漫画家・鈴ノ木ユウさん×出産カメラマン・繁延あづささん対談――出産、そして家族のものがたりを紡ぐということ<後編>
わが子の誕生を目の当たりにして漫画『コウノドリ』を描きはじめた、漫画家の鈴ノ木ユウさんと、ライフワークとして「出産写真」を撮りつづけている写真家の繁延あづささん。同世代で、お子さんの年齢も近いお二人が、それぞれの作品への思いに加え、子育てのこと、家族のことについて語り合いました。今回はその後編です。
* * *
●親にとって子どもは「先生」
――取材前の打ち合わせで、繁延さんが最近の『コウノドリ』が少し変わってきたとおっしゃっていましたよね。
繁延さん(以下、繁延):ええ。これは完全に一読者視点なのですが、なんとなく作品の雰囲気が変わってきているように思えるんですよね。
鈴ノ木さん(以下、鈴ノ木):そうですか。どんな風にですか?
繁延:医療者からの目線より、家族からの目線が強くなってきたというか、やさしい感じがする。物語の展開を重視するよりも、一人ひとりの気持ちを描かれているシーンが増えた気がしていました。そんなことはないですか?
鈴ノ木:どうだろう……プライベートの影響もあるかも。息子がだんだんしゃべられるようになって、いろんな顔を見せるようになったのも大きいかな。僕は子どもと二人で話をする時間をとても大切にしているし、そういう毎日のことに影響を受けているのかもしれないのですね。
繁延:わかります。私も、自分の出産直後の出産撮影と今の撮影では、目線がぜんぜん違います。何気ない子どもとの日々の会話や、子どもと過ごす時間の中で感じることが、私自身の目線になっている気がして。今の子育てが今の出産撮影への目線につながっていると思っています。
鈴ノ木:やっぱり、子どもを育てることで得るものは大きいです。僕は「子どもは先生」だと思っていますから。
繁延:子どもは先生……その通りですね。
鈴ノ木:いっしょに仕事場まで手をつないで行って、そこから子どもが学校に行くんですけど、そこからが彼の時間で、ひたすら道端で草を取ったり……20分も前に学校に向かったはずなのに、遅刻したりするんですよ。その間、何してたのかって思いますけど、きっと彼にとってはその時間がすごく大切なのかもしれない。
