■脂肪燃焼の不具合(5):カルニチン不足

 栄養に関して意識が高い方は、「カルニチン」という名前を聞いたことがあるかと思います。

 カルニチンは、アミノ酸が3つつながった比較的シンプルな構造をしており、体内でとても重要な役割を持っています。それは「長鎖脂肪酸を燃やすことをサポートする」という役割です。

 私たちの体脂肪は、脂肪細胞の内部の大部分を占める「脂肪滴」という形態で蓄えられています。その成分は中性脂肪がほとんどで、さらにその多くは炭素数が16~18という「長鎖脂肪酸」が占めています。その長鎖脂肪酸を燃やすときに、ビタミンCとともに、カルニチンが必須なのです。

「脂肪の燃焼機関」の実態が、細胞の中に数多くあるミトコンドリアであることは先に説明したとおりです。

 脂肪細胞に蓄えられた長鎖脂肪酸は、脂肪細胞の中にある脂肪を分解する酵素「リパーゼ」によって、「脂肪酸」と「グリセリン」というものに分解されて、血液中に出されていきます。そして血流にのって、各細胞の中へとり込まれていきます。

■カギを握るミトコンドリア

 ただし、細胞内に入っただけでは、まだ燃えることはできません。その細胞内の中にある燃焼機関である、ミトコンドリアの中まで入り込まないと、燃やすことができないからです。

 長鎖脂肪酸がミトコンドリアの中へ入り込むためには、ビタミンCとカルニチンの両方が必要となるのです。どちらか一方でも不足すると、長鎖脂肪酸は「脂肪の燃焼機関」であるミトコンドリアの中に入っていくことができないので、燃やしようがない、ということです。

 ちなみに、「長鎖」以外の脂肪酸である、「短鎖」と「中鎖」の脂肪酸の場合は、ビタミンCもカルニチンも不要になります。短鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸は、ビタミンCやカルニチンがなくてもミトコンドリアの中に入っていけるからです。

 以上、見てきたように、内臓脂肪が燃える体を取り戻すために、まずは5つの「栄養失調」を改善することから取り組んでみてください。「脂肪を燃やすサイクル」はここから始まります。

水野 雅登(みずの・まさと)
日本糖質制限医療推進協会提携医。両親ともに糖尿病家系だった自らの体の劇的な変化をきっかけに、糖質制限を中心とした治療を開始。97単位に及ぶインスリンの自己注射を不要とするなど、2型糖尿病患者の脱インスリン率100%という実績を打ち出す。糖質制限やインスリンを使わない治療法などの情報をブログ、Facebook、Twitterや講演会などで精力的に発信している。首都圏を中心に健康診断での診察も行っている。