AERA dot. 5th anniversary

アベノミクスのバイブル? 『日本人を縛りつける役人の掟』の著者は「現代の黒田官兵衛」

このエントリーをはてなブックマークに追加
dot.

インタビューに答える原英史氏、今年1月に設立された『NPO法人万年野党』理事

インタビューに答える原英史氏、今年1月に設立された『NPO法人万年野党』理事

 第2次安倍政権がスタートして以来、株価、経済成長率、有効求人倍率など、国の経済状況を示す指標は確かに大きく改善したようにみえる。しかし、庶民にとっては消費増税と物価高が重くのしかかり、好景気を実感するどころか、不満や不安の声が湧き起こっている。どうすればいいのか。大切なのは、国家の仕組みやルールをちゃんと知り、変えていくことだ。日本という国は様々な見えないルールや仕組みに縛られた法治国家。その法治国家を動かすのが政治家であり役人である。そんなことは百も承知だ!という声が聞こえてきそうだが、そこにある歴史の産物、「岩盤規制」の実態を本当に理解している人は少ない。

■『役人の掟』=「岩盤規制」がまるわかり!

「岩盤規制」とは何か? それは、様々な業界に存在する、岩盤のように強固な規制のことだ。この規制から既得権益を得られる業界団体や省庁などが存在し、規制の緩和や撤廃を阻んでいる。『日本人を縛りつける役人の掟』(小学館)の著者、原英史氏は、2007年から規制改革担当大臣補佐官も務めた元経産官僚だ。09年に退職後、政策コンサルティング業に転じ、安倍内閣の成長戦略、「国家戦略特区」などに政府のワーキンググループ委員として関与。現在は、複数の自治体や政党の政策顧問も務める「政策づくりのプロ」として、「岩盤規制」の問題にも取り組んでいる。国や自治体で大きな改革が行われるとき、その裏で参謀役を務める、いわば現代の黒田官兵衛ともいえる人物だ。『日本人を縛り付ける役人の掟』は、岩盤規制の実態を、「薬をネットで売ってはならない」「路上で弁当を売ってはならない」「株式会社は保育所を運営してはならない」など、だれもが疑問に感じる21の「役人の掟」として取り上げながら解説。よくある役人出身者の暴露本とは一線を画している。

「掟」のひとつ、「タクシー料金は自由に決めてはならない」を紹介しよう。

 タクシーの運賃や台数を定める「タクシー規制」をご存じだろうか。今年4月、消費税が8%に上がり、多くのタクシー初乗り運賃が10円~20円高くなった。一般的に商品やサービスを提供する店が増えれば競争になり、価格は下がる。しかし、デフレ経済が続く中でもタクシーの初乗り運賃は上がり続けてきた。東京都を過去30年間さかのぼって調べると、80年代前半の430円から2012年の710円まで右肩上がりだった。

 政府はこれまで数回、タクシー規制に対して「中途半端な規制緩和」を行ってきた。運転手の労働条件と交通の安全を守るという名目で。しかし、この「中途半端な規制緩和」こそが、「世界一高いタクシー料金」による利用者のタクシー離れとドライバーの収入低下という、利用者にもドライバーにも負の効果をもたらす結果となった。この「岩盤規制」は、競争せずとも利益の上がる環境に馴染んだ昔ながらの事業者と、規制権限を握りたい官庁との結託と考えざるを得ないという。

■「岩盤規制」はビジネスチャンスの宝庫!

 しかし、「岩盤規制」のある分野は、見方を変えればビジネスチャンスの宝庫といえる。実際に安倍政権は、農協など本書に書かれたいくつかの「岩盤規制」にメスを入れた。本書はアベノミクスの「次の一手」を読む上で参考になるかもしれない。その意味でも、ビジネスパーソンやこれからの日本の経済、社会を支える女性たちにおすすめだ。

 著者の原氏は、今年1月に設立されたNPO法人万年野党の理事に名を連ねる。会長は田原総一朗氏、理事長は元規制改革会議議長の宮内義彦氏。立ち上げの目的は、「特定の利権ではなく、一般国民の利益のため、政府・政策を監視し、対案を提示すること」だという。本書とともに、その動向を注目したい。


トップにもどる 国内記事一覧

続きを読む


このエントリーをはてなブックマークに追加