物価目標(インフレターゲット)を設けて、大胆な金融緩和を! 安倍晋三首相がそう訴えると、株高と円安に大きく動き始めた。この政策の理論的な支柱となっているブレーンが、「ミスター円安」こと浜田宏一・エール大学名誉教授だ。

 新政権になって内閣官房参与に招かれた浜田氏。気になるのは、やはり安倍首相との関係だ。出会いについて聞くと、「内閣府のシンクタンクの所長になった2001年、安倍さんは、官房副長官でした。そのときに知り合ったのが縁です」(浜田氏)。

 昨年11月のある夜。ひとつの“事件”が起きた。米国の自宅に、安倍氏から突然、電話があったという。「1月に出版した書籍の最後の校正をしていたときでした。まさか安倍さん本人から直接電話がかかってくるとは思ってもいなかったから、緊張してうまく話せませんでした。国債の買い取りなど金融政策に関して意見を求められました」。

 浜田氏は、その夜のうちに考えをまとめて、1枚半くらいのメモを書いてファクスしたという。「安倍さんは、週末に討論会を控えていると言っていた」。

 これが、昨年の衆院選の選挙演説に登場する「お墨付きファクス」となるのだ。

週刊朝日 2013年2月8日号