翁長雄志・沖縄県知事 (c)朝日新聞社 @@写禁
翁長雄志・沖縄県知事 (c)朝日新聞社 @@写禁

 安倍晋三首相の独断的なやり口は、沖縄ですでに問題になっている。

 昨年11月の沖縄県知事選では、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する翁長雄志(おながたけし)新知事が勝利した。

 翁長氏は、もともとは自民党に所属していたベテラン政治家。だが、旧来の保守系政治家とは違って「基地は沖縄経済の阻害要因」と明快に言い切る。自身の14年間の那覇市長の経験から、基地返還後の経済効果が大きいことを知っているからだ。

 県の試算では、1987年に全面返還された米軍牧港住宅地区(那覇市)は、約20年で約100倍となる1万7千人の雇用を生み、雇用者報酬の合計は約70倍の518億円(推計)に増えた。沖縄経済に占める基地の依存度も、復帰直後の72年は15.5%だったが、観光業などの発展で2011年度には4.9%にまで低下している。

 沖縄取材を続けるジャーナリストの高野孟(はじめ)氏は言う。

「知事選では、財界の一部も翁長支持にまわり、安倍政権と米国政府を驚かせた。しかも昨年は県知事選だけでなく、名護市長選、名護市議選、那覇市長選、衆院選の4小選挙区のすべてで沖縄県民は移転反対派を勝利させた。安倍首相が上から目線で基地問題を進めるやり方に、保守・革新を超えた『オール沖縄』で跳ね返したのです」

 これが安倍首相の逆鱗(げきりん)に触れた。仲井真弘多(ひろかず)前知事と着々と進めていた辺野古移設の作業に、黄信号が灯ったからだ。「仲井真さんでないと、沖縄は発展しない!」とまで前知事を持ち上げていた安倍首相は、カネと権力を使って“沖縄いじめ”を始めた。

 14日に閣議決定した国の予算案では、約3800億円と見積もられていた沖縄振興予算が、3340億円へと大幅減額。要望を上回る予算を付けた仲井真前知事時代とは雲泥の差だ。

 これだけではない。翁長氏は昨年12月24~26日に上京し、安倍首相や菅官房長官に就任挨拶(あいさつ)のための面会を求めたが、官邸は拒否。会えたのは山口俊一沖縄・北方相だった。

 年明けの6~8日には、基地問題ではなく、サトウキビの交付金について西川公也農林水産相にも面会を求めたが、これも実現しなかった。この間、翁長氏は県東京事務所でじっと待機を続けていた。

 菅官房長官は、14日の記者会見で翁長氏との面会予定について聞かれると、

「私は会いません」

 と素っ気なく回答。かつて自ら沖縄に出向いてまで仲井真前知事との会談を求めた対応との違いに、沖縄県民の怒りは沸騰している。

 地元選出の玉城デニー衆院議員は言う。

「安倍首相は大人げない。振興予算全体では厳しい査定をしておきながら、辺野古への移設経費は倍増させている。移設に反対する沖縄の民意を真摯に受けとめていない。予算の付け方が県民を愚弄(ぐろう)している」

 14日夜から15日未明にかけて、政府は辺野古沿岸部での海底ボーリング調査の再開を強行した。座り込みを続ける反対派と県警が繰り返し衝突し、80代の女性が転倒して頭部を打ち、病院に搬送される場面もあった。深夜の作業強行について、座り込み集会の責任者である沖縄平和運動センターの山城博治議長は「堂々と昼間にできない後ろめたさが安倍首相にある証拠だ」と憤る。

週刊朝日 2015年1月30日号より抜粋