12年に初めて衆院選に出た時は、選挙区に10回以上応援に来てくれました。面倒見が良く懐が深い。といっても選挙資金を配るとかではなく、後輩議員を友人として助ける人。当選回数のような国会議員の序列も気にしない人です」   今回の総裁選では、河野氏が「脱原発を封印した」という批判が出ている。これに対して、秋本氏はこう反論する。  「河野さんと私は10年以上エネルギー問題について議論していますが、『即時脱原発』という話は一度も聞いていない。一方で、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルの見直しは明言しています。新増設を認めなければ原発はいずれなくなっていく。これは、河野さんのこれまでの主張と何も変わっていません」   前出の山本知事は、群馬県内の自民党議員や経済界の有力者に河野支持を訴えている。その理由について、こう話す。  「河野太郎は『変わった人』と思われていたけど、それが変わった。今という時代が河野太郎を求めているのだと思う」  (本誌・西岡千史、亀井洋志)※週刊朝日  2021年10月1日号に加筆

    週刊朝日

    9/21

  • 6

    総裁選後の注目株は? 11月に3万6千円超、“脱菅”で携帯キャリア買い戻しか

     新たな総理大臣の誕生に世界中の投資家が注目している。特に外国人投資家は河野太郎行革担当相に期待しているが、自民党総裁選で株価はどうなるのか。緊急座談会を実施した。参加してくれたのは、国内中堅証券会社で長年にわたって調査を担当するA氏、外資系証券会社で、海外機関投資家の注文をさばくセールストレーダー・B氏、国内証券会社で自社の資産を運用するディーラー・C氏、国内運用会社でアナリストとして活躍するD氏の4人。 【前編/河野太郎首相誕生で爆買い? 「投資家」が注目する総裁選】より続く *  *  * ──総裁選の結果次第で、日経平均はいくらに? D:おそらく、誰が首相になっても当面、日経平均は上昇トレンドが続くでしょう。菅首相の退陣表明をきっかけに、自民党の支持率が急上昇していますからね。総選挙で与党が過半数を維持できる可能性が高まっているという点で、買い安心感が広がりやすい。 B:私は河野首相なら、3万4千円は超えてきてもおかしくないと見ています。今年2月の高値3万500円から8月の安値2万7千円の倍返しで。 C:大手証券会社からは年度内3万6千円予想のリポートも出てますね。 B:11月以降とされる行動制限の緩和次第では十分あり得ると思う。最近、外国人投資家には「11月以降の日本はどうなるんだ?」という質問ばかりされる。ワクチン接種率がアメリカを抜いたことから、行動制限を緩和したら日本は一気に経済が回復するんじゃないか?と期待している外国人が非常に多い。 C:この半年の調整期間中に国内上場企業は過去最高益を更新していますからね。日本株が出遅れていたことと、世界的な金融緩和が当面続くことを考えれば、私は5年で日経平均5万円もありえると見ています(笑)。 A:注目は総裁選投開票日の9月29日ですね。前日の28日が9月中間配当の権利付き最終日。通常、日経平均などの指数に連動するように運用するファンドは、配当を受け取ることを見越して権利付き最終日と前後して先物を買います。配当分を先に先物で買い付けることで、運用のロスを減らすんです。その買い付け規模は、日経平均先物で1300億円、TOPIX先物で6500億円程度。総裁選の結果が出るタイミングで先物主導の大幅上昇も期待できる。 ──どんな銘柄が買われると予想する? D:候補者全員が再生可能エネルギーを推進しているので、太陽光発電事業を展開するウエストホールディングス(HD)、再エネ発電所の設計・施工を行うテスHDやレノバなどはまだ上がりそう。 C:日本再生可能エネルギーインフラ投資法人などのインフラファンドは、かなり出遅れているから今後、本格的に物色されてもおかしくない。岸田文雄前政調会長か高市早苗前総務相が当選するようならば、脱原発期待で売られていた東京電力、関西電力などは買い戻されるでしょうね。 A:高市さんなら、気候変動や災害への対策投資が活発化するので、建設系銘柄やコマツなどの建機は買われるでしょう。ベビーシッターや家事支援サービスの税額控除に言及しているため、育児サービス最大手のJPHD、ベビーシッター派遣のポピンズHDなどもいい。女性活躍を強調している野田聖子幹事長代行の場合も、これらの銘柄は買われるでしょう。 携帯キャリアは“脱菅”で買い B:人材系も強いでしょうね。岸田さんは高齢人材の活用に言及していて、河野さんは移民受け入れ派。外国人の活用などを考えるとパソナグループ、パーソルHD、IT人材に注力しているラクスなどはまだまだ上がるでしょう。あと、忘れてならないのはソフトバンクグループ。菅政権下での携帯料金引き下げが大手キャリアの収益力を低下させたので、“脱菅”でキャリアの買い戻しが進むと考えられます。なかでも、最も値動きが軽く、外国人投資家に人気なのが、ソフトバンクG。 A:あとは、リベンジ消費銘柄ですね。これは誰が首相になっても変わらないでしょうが、近畿日本ツーリスト(KNT-CTHD)、航空大手JALとANAHD、飲食チェーンなどは消費回復期待から一気に値を戻す可能性もある。野田首相なら大学卒業後に働いていた帝国ホテルに買いが入るかも(笑)。 ──株高が続いて、証券会社も儲かる? A:商いが急増しているので、当然、証券会社の手数料収入も急増しています。9月は冬のボーナスの査定時期なので、足元の相場好調を受けてボーナスは増えるでしょう。 C:来年4月の東証市場再編(1部・2部・マザーズ・ジャスダック市場をプライム・スタンダード・グロースの3市場に再編)を前に、頭を悩ませている上場経営者が多い点も証券会社にとっては追い風。経営者の持ち分が多すぎるなどの理由で、プライム市場に“残留”できない可能性のある1部上場企業が600社もあると言われているんです。そのため、市場外でオーナー社長の持ち分を売却するなどの資本政策が求められ、証券会社の仕事が増えている。その資本政策をきっかけにオーナー社長と直接的なつながりができて、節税対策商品などの売り上げも伸びているようです。 D:とりあえず、NY市場が好調なので、日本株が大崩れする心配がない、というのは好材料ですよね。私の親しい証券マンたちも、ナスレバ(米NASDAQ指数の2倍の値動きがある金融商品)を買ってかなりの利益をあげていますよ。 (ジャーナリスト・田茂井治)※週刊朝日  2021年10月1日号より抜粋

    週刊朝日

    22時間前

  • 7

    巨人、阪神は“別の”超高校級右腕 「ドラ1」で指名すべきは誰だ【セ・リーグ編】

     プロ野球のドラフト会議まであと約1カ月(10月11日開催)となり、高校生と大学生のプロ志望届提出者も発表される時期となった。各球団の最優先すべき補強ポイントはどこなのか。またそれに見合う選手は誰になるのか。真っ先に指名すべき1位指名候補を探ってみたいと思う。今回はセ・リーグの6球団だ。*  *  *・広島:小園健太(市和歌山・投手) 2016年からのリーグ3連覇後にチームは低迷。今季も9月9日終了時点で3位ヤクルトに10.5ゲーム差の4位と3年連続のBクラスが濃厚となっている。投手は若手の先発候補、野手は鈴木誠也のメジャー移籍を考えて右の強打者タイプが補強ポイントとなるが、2009年の今村猛(清峰)を最後に一人も高校生投手を1位指名していないことを考えると、そろそろスケールの大きいエース候補を獲得したい。そこで推したいのが小園だ。広島は投手であれば粗削りでもボールの強い選手を好む傾向が強いが、粗削りなまま伸び悩むケースも目立つ。やはりある程度のバランスは必要なだけに、高校生でも完成度が高く制球力の高い小園を獲得して将来のエース候補に育てたいところだ。・DeNA:達孝太(天理・投手) 野手陣は助っ人外国人への依存度は気になるものの、打線は強力で若手にも有望株が揃っていることからやはり最優先は投手となる。親会社がDeNAとなった2012年からはとにかく上位で大学生、社会人の投手を獲得し、一定の効果は出ているものの停滞している選手も目立つ。今年は高校生投手に好素材が多いだけに、1位指名では高校生を狙いたいところだ。競合を避ける傾向も強いが、それも球団の個性として尊重するのであれば、単独指名で狙えそうな投手としては達が筆頭候補となる。スケールの大きさは高校球界でも屈指で、190cmを超える大型右腕だが器用さも持ち合わせているのも魅力だ。チームに少ない大型の本格派だけに、ぜひ指名を検討したい投手である。・中日:正木智也(慶応大・外野手) 昨年は8年ぶりのAクラス入りを果たしたが、今年はBクラスへと逆戻り。低迷の原因は野手、特に長打力不足というのは火を見るよりも明らかだろう。一昨年は石川昂弥の獲得に成功したが、まだまだ若手の強打者タイプが少ないだけに、とにかく長打力のある野手を優先して獲得したい。今年の筆頭候補となるとやはり正木になるだろう。確実性は少し課題が残るものの、とらえた時の飛距離は間違いなく大学ナンバーワン。高い弾道で飛ばすことができ、広い本拠地でもホームランを量産できる可能性がある。高校生ではオリックスで候補に挙げた阪口樂(岐阜第一)も当然候補だろう。ともに守備、走塁は不安が残るが、それを度外視しても長打のある選手に振り切るべきではないだろうか。・ヤクルト:森木大智(高知・投手) 2年連続の最下位から優勝争いに浮上したが、同じ流れのオリックスと比べると投手、野手ともに若手の有望株は少ない印象は否めない。外野の世代交代も必要だが、やはり最優先は投手となる。手薄な左の先発タイプとしては佐藤隼輔(筑波大)、隅田知一郎(西日本工大)ももちろん候補だが、過去2年間は大学生の投手を多く指名しているだけに、年齢構成を考えても奥川恭伸と並ぶスケールの大きい高校生を優先したい。そこで候補としたのが森木だ。甲子園出場こそないものの、150キロを超えるストレートと変化球はいずれも高校生離れしたものがあり、投手としての総合力は高い。中学時代から注目されてきたというのも奥川との共通点であり、この2人が並び立てば強力な二枚看板を形成できるだろう。・巨人:風間球打(明桜・投手) 投手、野手とも選手層は厚く、若手の有望株もそれなりに揃っているが、やはり欲しいのは太い柱となる選手だ。過去5年間のドラフトでは9回連続で抽選に外れるなど運が味方していないということもあるが、それでもやはり大物選手に向かうべきである。特に気になるのがエースの菅野智之の後釜だけに、ここは高校生投手でトップ評価と見られる3人の中でも最も本格派らしい本格派である風間を狙いたい。ボールの力は言うまでもないが、多くの球数を投げても球威が落ちず、これまで大きな故障がないというのも魅力だ。近年上位で指名した投手は素材の良さはあるものの故障に苦しんでいることも多いだけに、風間の体の強さも評価ポイントとなりそうだ。・阪神:森木大智(高知・投手) 昨年は佐藤輝明、伊藤将司など即戦力路線の指名が奏功したが、そう振り切ることができたのも一昨年の高校生中心の指名があったからである。投手、野手ともに中堅層は充実しているだけに、今年は再び将来性を重視した指名を目指したい。野手は佐藤、井上広大と若手の大砲が2人揃うだけに、優先したいのは投手だ。高校生であれば風間、小園、森木の3人の誰かを狙うというのが規定路線だが、あえて甲子園経験のない森木を推したのは阪神という特殊な球団が理由だ。地元での注目度の高さは12球団トップであり、その中で結果を残すには自分を見失わない精神面の強さが必要となるが、中学時代から注目され続けてきた経験は森木の大きな武器である。高校時代に練習試合で対戦した西純矢とともに、チームを背負って立つ先発投手として期待したい。(文・西尾典文)●プロフィール西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員

    1

    dot.

    9/10

  • 8

    高市早苗に「プリテンダー」の声 女性の悔しさ知るはずなのに「この道しかない」のか

     高市早苗という政治家の原点は、自分に真っすぐな「シスターフッドの人」ではなかったか。「わきまえて」見える彼女のいまをつくったものは何か。AERA 2021年9月27日号から。 *  *  *  高市早苗前総務相が自民党総裁選への立候補を正式に表明した9月8日夜、テレビ各局の報道番組をはしごした。 「日本経済強靱化計画、いわゆるサナエノミクスの3本の矢は」  そう力強く語る高市さんの声を、何度も聞いた。「金融緩和、緊急時の機動的な財政出動、大胆な危機管理投資、成長投資」と続くのだが、それよりも気にかかったことが二つあった。  その1 自分で名付けておいて、「いわゆる」って言う?  その2 「アベノミクス」の継承・発展なら「タカイチノミクス」じゃない?  1からは権力者特有の図々しさを、2からはそのくせ「女子アピール」をする残念さを感じた。そしてこう思う。あーあ、結局、高市さんかー。  高市さんは2006年、第1次安倍内閣で内閣府特命担当大臣として初入閣した。以来、彼女の言動はずっと安倍さんへの「ですよねー」だったと思う。選択的夫婦別姓→反対、皇統→男系男子、靖国神社→参拝。「信念だ」と言うだろうが、指さし確認で従っている感じ。で、その甲斐あっての立候補。菅首相が引っ込んだ途端、彼女への支持を表明する安倍さんに、どんよりする。 ■シスターフッドの人  高市さんは1961年3月生まれで、私は1月生まれだ。同学年だけに自分の会社員人生が重なる。わきまえることが大切と教えてくれたのは森喜朗元首相だった。はい、よくわかりました。それが高市さん。  自分の話をもう少し続けると、30歳で結婚した。「そのうち別姓が選べるさ」と軽い気持ちで婚姻届を出さずにいたら、還暦を迎えてしまった。もし高市総裁なら、事実婚のまま古希か。もっと深刻なのは、日本中の若い女性が「わきまえないとダメだ」と思うことだ。いかーん。  そんなある日、作家で経営者の北原みのりさんと元衆院議員でジャーナリストの井戸まさえさんがクラブハウスで高市さんについて語り合っているのを発見、即、聞いてみた。高市批判が飛び交うことを期待したのだが、違った。2人は、彼女がまだ政治評論家だった92年に出した『30歳のバースディ』という本の話で盛り上がっていた。  厳しい母から逃れたくて早稲田にも慶応にも受かったのに、弟が私立中学に受かったからと断念させられ、奈良から神戸大学に往復6時間かけて通学した。ロックバンドでドラムを叩き、オートバイを操った。松下政経塾から突如、米国大統領選初の女性候補と目された民主党のパトリシア・シュローダー下院議員のインターンになった。合間合間に必ず挟まる、赤裸々な恋愛話……。そんな内容を語る調子に、彼女への共感がにじむ。2人が何度も引用していたのが、最後の一節だった。 「頑張っている同性の皆さん、一度っきりの人生だもの、自分に気持ちいいように生きようネ! GOOD LUCK、GIRL FRIENDS!」。高市さんはシスターフッドの人で、今の彼女はプリテンダーではないか。2人の一致した意見だった。 ■女性は「お察しします」  なるほどプリテンド(装う)か。シスターフッドは隠し、「安倍好み」のふりをし、総裁選へ。作戦としてはわかる。が、それでいいのかと割り切れない。2人に話を聞くことにした。  北原さんは高市さんを悪く語る人(とりわけリベラル系の男性)に、「女性嫌悪」を感じたという。極端な右寄りで問題ありの人だが、それにしてもひどい、と。そこで本を読み、原点を知り、驚いたという。 「安倍さんにすり寄って、実力以上に評価されている人というイメージだけど、これだけ2世、3世の多い政治の世界で、サラリーマン家庭出身の女性があそこまでの地位をつかんだ。そのためには野田聖子さんや小渕優子さんがしなくてもいいことを、たくさんしたと思う」  確かに、今回の総裁選へ立候補を表明している岸田文雄さんも河野太郎さんも、立候補を断念した石破茂さんも、みんな政治家の家に生まれている。 「高市さんは税金や軍事など、女が苦手とされるところに政治家としての自我を求めた。女だからと舐められないための戦略でもあり、舐められないために『女の味方ではない』と肩ひじを張った。それで保守の王道を歩みたいという思いはわかるけど、それにしてもあっちに寄りすぎちゃったよね、と思う」。そう言って、こう続けた。 「でも、そうなったのには訳がある。お察しします、と思います。女性だったらみんな、お察ししますなんじゃないかな」  井戸さんは元衆院議員。次期衆院選に立憲民主党から立候補する。政策は相容れないが、「高市さんは人として、信用できる」と言う。井戸さんは松下政経塾出身で、高市さんの後輩。卒塾式での体験があるからだ。 ■彼女だから候補に  研修担当者が塾生の思い出を語るのだが、そこで井戸さんはいきなり「香水がきつかった」と言われた。激しく傷つき何も言えずにいたら、「そんなこと、ここで言うことじゃない」と抗議してくれたのが高市さんだった。  それから10年以上経ち、井戸さんは自分の経験から「民法772条による無戸籍児家族の会」代表として活動していた。06年、高市さんが入閣、少子化担当でもあったので、民法改正を訴える手紙を送った。他にも法務相、総務相(菅義偉さんだった)らにも送ったが、返事があったのは高市さんだけだった。雛型にあてはめたものでなく、きちんと内容に則していて、手書きの署名が添えられていた。誠実に働き、きちんと事務所を運営している政治家だと思った。 「彼女を今の高市早苗にしたのは有権者であり自民党。彼女はそのルールブックに則ってきただけとも言えます。『女性の総理大臣候補が高市早苗なの?』っていろいろな人が言うけれど、彼女だから候補になれたというのが現実なんですよね」  その現実をはっきり見せられるのがつらい。そう井戸さんに言うと、こう返ってきた。 「多くの女性が結局、上に行くには彼女の道しかないことに気づいている。それで責任を感じるとまでは言わないけれど、自民党を、この社会を変えられなかったことがどこかやましく、だからつらいんじゃないでしょうか」 『30歳のバースディ』を読んだ。そこにいる高市さんは、自分に正直でまっすぐな人だった。その印象は、衆院選に初当選した2年後に出した『高市早苗のぶっとび永田町日記』でも変わらず、2章が抜群に面白かった。 ■悔しさ知っているのに  92年、地元奈良県から参院選に無所属で立候補、落選した顛末(てんまつ)が書かれている。当初、自民党公認で出るはずが、党県連会長に阻まれる。その経緯を一言でまとめるなら、「会議の場で言われたことを額面通りに受け取ったが、実は裏で違うことが進んでいた」というもの。怒り、悔しがる高市さん。だが、その翌年衆院選に無所属で立候補、トップ当選する。たくましい。  この時、高市さんが落ちたのは、「ボーイズクラブ」の陥穽(かんせい)だった。女性は立ち入り禁止の所で物事が決まり、今もあちこちで女性を待ち受けている。その悔しさを知っているのに、何で? と、思った端から思う。だからなのか、高市さん。  総裁選は、どうなるだろう。(コラムニスト・矢部万紀子)※AERA 2021年9月27日号

    4

    AERA

    18時間前

  • 9

    【独自】小室圭さん、米大手事務所から断られていた 弁護士が語る“厳しい現実”

    「小室圭さんの実力では無理だと思います」 こう話すのは、全米で「トップ100」と呼ばれる大手弁護士事務所(ビッグロー)のパートナー弁護士のA氏。専門は、海外企業同士のM&Aなど。米国を拠点に世界を飛び回り、収入も桁違い。この姿こそ、小室さんが思い描く将来でもあるようだ。 昨年の秋ごろ、A氏の事務所に、働かせてほしい、と小室さんの「経歴書」のようなレジュメが別の弁護士を通じて届いたという。小室さんは、ニューヨークなど大都市での弁護士の仕事を探しており、ビッグローか、その下の規模のミッドローでM&Aなどをやりたいという。 A氏がそのレジュメを見て思ったのが、冒頭の言葉だ。なかでも、A氏が首をかしげたのがニューヨークのフォーダム大ロースクール(法科大学院)への留学の部分だ。「疑問なのは、彼がLLM(法学修士)のコースに入ったことです。しかも1年学んだ後に、JD(法務博士)コースに編入している。大きな事務所を目指してて、こんな動き方をするなんて聞いたことがない」 LLMとJDというのは、ロースクールでのコース名だ。米国の大学には法学部がなく、弁護士を目指す人は、大学卒業後にJDに入る。ここで3年間学び、事務所に入るのが一般的なパターンだという。 一方、LLMは、法律の資格を持つ外国人留学生が多いといい、「表現として正しいかわかりませんが、キャリアに“箔(はく)をつける”ようなイメージです」。 A氏によると、米国で弁護士となるのに重要なのはJDでの1年目だ。「米国での就職活動は、2年生の終わりの夏休みで終わります。事務所のサマープログラム(インターン)で働き、その後よほどのことがない限り、その事務所からオファーを受けて就職します。どの事務所のプログラムに入れるかは、1年時の成績で決まります。だから学生の競争も壮絶です。本を隠すなどの足の引っ張り合いもあります。小室さんはその1年をLLMに入っています」 ビッグローのインターンの募集は、ハーバードやエール、コロンビアといった有名大学で公募し、最初の書類選考で成績優秀者に絞り、次の面接で決まる。A氏が言う。「採用された学生には、1年目から19万数千ドル(2千万円以上)の給与が支払われます。それも5年くらいは半人前で、彼らから利益は出ません。それでも欲しい人材ということなんです。だから相当厳選します。原則でいえば、ビッグローはインターン以外の方法では採用しないです」 チャンスをつかめる学生は、ほんの一握りだ。小室さんは、そもそもLLMに入った時点で、希望するビッグローへの道は閉ざされたといっていい。なぜLLMに入ったのだろうか? A氏が話す。「こう言っては何ですが、彼の経歴に目を見張るモノはありません。あるとすれば眞子さまのフィアンセという一点。それでも奨学金を取得できたり、JDへ編入したり、弁護士が出てきて仕事を探したり。知恵をつけている人がいるんでしょう」 では、ビッグローは無理でも、M&Aは他でもできるのだろうか?「米国には約43万の事務所がありますが、M&Aの70%超は『トップ100』が扱っています。小室さんが弁護士として働くにはM&Aにこだわらないことですね。移民法の弁護士などは圧倒的に多い。日本人も多いです。もうからないので人気はないのですが」 そして、こう続けた。「詳しいことは申し上げられませんが、彼の『経歴書』を見る限り、とても“権威”が好きなんだと思います。M&Aも彼からすれば格好良く見えるんでしょうけど、実際は相当厳しい世界です。パートナー弁護士になるのは10年後くらい。それまで生き残っているのはわずかです。彼がそもそも弁護士という職業に向いているのか……。野心家だと思うので、ベンチャーのような起業家とかが向いているような気がします」(本誌・矢崎慶一)※週刊朝日  2021年9月17日号に加筆

    週刊朝日

    9/8

  • 10

    高市早苗氏の意外な過去にフェミニストも震えた 総理の座を狙う過程で何があったのか

     作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、自民党総裁選に正式に出馬表明した高市早苗氏について。*    *  * 近しい人がデルタ株のコロナ陽性になったり、友人の同僚や、通っている美容院のお客さんが亡くなったりなど、夏以降、急速にコロナの危機が迫っているのを実感している。健康観察をされずに自宅で死亡した50代の方の話などを聞くと、東京五輪・パラリンピックに時間とお金と人材を費やすべきではなかったのではないかとつくづく悔しい思いになる。適切な処置を医療機関で受けられていたら、亡くならないですんだかもしれない命は少なくない。 Go Toキャンペーンやオリパラを強行することに専念してきた自民党政権が、トップの顔を代えただけで変われるとは思えず、期待には程遠い自民党総裁選。岸田文雄さんは、ボロボロの小さいノートを振りかざしては「国民の声を書き留めてきた、1年間で3冊、10年間で30冊」と様々なメディアでアピールしているが、正直、少ないと思う。薄いノートを1年でたった3冊埋めたくらいで、国民の声を聞いたとか言えるって、どんだけ聞いてこなかったかという話なのでは。河野太郎さんは、先日週刊誌でそのパワハラ言動が取りざたされていたが、ワクチン接種という、申し訳ないが素人目線でそこまで難しいとも思えない仕事でつまずいている人に期待するのはムリという話だし、高市早苗さんにいたっては、選択的夫婦別姓に強硬に反対するアンチフェミ女のイメージしかない。女性の人権に無関心な女性総理候補にいったい何の価値があるというのでしょう。 とはいえ、高市早苗議員、いったいどんな人なのか。32歳で衆議院議員に若くして初当選(※)。しかも同期の田中真紀子議員や野田聖子議員のように、親や祖父が国会議員だったというわけではなく、自民党員だったわけでもなく、サラリーマンの父と警察官の母という一般家庭から出てきた無所属の女性議員が、今、最も総理の椅子に近い女性となっている。なぜ高市さんは、政治家の道を選んだのだろう。どのように政治の道を歩いてきたのだろう。政治家としては多い著作のなかから国際政治評論家としてテレビで活躍していた頃に書かれた『30歳のバースディ―その朝、おんなの何かが変わる』(大和出版)、政治家2年目に記された『高市早苗のぶっとび永田町日記』(サンドケー出版局)を読んだ。 高市氏が大学を卒業したのは1984年。1986年に男女雇用機会均等法が施行されるが、この2年の差はやはりとても大きいものがある。女性が生涯にわたる仕事を手にすることも、そもそも親が大学に行かせてくれるかどうかも「女の子」であるというだけで諦めることがまだまだ当たり前にあった世代だ。特に地方であればなおのこと。保守的な奈良に育った高市氏も、当然のように「諦めさせられて」きた。例えば大学もそうだ。高市氏は第1希望だった早稲田と慶応のどちらも合格したにもかかわらず、「女の子のあなたを東京の私学で学ばせる余裕はない。弟の学費に回してほしい」と親に諦めさせられ、「女の子だから一人暮らしはさせられない」と通学に往復6時間かかる神戸大学に入学するのだ。 たとえ難関国立大学出身であっても、女性がその能力と希望に見合う就職先を見つけるのが難しい時代だった。「身の丈」よりもずっと小さく窮屈な型に押し込められる女性たちの悔しさは計り知れないが、高市氏の著書からはその類いの悔しさは強調されない。それは高市氏に並外れた行動力と決断力があり、自らの人生を切り開いてきた自負があるからだろう。たとえば、たまたま大学で目にした松下政経塾のポスターを目にして、直感に導かれるように松下政経塾に“就職”したり。たまたまテレビで見た女性議員で史上初の米国大統領候補指名争いに立候補準備を進めていたパトリシア・シュローダーに惹かれ、その2週間後にはワシントンに旅立ち、その情熱だけでシュローダー議員のオフィスで働き始めたり……若さゆえの大胆さと希望に満ちあふれた当時の高市氏のエピソード一つひとつに圧倒されてしまう。「女だから」と諦めさせられてきたのは大学まで、それ以降は絶対に諦めないという粘り強さで今の地位を築いていくのである。『30歳のバースディ』は文字通り30歳を迎えた高市氏がそれまでの人生を「ポップ」に振り返る本である。「BGMはいつもユーミンだった」「寂しいのはあなただけじゃない」「空港でまたまた恋人と涙の別れ」「男かペットがいなくちゃダメな私」「女と日の丸と視聴率の相関関係」「三〇女が孤独を感じるとき」といった目次からもわかるように、女友だちに話しかけるように書かれた軽く、優しいノリのものだ。アメリカから帰国し、若い政治評論家としてメディアに露出していたころで、日本の男性社会へのいら立ちも率直に記されている。「アメリカ議会では日本流のバカバカしい会議がないのが良かった。(略)ところが日本の企業では会議の場では何も決められない。本当は既に決まっているし、とっくに根回しが済んでいることを確認しあうだけの、儀式的な会議のなんと多いことか。でも、私たち女性は妙に正義感が強いので、このような巧妙な人間関係のテクニックとは相性が悪い」 90年代に若い女性が書いたテキストを追いかけながら、私は何度か噴き出したり、そうそうと共感したりと震えるような思いになる。ねぇ、高市さん、「女が入ると会議が長くなる」とほざく森喜朗さんに「あんたの会議はバカバカしい」とはやっぱり言えないものだったの? こういうまっとうないら立ちを文章にしてきた女性が、最も「わきまえる女」になっていく過程に、いったい何があったというの? さらにこういう率直さは、国会議員になった後に書かれた「高市早苗ぶっとび永田町日記」にも残っている。高市氏は歯に衣着せずに永田町のダメなところをきちんと切っている。「この一年間に永田町で一番多く耳にした言葉は次の二つ。『挨拶がない』『俺は聞いてないぞ』。委員会の審議日程が流れたり、大切な法案の採決がパーになったりする理由は大抵この二つだったりする」「笑い話のようなことばかりだが、事実、永田町政治は『理屈』ではなく、『メンツ』で動いている」 さらに、夜の会食や女性がいるクラブなどで行われる男たちの根回しで物事が決まっていく永田町で、女の自分が不利であることも記し、サッチャーのこんな言葉を引用し共感を表明するのだ。「私は最後まで党内基盤が弱かった。それは男性の世界の根回しに加えてもらえなかったからよ」 なにこの人……すごくまともな「一般人」の感覚で、すごくまともな「女の悔しさ」をストレートに出すフェミじゃないの? しかもそのまともさで、「総理大臣の資質」というものを論じ、当時の村山政権を真っ正面から批判している。明言しているわけではないが、高市氏自身が政治家として一番になること=総理になることを30代から目指しているのも伝わってくる内容なのだった。根回しから排除されてきたサッチャーが首相になれたように、パトリシア・シュローダーが80年代に大統領を目指したように、高市氏は政治家としてトップに行くことを最初から視野に入れていたのだ。 ……と、昔の高市氏の本を読んでいると、うっかり「がんばれ、早苗!」と言いたくなってしまう私がいるのだった。「総理になろうよ!!」と早苗の女友だちポジションに立って拍手したくもなってしまうのであった。まずい、まずい。正気に戻るために2011年に出版された『渡部昇一、「女子会」に挑む!』(WAC)も読んだ。櫻井よしこ氏、山谷えり子氏、高市早苗氏、小池百合子氏、丸川珠代氏・・・といった早々たる「わきまえ女」(帯には「なでしこ軍団」とある)たちと渡部昇一氏との対談本だ。 渡部氏との対談で、「総理になったら、まず何をしますか?」と聞かれた高市氏はこう答えている。「最初に、政府歴史見解の見直しをします。新たな歴史見解を発表して、村山談話を無効にします」 東日本大震災のあった年の9月に出版されている本だ。震災後から、こういう歴史修正主義を堂々とうたう本や、韓国ヘイト、「慰安婦」運動への過剰な攻撃は度を越していったという実感が私にある。保守政治家から極右政治家に舵を切るように発言をより過激化させていく高市氏の横顔が、対談にはしっかりと刻まれている。夫婦が別の姓を名乗ったら家族が崩壊すると適当なことを言い、戦時性暴力の責任を問わないどころかなかったことにすることが、高市さんの「目指した政治」だったのだろうか。この国の女性たちが権力に近づこうとするならば、率先して選択的夫婦別姓を批判し、「慰安婦」被害者をおとしめる発言をいとわず、女性の権利を口にするフェミを冷笑するというマニュアルでもあるのだろうか。 今いる自民党の女性議員の顔を、一人ひとり思い浮かべてみる。わきまえなければ権力に近づくこともできなかった女性たち。夜の会議や根回しから排除されながらも、その立場を維持するための努力は、二世・三世の男性議員たちとは全く違うものがあったはずだ。それでも、それほどの努力をしても、彼女たちが自らの後ろを振りかえったとき、彼女たちの後ろを歩きたいと思う女性はどのくらいいるだろうか。というかそもそも、その道は後続の女性のために開かれていたことはあったのだろうか。 かつて高市氏が憧れ渡米したパトリシア・シュローダーはテレビカメラの前で涙を流した。そのことによって20年以上「女の政治家は感情的だから、ダメだ」と言われ続け、「あなたの涙のせいで、女の地位が悪くなる」と責められ続けたという。女であるというだけでその「涙」が事件になるのは、昔のアメリカも今の日本も変わらない。そういう政治の世界でトップを目指す女性たちが、女性の味方であることを忘れるのは「仕方ない」ことなのだろうか。それとも、アンチフェミニズムの顔で女性をたたくような女性政治家しか出せない自民党政治そのものが終わっている、ということなのか。※訂正配信時の「32歳で衆議院議員に初当選、女性議員としては、当時憲政史上最年少だった」という一文を、「32歳で衆議院議員に若くして初当選」と訂正しました。高市氏の著書『高市早苗のぶっとび永田町日記』に「女性として憲政史上最年少当選」と記してありましたが、実際は1946年4月10に三木キヨ子氏が20代(当時)で当選していたため削除、修正します。■北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

    dot.

    9/9

  • 11

    コロナ新規感染者が減少している今、なぜ規制を解除しない? 女医の見解は

     日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「日本の隔離制限などの解除はいつになる?」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。*  *  *「2週間の隔離がとても辛い。時差ぼけが全く治らないよ……」そう連絡があったのは、ポーランドに一時帰国していた友人が日本に帰ってきた後に自宅で自主隔離している最中でした。 ポーランドでは、新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいたこともあるのでしょうか。マスクを着用する人を見かけることは滅多になかったようで、「もうコロナを忘れちゃったよ」とポーランドにいた彼女から電話がかかってきたこともありました。「家族が皆ワクチン接種を済ませていたから安心して旅行にも行くことができた。リフレッシュできた」と旅行先の写真と共に連絡が来たこともありました。 東京オリンピック・パラリンピックの影響か、なかなか飛行機のチケットが取れなかった彼女が帰国したのは、9月の初旬。ちょうどその頃、曇りや雨の日が続いた時が隔離期間と重なったこともあり、太陽の光を浴びることも外でのびのびすることもできなかった彼女は、ずっと昼夜逆転したままだったといいます。2週間の隔離生活を終え、先日彼女に会うことができましたが、「日本に帰ってきた途端に、マスクしている人をたくさん見て、またコロナを思い出したよ」と話す彼女の言葉を聞き、ワクチン接種が進む国と日本との空気感の違い政府の対応の違いを感じざるをえませんでした。 世界各国でワクチン接種が進む一方で、デルタ変異株が世界中で猛威を振るっています。そんな中でわかってきたのが、「ワクチンを接種すること」の意味です。 Kasen氏らの米国ウィスコンシン州での調査の結果、ワクチン接種を完了した人が新型コロナウイルスに感染したときのウイルス量と非接種者のウイルス量に違いはなく、デルタ変異株に感染したワクチン接種完了者から他の人へ感染が移行しうることがわかりました。また、Revat氏らによるインドの新型コロナウイルス感染患者205人を調べた結果から、ワクチン接種が完了していた人は、新型コロナウイルスに感染を免れなかったとしても重症は減ることが示唆されました。 実際に、ワクチン接種を2回終えた人が人口の77.2%を占めるシンガポールでは、9月に入り感染者が増加しています。「ワクチンが感染を防ぐ割合は、4割程度にとどまるようだ」と、オン・イエクン保健相はコメントしています。ワクチン接種を2回終えた人が人口の63.6%を占めるイスラエルでも、同様のことが生じています。イスラエル保健省が7月下旬に公開したデータによると、イスラエルにおけるファイザー製のコロナワクチンの感染予防効果は1月から4月上旬の95%に対し、6月下旬から7月上旬には39%まで下がっていたといいます。 さらに、Yinon氏らの報告により、ファイザー製のコロナワクチンの2回目の接種から5カ月以上過ぎた60歳以上の高齢者への3回目接種によって、3回目の接種をしていない群に比べて感染率が11分の1ほどに低下したことがわかりました。 これらの知見は、コロナワクチンの2回接種では重症化は防ぐものの予防効果は低下する、3回目の追加接種を行えば、予防効果をあげることができそうだ、ということを示しています。すでに世界の多くの国で3回目の追加接種が検討されており、イスラエルでは3回目の接種が開始されています。 ワクチンを打てば、少なくとも死亡するリスクは大幅に減るため、接種率が進んできた今、世界では、感染対策と経済活動の両立をどう行なっていくかという議論に進んできています。コロナの治療薬の開発も進んでおり、年内には申請される見通しです。こうした状況を受けて、定期的なPCR検査を継続した上で、ワクチン接種を済ませた人から制限を解除して経済を回していこうと、世界は動き出しているのです。 実際に、ワクチン接種の進む欧米では、ワクチン接種が完了した人に対する行動制限の解除がすでに進んでいます。9月17日時点で人口の65.0%が2回の接種を完了しており、人口の71.2%が1回の接種を終えている英国では、来月にも渡航制限が大幅に緩和される見通しです。先日、英国政府は、「10月4日午前4時より、イングランドへの国際渡航の規則は、赤・黄・青の3段階に対象国を分類していたシステムから、赤リスト国のみの設定と、それ以外の国からの入国については簡素化した渡航手順へと変更する」ことを発表しました。日本から英国に入国する14日前に対象国の保健当局が定めたワクチン接種を終えている日本人は、出発前のウイルス検査や入国後の10日間の自主隔離が不要となり、入国後の検査2回のみに大幅に緩和されることになります。また、50歳以上の人らを対象に3回目の追加接種を行うこともすでに発表されています。 9月18日時点で人口の53.7%が2回の接種を完了しており、人口の62.9%が1回の接種を終えているものの、接種率が伸び悩んでいるアメリカでは、ワクチン接種を義務化する動きが進んでいます。バイデン大統領は、9月9日の演説で、100人以上の従業員を雇用する企業の雇用主がワクチン接種または週1回の検査を確認するよう要請しました。また、外国人の米国への入国条件として、新型コロナウイルスワクチンの接種を義務付ける方向で調整に入っていると報じられています。さらに9月下旬からは、2回目の接種を終えてから8カ月が経過した人を対象に、3回目の追加接種も始まる予定です。 9月14日には、ワクチン接種証明の提示やマスク着用などのルール下のもと、1年半ぶりにニューヨークのブロードウェイミュージカルが再開しました。ワクチン接種者に対する規制の緩和が進むにつれて、街には活気が戻りつつあるようです。 一方の日本はというと、規制緩和は進んでいるようには思えません。緊急事態宣言が続いており、議論すら進んでいません。接種開始が大幅に遅れたワクチン接種はというと、幸いにも順調に接種率は伸び、9月16日時点で人口の53.3%が2回の接種を完了しており、人口の65.6%が1回の接種を終えました。英国の接種率には及びませんが、アメリカの接種率をすでに超えたことは注目に値すると思います。さらに、新規感染者数は、2021年8月26日の24317人をピークに減少を続けており、9月19日時点で3408人と前回のピーク(2021年5月15日の6331人)を下回っています。 ワクチン接種が順調に進み、また新規感染者数が減少している今、規制緩和せずして、いつ行うつもりなのでしょうか。外来診療の現場でも、風邪症状を訴えて受診する人は8月中旬から比べると激減しており、PCRの検査数も、陽性が出る割合も減っています。 通勤電車は、満員とまでは行かずとも乗っている人の数が増え、座れないことが多くなってきました。「時差出勤のお願い、会話を控えて、緊急事態発令中……」なんていう車内アナウンスが流れる一方で、乗客も増え、マスクを着用しながら会話する声で少々賑やか、なんていうことも増えてきた印象を受けます。 南カリフォルニア大学のFrancisco氏らの報告によると、2020年3月10日から2021年3月31日にかけて米国の成人8003人を調べたところ、新型コロナウイルスワクチンの1回目の接種を境に、気分の落ち込みが改善していたといいます。9月の3連休は、各地で人出が増加し、高速道路の渋滞も発生しました。ワクチン接種を済ませたことや感染者減少による安堵感や、気分の落ち込みの改善が影響しているのかもしれません。  ワクチン接種が進み、新規感染者数が大幅に減少している今こそ、ワクチン接種を済ませた人から規制を解除していくタイミングだと思います。コロナのワクチン接種を終えているにもかかわらず、PCR検査で陰性が出ているにもかかわらず、入国時に2週間の隔離を要求するという規制のままでは、「日本に来るな」と言い続けるのと変わりないのではないでしょうか。

    dot.

    22時間前

  • 12

    総裁選出馬の高市早苗氏のネット人気が急上昇 「軍師」には安倍前首相、櫻井よしこ氏も

     自民党総裁選が9月17日、告示され、河野太郎ワクチン担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行の4人が立候補した。女性の候補者が2人というのは、総裁選史上、はじめてのことだ。  当初、下馬評では「大本命」だった河野氏だが、土壇場で野田氏が推薦人をそろえて出馬。総裁レースは混とんとしてきた。 「ネットだけなら、高市氏でしょうね」  こう話すのは、自民党の閣僚経験者だ。出馬表明の動画の再生回数に至っては、岸田氏が3万回、河野氏が22万回のところ、高市氏は211万回と圧倒的な数字だった。(9月15日現在)  総裁選の演説会がテレビなどで放送が始まった17日午後、ツイッターでは「#自民党総裁選」、「#高市早苗さんを支持します」がトレンド入りした。  河野氏のツイッター・フォロワーが242・2万人。安倍晋三前首相の227・9万人を上回り、政治家でもトップクラスだ。総裁選に向けて開設したアカウントでもすでに15・6万人のフォロワーがいる。  一方、ネットでは河野氏に肉薄する高市氏の総裁選用のアカウントは9・3万人のフォロワーだ。高市氏支援の国会議員は分析する。 「高市氏は総裁選の出馬会見なのに靖国神社参拝を断言し、中国との関係に言及するなど保守層に強く訴える戦略です。いわば、安倍政治継承を全面に打ちだした結果、高市人気につながっているのでないか。出陣式でも議員と代理の秘書で90人が集まった。これは議員票が90票という裏付けにもなる」  高市氏も総裁選の推薦人名簿には、古屋圭司衆院議員が選挙責任者、参院議員の山谷えり子氏などが名前を連ねるなど保守色が強いことがうかがえる。また推薦人は清和会から7人、竹下派2人、二階派5人、無派閥6人。安倍氏の清和会だけではなく、幅広く集っていることも、手応えにつながっている。  永田町でも高市氏が本命・河野氏、対抗・岸田氏の間に割って入るのではないのかという見方も広がっている。    その理由の一つがキングメーカー・安倍氏の「暗躍」だ。安倍氏は高市氏が出馬表明すると、そうそうに支援を打ち出すツイートをしている。 <コロナ禍の中、国民の命と生活を守り、経済を活性化する為の具体的な政策を示し、日本の主権は守り抜くとの確固たる決意と、国家観を力強く示した高市早苗候補を支持いたします。世界が注目しています。皆さま宜しくお願い申し上げます>。 「高市氏の評判がけっこういいので、安倍氏は『勝負できる』と言い、上機嫌だ」と清和会の国会議員は話す。しかし、懸念もあるという。 「わざわざ若手議員の携帯電話を鳴らして『高市氏を応援してほしい』と話していた。高市氏のことを思っての行動なのでしょう。しかし、若手議員からすれば、安倍氏から電話がきただけでびっくりする。ある議員は『直接、言われると、何も言えない』と苦悩の表情でした。つまり、プレッシャーととらえられてしまう。その存在がとてつもなく大きい安倍氏が、動くことで、反対に作用する危険性もある。今回、岸田派以外の派閥が基本的に自主投票となっているので、余計にそういう印象を与えてしまう。また高市陣営は出陣式で90人を超す人が集まったが、安倍氏の顔色を見て、駆け付けたという議員や秘書もけっこういると思います」(同前)  総裁選の出陣式では、高市氏は安倍政治とそっくりのフレーズ「日本を守る高市早苗、美しく強く成長する国、日本」と訴え、威勢よく攻める演説だった。総裁選に合わせた新刊本『美しく、強く、成長する国へ』(WAK社)も保守色が濃い。 「安倍氏もさることながら高市氏の思想的なバックボーンは、ジャーナリストの櫻井よしこ氏なんです。櫻井氏は安倍以上に急進的とも言われる伝統的保守論者です。その過激さから高市氏以上にインターネット上の保守層に支持を得ており、その界隈では大きな影響力を持っています。実際、高市氏と櫻井氏は数十年にわたる交流がある。著書でも櫻井氏の思想が色濃く反映されている。櫻井氏が高市政権誕生の暁には、政策ブレーンに就任するとの説も永田町では流れています」(官邸関係者)   今回の総裁選出馬に先立って作成されたポスターも、高市氏と櫻井氏の2連となっている。12月に高市の地元・奈良において二人で街頭トークを行う予定と記されている。 「櫻井氏が主張する夫婦別姓反対、女系天皇断固反対、強硬な対中政策なども含め、高市氏の公約は櫻井氏の思想にシンクロしている。河野氏が賛意を表明した同性婚に至ってはもってのほかという伝統的な家族観を重視する姿勢を共有していますね」(同前)  一方で、もう一人の女性候補、野田氏の訴えは対照的で女性目線を打ち出すような内容だった。 「日本は強い国だけではない。謙虚で誠実で国民からしっかり信頼を得られるよう、寛容で誰もがこの国に生まれてよかった、生きる価値があると思える国にしたい」  前出の高市氏陣営の国会議員がこう話す。 「高市氏が岸田氏や野田氏を支援するリベラル層から票をとるのは無理でしょう。総裁選でトップを走る河野氏から保守を強調して票をとることが得策だ。野田氏より先に出馬表明して準備もしているので、女性の支持も得られるはずです。高市氏の保守を打ち出す作戦でネットでも当たっている。安倍氏も力を入れて支援しているので、突っ走るしかない。一方で、野田氏の政策、語り口のほうが『女性目線でいい』と話す女性党員の声もありますね」  自民党の閣僚経験者はこう語る。 「立候補者が4人になったことで党員票は分散する。河野氏が党員票で圧倒的にリードして勝つというパターンはもはや厳しいと思う。1回目で過半数を誰もとれず、決選投票で河野氏か岸田氏となる可能性が大。党内の大勢は『決戦投票になったら、どっち?』という感じだな。高市氏が2位に食い込めるかは微妙です。総裁選はネットの人気だけでは決まらないからね」  29日の勝者は果たして誰になるのか? (AERAdot.編集部 今西憲之)

    13

    dot.

    9/17

  • 13

    河野太郎首相誕生で爆買い? 「投資家」が注目する総裁選

     自民党の新総裁の誕生で株価はどう動くのか。新しい経済政策への期待が外国人投資家を中心に高まっているという。国内中堅証券会社で長年にわたって調査を担当するA氏、外資系証券会社で、海外機関投資家の注文をさばくセールストレーダー・B氏、国内証券会社で自社の資産を運用するディーラー・C氏、国内運用会社でアナリストとして活躍するD氏に聞いた。 *  *  * ──自民党総裁選を前に日経平均株価は31年ぶりの高値を更新しました。 A:日本株は動きだすきっかけ待ちの状態でした。今年2月に3万500円近くまで上げてから、半年以上も調整相場が続きましたから。菅さんの退陣表明のニュースで、ようやく調整が一巡した。 B:日本が調整中も、NYダウは上げ続けていましたからね。 C:売買代金の7割を占める外国人投資家が日本株を全然買ってこなかった。昨年1年間で現物・先物合わせて6兆円以上も売り越して、今年は買いに転じるかと思われたのに8月まで1兆円の売り越し。それも、4~8月は4カ月連続の売り越し。これは昨年春ごろのコロナ感染第1波のパニック売り以来のこと。 D:アベノミクス相場が一巡した2015年をピークに外国人の買いは細りっぱなしでしたね。ここ5年の売り越し額は計20兆円にも達している。新総裁と総選挙を経て本格的に外国人が買いに転じるかもしれません。 B:私のお客さんの9割は外国人なので、8月まで本当に暇でした……。それが、菅首相の退陣表明で急激に注文が増えて、ここ数年で一番の忙しさになりました。 A:表明を受けて、日経平均は連騰して、一気に3万円を回復しましたからね。 D:菅首相のことが気の毒になるほど、マーケットは活気づきましたね。 A:ただ、個人投資家はほとんど儲かってない。それどころか、損している人が多い。 ──なぜですか? A:先ほど言ったように、2月に高値をつけてから半年も調整を続けたじゃないですか。日経平均3万円に接近したら、下げに転じるという相場が続いたため、ダブルインバース(日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信/日経平均が値下がりするとその値幅の2倍のリターンが発生する商品)を買ったり、日経平均連動型ETFの信用売りでコツコツ稼ぐ個人が増えたんです。それなのに、菅退陣表明以降の上昇相場で踏み上げられてしまって、軒並み含み損ポジションに変わってしまった。日経平均3万1千円を超えてくると、ダブルインバースを抱える個人の損切り(日経先物の買い)が続出して上昇に弾みがつきそうです。 D:今でも個人はダブルインバースを買い増していますね。菅退陣表明直後の上昇相場でダブルインバースの信用買い残は2倍に増加して、日経平均3万円回復のタイミングでさらに1.5倍に増えています。その買い残は毎週、過去最高を更新し続けている状況なので、このまま上げ続けると、さらに個人投資家の懐は痛みそう……。 B:買い残が増え続けているってことは、日経平均が下がればすぐにダブルインバースの手仕舞い売り(日経先物の買い)が出る状態。日経平均は3万円を下値に底堅い動きが続きそうですよ。 D:主力株に対して、個人に人気の中小型株が出遅れていることも、個人投資家が儲かっていない一因でしょうね。 税率引き上げで出遅れる日本株 C:個人投資家はIPO(新規上場)でも稼げていない印象です。6月にはIPOした約20銘柄のうち4銘柄の初値が公募価格を割り込んだし、8月にも1銘柄が公募割れした。 B:でも、今後のマーケットは結局のところ、総裁選次第でしょう。 C:兜町の証券マンは、高市早苗前総務相に期待する人が多い。「サナエノミクス」はともかく、アベノミクスを継承するとした主張は受けがいい。ほかの候補者と違って、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化目標を凍結して財政支出を拡大させると言ってるし。 D:ただ、高市さんは、金融所得に課す税率の引き上げに言及している点でセンスがなさすぎる。アベノミクスは株高でもって成長力を底上げしたんですから。投資収益に対する増税を行ったら、日本株はますます出遅れること必至です。 A:対中強硬路線なのが気がかりですね。安倍前首相の支持を取り付けながら、最大派閥の細田派をはじめ主要派閥が自主投票とする方針のため、高市総理の目は薄いと思いますが……。 B:高市さんでも野田聖子幹事長代行でも第100代内閣総理大臣が日本初の女性だったら大きな話題になるでしょう。けれど、外国人投資家は完全に河野太郎行革担当相推しです。まず語学が堪能な点が高評価。外国人投資家の間では、河野さんが英語でスピーチしているYouTubeの動画が出回っています。英語がペラペラというだけで、外国人投資家は「われわれと同じ発想をする首相だ」と感じるみたい。 D:河野さんのように、ネイティブレベルで英語を使いこなす首相は、今までいなかった気がする。安倍前首相も「Buy my Abenomics」ぐらいしか印象にない(苦笑)。 B:おまけに、河野さんはジョージタウン大学生時代にアメリカ民主党議員の事務所にインターンしたりと、民主党の政策に明るい。アメリカでは1979年のスリーマイル島原発事故もあって、原発アレルギーを抱えている人が多いので、脱原発派であるところも高評価。極め付きは、移民政策。日本ではあまり注目されませんが、欧米先進国における移民受け入れは人道支援の一環。先進国の務めとも言える。その移民受け入れに積極的な河野さんは、抜群に外国人投資家からの受けがいい。 政策の転換点は株上がりやすい A:河野さんが「安全が確認された原発を再稼働していく必要はある」と再稼働容認姿勢を示した翌日には東京電力の株価が11%も上昇しましたね。 B:河野首相誕生なら、外国人投資家は間違いなく、一気に日本株買いに動く。逆に、河野さん以外の候補が首相になるようなら、直近で買いに転じていた外国人の売りに押される可能性がある。 C:高市首相でも、ある程度は株高になりそうだけど……。 ──岸田文雄前政調会長はどうですか。 D:岸田政権になっても、買い妙味がないんですよ。「大胆な金融政策と機動的な財政策を維持」と言っているように、現状の政策から変わるイメージがない。 B:外国人投資家は完全に岸田さんをスルーしてますね。新自由主義からの転換を明言しており、規制改革に消極的。 C:政策の転換点になるほど株は上がりやすいんです。その典型例が、小泉政権と第2次安倍政権。01年の小泉政権発足時はアメリカ同時多発テロの影響もあって日経平均は下げましたが、05年の衆院選で自民党が大勝して郵政民営化法が成立した結果、日経平均は急騰しました。一方、12年の第2次安倍政権発足時は、民主党政権の社会主義的政策から資本主義政策に転換するパラダイムチェンジとなって、日経平均爆上げの契機となった。こうした“チェンジ”が株を押し上げる原動力となりやすいことを考えると、岸田さんには期待できない。 (ジャーナリスト・田茂井治) >>【後編/総裁選後の注目株は? 11月に3万6千円超、“脱菅”で携帯キャリア買い戻しか】へ続く※週刊朝日  2021年10月1日号より抜粋

    2

    週刊朝日

    22時間前

  • 14

    眞子さま「駆け落ち婚」の何がいけないのか 森暢平教授、国民「小姑」化を憂う

     婚約内定発表から約4年のときを経て、ようやく成就する眞子さまの結婚は、手放しの「祝福ムード」とはいかぬままゴールを迎えそうだ。2人の結婚をどうとらえればいいのだろうか。皇室の結婚に詳しい森暢平教授に寄稿してもらった。 *  *  *  眞子さまとの婚約が内定している小室圭さん(29)が近く、米国から帰国する。10月中にも自治体に婚姻届が提出されるはずである。  週刊誌やSNSにはいまだに「駆け落ち婚」への非難が多いが、バッシングを続けても2人が結ばれることには変わりがない。  それよりも、なぜ2人が結婚し、それに対し、あまりよくない思いを持つ人が多いのはなぜかを考える方が、生産的ではないか。 「『私』を抑えて国民のために尽くしてきたことで敬愛され、信頼を得てこられたのが皇室です。ところが眞子さまは『好きだから結婚する』というお考えを最後まで崩しませんでした。(略)『わがままを通した』ということ。『私』を優先したことにより、裏切られたと感じる国民も少なからずいます」  静岡福祉大の小田部雄次名誉教授のコメントである(『週刊新潮』9月16日号)。申し訳ないが、共感できない。この論理に沿うと、滅私奉公が皇室の務めだということになる。結婚においても好きな人を選んではならないということになる。天皇・皇族の自由意思は否定されるべきなのか。  皇室にはかつて「同等性の原則」「婚姻勅許(ちょっきょ)制」というルールがあった。同等性の原則は、明治の皇室典範が「皇族の婚嫁(こんか)は同族、又は勅旨(ちょくし)に由り特に認許せられたる華族(かぞく)に限る」(39条)と定めたものである。皇族は、同族(つまり皇族同士)か、認められた華族としか結婚できなかった。さらに、40条が「皇族の婚嫁は勅許に由る」と婚姻勅許制を明記した。皇族の結婚は、天皇の許可が必要だった。  明治日本は2つのルールを主にドイツから取り入れた。同等性の原則は、ドイツ皇帝が連邦諸侯の王女と結婚するように、身分が近い者と結婚しなければならないと限る通婚制限原則である。上位貴族以外との通婚は許されない。婚姻勅許制は、身分違いの結婚を望んでも国王から許可されないし、それでも結婚したいのならば、生まれた子に王位継承権は与えられないという決まりである。いずれも帝位・王位の正統性を保つために定められた。  ルールにもとる婚姻は、貴賤結婚・不正結婚である。英語ではレフト・ハンディッド婚(左手の結婚)と呼ばれた。こうした19世紀的通婚制限は、20世紀になると欧州でも古びた慣行になっていった。  日本においても、1928(昭和3)年、秩父宮が平民籍にあった松平節子(のち勢津子妃)と結婚するなど規制緩和が進んでいく。戦後の正田美智子(現・上皇后さま)の結婚が、非華族(平民)との通婚だとして国民的祝賀を受けたのは、ご存知の通りである。  婚姻勅許制は現在も形式的に残っている。2017年、眞子さまと小室さんの結婚について天皇の裁可(さいか)があったと報じられたことである。  この件は、戦後初めての女性皇族の結婚、和子内親王の事例に遡(さかのぼ)る。1950年、鷹司平通(たかつかさとしみち)との結婚が裁可されるとき、婚姻は両性の合意のみに基く、と定めた日本国憲法24条との整合性が問題となった。そこで、裁可は皇室内部の手続きとして簡略化し、外部に公表しないことを決めた。  だから、その後の女性皇族の結婚で裁可が公表された例はない。眞子さまのときだけ、なぜか公表されたのである。  近代の皇室の歴史は、国民とのフラットな関係への志向(皇室平民化路線)と、権威化路線とのせめぎ合いのなかにあった。戦後皇室は基本的には、平民化路線へと向かっていた。  だが、近年、怪しくなってきた。それは、災害や経済的苦境が続き、日本の国際的地位が低下したことと無関係ではない。人は、何かに確信が持てないとき、過去とのつながりを確認したくなる。正統性、伝統、国家というアイデンティティーにすがりたくなるのだ。従来の通婚範囲から大きく外れた場所から出現した小室さんを受け入れにくいのは、私たちが、不安の時代を生きているからである。  眞子さまの結婚の裁可が公表されてしまったのは、宮内庁が前例を忘れたという単純な理由によるものだろう。 ありのままであるために必要  だが、その深層には、天皇に権威性を求めてしまう社会の変化がある。不安定な政治に飽き飽きする私たちは、不変なものを皇室に求めてしまう。皇室は無私(わがままを言わない存在)だと信じたくなってしまうのだ。  そもそも、孫娘の結婚に、祖父の許可が必要な家庭など今の日本にはほぼ存在しない。皇室の存在意義は、日本の家族の鏡であることだ。そこからの逸脱こそ、皇室の存続にかかわる。  確かに、小室さんは同等性の原則からは大きく外れる。しかし、21世紀の私たちは、100年以上前の原則を皇族に押し付け続けるべきなのか。  息苦しい日本で、若者たちは、相手の地位や年収や容姿といったステレオタイプ化した異性の魅力を重視していない。一緒にいて居心地のいいこと、ありのままの自分でいられることが最も重要である。社会学はこれをコンフルエント・ラブ(融合する愛)と呼び、従来型の恋愛と区別している。  眞子さまが選んだ小室さんは、まさに、ありのままの眞子さまであるために必要な存在である。眞子さまの言葉を借りれば、小室さんは「かけがえのない存在」であり、2人の結婚は「自分たちの心を大切に守りながら生きていくために必要な選択」である。この言葉に、国民は戸惑っていると言う人がいる。社会の不安を眞子さまの結婚への期待に置き換えるべきではない。  国民と皇族は違うという人もある。同じである。逆に、同じであろうとしたことこそ皇室と国民を結ぶ回路であった。皇族にもプライバシーもあれば、個人的な欲望もある。恋もする。  国民が総小姑(こじゅうと)状態になり、眞子さまの結婚に注文を付けること自体、異様である。『週刊朝日』を含めたメディア報道もおかしかった。  結婚を両親が認めたことも明らかで「駆け落ち婚」と呼ぶのはもはや適切ではない。仮に「駆け落ち婚」だとしても、そのどこが問題なのか。  彼女の結婚を見守ることしか、私たちがなしうることはない。※週刊朝日  2021年10月1日号

    週刊朝日

    17時間前

  • 15

    羽生結弦が3度目の五輪シーズンへ…目指すは「誰も跳んだことがない大技」

     2014年ソチ五輪、2018年平昌五輪で連覇を果たし、3度目となる五輪シーズンを26歳で迎える羽生結弦。唯一無二の存在感を持つスーパースターとなった今の羽生が目指すのは、誰も跳んだことがない大技の成功と、自分らしさを追求する表現だ。 「早く4回転半の練習をして、誰よりも早く4回転半を公式(の試合)できれいに決める人間になりたいです」  銅メダリストとして臨んだ昨季の世界選手権(3月)の記者会見で「この大会の後に何をしたいか」と問われた羽生は、4回転アクセルへの強い思いを口にしている。「ここに来るまでに4回転半の練習をたくさんしてきて、体もかなり酷使してきた」とも話している羽生が世界選手権で4回転アクセルを跳ぶことを断念したのは、出発の約3日前だったという。  また一夜明け会見で北京五輪への思いを問われた際も、強調したのは4回転アクセルへの思いだった。 「最終目標はオリンピックで金メダルではなくて、あくまでも4回転半を成功させることが僕にとっての一番の目標」 「(あと)8分の1(回転)回れば立てますね、間違いなく。ランディングできます」  さらに、世界選手権が行われたスウェーデン・ストックホルムから帰国後、隔離期間を経て臨んだ国別対抗戦(4月)では、練習中に4回転アクセルに挑む姿もみせている。4回転アクセルを組み込むつもりで作ったという昨季のフリー『天と地と』は今季も継続する予定で、大技を入れた形での真の完成を目指す。  また、羽生には表現面での進化もみられる。昨季のプログラムはコロナ禍により振付師と共に滑りながら創ることがかなわなかったことで、羽生は多くの部分を自分で振り付けたと語っている。また、シーズン終了後の4月に出演したアイスショー『スターズ・オン・アイス2021』では、オープニングナンバーでセルフコレオによる滑りを披露した。スポットライトを背負い、シルエットとなって登場した羽生の動きは以前にも増して鋭さが増し、ダンサーのような雰囲気を漂わせていた。羽生は今はまっているものとしてBTS(防弾少年団)を挙げているが、世界的なポップスターのダンスから取り入れているエッセンスも感じられたように思う。  ただ『スターズ・オン・アイス2021』オープニングのセルフコレオにあたり、羽生は自らの良さが出る振付を考えたとも話している。10代の頃から音楽をとらえる感性に非凡なものを感じさせていた羽生は、クラシックからロックまで様々な曲を使ったプログラムを滑り、そのすべてで羽生ならではの表現をみせてきた。その結果、自分らしいプログラムとして羽生が滑っているのが『天と地と』であり、今季新しく用意する予定のショートプログラムになるはずだ。競技人生をかけて様々なものから学び、なおかつ羽生らしさを追求してきた表現の到達点が今季のプログラムになるだろう。  五輪連覇というこの上ない経歴を既に手にしている羽生は、誰も跳んだことがないジャンプと自分にしかできない表現を追求することで、フィギュアスケートの真髄を究めようとしているのかもしれない。(文・沢田聡子) ●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」

    dot.

    11時間前

  • 16

    木村拓哉「この年になってもまだこんな思いをするんだ」と落ち込んだ

     映画「マスカレード・ナイト」で主演を務める木村拓哉さん。続編となる本作に挑んだ感想や、アルゼンチンタンゴを踊るシーンの苦戦などを明かした。 *  *  * ──大ヒット作「マスカレード・ホテル」の続編に挑む心境は?  プレッシャーは全くないです。映画会社の方や世間は大コケとかヒットとかおっしゃいますけど、僕にとって大事なのは、現場でスタッフや共演者の方と納得のいく作業ができたかどうか。現場が全てです。続編だからどうこうという意識はないですね。 「マスカレード・ナイト」では、アルゼンチンタンゴを踊るシーンがあるんです。原作を読んだ段階で「うわ、やべー内容書いてあるよ」とは思いました(笑)。今まで経験したことがなかったので。  ただ、言っちゃなんですけど「踊りでしょ?」という気持ちも内心あって。色々なスタイルを一通りかじってきたので何とかなるだろうと。  でも……甘かったです。自負という荷物を携えてよろしくお願いしまーすって現場に入ったら、「お持ちのもの全部必要ないので置いといてください」って言われた感じでした。まさにゼロからの挑戦で、「この年になってもまだこんな思いをするんだ」と、久々に落ち込みました(笑)。 ──殺人犯の正体を突き止める捜査官を演じましたが、ご自身も人間観察は得意?  意識して観察するというよりは、日常的に自然とやっているかな。仕事の時は、相手の熱量を感じ取りやすいと思います。「この人、本当に現場が好きなんだな」とか、「仕事でやってるだけだな」とか。  後者の場合は、その人との間に一定の距離ができてしまいますね。でも良い仕事をするために必要なら、おせっかいおじさんになる時もあります。  たとえば、モチベーションが低いスタッフさんって道具を雑に扱う方が多い。撮影用の機材をガシャーンって床に置いたりする。そういう場面を見ると、「ん?」って引っかかるんですよね。最初は何も言わないけど、4回目くらいで「自分のものだと思って運んでよ」って注意しちゃったり。 (構成/本誌・大谷百合絵) >>【後編/木村拓哉が外した“仮面”  SMAP時代「彼女いんのー?」にマジ回答】へ続く※週刊朝日  2021年9月24日号より抜粋

    2

    週刊朝日

    9/21

  • 17

    小林麻耶が離婚へ 夫から解放されても修復が難しい「海老蔵一家」と「TBS」

     今年3月から別居状態にあった小林麻耶(41)と夫の國光吟氏(37)が離婚に向けて協議を始めたという。7月1日発売の「女性セブン」によると、当初は麻耶自身も別居が一時的なものになるか、離婚への準備期間となるかはわかっていなかったが、周囲のサポートもあり自分の意思で結論を出す段階に入ったようだ。 2人が結婚を発表したのは2018年7月。出会って2カ月、“交際ゼロ日”での電撃婚は周囲を驚かせたのはもちろんだが、國光さんの行うスピリチュアル色の強いセラピーやカウンセリングなどに傾倒する麻耶を心配する声も少なくなかった。「それ以降の2人の行動といえば、まるで麻耶さんのマネジャーのようにどこへ行くのにも國光さんが同行し、次第に仕事場でも國光さんが口を出すようになったといいます。そして昨年11月に『グッとラック!』(TBS系)の電撃降板と所属事務所との契約解除があり、麻耶さんの彼への依存ぶりが心配され始めました」(女性誌記者) 一時期は麻耶が「洗脳状態」にあるのでは?などと心配もされたが、次第に2人の関係は冷めていったようだ。結局、3月には別居となったが、國光氏と距離をとった麻耶を誰よりもサポートして見守り続けたのは、麻耶の母親だったという。「お母さんの元に戻ってからは、麻耶さんも徐々にこれまでのことを冷静に振り返ることができるようになったそうですが、最も彼女の心を揺り動かしたのは麗禾ちゃん(9)と勸玄くん(8)の存在です。國光さんと結婚してからは、海老蔵さん一家とも以前のように頻繁に関わることがなくなり、あれほどかわいがっていた子どもたちともここ1年ぐらいは会っていないといいます。お母さんは、麻央さんの闘病中には麗禾ちゃんと勸玄くんの面倒を見て家事一切を取り仕切っていました。お母さんから伝え聞く2人の様子やYouTubeで見る成長ぶりに会えない辛さが募ったのでしょう。そんな麻耶さんの異変に気づいて、お母さんはメンタル面も含めてフォローし続けているそうです」(同前) だが、仮に離婚が成立したとしても、今後の麻耶の状況が元通りになるかといえば、「すぐには難しいかもしれない」と芸能ジャーナリストは話す。「まずは麗禾ちゃんと勸玄くんとの関係です。麻央さんの闘病中はお母さんと共に彼女もよく面倒を見ていて、子どもたちも懐いていましたが、海老蔵さんが現在の状態のまま、麻耶さんと距離をとり続けるのであれば、以前のような家族ぐるみの関係に戻るには時間がかかるでしょう。海老蔵さんはこれからは『十三代目市川團十郎白猿』と『八代目市川新之助』の襲名披露公演も控えていますから、あまり“雑音”は入れたくないのではないでしょうか」 また、広告代理店関係者は麻耶の復帰をこう心配する。「いずれ麻耶さんも仕事復帰を考えているでしょうが、義理を欠くようなことをしてしまった古巣のTBSや前の所属事務所からのバックアップは期待できないでしょう。それ以上に、はたしてタレントとして需要があるのかも疑問です。國光氏とのお騒がせカップルのイメージがまだ根強く残っていますから、CMや司会などで起用するのは厳しいのでは」 麻耶はこの日、自身のブログを更新したが、離婚報道には言及しなかった。“目が覚めた”麻耶が目の前に待ち受ける新たな壁に気づき、それを乗り越えた時に、彼女は本当に自由になれるのかもしれない。(宮本エミ)

    dot.

    7/1

  • 18

    河野太郎氏「小石河連合」結集で党内勢力図に大異変 決選投票で勝つのは…

     次の首相は誰か。9月17日に告示された自民党総裁選が混迷を深めている。安倍晋三前首相ら“キングメーカー”の動向に注目が集まるなか、河野太郎行政改革相は長老たちに“ケンカ”をふっかけた。はたして、激戦の行方は──。  安倍政権を厳しく批判し、それゆえに党内で冷遇されてきた政治家が“戦場”に戻って来た。  石破茂元幹事長は16日、自民党総裁選(29日投開票)に出馬した河野太郎行政改革相を支持する派閥横断のグループ「必勝を期す会」の設立総会に出席。すでに河野氏支持を表明している小泉進次郎環境相らと一緒に壇上にあがり、こう呼びかけた。 「古い自民党、派閥が横行する自民党を変えよう」  この日、出席した国会議員は代理も含め57人。河野氏本人は公務のため欠席したが、ビデオメッセージでこう訴えた。 「石破さんや小泉さん、みなさんと一緒に、次の時代の自由民主党に改革し、前へ進む日本の国を作っていきたい」 「小石河連合」とも呼ばれる小泉氏、石破氏、河野氏の連携。狙いは党の運営に不満を持つ若手・中堅議員の支持の獲得だ。  今回の総裁選では、党内7派閥のうち6派閥が候補者を一本化できず、自主投票となる見込み。これも、河野氏を支持する中堅・若手議員が中心となって派閥の会合などで長老議員の密室談議で総裁選が決まることを批判した結果、引き寄せた流れだ。自民党の中堅議員は言う。 「安倍政権になってからは官邸の意向で政策が決まり、党はただの追認機関になってしまった。党で政策をまとめても『官邸の方向性に合うようにしてくれ』と言われたこともある。そういった“党風”を変えるのが、今回の総裁選だ」  自民党関係者は言う。 「河野さんや石破さんらが言う党改革とは、つまるところ『安倍支配からの脱却』。総理を辞めた後も党内で強い影響力を持つ安倍さんの存在そのものが、今回の総裁選の最大の争点です」  派閥の縛りが弱まった異例の総裁選。その思わぬ結果として、自民党内の勢力図の再編成が起きている。  14日、永田町に衝撃が走った。この日、今回の総裁選で安倍氏が支持を表明している高市早苗前総務相が、選対本部の発足式を開いた。驚くべきは会に駆け付けた人の数で、国会議員は代理も含め71人にのぼった。  総裁選では、陣営関係者が開催する会に議員や代理人が参加することは、支持の表明と受け取られる。総裁選で投票権を持つ党所属の国会議員は382人。高市氏は、告示前の段階で党内議員の約2割の票をまとめたことになる。  当初は“泡沫候補”と見る向きもあったが、今ではそう考える人はいない。他候補の選対関係者は「高市票はまったく読めない。投票日までに議員票だけで100票に届くかも」と警戒する。  高市氏の選対本部長には、安倍氏に近い古屋圭司元国家公安委員長が就任。発足式終了後に出回った参加議員の名簿を見ても、安倍氏の政治信条に近い党内タカ派議員の名が目立つ。永田町では「事実上の安倍派の立ち上げだ」との声も漏れる。  一方、最も早く立候補を表明した岸田文雄前政調会長は、党内の穏健保守派を中心にベテラン議員の票を固めている。告示前日の16日には野田聖子幹事長代行が“すべり込み”で出馬を表明。野田氏は二階派や竹下派からも支援を受けており、情勢はさらに混沌としてきた。  総裁選は、1回目の投票で1位が有効票の過半数に届かなければ、上位2人による決選投票になる。1回目の投票では議員票と党員・党友票は同じ382票だが、決選投票では、議員票382票と各都道府県連が各1票の計429票で決まる。国会議員の意向がより強く反映される仕組みだ。  4氏が立候補を表明したことで、決選投票に進む確率が高くなった。すでにその時の投票を見据えた動きも始まっている。  政治ジャーナリストの野上忠興氏は言う。 「安倍氏は、決選投票に高市氏が残れなくても、岸田氏を支援することで河野氏に勝てると考えているはずです。今後は、各陣営が河野氏になびいている中堅・若手に、選挙の公認権や人事などをちらつかせるなど、多数派工作が熾烈化していくことになるでしょう」  現状では、相手が岸田氏にせよ高市氏にせよ、決選投票になれば河野氏が不利になるとの見方が強い。それでも、河野陣営関係者は党員票に望みをかけている。 「1回目の党員票で圧倒したのに、国会議員票でその結果をひっくり返したとなると、自民党は大きな批判にさらされる。それは危険なことだ。まずはそこに訴えて、党員票で圧倒的な差をつける」  党員の間で人気が高い小泉氏と石破氏の相乗効果で、1回目の投票でどれだけ票をとれるかが焦点になりそうだ。一方、河野氏を支援する国会議員は「安倍さんと麻生(太郎・財務相)さんに敵対してきた石破さんに協力要請したのは大きなバクチだった」と話す。  麻生氏は、総裁選で自主投票が広がっている現状を、こう警告した。 「負けたら冷や飯を食う。覚悟を決めた上でやってもらうことを期待する」  仁義なき“総裁選アウトレイジ”の結末は、まだ見えていない。 (本誌・西岡千史、亀井洋志/今西憲之) >>【後編:改革者か暴君か…河野太郎の素顔  側近議員は「脱原発封印」批判に反論「主張変わっていない】に続く ※週刊朝日  2021年10月1日号に加筆

    週刊朝日

    9/21

  • 19

    大谷翔平に他球団ファンからも「本塁打王取ってくれ」の声 「高校生並み」と酷評した記者も絶賛

     大リーグで日本人初の本塁打王に向けて大接戦を繰り広げている、エンゼルスの大谷翔平。日本人ファンからはもちろん、現地でも他球団のファンから熱い応援を受けるなど、その人気は圧倒的だ。AERA 2021年9月27日号で取り上げた。 *  *  *  大リーグ・エンゼルスの大谷翔平(27)が日本人初の本塁打王に向け、熾烈な争いを繰り広げている。9月10日のアストロズ戦に「2番・投手」で先発出場し、初回に先制の44号右越えソロを放った。投手としては四回途中まで投げて被安打9で6失点。2敗目を喫して6月4日のマリナーズ戦以来続いていた連勝は8で止まったが、打ち取った打球が安打になる不運もあり悲観することはないだろう。  報道によると、大谷は試合後のオンライン取材でこう話した。 「(本塁打王を)もちろん取りたいなっていう気持ちもありますし、『取りたいな』ってだけで取れるものではない。良い打席を毎日毎日続けていけたらなと思うので。基本に忠実に毎日1打席を大事にしながら打ちたいなと思います。個人的には意識しながらやりたいなと思っているので。その中で1打席1打席、冷静に打てれば、必ずいい結果が残るかなと思います」  米国駐在のジャーナリストはこう話す。 「普段は数字やタイトルへの思いを語らない大谷が本塁打王への意欲を口にしたことは新鮮でした。8、9月は本塁打のペースが落ちていますが、状態は決して悪くない。相手も本塁打を警戒して外角攻めが増えていますが、甘く入った球はスタンドにきっちり運んでいる」 「ただ、三冠王がかかっているブルージェイズのウラジーミル・ゲレロ(22)、アメリカン・リーグの捕手で史上初の40号を超えたロイヤルズのサルバドール・ペレス(31)は強力なライバルです。タイトル争いは最後までもつれるのでしょう」 ■他球団のファンも応援  ゲレロは13日のレイズ戦で大谷を超える45号をマーク。9月は6本塁打と量産態勢に入っている。ペレスは15日のアスレチックス戦で大谷に並ぶ44号を放った。ただ、野球の本場・米国で日本人初の本塁打王を狙う大谷に対して、現地でアウェーな空気は流れていないという。 「NFL(米プロフットボールリーグ)が9月に開幕し、NBA(米プロバスケットボール)も10月に開幕が迫り盛り上がりが高まる中、二刀流で大活躍している大谷が大リーグで広告塔の役割を果たし、メディアに連日大きく取り上げられています。エンゼルスファンだけでなく、他球団のファンからも『本塁打王を取ってくれ』という応援の声が非常に多い」(前出のジャーナリスト)  大谷が8月18日のタイガース戦に「1番・投手」で先発出場し、八回に両リーグ最速の40号ソロを放ち、投げては8回1失点、8奪三振でチーム単独トップの8勝目を挙げた際は大きな反響を呼んだ。米放送局CBSスポーツのダニー・ビエッティ記者は自身のツイッターで、こう絶賛した。 「40本塁打。防御率2.82。こんなこと今まで見たことがない」 「ショウヘイ・オオタニが今季これから1試合もプレーできなくなったとしても、私は彼にMVP(最優秀選手)を与える」  また、大リーグ1年目のオープン戦で打撃不振だった大谷を「高校生並み」と酷評し、その後の活躍で謝罪した米スポーツ専門局ESPNのジェフ・パッサン記者はこうたたえている。 「彼は今、誰もやったことのないことをやっている。前人未到。ベーブ・ルースでさえやっていないことをやっている」 (ライター・牧忠則) ※数字は9月15日現在※AERA 2021年9月27日号より抜粋

    AERA

    17時間前

  • 20

    田原総一朗「後退が止まらない日本経済を立て直せる新首相は誰か」

     野田聖子氏も立候補し、4氏での争いになった自民党総裁選。ジャーナリストの田原総一朗氏は次期総裁に託すことになる重大な問題は、日本経済の立て直しだと指摘する。 *  *  *  岸田文雄、高市早苗、河野太郎3氏の誰が首相になっても、新型コロナウイルス感染拡大への対応は、菅首相と大きく変わることはない。有事の医療体制に切り替えることができないからだ。  問題は、11月になって日本人の6割以上が2度のワクチン接種を終えることで、感染者数が減少するのか、それとも第6波が炸裂するのか、である。専門家たちの予測は割れている。  そして、誰が首相になっても重大な問題になるのは経済である。  日本の国内総生産(GDP)が世界全体に占める割合は、1995年の18%から、2020年には6%と、3分の1に急落している。  そして、世界の企業の時価総額の推移を見ると、日本は1995年にはNTT(2位)とトヨタ(8位)の2社がトップ10にランクインしていたが、2020年はトヨタの43位が最高である。  スイスのビジネススクールIMDが国ごとの競争力を示した21年版の世界競争力ランキングによると、世界主要64カ国・地域中、日本は31位。東アジアの中でも、シンガポール、香港、台湾、中国、韓国を下回り、25位のマレーシア、28位のタイよりも低い評価となっている。  さらに、平均賃金を見ると、1990年には経済協力開発機構(OECD)の平均3万6941ドルに対して、日本は3万6879ドルで12位であり、フランス、イギリス、スウェーデン、韓国よりも上位だったのが、2020年には3万8515ドルで、その4カ国よりも下位の22位に落ちている。なお、OECDの平均は4万9165ドルで、1位の米国は6万9392ドルである。  そして、OECDの報告書によると、17年の初等教育から高等教育までの公的支出のGDPに占める割合が、日本は2.86%で、何と比較可能な38カ国中37位と、最下位から2番目なのである。  米国、イギリス、ドイツ、韓国よりもはるかに下位で、日本の下にはアイルランドしかいない。  このように、日本の経済が衰退した原因はいくつもある。18年に安倍首相(当時)が3選されたとき、当時の経団連会長の中西宏明氏、トヨタ、パナソニック、NTT、三菱重工などを取材したのだが、誰もが日本企業に強い危機感を持っていて、このままの状態では10年後には日本企業は持続できなくなると言った。そこで安倍首相は、信頼していた西村康稔氏を担当大臣にして、日本の産業構造を抜本的に改革するためのプロジェクトを発足させた。自民党の国会議員と経済産業省、財務省、法務省などの中堅官僚たちで結成され、私も協力した。  だが、安倍内閣は途中で終わった。しかも18年の段階では、日本の経営者たちにとって建前でしかなかった地球環境問題が、いまやリアルで深刻な問題となっていて、菅首相は50年温室効果ガスゼロを宣言せざるを得なくなった。  今、トマ・ピケティなど世界の代表的な経済学者たちが、「資本主義は行き詰まりで、ポスト資本主義がいかにあるべきか」と訴えて世界中で論議されていて、ESG(環境、社会、企業統治)思考なるものが世界の常識となっている。  誰が首相の座に就き、どのようにこの課題に挑むのだろうか。 田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数※週刊朝日  2021年10月1日号

    週刊朝日

    22時間前

  • 1

    「高市氏の昔を知っているよ」 総裁選候補者3人で最も優れているのに胸がザワつく理由

     作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、自民党総裁選に立候補を表明している3人の議員について。 *  *  * 連日、自民党総裁選関連のニュースがメディアを占めている。この国に暮らす人々の生存をかけた衆議院選挙のほうがよほど重大なはずなのに、無駄に自民党の生存をかけた総裁選につきあわされているようでつらい。災害レベルのコロナ禍で重要なときに臨時国会を開かず、自党の人事に時間を費やす自民党の体質が、トップが代わったところで変わるとは思えない。とはいえ、あと一歩で総理の椅子に座る3人の候補者に女性が入っていること、その女性が候補者の中で最も右寄りであること、容姿を誹謗中傷する批判が“彼女にだけ”されていることなど、日本の女性政治家が置かれている現実を生中継で日々見せられているようで、それはそれで気になってしまうのだ。 候補者3人の出馬表明記者会見を見た。それぞれ力のこもった熱弁を見ながら、改めて菅さん (菅義偉首相) は、相当なレベルで話が下手だったのだと気づかされる。滑舌が悪いうえに自分の言葉で話さない、原稿すらうまく読めないので頭に入ってこない。東京五輪・パラリンピック開催に疑問を投げかける記者には、「安全安心」と繰り返すだけで誠実さのカケラもなかった。さらに記者に対して威圧的であり、社名を名乗らない記者に対していら立つなど、器の小ささを露呈してしまう場面を幾度となく見てきた。喋れば喋るほど、人の心が離れていく総理大臣だった。 菅さんに比べると3人の候補者の話は、フツーにまともだった。……と、「底」を強いられてきた者として認知の歪みが生じてしまっているのだろうかと自分でも不安になるが、今回、高市早苗氏の会見を初めて長時間聴いてみて驚いた。テンポ、滑舌、論理性、具体性において出馬表明記者会見としては3人の中で最も優れていたからだ。記者からの質問に逃げずに丁寧に答えていたのも好感を持てた。  例えばTBS「報道特集」のキャスター膳場貴子氏が、高市氏が過去にしていたサイテーの発言「(生活保護を)さもしい顔をしてもらえるものはもらおうとか、弱者のふりをして少しでもトクをしようと、そんな国民ばかりいたら日本が滅びる」を引き、「困窮する国民をどういう目で見ているのか確認をさせてください。弱者への視点が欠けている不安、批判の声があるが、どう受け止めているか聞かせてください」と迫った。高市さんに対する強い批判を含んだ良い質問だった。 もしこれが、安倍さん (安倍晋三前首相) だったらと想像する。女性アナウンサーからの質問にまずニヤニヤと冷笑し、しかし顔色は変わり、早口でまったく方向違いの旧民主党政権批判を延々繰り返し「それはですね、民主党政権時代の批判の流れでの発言だったのでございます。文脈をですね、私の発言の文脈をですね、いいですか、きちんと見ていただいたうえでですね、そのようなご質問をしていただきたきたいのでございます」とか言いそうだし、麻生さん (麻生太郎財務相) だったら「そうかね、覚えてねぇな」とか言いかねず、菅さんだったら「えー、私はこれまで通り全力で国民の安全安心を最大限に考えて、政治を行っていくことに変わりはありません」とか言うのでは。テレビカメラの前で“女性”記者に批判された、ということで頭がいっぱいになり、誠実に答えようともしない“男性”政治家の振る舞いに私たちはあまりにも慣れてしまっていた。 その日、高市氏は膳場氏の批判質問に顔色も声のトーンも変えることはなかった。にこやかなまま、その発言がいつ、どの場で行われたものかを記憶の中で語り、「これは皆様の大切な税金。福祉というものは公正、公平が原則であるべきだと私は考えています」とし、さらに子どもの貧困問題等について語り、そのうえで「これが私。素直なほうなので、さまざまなアドバイスには柔軟に対応する」とも言った。  このやりとりに、私は見入ってしまったのだった。威圧的だったり、不誠実だったり、中身のない政治家答弁にあまりにも慣れ過ぎていたからこその驚きであるのだが、ただ新鮮だった。もちろん、高市氏のような政治家の言動が生活保護受給者に対する社会の偏見を生み、貧困を再生産し、生活保護を受けられずに餓死するような人々を生み出す現実をつくってきた。そういうリアルが見えない高市さんが与党の政治家であることが私は恐いが、それでも「どのような考えに立っているのか」ということを説明することをこの人は逃れなかったという印象は残った。 一方、岸田氏は国民の声を聞いてきたという薄く小さなノートを振りかざして「私にとりまして大切な財産。このノートを読み返した上で、私は改めてやるべきことがあると感じています」と豪語する。外国特派員協会で記者会見を開くなど、去年の総裁選よりもパフォーマンス力があがっているように見えるが、選択的夫婦別姓についての意見を問われ、「引きつづき議論しなければならない課題」と言うなど、いったい誰の声を聞いてきたのか問いたい。今年の共同通信の調査によれば選択的夫婦別姓は国民世論で6割が賛成している(30代では7割)。だいたい選択的夫婦別姓は80年代からずっと提案され、深く積み重なった議論の歴史があるのだ。国会での議論を拒否し続けてきた自民党の単なる勉強不足が、選択的夫婦別姓を邪魔しているだけ。まだ、「自分ごと」として通称使用拡大の具体的実践に全力を尽くしてきた高市氏のほうが勉強しているし、わかっているように見える。 河野太郎氏の記者会見が一番、今までの自民党の威圧的政治家の流れをくんでいるように見えた。質問は1社一つというルールを一方的に強いては、「(河野さんは)脱原発派ですか?」という質問に対して「どういう定義で脱原発というか人によって違うので、何か一つの言葉でくくるのはやめておいたほうがいい」と打ち切り、それ以上の質問を許さなかった。記者が本当に聞きたいことは分かっているはずだし、そこから深まる議論もあるはずなのに、意味のない答えを短めに返すのが目立った。  河野氏は若手からの期待が大きいと、報道では言われている。「河野さんは発信力があります」と30代の議員が胸を張るようにテレビカメラに向かって話しているのを見た。発信力とは単純にテレビに出る回数とか、Twitterのフォロワー数とか、なんとなくの人気のことを言っているのではないかと思うが、それは政治家にとって必要な力なのだろうか。記者会見で衝撃だったのは、韓国メディアの記者が「特に韓国を含めた、近隣国に向けての外交政策のビジョンを聞かせてほしい」と質問した時の答えだ。外務大臣を務めたこともある河野氏の答えは、こういうものだった。「G7の中で日本はユニークな立ち位置。キリスト教をベースとした文明の上に成り立っていない国は日本だけ。だから外務大臣として自分はアジア、中近東、アフリカといった国々の思いを代弁できる日本でありたーい、と思ってきた。自由民主主義、基本的人権、法の支配、こうした価値観を共有して一緒に前に進みたーいと思っている。それぞれの国にはそれぞれの歴史がある。一足飛びにみんなが同じことをできるわけではありませんー。そういうなかで、ヨチヨチ歩きであっても同じ方向を進もうとしている国にしっかりと寄り添える、そういう日本でありたーいと思っている」 ……これは外交政策なのでしょうか。ヨチヨチ歩きだけど一緒に寄り添っていこうね、って。これは元外務大臣による総裁選立候補の時に語るような言葉なのだろうか。高市氏を推すわけでは決してないが(というか、私にその権利もないが)、高市氏だったら具体的に質問に正確に答えようとするのではないか、大人の言葉で。 最近、「高市早苗の昔を知っているよ」という人と立て続けに話をする機会があった。20代のころ、高市氏は400ccのバイクを乗り回していたという。30年以上前、400ccのバイクに乗る女性は少なかった。私も10代のころ、400ccのバイクに乗りたくて教習所に行ったのだが、「女は小型から」と中型免許すら取らせてもらえない空気があり、一日でやめた。「中型取りに来たんです」と言っても、「じゃあ、起こしてみな」と道路に転がる400ccをコツも教えてもらえず起こせと言われて憤慨した。あの時の悔しさは今もまだ心のどこかに残っている。80年代のことだ。そういう時代のなかで、中型・大型バイクに乗る女性たちは道で出会っては、自然に話しかけるようなことがあったという。当時のバイク仲間の女性は、若かった高市さんが目を輝かせながら「私は保守系の政治家になるんだ」と、夢を語っていたのを覚えている。   高市氏を見ていると、胸がざわつく。「政治家を知るためには、その人の選挙区と選挙歴を知らなければならない」とは、無戸籍問題に取り組み続け衆議院議員になった井戸まさえ氏の言葉だが、高市氏がもし、奈良という保守が強い土地ではなく、都市部の選挙区の人だったらどうだったろうか。選択的夫婦別姓、女性天皇・女系天皇容認などについて肯定派の多い都市部のような場所で保守派の政治家として立っていたら、どうだったろうか。安倍さんへの、悲しいほどのすり寄りは、二世議員である小渕優子議員や、祖父が政治家だった野田聖子議員だったらしなくてもよい媚びにも見える。高市氏自身の葛藤を勝手に想像しながら、そういう女性議員の姿を見てこちらも引き裂かれるような葛藤を味わう。女性がのびのびと政治ができる国になってほしい、そして正当に評価されるようになってほしい。今起きているのは、自民党の大物男性の庇護のもとでの自由と、それでも女性であるゆえに正当に評価されない日本社会の女性嫌悪だ。精神衛生上よくないので、早く終わらせて、衆議院選挙で自民党政治は終わってほしい。■北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

    dot.

    9/15

  • 2

    高市早苗氏の意外な過去にフェミニストも震えた 総理の座を狙う過程で何があったのか

     作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、自民党総裁選に正式に出馬表明した高市早苗氏について。*    *  * 近しい人がデルタ株のコロナ陽性になったり、友人の同僚や、通っている美容院のお客さんが亡くなったりなど、夏以降、急速にコロナの危機が迫っているのを実感している。健康観察をされずに自宅で死亡した50代の方の話などを聞くと、東京五輪・パラリンピックに時間とお金と人材を費やすべきではなかったのではないかとつくづく悔しい思いになる。適切な処置を医療機関で受けられていたら、亡くならないですんだかもしれない命は少なくない。 Go Toキャンペーンやオリパラを強行することに専念してきた自民党政権が、トップの顔を代えただけで変われるとは思えず、期待には程遠い自民党総裁選。岸田文雄さんは、ボロボロの小さいノートを振りかざしては「国民の声を書き留めてきた、1年間で3冊、10年間で30冊」と様々なメディアでアピールしているが、正直、少ないと思う。薄いノートを1年でたった3冊埋めたくらいで、国民の声を聞いたとか言えるって、どんだけ聞いてこなかったかという話なのでは。河野太郎さんは、先日週刊誌でそのパワハラ言動が取りざたされていたが、ワクチン接種という、申し訳ないが素人目線でそこまで難しいとも思えない仕事でつまずいている人に期待するのはムリという話だし、高市早苗さんにいたっては、選択的夫婦別姓に強硬に反対するアンチフェミ女のイメージしかない。女性の人権に無関心な女性総理候補にいったい何の価値があるというのでしょう。 とはいえ、高市早苗議員、いったいどんな人なのか。32歳で衆議院議員に若くして初当選(※)。しかも同期の田中真紀子議員や野田聖子議員のように、親や祖父が国会議員だったというわけではなく、自民党員だったわけでもなく、サラリーマンの父と警察官の母という一般家庭から出てきた無所属の女性議員が、今、最も総理の椅子に近い女性となっている。なぜ高市さんは、政治家の道を選んだのだろう。どのように政治の道を歩いてきたのだろう。政治家としては多い著作のなかから国際政治評論家としてテレビで活躍していた頃に書かれた『30歳のバースディ―その朝、おんなの何かが変わる』(大和出版)、政治家2年目に記された『高市早苗のぶっとび永田町日記』(サンドケー出版局)を読んだ。 高市氏が大学を卒業したのは1984年。1986年に男女雇用機会均等法が施行されるが、この2年の差はやはりとても大きいものがある。女性が生涯にわたる仕事を手にすることも、そもそも親が大学に行かせてくれるかどうかも「女の子」であるというだけで諦めることがまだまだ当たり前にあった世代だ。特に地方であればなおのこと。保守的な奈良に育った高市氏も、当然のように「諦めさせられて」きた。例えば大学もそうだ。高市氏は第1希望だった早稲田と慶応のどちらも合格したにもかかわらず、「女の子のあなたを東京の私学で学ばせる余裕はない。弟の学費に回してほしい」と親に諦めさせられ、「女の子だから一人暮らしはさせられない」と通学に往復6時間かかる神戸大学に入学するのだ。 たとえ難関国立大学出身であっても、女性がその能力と希望に見合う就職先を見つけるのが難しい時代だった。「身の丈」よりもずっと小さく窮屈な型に押し込められる女性たちの悔しさは計り知れないが、高市氏の著書からはその類いの悔しさは強調されない。それは高市氏に並外れた行動力と決断力があり、自らの人生を切り開いてきた自負があるからだろう。たとえば、たまたま大学で目にした松下政経塾のポスターを目にして、直感に導かれるように松下政経塾に“就職”したり。たまたまテレビで見た女性議員で史上初の米国大統領候補指名争いに立候補準備を進めていたパトリシア・シュローダーに惹かれ、その2週間後にはワシントンに旅立ち、その情熱だけでシュローダー議員のオフィスで働き始めたり……若さゆえの大胆さと希望に満ちあふれた当時の高市氏のエピソード一つひとつに圧倒されてしまう。「女だから」と諦めさせられてきたのは大学まで、それ以降は絶対に諦めないという粘り強さで今の地位を築いていくのである。『30歳のバースディ』は文字通り30歳を迎えた高市氏がそれまでの人生を「ポップ」に振り返る本である。「BGMはいつもユーミンだった」「寂しいのはあなただけじゃない」「空港でまたまた恋人と涙の別れ」「男かペットがいなくちゃダメな私」「女と日の丸と視聴率の相関関係」「三〇女が孤独を感じるとき」といった目次からもわかるように、女友だちに話しかけるように書かれた軽く、優しいノリのものだ。アメリカから帰国し、若い政治評論家としてメディアに露出していたころで、日本の男性社会へのいら立ちも率直に記されている。「アメリカ議会では日本流のバカバカしい会議がないのが良かった。(略)ところが日本の企業では会議の場では何も決められない。本当は既に決まっているし、とっくに根回しが済んでいることを確認しあうだけの、儀式的な会議のなんと多いことか。でも、私たち女性は妙に正義感が強いので、このような巧妙な人間関係のテクニックとは相性が悪い」 90年代に若い女性が書いたテキストを追いかけながら、私は何度か噴き出したり、そうそうと共感したりと震えるような思いになる。ねぇ、高市さん、「女が入ると会議が長くなる」とほざく森喜朗さんに「あんたの会議はバカバカしい」とはやっぱり言えないものだったの? こういうまっとうないら立ちを文章にしてきた女性が、最も「わきまえる女」になっていく過程に、いったい何があったというの? さらにこういう率直さは、国会議員になった後に書かれた「高市早苗ぶっとび永田町日記」にも残っている。高市氏は歯に衣着せずに永田町のダメなところをきちんと切っている。「この一年間に永田町で一番多く耳にした言葉は次の二つ。『挨拶がない』『俺は聞いてないぞ』。委員会の審議日程が流れたり、大切な法案の採決がパーになったりする理由は大抵この二つだったりする」「笑い話のようなことばかりだが、事実、永田町政治は『理屈』ではなく、『メンツ』で動いている」 さらに、夜の会食や女性がいるクラブなどで行われる男たちの根回しで物事が決まっていく永田町で、女の自分が不利であることも記し、サッチャーのこんな言葉を引用し共感を表明するのだ。「私は最後まで党内基盤が弱かった。それは男性の世界の根回しに加えてもらえなかったからよ」 なにこの人……すごくまともな「一般人」の感覚で、すごくまともな「女の悔しさ」をストレートに出すフェミじゃないの? しかもそのまともさで、「総理大臣の資質」というものを論じ、当時の村山政権を真っ正面から批判している。明言しているわけではないが、高市氏自身が政治家として一番になること=総理になることを30代から目指しているのも伝わってくる内容なのだった。根回しから排除されてきたサッチャーが首相になれたように、パトリシア・シュローダーが80年代に大統領を目指したように、高市氏は政治家としてトップに行くことを最初から視野に入れていたのだ。 ……と、昔の高市氏の本を読んでいると、うっかり「がんばれ、早苗!」と言いたくなってしまう私がいるのだった。「総理になろうよ!!」と早苗の女友だちポジションに立って拍手したくもなってしまうのであった。まずい、まずい。正気に戻るために2011年に出版された『渡部昇一、「女子会」に挑む!』(WAC)も読んだ。櫻井よしこ氏、山谷えり子氏、高市早苗氏、小池百合子氏、丸川珠代氏・・・といった早々たる「わきまえ女」(帯には「なでしこ軍団」とある)たちと渡部昇一氏との対談本だ。 渡部氏との対談で、「総理になったら、まず何をしますか?」と聞かれた高市氏はこう答えている。「最初に、政府歴史見解の見直しをします。新たな歴史見解を発表して、村山談話を無効にします」 東日本大震災のあった年の9月に出版されている本だ。震災後から、こういう歴史修正主義を堂々とうたう本や、韓国ヘイト、「慰安婦」運動への過剰な攻撃は度を越していったという実感が私にある。保守政治家から極右政治家に舵を切るように発言をより過激化させていく高市氏の横顔が、対談にはしっかりと刻まれている。夫婦が別の姓を名乗ったら家族が崩壊すると適当なことを言い、戦時性暴力の責任を問わないどころかなかったことにすることが、高市さんの「目指した政治」だったのだろうか。この国の女性たちが権力に近づこうとするならば、率先して選択的夫婦別姓を批判し、「慰安婦」被害者をおとしめる発言をいとわず、女性の権利を口にするフェミを冷笑するというマニュアルでもあるのだろうか。 今いる自民党の女性議員の顔を、一人ひとり思い浮かべてみる。わきまえなければ権力に近づくこともできなかった女性たち。夜の会議や根回しから排除されながらも、その立場を維持するための努力は、二世・三世の男性議員たちとは全く違うものがあったはずだ。それでも、それほどの努力をしても、彼女たちが自らの後ろを振りかえったとき、彼女たちの後ろを歩きたいと思う女性はどのくらいいるだろうか。というかそもそも、その道は後続の女性のために開かれていたことはあったのだろうか。 かつて高市氏が憧れ渡米したパトリシア・シュローダーはテレビカメラの前で涙を流した。そのことによって20年以上「女の政治家は感情的だから、ダメだ」と言われ続け、「あなたの涙のせいで、女の地位が悪くなる」と責められ続けたという。女であるというだけでその「涙」が事件になるのは、昔のアメリカも今の日本も変わらない。そういう政治の世界でトップを目指す女性たちが、女性の味方であることを忘れるのは「仕方ない」ことなのだろうか。それとも、アンチフェミニズムの顔で女性をたたくような女性政治家しか出せない自民党政治そのものが終わっている、ということなのか。※訂正配信時の「32歳で衆議院議員に初当選、女性議員としては、当時憲政史上最年少だった」という一文を、「32歳で衆議院議員に若くして初当選」と訂正しました。高市氏の著書『高市早苗のぶっとび永田町日記』に「女性として憲政史上最年少当選」と記してありましたが、実際は1946年4月10に三木キヨ子氏が20代(当時)で当選していたため削除、修正します。■北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

    dot.

    9/9

  • 3

    木村拓哉が外した“仮面”  SMAP時代「彼女いんのー?」にマジ回答

     圧倒的なオーラに、クールな孤高の人というキャラクター、そして美しいルックス。誰もが認めるトップスター、木村拓哉さんは「木村拓哉」を演じる努力を人知れず続けてきたのか? 映画「マスカレード・ナイト」で主演を務める木村さんに、素の自分を隠すマスカレード(仮面)は必要なのかと尋ねると──。 【前編/木村拓哉「この年になってもまだこんな思いをするんだ」と落ち込んだ】より続く *  *  * ──「マスカレード」は仮面の意味。世間が期待する木村拓哉像に応えるため、素の自分に仮面をかぶせることは?  みんなが木村拓哉をどんなふうに見てくれているのかはわからないけど、素の自分とそんなに離れていないと思います。心にシールドをつけて無理して仕事をしている感覚は全くないので。  でも、昔はそうじゃなかったかな。ペンライトを振って声援を送ってくれるファンの子たちに笑顔で手を振り返していた20代前半の頃は、知らず知らずのうちに仮面をつけていた気がします。自分からかぶるというよりは、現場に行くと必ず用意されているんですよ。「これが君の衣装で、キャラで、イメージだからね」って感じで。最初はそんなものかと思っていたけど、だんだん「これ変じゃね?」って思い始めて、外していった。  当時の自分はハードロックにド影響を受けていました。あんなに髪を伸ばしてる奴は他にいなかったでしょ。目見えてんの?ってくらい額のバンダナをずり下げたり。でもそうやって、かっけーな、素敵だなって思うものを自分のサイドに引きずり込んで表現していったら、仮面なんて必要なくなった。嘘っぽいのが嫌になったんです。  一つ、懐かしいエピソードがあって。SMAPのコンサートの途中、お客さんからの質問コーナーになったんですよ。「3階席の白いブラウスを着てる、そう、今うちわ振ってくれた君、でっかい声で質問言って」っていう感じで振ってみたら、「彼女いんのー?」って。 「いるに決まってんでしょ」って答えたら、会場中がキャーッて大変なことになり。終わってから、事務所の人に「何言ってんのあんた」って怒られました(笑)。 ──自分を自由に表現できるようになったきっかけは?  20代半ばでドラマ「ロングバケーション」(フジテレビ系)に出たことですね。それまで、自分にとって役を演じることはどこかポージングだった。でもヒロインの山口(智子)さんをはじめ共演者の方に恵まれて、生の現場を楽しむ感覚を知ったんです。  相手がこっちを見ているから、何が言いたいんだろうって見返す。目をそらしたら、なんでそらしたのか考えて反応する。変に計算して予定調和にプレイするのではなく、目の前の相手を全身で感じとるんです。  それと同時に、自分の中に生まれる、悲しいつらい楽しい好きといった感情をすべてひっくるめて思いっきり味わい、楽しむ。あの時あの現場であのメンバーに出会ってから、自分はやたら変わった気がします。  本当の表情や気持ち、自分というものを提示しなくても物事が進んでいくことに対して違和感をおぼえるようになった。それが、結果的に仮面を外すことにつながっていったんじゃないかな。  ファンの方との関わり方も変わりました。キャーッて手を振ってくれる人に、あえて「え?」「あ?」とかって意地悪したり(笑)。本当は、笑顔で手を振り返せばより喜んでもらえるんだろうけど、それってその場にいるみんなに向けたポーズだと思うんですよ。選挙前の政治家みたいな。でも、自分は一瞬だけでも相手とタイマンになりたいから、そういうリアクションになるんです。 ──休みの日は仕事モードをオフに?  完全にだらっとリラックスしちゃうと逆にストレスになるんです。少し緩めたい時は、ゆったり腰を下ろして真剣に映画を見るくらいの感じでバランスをとってます。  基本的には休みの日のほうが動いてますね。1万歩以上は歩くかな。動いている状態が一番快適なんです。じっとしていたら自分が澱んで濁っていく感じがして、歩くことで循環させている。頭がクリアになるので考え事にもいいですね。  ただ、一人で黙々と散歩するのは嫌なのでパートナーと一緒に。うちの犬ですよ。外に出ると喜んでくれるんだから、最高の相棒です。 (構成/本誌・大谷百合絵)※週刊朝日  2021年9月24日号より抜粋

    週刊朝日

    9/21

  • 4

    眞子さまの結婚どう思う? 瀬戸内寂聴が27歳スタッフに質問した結果

     半世紀ほど前に出会った99歳と85歳。人生の妙味を知る老親友の瀬戸内寂聴さんと横尾忠則さんが、往復書簡でとっておきのナイショ話を披露しあう。*  *  *■横尾忠則「スジ金入りの肉体的朦朧体、大観より本格派です」 セトウチさん 耳が聴こえなくなったと言うと、「きっと作品が変るわよ」と、ベートーベンじゃあるまいし、変なことおっしゃると、その時はそう思いましたが、本当に変ったんです。その変り方が理に適(かな)っているといえば適っている。つまり聴こえないことは、音の輪郭が失くなることです。そうなると音が朦朧(もうろう)となって、横山大観の朦朧体の絵のように音がボケて聴こえるんです。耳がボケると、日常生活もボケて、曖昧模糊(あいまいもこ)となって、したことと、してないことの区別もわからなくなるんです。つまり虚実の区別ができなくなって、夢で見た仕事の依頼を、本当に依頼されたと思って、やっちゃったりするんです。ボケの症状に似てるけれど、ボケ老人になったんではなく耳のせいだと理解しているので、そこはまだ理性がコントロールしています。 ハイ、絵の話だったです。大観は思想で朦朧体を描きましたが、僕はスジ金入りの肉体的朦朧体なので、思想のようなチョロコイ考えではなく、肉体的ハンデキャップによる堂々たる自然体派です。大観よりこっちの方が本格派です。そんなわけでセトウチさんの大予言は的中しました。 先っきも言いましたが境界線が失くなるということは自由のキャパシティも拡張したことになります。近代人は何でもかんでも境界線を引いて、全てを分業化します。縄文時代はひとりの人間が、多面的に物事をこなしていました。狩猟(しゅりょう)も農業も、漁業も工芸も、子育ても、教育もひとりでするという、境界線をはずした労働生活です。現代のような役割分担などしません。正に多義的です。越境した狩猟社会です。 難聴が与えてくれた神の恩寵です。だから病気の高徳です。僕が度重なる病気によって救われてきたということはこういうことです。神は人間に色々な苦難を与えますが、病気は罪ほろぼしでもカルマ落としでもなんでもないのです。人間の進化向上のためのカリキュラムだと思えばどうでしょう。難聴のほかに、腱鞘炎(けんしょうえん)にもなりました。もう、セトウチさんの「幻花」のような繊細(せんさい)な描写の絵など描けません。今は太い筆やハケを握りしめて、キャンバスにバンバン叩きつけるように描いています。それも痛いので、左手で描きます。左手は思うような形が取れません。幼児の絵より下手くそになります。でも、デュビュッフェは幼児の絵のマネをして、幼児風に描きますが、そんな意図的なことをしなくても、僕の左手はそのまま幼児以上に下手に描けます。これもハンデキャップから来た自然体です。 今書いている手紙では、前にも同じことを書きましたかね。境界を越えると時間差もなくなって、やったことと、やらないことの区別がわからなくなるのです。いよいよ本格派老人です。100歳老人のセトウチさんにも負けていません。ただ僕はセトウチさんのように年齢には拘っていません。拘っているのは他人の方で、今行っている展覧会では「85歳、85歳」と年齢を売り物にされています。歳のことは言うな! アーティストには年齢はないのです。昨日の続きが今日、今日の続きが明日です。原始社会では年齢など無関係です。アーティストは原始人です。■瀬戸内寂聴「私もヨコオさんに負けないように!」 ヨコオさん 何だか、ずいぶん久しぶりにこの往復手紙を書いているような気がします。 それにしても相変わらずコロナは豪勢を極め日本はおろか、世界的にその力を奮っています。 コロナのせいで、人に会えず、寂庵はずっと門を閉めっぱなしです。コロナになる前はもちろん、一も二もなく門内に入ってもらっていました。 大抵遠く九州や東北から来られた人で、まだ生きている私に逢えたと言って、抱きついて泣き出します。もちろん、私は丁寧にお迎えして、写経などしてもらい、お茶菓子を一緒に食べて、しばらくその人のお話を聞きます。つきあいの人もあれば、寂庵の信者を自称する人もあり、初めて門内に入ったという人もいます。「まさか、門内に入れてもらえると思わなかった」と泣き出す人もあれば、「生きている寂聴さんに逢えた!」と、子供のように足を踏み鳴らす人もいる。「とても百歳には見えない!」と誰もが感嘆してくれるが、終日ベッドに横になり、本ばかり読んで、一日を過ごしている私の毎日の状態など話せない。私は、人に逢っている間だけは、必死になって元気らしさを演じ、声を張り上げる。客の帰る時は、長い廊下の途中で、へばってしまい、さっさと歩く客の跡がおえない。 ──だって百だもの……──と、私は廊下の途中で、ペシャンコに座り込み、つくづく、自分に向かって言う。 食事だけは時間が来ると、しゃきっと体がのび、食卓の自分の位置に早々と座り込んでいる。「あら、お昼はもう召し上がりましたよ!」 スタッフの一人が、わざと大きな声を張り上げる。「私のスパゲティは、どうしてこんなに美味しいのだろうなんて、お世辞までいただいて」「そうよ、ほんとに! でも今ここに座ったのは、食べるためでなくて、眞子さんの結婚をどう思うかって、寂庵で一番若い二十七歳のP子の意見を聞きたいのよ」「ああ、眞子さん、ほんとに、よかったですね。大体、みんなあんまりこの結婚に意地悪すぎましたよ。でも、どうして一時金を眞子さんは辞退なさるのかしら? 貰う権利のあるお金でしょう? あんまり弱気にならない方がいいと思うけど……」 ヨコオさん、今、寂庵の中は、こんなにのんびりしています。耳が聞こえないのは、私も同然です。テレビの時なんか、びっくりするほど大きな声にしてくれるので、何とか会話が出来ています。鶯も、秋の夜の虫の音も、私の耳にはさっぱり聞こえません。ヨコオさんとTELしてるのを横で聞いてる人があれば、どんなにおかしいでしょうね。耳だけでなく体のあちこちがどしどし衰えてきます。 そのうち、きっと、自分の死んだこともわからなくなって、──ヨコオさんにTELして!──など叫んでる日が来るのでしょうね。でも目がよく見えているので、一日に二冊は厚い本を読み切っています。ヨコオさんの展覧会、ますます人気上昇でおめでとうございます。私もヨコオさんに負けないよう、あっとこれまでと変わった小説を二つくらい書き残して死にたいものですね。 では、また。※週刊朝日  2021年9月17日号

    62

    週刊朝日

    9/11

  • 5

    【独自】小室圭さん、米大手事務所から断られていた 弁護士が語る“厳しい現実”

    「小室圭さんの実力では無理だと思います」 こう話すのは、全米で「トップ100」と呼ばれる大手弁護士事務所(ビッグロー)のパートナー弁護士のA氏。専門は、海外企業同士のM&Aなど。米国を拠点に世界を飛び回り、収入も桁違い。この姿こそ、小室さんが思い描く将来でもあるようだ。 昨年の秋ごろ、A氏の事務所に、働かせてほしい、と小室さんの「経歴書」のようなレジュメが別の弁護士を通じて届いたという。小室さんは、ニューヨークなど大都市での弁護士の仕事を探しており、ビッグローか、その下の規模のミッドローでM&Aなどをやりたいという。 A氏がそのレジュメを見て思ったのが、冒頭の言葉だ。なかでも、A氏が首をかしげたのがニューヨークのフォーダム大ロースクール(法科大学院)への留学の部分だ。「疑問なのは、彼がLLM(法学修士)のコースに入ったことです。しかも1年学んだ後に、JD(法務博士)コースに編入している。大きな事務所を目指してて、こんな動き方をするなんて聞いたことがない」 LLMとJDというのは、ロースクールでのコース名だ。米国の大学には法学部がなく、弁護士を目指す人は、大学卒業後にJDに入る。ここで3年間学び、事務所に入るのが一般的なパターンだという。 一方、LLMは、法律の資格を持つ外国人留学生が多いといい、「表現として正しいかわかりませんが、キャリアに“箔(はく)をつける”ようなイメージです」。 A氏によると、米国で弁護士となるのに重要なのはJDでの1年目だ。「米国での就職活動は、2年生の終わりの夏休みで終わります。事務所のサマープログラム(インターン)で働き、その後よほどのことがない限り、その事務所からオファーを受けて就職します。どの事務所のプログラムに入れるかは、1年時の成績で決まります。だから学生の競争も壮絶です。本を隠すなどの足の引っ張り合いもあります。小室さんはその1年をLLMに入っています」 ビッグローのインターンの募集は、ハーバードやエール、コロンビアといった有名大学で公募し、最初の書類選考で成績優秀者に絞り、次の面接で決まる。A氏が言う。「採用された学生には、1年目から19万数千ドル(2千万円以上)の給与が支払われます。それも5年くらいは半人前で、彼らから利益は出ません。それでも欲しい人材ということなんです。だから相当厳選します。原則でいえば、ビッグローはインターン以外の方法では採用しないです」 チャンスをつかめる学生は、ほんの一握りだ。小室さんは、そもそもLLMに入った時点で、希望するビッグローへの道は閉ざされたといっていい。なぜLLMに入ったのだろうか? A氏が話す。「こう言っては何ですが、彼の経歴に目を見張るモノはありません。あるとすれば眞子さまのフィアンセという一点。それでも奨学金を取得できたり、JDへ編入したり、弁護士が出てきて仕事を探したり。知恵をつけている人がいるんでしょう」 では、ビッグローは無理でも、M&Aは他でもできるのだろうか?「米国には約43万の事務所がありますが、M&Aの70%超は『トップ100』が扱っています。小室さんが弁護士として働くにはM&Aにこだわらないことですね。移民法の弁護士などは圧倒的に多い。日本人も多いです。もうからないので人気はないのですが」 そして、こう続けた。「詳しいことは申し上げられませんが、彼の『経歴書』を見る限り、とても“権威”が好きなんだと思います。M&Aも彼からすれば格好良く見えるんでしょうけど、実際は相当厳しい世界です。パートナー弁護士になるのは10年後くらい。それまで生き残っているのはわずかです。彼がそもそも弁護士という職業に向いているのか……。野心家だと思うので、ベンチャーのような起業家とかが向いているような気がします」(本誌・矢崎慶一)※週刊朝日  2021年9月17日号に加筆

    週刊朝日

    9/8

  • 6

    小林麻耶が離婚へ 夫から解放されても修復が難しい「海老蔵一家」と「TBS」

     今年3月から別居状態にあった小林麻耶(41)と夫の國光吟氏(37)が離婚に向けて協議を始めたという。7月1日発売の「女性セブン」によると、当初は麻耶自身も別居が一時的なものになるか、離婚への準備期間となるかはわかっていなかったが、周囲のサポートもあり自分の意思で結論を出す段階に入ったようだ。 2人が結婚を発表したのは2018年7月。出会って2カ月、“交際ゼロ日”での電撃婚は周囲を驚かせたのはもちろんだが、國光さんの行うスピリチュアル色の強いセラピーやカウンセリングなどに傾倒する麻耶を心配する声も少なくなかった。「それ以降の2人の行動といえば、まるで麻耶さんのマネジャーのようにどこへ行くのにも國光さんが同行し、次第に仕事場でも國光さんが口を出すようになったといいます。そして昨年11月に『グッとラック!』(TBS系)の電撃降板と所属事務所との契約解除があり、麻耶さんの彼への依存ぶりが心配され始めました」(女性誌記者) 一時期は麻耶が「洗脳状態」にあるのでは?などと心配もされたが、次第に2人の関係は冷めていったようだ。結局、3月には別居となったが、國光氏と距離をとった麻耶を誰よりもサポートして見守り続けたのは、麻耶の母親だったという。「お母さんの元に戻ってからは、麻耶さんも徐々にこれまでのことを冷静に振り返ることができるようになったそうですが、最も彼女の心を揺り動かしたのは麗禾ちゃん(9)と勸玄くん(8)の存在です。國光さんと結婚してからは、海老蔵さん一家とも以前のように頻繁に関わることがなくなり、あれほどかわいがっていた子どもたちともここ1年ぐらいは会っていないといいます。お母さんは、麻央さんの闘病中には麗禾ちゃんと勸玄くんの面倒を見て家事一切を取り仕切っていました。お母さんから伝え聞く2人の様子やYouTubeで見る成長ぶりに会えない辛さが募ったのでしょう。そんな麻耶さんの異変に気づいて、お母さんはメンタル面も含めてフォローし続けているそうです」(同前) だが、仮に離婚が成立したとしても、今後の麻耶の状況が元通りになるかといえば、「すぐには難しいかもしれない」と芸能ジャーナリストは話す。「まずは麗禾ちゃんと勸玄くんとの関係です。麻央さんの闘病中はお母さんと共に彼女もよく面倒を見ていて、子どもたちも懐いていましたが、海老蔵さんが現在の状態のまま、麻耶さんと距離をとり続けるのであれば、以前のような家族ぐるみの関係に戻るには時間がかかるでしょう。海老蔵さんはこれからは『十三代目市川團十郎白猿』と『八代目市川新之助』の襲名披露公演も控えていますから、あまり“雑音”は入れたくないのではないでしょうか」 また、広告代理店関係者は麻耶の復帰をこう心配する。「いずれ麻耶さんも仕事復帰を考えているでしょうが、義理を欠くようなことをしてしまった古巣のTBSや前の所属事務所からのバックアップは期待できないでしょう。それ以上に、はたしてタレントとして需要があるのかも疑問です。國光氏とのお騒がせカップルのイメージがまだ根強く残っていますから、CMや司会などで起用するのは厳しいのでは」 麻耶はこの日、自身のブログを更新したが、離婚報道には言及しなかった。“目が覚めた”麻耶が目の前に待ち受ける新たな壁に気づき、それを乗り越えた時に、彼女は本当に自由になれるのかもしれない。(宮本エミ)

    dot.

    7/1

  • 7

    田原総一朗「新総裁最有力の河野氏を絶対に首相にしたくない勢力とは」

     ジャーナリストの田原総一朗氏が自民党の総裁選について解説する。 *  *  *  菅義偉首相は、まず衆議院を解散し、衆院選に勝つことで総裁選に臨もうと考えていたが、安倍晋三、麻生太郎両氏らの反対で総裁選を先にやらざるを得なくなった。  前回も記したように、自民党の多くの国会議員たちは、今秋の衆院選で落選するのではないかという強い危機感を抱いている。全国の選挙区で、菅首相の評判が極めて悪いからである。自分が当選するには、何としても菅首相に辞めてほしい、と強く求めていた。  8月の中旬ごろまでは、安倍前首相も麻生副総理も、菅首相の続投でよいと考えていた。だが、それぞれの派閥の議員たちが、自分たちの当選には菅首相の辞任しかない、と強く求めていることを知って、考えを変えたのである。  そこで菅首相は、支持率を高めるために、党や内閣の人事に手をつけて、小泉進次郎氏ら、国民の期待が大きい政治家たちを起用しようとしたのだが、いずれの政治家にも断られて、辞任せざるを得なくなったのである。  菅首相が辞任することになって、岸田文雄氏、高市早苗氏、河野太郎氏、野田聖子氏らが総裁選への出馬を表明、もしくは意欲を示している。  注目されるのは石破茂氏である。彼は当時の安倍首相に対してもはっきりと反対を表明していて、少なからぬ国民は彼に期待しているはずなのであるが、彼は出馬しないようだ。  実は、私は2度、彼と電話で話をして出馬を促したのだが、消極的であった。どうやら河野氏を支持するようである。  岸田氏は、戦後政治史に重厚な足跡を残してきた宏池会のリーダーである。大平正芳、宮沢喜一、加藤紘一らハト派で、貧富の格差を広げないために社会福祉をきちんとやるべきだと主張する反新自由主義路線である。岸田氏も反新自由主義路線を打ち出している。  だが、安倍氏や麻生氏と心を合わせることに懸命で、国民の多くからはいまひとつ期待できない、と捉えられているようだ。  女性候補の高市氏は保守右派で、かつて電波法に基づく電波停止に言及したときは、私も強く反対した。  当初は、出馬に必要な議員数をそろえられないのではないかと見られていたが、安倍氏が支持を表明したことで、出馬はできそうである。  野田氏にも頑張ってほしいが、当選の可能性が高いと見られているのは、石破氏が支持をしそうな河野氏である。  だが、河野氏を何としても首相にしたくない、と考えている勢力がある。その代表的な存在が、経済産業省だと見られている。  河野氏は原発反対を強く唱えていた。外務大臣に就任して以後は、反原発を表明しなくなったが、あえて閣内で波を立てるのを避けているだけで、意識は全く変わっていない、と誰もが見ている。多くの政治家と違って、簡単に豹変(ひょうへん)しないのが、河野氏が信頼されるゆえんなのである。  だから、経産省も全国の電力会社も、河野氏が首相になるのは困るわけだ。  そして多くの自民党議員たちは、原発に対しては、情けないほどあいまいである。そんな彼らが河野氏をどのように捉えるのであろうか。 田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数※週刊朝日  2021年9月24日号

    週刊朝日

    9/15

  • 8

    改革者か暴君か…河野太郎の素顔  側近議員は「脱原発封印」批判に反論「主張変わっていない」

     4人の候補者による舌戦が続く自民党総裁選。中でも台風の目と見られているのが河野太郎行革担当相だ。はたして河野氏とは一体何者なのか。 >>【前編:河野太郎氏「小石河連合」結集で党内勢力図に大異変 決選投票で勝つのは…】よりづづく  河野氏が生まれ育ったのは神奈川県平塚市。父は自民党総裁も務めた河野洋平・元衆院議長だ。祖父は河野派を率い、農林相や建設相を歴任した河野一郎氏で、3代続く政界のサラブレッドだ。  小学校は地元の花水小学校に6年間通った後、慶応義塾中等部、高等部と進んで慶大経済学部に入ったが、留学のためにわずか2カ月で退学。渡米後に、ジョージタウン大学に入学した。この頃に知り合ったのが、元自民党参院議員の山本一太群馬県知事だ。  「一番最初に会った時に『総理大臣になりたい』と言われて、『何だコイツは』と思ったのを今でも覚えています。当時から大胆で、決めたらすぐに行動に移す。良い意味で、情熱で突っ走る人でした」   85年に大学を卒業し、富士ゼロックスに入社。その後、96年の衆院選に33歳で初当選した。当時は父の洋平氏が現職。選挙前は河野家から2人の候補者が出ることに、洋平氏が猛反対したという。地元の後援者は言う。  「洋平さんとは選挙区は違っても、世襲議員ということで最初は批判があったのも確かです。それでも、本人は1期目から『総理大臣になる』と言い続け、努力を重ねてきた。そのことは地元の人もよく理解していて、次第に世襲で批判されることはなくなりました」   河野氏の代名詞となった原発政策批判は、2011年に東日本大震災が発生する前から取り組んでいたライフワークだ。   だが、これが党内で嫌われる原因になる。原発推進派を厳しく批判していた河野氏は、身内の自民党の政治家も容赦なく攻撃したからだ。   11年5月には、朝日新聞のインタビューで甘利明衆院議員(現・党税調会長)を批判。「次の選挙でそういう議員を落とすしかない」とまで言い放った。   この発言への反発は激しかった。今回の総裁選でも、甘利氏は河野氏について「(菅首相への批判の原因が)ワクチンの迷走と言われ、ワクチン担当相の評価が上がるってどういう構図になっているのかよくわからない」と、皮肉交じりに語っていた。その背景には、原発をめぐる対立があったのだ。   官僚への当たりも強い。最近も「週刊文春」が、河野氏がオンライン会議で資源エネルギー庁の幹部職員に対し「日本語わかる奴出せよ」などと高圧的に迫った一件を「パワハラの疑い」と報じた。ある経産官僚が語る。  「河野さんは強引で人の話を聞かずにああいう物言いをするから嫌われている。官僚の言うことを何でも聞く必要はないが、聞く耳を持たないと、安倍前首相や菅首相のように周りを自分のブレーンで固め、もっと官邸主導が強まるのではないか」   苛烈な性格ゆえに官僚から恐れられる一方、“激しさ”が突破力となり、改革につながることもある。飯塚盛康全経済産業労働組合中央執行委員は言う。  「国家公務員の残業は予算で限度額が決まっているので、100時間残業しても30時間分しか出ないなんてことは当たり前でした。それが、河野さんが『公務員の働き方を変えよう』と旗を振ってくれたおかげで無駄な残業が減り、人事院も残業未払いの人の名前を調査して、省庁に指導してくれるようになりました」   派閥を嫌う河野氏だが、仲間がいないわけではない。秋本真利衆院議員は、市議時代に河野氏からエネルギー政策の知識の深さを評価され、国会議員になるよう助言された。秋本氏は言う。  「12年に初めて衆院選に出た時は、選挙区に10回以上応援に来てくれました。面倒見が良く懐が深い。といっても選挙資金を配るとかではなく、後輩議員を友人として助ける人。当選回数のような国会議員の序列も気にしない人です」   今回の総裁選では、河野氏が「脱原発を封印した」という批判が出ている。これに対して、秋本氏はこう反論する。  「河野さんと私は10年以上エネルギー問題について議論していますが、『即時脱原発』という話は一度も聞いていない。一方で、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルの見直しは明言しています。新増設を認めなければ原発はいずれなくなっていく。これは、河野さんのこれまでの主張と何も変わっていません」   前出の山本知事は、群馬県内の自民党議員や経済界の有力者に河野支持を訴えている。その理由について、こう話す。  「河野太郎は『変わった人』と思われていたけど、それが変わった。今という時代が河野太郎を求めているのだと思う」  (本誌・西岡千史、亀井洋志)※週刊朝日  2021年10月1日号に加筆

    週刊朝日

    9/21

  • 9

    韓国アイドルが日本語タトゥー「ノージャパンじゃない」発言に心配の声

     韓国ガールズグループ・AOAの元メンバーで女優クォン・ミナ(27)が日本語で書かれた背中の「日本語タトゥー」を公開し、波紋を呼んでいる。 クォン・ミナは12日、自身のインスタグラムに「毒と得、そして奇跡」というコメントと共に写真を投稿。背中を大きく開いた写真には、英国や数か国語のデザインでタトゥーが刻まれている。その中に、日本語で刻まれたタトゥーも。クォン・ミナは「私はノージャパンでも、ノーチャイナでもありません。どの国に対しても偏見はありません。韓国で私を応援してくれる方々、韓国から近い国や遠い国など、たくさんの国から応援してもらって生きる人間です。みんなに感謝しているし大好きです」と説明。「日本語も、英語の筆記体も、漢字も、背中などにたくさんの言語で(タトゥーを)彫りました。私たちの国が最も誇らしく思い、愛していても、色々な国の個性とマインドから学ぶ点も多いと思っています」と綴った。そして、「写真を見て不愉快になられたかもしれませんが、私にまったく同じマインドを望むのは申し訳ありませんが、個人の自由だと思います。ご理解頂きたいです」と付け加えた。 クォン・ミナは12年にガールズグループAOAのメンバーとしてデビュー。清純派の美貌で人気を集めて女優としても活躍し、人気ドラマに多数出演した。19年にAOAを脱退すると、昨年7月にAOAのリーダー・ジミンからグループ在籍時に、10年間にわたりいじめに遭って鬱病は不眠症に苦しんでいたことを告白して大きな反響を呼んだ。また7月29日に自殺未遂で病院に搬送され、一時意識不明に。容体が回復して意識を取り戻し、SNSでの活動を再開している。「日韓の問題はデリケートです、別のメンバーですが、AOAは以前に韓国のケーブルテレビに出演した際、人物の写真を見て名前を当てるクイズで、安重根の写真を見て豊臣秀吉、伊藤博文などと答えたことにネット上で批判の声が殺到し、謝罪に追い込まれました。また、シングル曲『Good Luck』のミュージックビデオでは日本車が映っていたため非難が殺到し、トヨタとホンダのエンブレムにボカシを入れた。クォン・ミナの今回の日本語のタトゥーに対してもよく思わない人がいるでしょう。まだ心身が本調子でないので、精神的に追い詰められなければいいのですが…」(韓国駐在の通信員) SNS、ネット上では、「こんな発言して大丈夫?大炎上バッシングの対象にならない?心配ですね…。個人的には素晴らしい勇気と覚悟は称えたいけど…(原文ママ)」、「そもそもAOAというグループ自体、過去に韓国内で複数の日韓議論に巻き込まれた経緯がある。それ以降にグループ内のイジメ問題などもあり、ミナは心身ともに相当疲弊しているはず。今回のことでさらに叩かれないと良いけど。そしてインターネットから一旦離れたほうが良いと思う(原文ママ)」など心配の声が。 クォン・ミナには韓国だけでなく、日本を含む世界中に多くのファンがいる。自殺未遂が報じられた際は、日本のネット上でも心配の声が多く寄せられた。自身のインスタグラムで日本語タトゥーを公開したことで、心身にストレスがかかる事態にならないことを願うばかりだ。(牧忠則)

    7

    dot.

    8/17

  • 10

    巨人、阪神は“別の”超高校級右腕 「ドラ1」で指名すべきは誰だ【セ・リーグ編】

     プロ野球のドラフト会議まであと約1カ月(10月11日開催)となり、高校生と大学生のプロ志望届提出者も発表される時期となった。各球団の最優先すべき補強ポイントはどこなのか。またそれに見合う選手は誰になるのか。真っ先に指名すべき1位指名候補を探ってみたいと思う。今回はセ・リーグの6球団だ。*  *  *・広島:小園健太(市和歌山・投手) 2016年からのリーグ3連覇後にチームは低迷。今季も9月9日終了時点で3位ヤクルトに10.5ゲーム差の4位と3年連続のBクラスが濃厚となっている。投手は若手の先発候補、野手は鈴木誠也のメジャー移籍を考えて右の強打者タイプが補強ポイントとなるが、2009年の今村猛(清峰)を最後に一人も高校生投手を1位指名していないことを考えると、そろそろスケールの大きいエース候補を獲得したい。そこで推したいのが小園だ。広島は投手であれば粗削りでもボールの強い選手を好む傾向が強いが、粗削りなまま伸び悩むケースも目立つ。やはりある程度のバランスは必要なだけに、高校生でも完成度が高く制球力の高い小園を獲得して将来のエース候補に育てたいところだ。・DeNA:達孝太(天理・投手) 野手陣は助っ人外国人への依存度は気になるものの、打線は強力で若手にも有望株が揃っていることからやはり最優先は投手となる。親会社がDeNAとなった2012年からはとにかく上位で大学生、社会人の投手を獲得し、一定の効果は出ているものの停滞している選手も目立つ。今年は高校生投手に好素材が多いだけに、1位指名では高校生を狙いたいところだ。競合を避ける傾向も強いが、それも球団の個性として尊重するのであれば、単独指名で狙えそうな投手としては達が筆頭候補となる。スケールの大きさは高校球界でも屈指で、190cmを超える大型右腕だが器用さも持ち合わせているのも魅力だ。チームに少ない大型の本格派だけに、ぜひ指名を検討したい投手である。・中日:正木智也(慶応大・外野手) 昨年は8年ぶりのAクラス入りを果たしたが、今年はBクラスへと逆戻り。低迷の原因は野手、特に長打力不足というのは火を見るよりも明らかだろう。一昨年は石川昂弥の獲得に成功したが、まだまだ若手の強打者タイプが少ないだけに、とにかく長打力のある野手を優先して獲得したい。今年の筆頭候補となるとやはり正木になるだろう。確実性は少し課題が残るものの、とらえた時の飛距離は間違いなく大学ナンバーワン。高い弾道で飛ばすことができ、広い本拠地でもホームランを量産できる可能性がある。高校生ではオリックスで候補に挙げた阪口樂(岐阜第一)も当然候補だろう。ともに守備、走塁は不安が残るが、それを度外視しても長打のある選手に振り切るべきではないだろうか。・ヤクルト:森木大智(高知・投手) 2年連続の最下位から優勝争いに浮上したが、同じ流れのオリックスと比べると投手、野手ともに若手の有望株は少ない印象は否めない。外野の世代交代も必要だが、やはり最優先は投手となる。手薄な左の先発タイプとしては佐藤隼輔(筑波大)、隅田知一郎(西日本工大)ももちろん候補だが、過去2年間は大学生の投手を多く指名しているだけに、年齢構成を考えても奥川恭伸と並ぶスケールの大きい高校生を優先したい。そこで候補としたのが森木だ。甲子園出場こそないものの、150キロを超えるストレートと変化球はいずれも高校生離れしたものがあり、投手としての総合力は高い。中学時代から注目されてきたというのも奥川との共通点であり、この2人が並び立てば強力な二枚看板を形成できるだろう。・巨人:風間球打(明桜・投手) 投手、野手とも選手層は厚く、若手の有望株もそれなりに揃っているが、やはり欲しいのは太い柱となる選手だ。過去5年間のドラフトでは9回連続で抽選に外れるなど運が味方していないということもあるが、それでもやはり大物選手に向かうべきである。特に気になるのがエースの菅野智之の後釜だけに、ここは高校生投手でトップ評価と見られる3人の中でも最も本格派らしい本格派である風間を狙いたい。ボールの力は言うまでもないが、多くの球数を投げても球威が落ちず、これまで大きな故障がないというのも魅力だ。近年上位で指名した投手は素材の良さはあるものの故障に苦しんでいることも多いだけに、風間の体の強さも評価ポイントとなりそうだ。・阪神:森木大智(高知・投手) 昨年は佐藤輝明、伊藤将司など即戦力路線の指名が奏功したが、そう振り切ることができたのも一昨年の高校生中心の指名があったからである。投手、野手ともに中堅層は充実しているだけに、今年は再び将来性を重視した指名を目指したい。野手は佐藤、井上広大と若手の大砲が2人揃うだけに、優先したいのは投手だ。高校生であれば風間、小園、森木の3人の誰かを狙うというのが規定路線だが、あえて甲子園経験のない森木を推したのは阪神という特殊な球団が理由だ。地元での注目度の高さは12球団トップであり、その中で結果を残すには自分を見失わない精神面の強さが必要となるが、中学時代から注目され続けてきた経験は森木の大きな武器である。高校時代に練習試合で対戦した西純矢とともに、チームを背負って立つ先発投手として期待したい。(文・西尾典文)●プロフィール西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員

    1

    dot.

    9/10

  • 11

    実は早稲田卒のハリセンボン箕輪はるかが告白 「大学4年間で友達ゼロ」の過去とインテリ芸人ぶらない理由

     細身のシルエットから独特の笑いを生み出すハリセンボンの箕輪はるか(41)。実は意外にも、早稲田大学卒の“インテリ芸人”だ。早大OBには小島よしおやラサール石井をはじめ、クイズ番組で活躍するタレントも多い中、箕輪はクイズ番組への出演機会は少ない印象がある。大学時代のエピソードを披露することも決して多くはないが、一体なぜなのか。本人が早大在学中の過去を語る中で、意外な理由が見えてきた。 ――箕輪さんは早稲田の第二文学部を卒業。難関私大に合格するためには努力も必要だと思いますが、受験勉強は相当されていたのでしょうか。  たぶん直前とかは1日10時間以上やっていたと思います。私は塾には行っていなくて、独自のやり方をしていました。たとえば集中するために、受験前の一カ月間は家から一歩も外に出ないと決めて勉強。受験当日に久しぶりに外に出て、太陽が眩しすぎてくらくらしたので、あまりおすすめはできませんが……。 ――やはり熱心に勉強されていたのですね。早稲田に行きたいというモチベーションはどこから湧いていたのでしょうか。  奨学金が充実していたことが大きかったですが、早稲田に憧れもありました。テレビで見たことのあるキャンパスに自分が行けると思ったらテンションが上がりますし、未来がすごく明るく見えて。学生数も多いですし、友達もたくさんできて楽しく過ごせるのかなという淡い期待がありましたね。 ――実際に進学してみて、思い描いていた大学生活とギャップを感じることはありましたか。  私が見ている風景は、人がいっぱいいてみんな楽しそうで、まさにイメージ通りでした。でも、そこに「自分がこんなにも入れないんだ」っていうギャップがありましたね。どういう入口からあの輪に入ればいいんだろうって……。せっかく志望校に入れたのに、そこで挫折感を味わいました。 ――当時の大学生活を振り返ってみていかがでしたか。  友達がいなくてサークルにも入っていなかったので、ひたすら家と学校の往復でした。授業を一人で受けて、授業が終わったらすぐに帰るみたいな4年間でしたね。  授業が1コマ空いた時は、中央図書館の地下にこもって過ごしました。図書館は一人でいても浮かないので落ち着きましたね。自動書架のスイッチをカチャカチャ押して、書棚を動かすのがすごく楽しくて。それをずっとやってましたね。それを押すことで、私は早稲田のものを動かしているんだ、早稲田に通っているんだという実感を得ていました……。 ――4年間、友達は誰もできなかったのでしょうか。  一人もいなかったですね。授業もずっと一人。一応、授業を取ってる期間だけしゃべる程度の子はいたんですけど、その場限りで。  芸人になった後に、友達がいなかった早大OB同士で対談する企画があったんですけど、対談相手が「友達がいないから『マイルストーン』という雑誌から授業情報を得ていました」と言っていた。早稲田生なら誰でも知っている雑誌らしいんですけど、私はそれすら知らなくて……。「え、マイルストーン知らないんですか」って、友達がいなかった子にも驚かれるくらい。それで、本物の孤独だったんだなと実感しました。 ――図書館以外で、楽しみは見つけられましたか。  徒歩10分ほどある戸山キャンパスから早稲田キャンパスの間を移動するときに、最短ルートを模索していた時期がありました。それで、めちゃくちゃ良いルートを見つけたんです。人通りも少なくて裏道っぽいところで。誰かにおすすめしたかったけど、友達がいなかったので私だけの道みたいにしていました。 ――早稲田はキャンパスも賑わっていますが、一人でいることに孤独は感じていましたか。  寂しいっていう気持ちはありました。皆でわいわいしている中に入りたいなという気持ちはずっとあったんですけど、自分からチャンスを逃してしまった。1年生の時に、上級生からサークルや新勧コンパのお誘いで声をかけられたこともあったんですけど、なんか怖くて……。自分が行って大丈夫なのか、騙されるんじゃないかと思って、勝手に壁を作って飛び込めずにいました。高校の時のようなクラスがないですし、そのままずるずると1年2年が過ぎていって。3年になる頃には、友達を作るのはもう無理なんだなと諦めながら過ごしていました。  マンモス大学で自由だからこそ、友達がいなくてもなんとかなるだろうと甘えてしまった。「人」という宝物が周りにたくさんあったのに、それを手に入れようという気持ちになれなかったのを、今はすごく後悔しています。今の自分だったら、もう一回通って友達作りたいなって思うんです。 ――早大卒業後には、吉本興業のお笑い養成所(東京NSC)に通い始めます。人と関わらなかった生活から一転、人前に立って話をするのはハードルが高そうですが、芸人の道に飛び込んだのはどうしてですか。  誰とも話さない期間が4年も続くと、苦しくなってくる。4年間のうちに鬱屈とした気持ちがガスのようにどんどん溜まっていって、このままじゃいけないよなという焦りが募っていきました。養成所に入る勇気が出たのは、4年間友達がいなくて、人に声をかけることができない自分を変えたい、今までやったことのないところに飛び込みたいという気持ちが大きく膨らんだ結果なんです。今思えば、私にとっては必要な4年間だったのかなと思いますね。 ――養成所では、相方の近藤春菜さんとコンビを結成。春菜さんは社交的で明るいイメージがありますが、当時、気後れすることはありましたか。  当時の春菜は今のイメージとはちょっと違っていて、けっこう暗い感じの子だったんです。会った当時は、自分と似ているタイプの子なんじゃないかと思っていたぐらいで。春菜も短大時代、学校と家の往復だけだったと言っていて、キャンパスライフが充実していたようなエピソードを聞いたことがないので、私とあまり変わらなかったのかも。コンビを組んでからは、私とは正反対の方向にいったんですけどね。 ――クイズ番組などで早大卒をウリにしている芸人やタレントも多くいる中で、箕輪さんはあまり出身大学をプッシュしてこなかった印象があります。  そうですね、あまり知られてはいないと思います。積極的に押し出していたってわけでもないんですけど、特に隠していたわけでもなくて……。早稲田らしいことをやっていたり、友達がいたりすれば、もっと大学時代のエピソードトークができたのかもしれないですけど、ほんとになくて……。人と関わらない分、感情と結びついている記憶がほとんどないので、当時の記憶も薄いんです。もったいないですよね。 ――クイズ番組への出演機会も多くはない印象です。クイズの仕事を断っているわけではなく……?  全然、断っていたわけではないんです……。エピソードを出せなくて、私の芸人としてのイメージと早稲田卒のイメージが結びつかないから、あまり指名されなかったのかも。過去には呼んでいただいたのに、スケジュールの折り合いがつかないこともありました。自分としては、クイズ番組のようなお仕事をいただけるならありがたいですし、仲間に入れてもらえるなら出たいです……! ――コロナ禍になって授業やサークルが思うようにできず、孤独な状況の学生も増えているようです。4年間一人の大学時代を送ってきた箕輪さんだからこそ、響くエールもありそうです。  私の場合はキャンパスに通えていたのに自分のせいで孤独だっただけですが、今は学生自身のせいじゃなく「孤独にさせられている状態」。本当に気の毒だと思いますし、私の状況とは比べものにならない。  今はたぶんやれることがなくて、すごくフラストレーションがたまる状態だと思うんです。でも、いつか人に会えるようになった時に、「こんなことをやりたい」「こんなことがやれそう」みたいなアイデアが出てくるように、今はエネルギーを貯める時間だと思ってほしいです。  私個人の一例ですが、孤独な4年間があって、変わらなきゃという気持ちでい続けたことで、養成所に入る勇気が出た。あの時間は無駄にはなっていないし、芸人になるために必要な4年間だったんです。そして養成所に入ったことで、はるなという人生で一番ラッキーな出会いができた。長い人生の中で、これからいろんなチャンスがあると思う。今はなかなか前向きになれない時間だと思うんですけど、気持ちをなえさせずに、未来に希望を持っていてほしいです。   それに、自分の中でちょっとした楽しみを見つけて、人に合わせずに過ごした時間も案外よかった。大学時代に一人で行動することの楽しさを見つけたおかげで、その後の人生でも一人旅とかを楽しめるようになった。一人で何かできるということを、なんとか楽しさに変えてほしいなと思います。(構成/AERA dot.編集部・飯塚大和)

    dot.

    9/18

  • 12

    前代未聞!派閥から3人候補推し「キングメーカー」二階幹事長の評判 地元の「引退勧告」もどこ吹く風

     9月29日に投開票の自民党総裁選は折り返し点を迎え、終盤戦に突入した。河野太郎ワクチン担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行が火花を散らす。メディア各社では投票権がある自民党の党員に対しての世論調査も実施された。  集計された数字をみると、河野氏がダブルスコアで岸田氏を引き離し、次いで高市氏、野田氏という順番だ。この数字を見て、ご機嫌なのが二階俊博幹事長だという。 「河野氏が大差リードと聞かされて『これでいい』『河野でいける』と嬉しそうに二階氏は話しています。キングメーカーが続くと夢見ているんでしょうかね」(二階派の国会議員)  二階派は今回の総裁選で派閥で特定候補者は推さずに自主投票となった  推薦人を出したのは、河野氏に2人、高市氏へ3人、野田氏には8人だ。出馬会見で党役員人事の改革案を発表し「二階外し」に打って出た岸田氏にはゼロというわかりやすい対応だ。  自民党の幹事長になって5年以上、在任記録を更新し続ける二階氏。菅義偉首相が辞めると同時に、二階氏も幹事長の座から降りることになる。二階氏の存在は一気に小さくなっているというのだ。  野田氏に8人もの推薦人を出したのは、推薦人集めに汗をかいた二階派の幹部・鶴保庸介参院議員が野田氏の元夫という背景もある。しかし、あまりに突出している。 「野田氏に推薦人を多く出したことで、高市氏を推す安倍前首相に女性票が分散すると不評を買っています。二階氏は河野氏が優勢と喜んでいるのですが、派閥内ではあまり反応がありません。総裁選後、二階氏は幹事長という大きな権力を手放すわけで、派閥内では2人寄れば、今後は誰が派閥を仕切るのか、という話題ばかりですよ」(前出・二階派の国会議員)  二階氏には派閥内でも冷たい風が吹きつつある。それは二階氏の地元、衆院和歌山3区でも同様だ。10月に衆院議員の任期は満了となり、総選挙が行われる。      今回は大島理森衆院議長や二階派でもある伊吹文明元衆院議長、塩崎恭久元官房長官など大物が次々と高齢を理由に引退を表明している。だが、82歳の二階氏はどこ吹く風。次期衆院選への出馬意向は変わらないという。和歌山3区の地方議員は地元の「二階離れ」をこう語る。 「二階先生は昔から口癖のように『副総裁とか、そういうのはやらん』と言っていた。要するに名誉職はイヤ、幹事長のように権力がないとダメということです。次、誰が首相になっても二階先生が幹事長になることはない。引退にはいいタイミングと地元ではささやかれている」  和歌山3区は「一票の格差」問題で、いずれ選挙区が2つになり、定数減となる公算が大きい。そうなれば、選挙区が広くなり、より幅広い活動が必要になってくる。和歌山3区では圧倒的な強さを誇る二階氏も、油断できない情勢だ。  二階氏の地元、御坊市の市長選では16年に二階氏の長男が立候補。二階氏の威光もあって小泉進次郎環境相まで応援にやってきたが、大差で敗れた。この敗北が二階氏の後継問題に大きな影響を与えているという。 「今の感じでは二階先生の秘書の三男が後継でしょう。しかし、二階後援会を地元で仕切っているのは長男で、選挙に出たがっている。二階先生もなかなか、後継を決めることができない感じですよ」(前出・地方議員)  また、参院和歌山選挙区には衆院への転出が噂される世耕弘成・自民党参院幹事長がいる。 「世耕氏は参院のライバル、林芳正氏が衆院山口3区に転出することになり、いろいろと考えることもあるようです。無派閥の高市氏が総裁選に出馬し、所属する派閥・清和会を率いる安倍晋三前首相が熱心に推している状況もある。世耕氏がもともと強い地域は和歌山3区です。二階氏本人がいる間は我慢するでしょうが、世襲で息子が出るとなれば、考えるでしょう。二階氏も心配で仕方ないでしょう。また地元では『陳情は世耕氏に』という二階離れの流れになりつつありますね」(自民党幹部)  総裁選でリードしている河野氏がそのまま総裁、首相になった際、二階氏は菅義偉首相の時と同様に、キングメーカーとして振る舞えるのか?河野陣営の国会議員は冷淡な評価だ。 「二階派の支援はありがたいが、寝技師、権謀術数的な派閥で河野氏のカラーとは相いれない。推薦人を出してもらっているので、無下にできないが、菅首相の継承と言っても、二階派を厚遇とはいかないでしょう。キングメーカーもあり得ない。それに野田氏へ推薦人を8人も出してあまりに風見鶏じゃないですか。党員票が分散するので、河野氏の形勢が不利になった。うちが負けたら、勝つのは岸田氏じゃないのかな。二階派はいったい、何をやりたいのか…」  安倍前首相、菅首相と長く勝ち馬に乗り続け、キングメーカーとして権勢を振るってきた二階氏。だが、今回は永田町、地元で強烈な逆風にさらされているようだ。総裁選後、新たなキングメーカーとして誰が君臨するのか。(AERAdot.編集部 今西憲之)

    dot.

    18時間前

  • 13

    木村拓哉「この年になってもまだこんな思いをするんだ」と落ち込んだ

     映画「マスカレード・ナイト」で主演を務める木村拓哉さん。続編となる本作に挑んだ感想や、アルゼンチンタンゴを踊るシーンの苦戦などを明かした。 *  *  * ──大ヒット作「マスカレード・ホテル」の続編に挑む心境は?  プレッシャーは全くないです。映画会社の方や世間は大コケとかヒットとかおっしゃいますけど、僕にとって大事なのは、現場でスタッフや共演者の方と納得のいく作業ができたかどうか。現場が全てです。続編だからどうこうという意識はないですね。 「マスカレード・ナイト」では、アルゼンチンタンゴを踊るシーンがあるんです。原作を読んだ段階で「うわ、やべー内容書いてあるよ」とは思いました(笑)。今まで経験したことがなかったので。  ただ、言っちゃなんですけど「踊りでしょ?」という気持ちも内心あって。色々なスタイルを一通りかじってきたので何とかなるだろうと。  でも……甘かったです。自負という荷物を携えてよろしくお願いしまーすって現場に入ったら、「お持ちのもの全部必要ないので置いといてください」って言われた感じでした。まさにゼロからの挑戦で、「この年になってもまだこんな思いをするんだ」と、久々に落ち込みました(笑)。 ──殺人犯の正体を突き止める捜査官を演じましたが、ご自身も人間観察は得意?  意識して観察するというよりは、日常的に自然とやっているかな。仕事の時は、相手の熱量を感じ取りやすいと思います。「この人、本当に現場が好きなんだな」とか、「仕事でやってるだけだな」とか。  後者の場合は、その人との間に一定の距離ができてしまいますね。でも良い仕事をするために必要なら、おせっかいおじさんになる時もあります。  たとえば、モチベーションが低いスタッフさんって道具を雑に扱う方が多い。撮影用の機材をガシャーンって床に置いたりする。そういう場面を見ると、「ん?」って引っかかるんですよね。最初は何も言わないけど、4回目くらいで「自分のものだと思って運んでよ」って注意しちゃったり。 (構成/本誌・大谷百合絵) >>【後編/木村拓哉が外した“仮面”  SMAP時代「彼女いんのー?」にマジ回答】へ続く※週刊朝日  2021年9月24日号より抜粋

    2

    週刊朝日

    9/21

  • 14

    【現地ルポ】河野太郎の旧友が語る「歌いっぷり」から「夫婦秘話」まで 新総裁本命候補が地元で見せた素顔

     16日に野田聖子幹事長代行が出馬表明したことで、立候補者が4人となった自民党総裁選。そのなかでも「本命視」されているのは、河野太郎行政改革担当相(58)だ。朝日新聞社が行った最新の世論調査では、「新総裁に誰がふさわしいか」という質問に、33%の人が「河野氏」と答え、4人の中で最多となった。永田町では「変人」「異端児」などと称されることもある河野氏だが、地元ではどのような評判なのか。AERAdot.は、河野氏を知る人物を訪ね歩き、“本音”を聞いた。今回は「幼少期~社会人」の政治家になる以前の人物像に迫る。 *  *  * 河野氏が生まれ育ったのは、神奈川県平塚市。父は自民党総裁も務めた河野洋平元衆院議長。祖父は河野派を率いて、農林相や建設相、副総理を歴任した河野一郎氏という3代続く政界のサラブレッドだ。大叔父の河野謙三氏も衆院議長を務めるなど、まさに政治家ファミリーの中で育った。 小学校は地元の平塚市立花水小学校に6年間通った。小学生の頃から、他の子より少し目立つ存在だったようだ。6年生の同級生で、現在は平塚市役所産業振興部長の津田勝稔氏は、当時をこう振り返る。 「男子生徒は『太郎』とか『太郎ちゃん』とか気軽に呼んでましたね。勉強は昔からできましたが、同級生が360人以上いる学校だったので、その時は、もっと成績優秀な生徒もいましたよ。1位ではないけど、ずっとトップクラスにいるイメージ。ガリ勉という感じではなかったので、陰で努力をしていたか、地頭がいいのだと思います。子どもの頃から自分の意見をハッキリ言うタイプだったから、いつかは政治家になるんだろうとは思っていました」  当時は、平塚市内で「河野御殿」と呼ばれる旧河野一郎邸に住んでいた。現在は取り壊されているが、そこに小学校の同級生が集まることもあったようだ。 「小学校を卒業する年(1975年)の1月、太郎ちゃんの誕生日会に招かれました。河野邸の中に入ったら、大きな庭があったのを今でも覚えています。私も含めて、みんなが誕生日プレゼントをあげていました。みんなから人気がある子どもだったと思います」(同)  河野氏は1月の早生まれのため、体はそんなに大きくなかったという。 「クラスでは一番前に座っていました。体は細かったから、校庭で一緒に相撲をしても、僕は一度も負けたことはなかった。でも、走るのは速かった。長距離は全然かなわなかったですね。河野家は祖父の一郎さんが箱根駅伝にも出場した長距離ランナーで、大叔父の河野謙三さんも箱根駅伝を走っている。長距離ランナーの家系なんですね」  河野氏自身も、進学した慶應義塾中等部で、今も破られていない4000メートルの記録保持者なのだという。  また、津田さんが鮮明に覚えているのは、河野氏が小学校の合唱コンクールで指揮者をしたこと。 「合唱コンクールはクラス対抗でしたが、太郎ちゃんは皆から自然と指揮者に選ばれていました。正直、歌はうたわない方がいいんじゃないのかな、という感じです」  別の知人によれば、「河野は音痴で声がでかくて甲高い」のだという。  花水小学校を卒業すると、慶應義塾中等部、同高等学校へ進学したが、地元の友達との関係はその後も大切にしていたようだ。津田さんはこんな思い出を語る。 「慶應に進むというのは、(小学校の)卒業が近くなってから知りましたね。僕はそのまま地元の中学に進んだのですが、10年くらい前にその地元中学の同窓会があったんです。花水小の同窓生もたくさんいたんですが、そこに太郎ちゃんが突然、乱入してきたんです。誰かが『お前、ここは違うだろう』とつっこんで、みんな笑っていましたね」  高校卒業後は、1981年4月に慶應大学経済学部に入学するも、わずか2カ月で退学。すぐに渡米し、82年9月には米国ワシントンD.Cのジョージタウン大学に入学した。84年にはポーランドの大学に留学したという。  古くから河野氏と付き合いある湘南ベルマーレの眞壁潔会長がこう語る。 「太郎が留学したのは、ちょうどポーランドの自主管理労組『連帯』を主導したレフ・ワレサ(後のポーランド大統領)の民主化運動が盛んな頃でした。太郎は社会主義の国を自分の目で確かめるために、ポーランドに行った。そこで大学の知人の紹介で、ワレサに会いたいかと聞かれたので、ワレサに会いに行ったんです。でも、そのときに事件が起きた。ワレサの自宅で本人といろいろと話をして、帰ろうと近くの交差点まで行ったところで、警察官から職務質問を受けた。パスポートを所持していなかったので逮捕され、留置場に入れられたそうです」  幸い、大学生であることがわかり、翌朝には釈放されたという。 「彼は性善説で人を見るんですよ。当時、ルーマニアにも行っていて、親切にしてくれた見知らぬ人の家に泊めてもらって、冷蔵庫の中にあった野菜や肉をごちそうになったという話も聞きました。当時のルーマニアで、知らない人のうちへついて行くなんて、ヤバイんじゃないかと思いましたけどね」(眞壁氏)  1985年、ジョージタウン大学を卒業後、日本に帰国。富士ゼロックス(現・富士フイルムビジネスイノベーション)に就職し、シンガポールに2年間勤務した。その後、93年に父親の河野洋平氏が大株主の日本端子(本社・神奈川県平塚市)に転職した。現在、日本端子の社長は洋平氏の次男が務めている。  河野氏が政治家になる前から付き合いのある平塚市の片倉章博市議はこう話す。 「河野さんは日本端子に入社した頃に、平塚に帰って来ました。地元の平塚のJC(日本青年会議所)のビジョンを作る委員会に所属していました。私もメンバーだったし、みんな同世代だったから、くだらないことを言い合ったり、何時間もビジョンを語り合ったりしたのは、いい思い出です。毎年夏には、それぞれが夫人同伴で10人くらいでワイワイ過ごす家族会をしていて、大磯ロングビーチのプールへ行くのが恒例でした。河野さんの香(かおり)夫人も来ていましたよ。プールの後は、ちゃんこ料理屋などで打ち上げをするのが恒例でした」  香夫人はオーストラリアの帰国子女で、聖心女子大を卒業後、外資系の金融機関に勤務していたという。2人のなれ初めについて、古くからの知人はこう話す。 「太郎ちゃんが富士ゼロックスの時代に、香さんが外資系の証券会社に勤務していて、食事会で知り合ったと聞きました。太郎ちゃんのひとめぼれで、香さんと同じ電車に乗るように時間調整して通勤したりしたこともあったそうですよ。香さんも通訳ができるくらい英語がペラペラで、夫婦で英語が堪能。太郎ちゃんは銀座のクラブへも行かないし、愛妻家ですよ。香さんは、夫がいない時には、代わりに選挙のあいさつ回りをしたりして支えています」  夫妻には一人息子がおり、現在は学生だという。河野氏が自民党総裁選に出馬したことについて、前出の津田氏はこう話す。 「総理大臣というのは政治家になったら夢でしょう。地元のことももちろんですが、日本のため、世界のために頑張るという初心を忘れずに、総裁選に挑んでほしいです。同級生みんなが応援しています」  河野氏が衆議院選挙で神奈川15区から立候補して、初当選を果たすのは1996年のこと。33歳のときだった。【後編】では政治家となった後の河野氏の人生を追う。(AERA dot・上田耕司)

    dot.

    9/17

  • 15

    高市早苗氏のファッション「総理大臣」にはお粗末? ドン小西がチェック

     自民党総裁選への出馬を表明した高市早苗前総務相。ファッションデザイナーのドン小西さんがファッションチェックした。 *  *  *  もちろん今週もファッションから見た話なんだけどさ。これで総理大臣になろうっていうのは、どうよ。だいたいこの人、自分を客観視したこと、あるのかね。  あたしもこれまで何十年もこの人を見てきたけど、マーケティングができてないから、ファッションに統一感もなければ、らしさもない。出馬会見のジャケットに膝丈スカートと黒のハイヒールもそうだけど、いかにも女性議員らしいのはこう、おじさまたちにかわいがられる私はこう……みたいな自分勝手な思い込みで、取っかえ引っかえ服を変えてるだけじゃないのかね。  ちなみに服だけじゃなく、どんな分野でもセンスのいい人が必ず持っているのが、この客観的視点だよ。リーダーもそう。たしかにこれじゃ、町内会のバス旅行の幹事だって無理。ましてや総理大臣になろうだなんて、勘違いもいいところだって。まずはその髪形からイメチェン、人様から見て感じのいいご自分に改造してから、出直されては? ■評価は……? 3DON! 「初の女性総理ならお粗末すぎ?」 (構成/福光恵)※週刊朝日  2021年9月24日号

    週刊朝日

    9/17

  • 16

    ジョニー・デップは「ほんとに気配りが素晴らしくて…」 美波の「共演秘話」

     映画「MINAMATA」で、ジョニー・デップ扮する写真家のユージン・スミスの相手役(アイリーン)を好演した俳優の美波さん。作家の林真理子さんが、共演の舞台裏をうかがいました。 【本木雅弘の「推薦」のおかげ? 美波がジョニー・デップ相手役を射止めた訳】より続く *  *  * 林:みんなに聞かれると思うけど、ジョニー・デップと初めて会ったとき、ドキドキしました? 美波:正直、ジョニーと共演というプレッシャーより、英語でお芝居することのほうがプレッシャーでした(笑)。撮影に入る前に2週間弱、準備期間があったんですよ。そのとき、カメラテストがあって、ユージンの暗室という設定のセットで、ジョニーと私、カメラマン、監督のアンドリュー(・レヴィタス)の4人で、セリフもなくセッションしました。そのときに不思議とケミストリーが合ったんですよ。 林:化学反応したんですね。 美波:そのとき、「大丈夫」って、みんなホッとしたんです。アンドリューにとって、私を起用することは、賭けだったと思うんです。無名の女優で、しかも英語もそんなにできないのに、キーになる役を演じるんですからね。私もそのとき「ジョニーになら全部託せるな」という絶大な安心感と包容力を感じて、そのあと彼にはたくさん支えていただきました。 林:いい人だったんですね。 美波:ほんとにいい人で、撮影の合間に、彼専用のテントの中で、彼にギターを弾いてもらいながら私は絵を描いたり、いろんな話をしたり、素晴らしい方でした。 林:最高じゃないですか。もうすっかり仲良くなったんですか。連絡先も交換しました? 美波:はい、情報交換はしていますね。 林:ジョニーは「ミナミ」って呼ぶんですか。 美波:もちろん。 林:ワォ! すてき!(笑) 美波:やっぱりジョニーは、お芝居が上手なんです。すごいキャリアがある方なので、私がどんな芝居をしても受け止めてくれました。どこにカメラがあって、どこに照明があって、どう撮れば相手がどのように映るかが、本能的にわかってるんです。芝居をしながら、彼が私を、いちばんきれいに光が当たる場所に誘導してくれるんですよ。 林:誘導してくれるって、どんなふうに? 美波 目線で合図をくれるんです。自分が映らないカットでも、彼がちょっとずつ目線を動かしていってくれて、私がその目線に従ってついていくと、光がいちばんいいスポットに私が入っているんです。スーパースターなのに、ほんとに気配りが素晴らしくて、すてきな方でした。 林:アイリーンは最初、ミステリアスな女性として彼のアパートにあらわれますよね。いつも暗闇の中から出てくるんだけど、私、原節子さんに似ているなと思って見てました、雰囲気が。 美波:あら! 光栄です。 林:この映画のハイライトは、世界中に衝撃と感動を与えたお風呂の写真(「入浴する智子と母」)の撮影シーンですけど、ユージンがひざまずかんばかりにしてシャッターを切るじゃないですか。素晴らしいシーンでした。 美波:はい、あのシーンは、物音ひとつしない、シーンとした中で「カシャ」というシャッター音だけが響いていて。うまく言えないんですけど、ユージンは影をずっと撮っていて、“動”じゃなくて“静”を撮っている人なんだなと、あのシーンで思いました。 林:彼の人間性が出ていましたよね。いきなり訪ねて「撮らせてほしい」と言わず、ずっと待って、待って、信頼を得てから、最後に撮るんですね。だから、あの写真が世界中の人々の心を打つわけで、あの写真を撮るまでに、アイリーンさんが大きな力を果たしていたんですよね。 美波:そうですね。ユージンは水俣に数年滞在していたんですけど、水俣を最後に写真を撮ることが難しくなってしまったんです。取材の途中、暴行事件にあって、脊髄損傷と片目失明という重傷を負ってしまって。 林:カメラマンの命である目を、暴行事件で奪われてしまったんですね。 美波 はい。この作品では、アンドリューやジョニーがプロデュースして、光も闇も、丁寧に映し出してくれているのは、すごくありがたいなと思っています。 林:昨今は、SDGs(持続可能な開発目標)が盛んに叫ばれています。公害とか環境問題は、そのはしりだったわけですからね。 美波:あれから50年たっているのに、環境汚染はぜんぜんなくなっていません。地球は悲鳴を上げるどころか、壊れていっていると思います。出る杭は打たれても、どんどん声を上げていかなくちゃいけないなって、私も実感しています。 林:日本で撮影したんですよね。 美波:じつは、セルビアとモンテネグロで撮影したんです。 林:えっ! 日本じゃないんですか? 美波:ハリウッド映画といってもこれはインディペンデント(自主製作)なので、お金のことや、いろんな兼ね合いがあるんだと思います。じつはセルビアは、ヨーロッパでいちばん安く撮影ができる国なんです。だから、毎年たくさんの映画が、セルビアで撮影されているんですよ。 林:へえ~、知らなかった。 美波:その分、セルビアの技術はすごく上がっていて、今回もほぼセルビア人のスタッフさんだったんです。メイクさんから衣装にいたるまですべて。 林:あの時代の日本の洋服、セルビアの人がつくったんですか。 美波:そうなんですよ。すべて手作りなんです。あの技術はすごいと思いました。 林:エキストラの日本人たちは、ヨーロッパにいる人たちですか。 美波:東ヨーロッパ在住の日本人の方が多かったですね。あとは日本から自費でいらっしゃった方が、何人か参加されていました。エキストラさんの熱意にも感動しましたよ。私、ずっと日本に帰れなくて、日本食が食べられなくてつらかったんですけど、エキストラの女性が炊飯器を持ってきて、お米を炊いてくれたんです。涙でお米がしょっぱかったです(笑)。 (構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄) 美波(みなみ)/1986年、東京都生まれ。母が日本人、父がフランス人。「バトル・ロワイアル」で映画デビュー以降、舞台「エレンディラ」「ザ・キャラクター」、映画「乱暴と待機」など、舞台、映画、ドラマ、CMで活躍。2014年、文化庁「新進芸術家海外研修制度研修員」に選出され渡仏、ジャック・ルコック国際演劇学校に1年在籍。近年の出演作に映画「Vision」など。9月23日公開の映画「MINAMATA」では、ジョニー・デップ演じる写真家ユージン・スミスの相手役アイリーンを好演している。※週刊朝日  2021年9月24日号より抜粋

    週刊朝日

    9/18

  • 17

    中田翔の問題は防げた? マック鈴木は米国で経験、チーム内の“揉め事”についての考え

    「マック」鈴木誠。  米国での野球生活を球場住み込みからスタートした男。メジャーリーグまで上り詰め、その後も国内外問わず多くのリーグでプレーした。文化、慣習の違いを数多く経験したマックが、いまだ問題視されている中田翔(巨人)を巡る一件について独自の視点から語ってくれた。 *  *  * ●「体育会系の縦社会におけるメリットを感じなくなったから反発したのではないか」  NPBのペナントレース争いが激化する中、いまだ沈静化の気配を感じられないのが中田問題だ。8月4日のエキシビションマッチの開始前、日本ハムの同僚に暴力を振るったとして11日に無期限出場停止処分となった後、20日に巨人へ移籍し翌日に試合出場を果たした。日本ハムの一員として事件への正式謝罪がなかったこと。巨人への移籍入団会見での謝罪となったこと。その他多くの要素が絡み合い、中田、日本ハム、巨人への批判が殺到した。 「巨人は戦力と考えて補強したということ。移籍や謝罪方法うんぬんに関しては中田君個人には関係ない。殴られた相手選手に関して言えば、我慢の範疇を超えてしまったのだろう。中田君は実績、知名度など素晴らしい選手。日本ハム、パ・リーグの顔であり、侍ジャパンのユニフォームも着た。将来的に監督、コーチになる可能性もあった。そういった先輩とうまく付き合っておくことも処世術として考えれば大事。今まではイジられても耐えるメリットが大きいと思ったから多少我慢していたのだろう。それを感じなくなり自分自身が平常心で野球ができないほどになったのかもしれない」 「昔から言われる体育会系の縦社会は、世間から見れば考えられないし、古臭いかもしれない。でもそれで救われている人が今でもたくさんいる。例えば、大学の先輩に進路や仕事を紹介してもらったりできる。これは体育会系だけでなく一般社会も似たようなもので就職活動ではいまだにOB訪問などがある。大手企業ほど学閥などは残っている。そういうのをゼロにするのはできない。米国や他の国ならそういうことは関係ない場合もあるけど、アジア圏の特殊な文化でこれが現実。早く生まれたから、早くから野球やっているからって上から来る人も多い」 ■「自分が手を出したらどれだけのことになるかを勉強していなかった」  中田は07年のドラフト1位で日本ハムに入団。これまで打点王3回、ベストナイン5回、ゴールデングラブ賞4回を獲得するなど、パ・リーグを代表する選手として全国区の知名度を誇った。18年からはキャプテンを任され、同オフにはFA権を行使せず出来高を含む3年総額10億円と言われる高額契約を結び名実ともにミスター・ファイターズとなった。しかし報道通りならば、チーム内で自由奔放に振る舞うようになったことで周囲からの反感が強まり始めた。成績不振も加わり、求心力が低下したことで今回の事件へとつながったという。 「建前もあるけど暴力は絶対ダメが大前提。話を聞くと小さい頃から中田君もヤンチャだったらしいから、その時に勉強しておかないといけなかった。僕なんて10代の早い段階で勉強した。こういうことをやったら大変なことになるとね。高校中退になったり、いろいろ面倒くさいことになった。中田君はそういった部分での勉強が足りなかったのかもしれない。自分が手を出したらどれだけのことになるのかを考えなかった」 「僕の父親は甲子園に出る姿を見たかったらしいから、退学になった時に心底、失望していた。その気持ちはプロになってメジャーリーグで投げようが、取り返すことができなかった。それに関しては今でもずっと後悔している。米国マイナーリーグ時代、英語が話せない時などは長距離移動は1人でポツンしていた。そういう時に色々なことを考えた。後悔、反省することもあったし寂しい気持ちも湧いて来た。そういった経験があれば自分の立場を考えることができたんじゃないかな。感情的になって手を出したりしなかったかもしれない」 ■「野球をやりに来ていないのならユニフォームを置いて去れ」  マック自身、若い頃からヤンチャで有名だった。兵庫・滝川二高の1年時に暴力事件を起こして自主退学。その後も傷害事件を起こしたことで野球を続けるために渡米を決心した経緯がある。英語も話せない16歳は多くの経験を重ねながら野球界最高峰へたどり着いた。その中では同一チーム内で人種差別が絡むケンカも経験した。そして何があってもプロにとって最も重要なのはチームの勝利、結果であることを学んだ。 「米国で生活し野球をやっていたので考え方が異なるかもしれない。そこを前提にして言わせてもらうと、基本的には『人対人』という2人の問題。例えば、米国では監督と取っ組み合いのケンカをする選手もいる。これは立場など関係なく、人格を否定された場合にこういうケンカになる。野球に関係ないことを言われたり、侮辱されたりするから。そういう一線を超えた時にケンカが起こる。日本ハムの件もイジられた選手が我慢できなかったとしたら、人格を傷つけられていたはず。当人同士の問題のはずだから2人で徹底的に話させるべきだった。そこには先輩も後輩もないと思う」 「また報道されているように、後輩イジりが常態化していて酷過ぎたのなら周りも知っていたはず。こんなに大きくなる前に誰かが収めれば良かった。『ペナントレース勝ち抜くため、日本一を目指す中でしょうもないことするな』とね。米国時代、移動中の空港でいざこざが始まって白人と黒人の人種間で別れて大ゲンカになった。球場内ではなく空港なので下手をすると逮捕者が出て試合もできなくなる。この時には監督が『何しに来ているのか考え直せ。野球をやりに来ていないのならユニフォームを置いて去れ』と怒鳴って収めた。結果論になるけど、日本ハムの件も早く手を打っておけばここまでになることはなかっただろう」  中田は巨人移籍2試合目となる8月22日のDeNA戦で本塁打を放つなど、さすがの存在感を見せた。しかしその後は結果を残せず、9月11日に二軍降格し調整を続けている。二軍戦では驚異的な打撃成績を残しているが実力を考えれば当然のこと。優勝争いをするチームからは一刻も早い一軍再合流が待ち望まれる。 「良くも悪くも中田君だったから世間で大きく取り上げられる。口で謝罪しようが何しようが、結局プロは結果で判断される。そうなった場合にはまた賛否両論が巻き起こるだろうが、それがスター選手の宿命。味方も敵も多いのがプロの一流選手。中田君には期待しています。野球で結果を残すしかない」  今回の一件を「なかったこと」にはできない。球界、世間を騒がせ、中田本人の評価を大きく下げたことは間違いない。明確なのは、グラウンドで結果を残すしか野球界で生き残るための道が残っていないということ。ここからどんな姿を見せてくれるのかに注目したい。そして中田の動向が3連覇を目指す巨人を左右するはず。多くのものを背負い結果を残す、本当のスター選手であることを証明して欲しいものだ。(文中敬称略) (文・山岡則夫) ●プロフィール マック鈴木(鈴木誠)/1975年5月31日兵庫県出身。193cm90kg。92年に渡米、96年7月7日のレンジャーズ戦でメジャーデビュー、98年9月14日のツインズ戦で初勝利を挙げる。マリナーズ、メッツ、ロイヤルズ、ロッキーズ、ブリュワーズなどでプレー。02年にはドラフト2位でオリックス入団。06年から再び海外でのプレーを経て11年は関西・独立リーグでプレーイングマネージャーを務めた。MLB通算117試合登板16勝31敗、防御率5.72。NPB通算53試合登板5勝15敗1セーブ、防御率7.53。 山岡則夫/1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍、ホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!公式ページ、facebook(Ballpark Time)に取材日記を不定期更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。

    dot.

    9/20

  • 18

    若者の“肉を食べない理由”に驚き 新世代の“欲望のベクトルの変化”をエンジェル投資家が語る

     かつての起業家が「意思ある投資家」として、次世代の起業家を育てる。そんな人たちを追った短期集中連載「起業は巡る」。第1シリーズ最終回は、エンジェル投資家・小笠原治(50)と孫泰蔵(48)の対談。AERA 2021年9月20日号の記事の2回目。 *  *  * ──かつて孫さんの兄・正義さんに1億6千万円投資したシャープ副社長の佐々木正さんみたいなすごい人もいました。 孫:大西さんが『ロケット・ササキ』(新潮社)で書かれてますよね。佐々木さんはすごい人です。あの頃の兄のピッチ(事業計画のプレゼンテーション)なんて、今聞いたら荒唐無稽もいいところですから。亡くなるちょっと前にお会いしたんですが、「お前ら、どんどんやれえ」みたいな最高に面白い方でした。あんな人は後にも先にもいません。 ──「お目目キラキラ」の人にホイホイお金を渡していたら、ただの「お金配りおじさん」になってしまいませんか。 小笠原:多分、そうはなりません。例えば今回の連載で紹介してもらったORPHEの菊川くん。最初はバッシュ(バスケットシューズ)にLEDを巻いて「これがロックだあ」とやってきた。その彼が今は「スマートシューズで健康な人を増やしたい」「一人でも多く雇用を生み出したい」と言っています。彼らはビジネスを通じて、すごいスピードで成長するんです。物心ついた時から日本がダメでしたから、親世代のような「日本スゴイ」の幻想を持っていない。ダメな日本が前提で「ほんの少しでも良くできないか」という強い動機を持っています。 ■欲望のベクトルが変化 「成功したい」という欲望のベクトルが「自分が金持ちになること」から「世の中を良くすること」に変わってきていて。その気概が面白く、魅力的なんです。つまらないことでは失敗しない雰囲気を持っています。自分が10代、20代の時、社会のことなんてこれっぽっちも考えていなかった。日本でも新しい文化が生まれているんだと。 孫:僕らの世代で元気がいい連中は、シルビアやプレリュードを手に入れるため、せっせとパーティー券を売っていた。今の10代、20代は車なんて全く興味がない。車がないとどこにもいけないロサンゼルスの若者ですら「ウーバーがあるから車はいらない」と言うんです。  あるいは、肉を食べない連中にベジタリアンなのかと聞くと「豚肉の場合、精肉を1キロ消費すると7.8キロの温室効果ガスが出る」と真顔で言います。彼らにとって環境や高齢化問題は我々よりずっと切実で、社会的課題にものすごくコンシャス(関心が高い)。「途上国で労働力を搾取している大企業の製品は買いたくない」とか「あの会社はマーケティングがうまいけど、自分はだまされない」とか。数年もすると、この世代が消費のメインプレーヤーになる。すると、社会課題と向き合うスタートアップがお客を獲得するようになるので、投資家も注目する。企業は価値を生むことが大事と言われますが、その価値が「お金」から「意味」に変わってきたのです。 (敬称略)(構成/ジャーナリスト・大西康之)※AERA 2021年9月20日号より抜粋

    1

    AERA

    9/20

  • 19

    総裁選出馬の高市早苗氏のネット人気が急上昇 「軍師」には安倍前首相、櫻井よしこ氏も

     自民党総裁選が9月17日、告示され、河野太郎ワクチン担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行の4人が立候補した。女性の候補者が2人というのは、総裁選史上、はじめてのことだ。  当初、下馬評では「大本命」だった河野氏だが、土壇場で野田氏が推薦人をそろえて出馬。総裁レースは混とんとしてきた。 「ネットだけなら、高市氏でしょうね」  こう話すのは、自民党の閣僚経験者だ。出馬表明の動画の再生回数に至っては、岸田氏が3万回、河野氏が22万回のところ、高市氏は211万回と圧倒的な数字だった。(9月15日現在)  総裁選の演説会がテレビなどで放送が始まった17日午後、ツイッターでは「#自民党総裁選」、「#高市早苗さんを支持します」がトレンド入りした。  河野氏のツイッター・フォロワーが242・2万人。安倍晋三前首相の227・9万人を上回り、政治家でもトップクラスだ。総裁選に向けて開設したアカウントでもすでに15・6万人のフォロワーがいる。  一方、ネットでは河野氏に肉薄する高市氏の総裁選用のアカウントは9・3万人のフォロワーだ。高市氏支援の国会議員は分析する。 「高市氏は総裁選の出馬会見なのに靖国神社参拝を断言し、中国との関係に言及するなど保守層に強く訴える戦略です。いわば、安倍政治継承を全面に打ちだした結果、高市人気につながっているのでないか。出陣式でも議員と代理の秘書で90人が集まった。これは議員票が90票という裏付けにもなる」  高市氏も総裁選の推薦人名簿には、古屋圭司衆院議員が選挙責任者、参院議員の山谷えり子氏などが名前を連ねるなど保守色が強いことがうかがえる。また推薦人は清和会から7人、竹下派2人、二階派5人、無派閥6人。安倍氏の清和会だけではなく、幅広く集っていることも、手応えにつながっている。  永田町でも高市氏が本命・河野氏、対抗・岸田氏の間に割って入るのではないのかという見方も広がっている。    その理由の一つがキングメーカー・安倍氏の「暗躍」だ。安倍氏は高市氏が出馬表明すると、そうそうに支援を打ち出すツイートをしている。 <コロナ禍の中、国民の命と生活を守り、経済を活性化する為の具体的な政策を示し、日本の主権は守り抜くとの確固たる決意と、国家観を力強く示した高市早苗候補を支持いたします。世界が注目しています。皆さま宜しくお願い申し上げます>。 「高市氏の評判がけっこういいので、安倍氏は『勝負できる』と言い、上機嫌だ」と清和会の国会議員は話す。しかし、懸念もあるという。 「わざわざ若手議員の携帯電話を鳴らして『高市氏を応援してほしい』と話していた。高市氏のことを思っての行動なのでしょう。しかし、若手議員からすれば、安倍氏から電話がきただけでびっくりする。ある議員は『直接、言われると、何も言えない』と苦悩の表情でした。つまり、プレッシャーととらえられてしまう。その存在がとてつもなく大きい安倍氏が、動くことで、反対に作用する危険性もある。今回、岸田派以外の派閥が基本的に自主投票となっているので、余計にそういう印象を与えてしまう。また高市陣営は出陣式で90人を超す人が集まったが、安倍氏の顔色を見て、駆け付けたという議員や秘書もけっこういると思います」(同前)  総裁選の出陣式では、高市氏は安倍政治とそっくりのフレーズ「日本を守る高市早苗、美しく強く成長する国、日本」と訴え、威勢よく攻める演説だった。総裁選に合わせた新刊本『美しく、強く、成長する国へ』(WAK社)も保守色が濃い。 「安倍氏もさることながら高市氏の思想的なバックボーンは、ジャーナリストの櫻井よしこ氏なんです。櫻井氏は安倍以上に急進的とも言われる伝統的保守論者です。その過激さから高市氏以上にインターネット上の保守層に支持を得ており、その界隈では大きな影響力を持っています。実際、高市氏と櫻井氏は数十年にわたる交流がある。著書でも櫻井氏の思想が色濃く反映されている。櫻井氏が高市政権誕生の暁には、政策ブレーンに就任するとの説も永田町では流れています」(官邸関係者)   今回の総裁選出馬に先立って作成されたポスターも、高市氏と櫻井氏の2連となっている。12月に高市の地元・奈良において二人で街頭トークを行う予定と記されている。 「櫻井氏が主張する夫婦別姓反対、女系天皇断固反対、強硬な対中政策なども含め、高市氏の公約は櫻井氏の思想にシンクロしている。河野氏が賛意を表明した同性婚に至ってはもってのほかという伝統的な家族観を重視する姿勢を共有していますね」(同前)  一方で、もう一人の女性候補、野田氏の訴えは対照的で女性目線を打ち出すような内容だった。 「日本は強い国だけではない。謙虚で誠実で国民からしっかり信頼を得られるよう、寛容で誰もがこの国に生まれてよかった、生きる価値があると思える国にしたい」  前出の高市氏陣営の国会議員がこう話す。 「高市氏が岸田氏や野田氏を支援するリベラル層から票をとるのは無理でしょう。総裁選でトップを走る河野氏から保守を強調して票をとることが得策だ。野田氏より先に出馬表明して準備もしているので、女性の支持も得られるはずです。高市氏の保守を打ち出す作戦でネットでも当たっている。安倍氏も力を入れて支援しているので、突っ走るしかない。一方で、野田氏の政策、語り口のほうが『女性目線でいい』と話す女性党員の声もありますね」  自民党の閣僚経験者はこう語る。 「立候補者が4人になったことで党員票は分散する。河野氏が党員票で圧倒的にリードして勝つというパターンはもはや厳しいと思う。1回目で過半数を誰もとれず、決選投票で河野氏か岸田氏となる可能性が大。党内の大勢は『決戦投票になったら、どっち?』という感じだな。高市氏が2位に食い込めるかは微妙です。総裁選はネットの人気だけでは決まらないからね」  29日の勝者は果たして誰になるのか? (AERAdot.編集部 今西憲之)

    13

    dot.

    9/17

  • 20

    「愛子さまに一番美しいものを」雅子さまもお忍びで通った 教文館で最後の藤城清治さん影絵展

     愛子さまのはじめてのお出かけ先だった教文館の『藤城清治影絵展』が、20年の歴史に幕を閉じる。計21回開催された影絵展には、雅子さまがお忍びで訪れたほか、美智子さまが鑑賞されたこともある。思い出とともに振り返った。 *     *  *  影絵作家、藤城清治さん(97)の作品展(影絵展)は2002年から、銀座・教文館の「ウェンライトホール」で毎年開かれてきた。教文館の改装にともない、同ホールがその役目を終えることから、影絵展も今年が最後となった。  幻想的な世界観で知られる藤城さんの作品。メルヘンな絵柄だけでなく、そこ投影された藤城さんの温かなまなざしも、幅広い年齢の人々を魅了してきた。  「戦争を経験した藤城先生は、弱い者に寄り添うヒューマニズムが根底に流れていて、一貫して変わらない気持ちを保ち続けていらっしゃる」(教文館渡部満社長)   雅子さまにとっても教文館で開かれる影絵展は特別な場所だった。雅子さまは、御用邸以外で、愛子さまのはじめてのお出かけ先に教文館の影絵展を選び、2002年10月15日に母子で足を運んでいた。  藤城さんは、『週刊朝日』(2019年5月17日号)のインタビューで、影絵展に訪れた雅子さまと交わした会話をこう話していた。  「『(愛子さまに)一番美しいものを見せたい』と(雅子さまが)はっきりおっしゃったのを覚えています。その言葉を嬉しく感じました」   当時、影絵に描かれるこびとや動物に手を伸ばす愛子さまを「だめだめ」と雅子さまが諭す姿に、藤城さんは「アクリル板の上からなら大丈夫ですよ」と声をかけた。少しの間だけ侍従の人が愛子さまを抱くこともあったが、ほとんど雅子さまが抱っこしたまま30分ほど鑑賞されていたという。愛子さまのご誕生をお祝いして制作した『夢がとぶ』の前に雅子さまは足をとめていたそうだ。  2007年、2018年にも雅子さまはお忍びで教文館を訪れるなど、度々藤城さんの影絵を鑑賞されてきた。  2003年10月16日には、美智子さまも教文館の影絵展を訪れ、1点1点の作品に足をとめて丁寧に鑑賞されていたようだ。藤城さんは65周年を記念する作品集において、美智子さまが訪れた時をこう回想している。  「前に原画を献上した『つり橋はぼくのハープ』(1988年作)のレプリカの前で、『この絵は私の一番好きな作品です』と申し上げると、『それはほんとうによかった』と大変嬉しそうにおっしゃっていただいたことが印象に残っています。また、『猫ずもう』(2003年作)の絵の中の、幟(のぼり)に書いてある“斜武里(シャブリ)″という字をご覧になって、いつかぼくのエッセイを読んでご存じだったらしく、『これは飼っている猫ちゃんの名前ですね』といわれたのにはびっくりし、また感激してしまいました」(『光あれ、影あれ─藤城清治 創作活動65周年記念作品集』<2冊組>、2008年)  『つり橋はぼくのハープ』は、献上後、記念に構図や色調を再現し、原画と区別するために少し大きめのサイズにして2014年にも制作しており、教文館での最後の影絵展でも展示されている。  藤城さんの影絵の原点は、終戦にある。1944年、慶応義塾大学経済学部の学生だった藤城さんは、20歳で海軍予備学生となり、翌年に九十九里浜沿岸防備につく。戦時中、娯楽が制限されていたなかで、勤労奉仕の工員らに人形劇を披露していた。だが、敗戦で、人形を海に流してしまう。戦後は物不足により、新たに人形を作ることができなかった。そこで、学生時代に演劇研究家の小沢愛圀(おざわよしくに)氏が影絵のことを話していたのを思い出し、紙とロウソクや裸電球1つで、光と影の表現を演出することができる影絵に着目するようになった。  藤城さんは、このコロナ禍の難局に立つ時世でも作品と向かい続けていた。今年の新作『ノアの箱舟』は、30年ほど前にNHKの番組企画で制作した作品をもとに、改めて作った影絵で、以前よりも波を高くし、動物を増やして描き直していた。ライフワークとして力をいれてきた聖書画の一つでもある。  コロナ禍のため、直接の取材は叶わなかったものの、AERA dot.の取材に藤城さんはこうコメントを寄せた。  「ぼくにとって教文館とは、自分の手の中で、自分の思い通りの展示ができる貴重な場所でありました。また、今のコロナ禍で描きたい、描くべきだと思ったのが新作『ノアの箱舟』です。97歳になった今、ぼくにこの難局のなかでどれだけの力が、緊張感や壮大さが出せるかたしかめてみようと思いました」  新作の影絵のみならず、コロナ禍ではアクリル板に動物を描いた新しいスタイルの作品も誕生した。藤城さんは「透明なままではつまらない」「その場を少しでも楽しい気分にさせたい」と思い立って、描いたという。  教文館の渡部社長は、20年間の軌跡を振り返る。  「展示会をはじめた当初は、藤城先生のメルヘンな世界を好む年代の高い人のファンがよく来場していましたが、後半の10年間は若い人がずいぶん来られるようになっていました。藤城先生の作風がメルヘンを残しつつ、戦争や原爆ドームなどの社会的な問題を意識して作品に取り入れるように変化した時期だったと思います。その一方で、時代の変化に伴い、絶えず新たな試みをなさってきたと思います」  「藤城清治 こびとといっしょ 生きるよろこび展2021」は、東京・銀座の教文館で9月26日まで開催。なお、藤城清治さんの影絵展は、今後も各地で開催する予定でいる。 (AERA dot.編集部 岩下明日香)

    dot.

    9/20

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す