■こういう状況だからこそ「攻める意識」を

 コロナ禍で厳しい環境はまだ続きそうだが、「こういう状況だと、つい守りの姿勢になってしまう性格なのは自分でもよくわかっているんです。だからこそ、あえて『攻める意識』を持つようにしています」と言う。

「重要なのは、働く人のモチベーションだと思うんです。お客様が入らず、売り上げがなくて暇だとしんどい。だからといって、簡単に居酒屋を閉めて、たとえば焼肉屋だとか、まったく別の飲食業に移行するようなことはできません。魚を扱う職人さんの、仕事に対するプライドやこだわりも強い。従業員さんたちのモチベーションを保ち、今までやってきたことを守りながら、新しいことをやっていかないと」

■「鮮魚BOX」経験ヒントに新業態の店舗を開発

 ヒントは、コロナ禍で生まれた「おまかせ鮮魚BOX」にあった。

 この商品が人気を呼んだ理由の一つに、骨抜きや三枚おろしなどの下処理をして、これまで魚をさばいたことがなかった人でも、手軽に新鮮でおいしい魚を楽しめるようにしたことがあった。

「『おまかせ鮮魚BOX』のために大量の魚の下処理をしたので、こうした作業を効率的に行うオペレーションの形ができてきたんです。『これは飲食店経営にも生かせる』と思いました」

 セントラルキッチンで魚の下処理を行ったうえで各店舗に送れば、店舗側の手間が減る。「居酒屋はどうしてもFLコスト(食材費と人件費)の割合が高くなってしまうんですが、このスタイルであれば人件費が抑えられます。フードコートのような出店であればワンオペに近い形でも運営できる。こうして、新鮮でおいしい魚を手軽に楽しんでもらえる、コロナの影響を受けない新業態を開発しています」

 今年の夏には、新しい業態の店舗を県外に出店する計画で、その後も今年、来年と新規の出店を続ける予定だという。

次のページ