環境省は8月1日、これまでの空間線量から個人線量を重視する新たな方針を発表。福島県内の4市で行った調査の結果をもとに、空間線量が毎時0.3~0.6マイクロシーベルトの場所の住民で年間1ミリシーベルト程度の被曝になるとし、0.23は除染目標ではないと主張し始めたのだ。ジャーナリストの桐島瞬と本誌・小泉耕平が取材した。

 だが、被災地からは、まやかしの方針転換だと不満が噴出している。

「国がやろうとしているのは、除染がうまくいかなかったから基準を引き上げるということ。なし崩し的に除染を放棄するつもりではないか」(郡山市の住民)

 三春町に住む橋本加代子さんもこう怒る。

「個人線量といっても、家族全員が違う。近所の学校に歩いて通う子供と、10キロ離れた郡山の会社へ車で通勤する私とでも被曝量は異なります。第一、個人線量を測るガラスバッジは子供だけに配られ、大人は持っていない。子供にしても、首からぶら下げるのは嫌だと常時身につけている子のほうが少ないのです。そんな状況で、年間1ミリシーベルトを下回る人が多いから、除染はしないと言われてもまったく説得力がない」

 橋本さんの高校生の娘は、原発事故が起きた11年の7月から9月の2カ月間で、おそよ0.5ミリシーベルトの被曝をしたことがわかっている。その後、被曝量は徐々に下がっているとはいえ、いまだ自宅やその周辺は除染されていないという。

「毎時10マイクロシーベルトを超えるようなホットスポットがまだあるのに」

 と、橋本さんは国へ早期除染を訴える。

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