川俣町に住む新関まゆみさんの自宅は11年12月に除染した。ところが、本誌が8月に測定したところ、地表から1メートルの空間線量は最高で毎時0.4マイクロシーベルト以上だった。

 そして線量計を手渡して2階の寝室を測定してもらったところ、毎時0.26マイクロシーベルトもあった。そこで一日7時間半過ごすというから、それだけで年間被曝量は0.7ミリシーベルトを超えてしまう。

 新関さんによると、原発事故前の周辺の放射線量は毎時0.04マイクロシーベルト程度だった。震災前と比べて10倍近い放射線がある環境で毎日生活するのは不安だという。

「いまは東京で学生生活を送る娘とここで一緒に暮らしていた頃、『私はメッチャ被曝してしまっているから、もう子供は産めないね』と話していました。それで、2人で山形の米沢に避難したこともありました。本来なら子供を集団避難させるような状況。そうしたことも一切検討せず、除染をないがしろにする方向へ進んでいる」

 住民だけではない。福島県の各自治体も、環境省が打ち出した突然の方針転換に困惑していた。ある市の除染担当者が打ち明ける。

「空間線量で毎時0.23マイクロシーベルトを基準にする除染方針は、いままで環境省がさんざん言ってきたこと。それを変更するとは、何をいまさらという感じがします。そう思っているのはウチだけでなく他の自治体でも同じですよ。だいたい、ガラスバッジで住民の本当の被曝数値を出すなんて無理。私たちの市では、従来どおり毎時0.23マイクロシーベルトを基準にやります」

 今回の方針転換のベースとなった調査に参加した郡山市ですら同様だ。

「郡山市は『ふるさと再生除染実施計画』の中で毎時0.23マイクロシーベルトを除染の基準にしています。この計画を変えるつもりはありません。それに0.23という数値を出したのは、環境省ではなかったのでしょうか?」(原子力災害総合対策課)

週刊朝日  2014年9月5日号より抜粋