2010年の参院選の際、各党はマニフェストを掲げた。その実現度はいかに (c)朝日新聞社@@写禁
2010年の参院選の際、各党はマニフェストを掲げた。その実現度はいかに (c)朝日新聞社@@写禁

 ニュースキャスターの辛坊治郎氏は、テレビ番組にゲストとして登場してもらう政治家に「うれしい政治家」と「最悪の政治家」の二つのタイプがいるといい、具体的に次のように指摘する。

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 キャスター稼業20余年、スタジオにご登場いただいてうれしい政治家のタイプは、「新聞記事になる発言をする人」だ。

 自分の番組に登場した政治家の一言が、翌日の朝刊の政治面に載ることは、テレビ屋のひそかな楽しみでもある。そんな「楽しみ」を与えてくれる政治家が、テレビ屋に好まれるのは必然だろう。

 どんな場合にテレビでの政治家の発言が活字になるのか? 本当にテレビを熟知している政治家の中には、「初出」の発言を土産にスタジオに入ってくれる人もいる。その政治家が、めったにテレビに出ない「レア政治家」で、しかも時代の寵児なら最高だ。これほど「特上」でなくても、その時々、社会的に関心の高いテーマについて、それなりに注目されている政治家が「初出」の発言をテレビ番組で行うと、当然それは新聞記事になる。テレビ制作者にとってこれほどありがたい話はない。その政治家にとっても、それが「失言」でない限り極めて政治的に有効で、「テレビが政治家に利用されているに過ぎない」という批判も古くからある。

 逆にテレビ屋にとって最悪の政治家もいる。一例を挙げよう。

 昨今の尖閣を巡る騒動で、キャスターが政治家に対して「どうやって、尖閣諸島の実効支配を強めますか?」と聞いたとする。この時に、テレビ屋が頭を抱えるのは、答えに1分以上を費やした揚げ句、「実効支配を強めるために、実効支配を強めていきます」と、全く無意味な発言に終わってしまう政治家だ。

 中には3分、5分とテレビの世界では「長時間」しゃべり続けた発言のすべてを文字に起こしても、一切具体的な内容が含まれていない、というある種の「芸」の域に達している政治家もいる。野党に揚げ足を取られないことが至上命題の国会答弁ならいざ知らず、生放送のテレビでこれをやられると、キャスターは本番中に政治家の首を絞めたくなる。

(週刊朝日2012年10月19日号「甘辛ジャーナル」からの抜粋)

週刊朝日 2012年10月19日号