除染作業員のBさんが1カ月半近く「待機」させられていた「寮」。除染作業の募集に応じて来るのは、独身や中高年が多いのが特徴だ(撮影/編集部・野村昌二)
除染作業員のBさんが1カ月半近く「待機」させられていた「寮」。除染作業の募集に応じて来るのは、独身や中高年が多いのが特徴だ(撮影/編集部・野村昌二)

「原発のがれき処理、除染作業の仕事がある」――。募集に応じて来たのに、実際は仕事がなく、給料も出ない。モラルのメルトダウンが終わらない。

<福島第一原発でのがれき撤去。日当/1万5千~3万円。寮と食事がつく>

 2012年11月中旬、離婚して住んでいた家を出ていかなくてはならず行き場をなくしたAさん(55)は、スマホで見つけたこの求人に飛びつき、電話をした。

「すぐにでも働けるから来てください」

 電話口の男はそう言い、Aさんは西日本から車を運転して福島に向かった。茨城と福島県境の町にあるコンビニの前で待っていたのが、求人していた建設業の中年男性だった。ところが、最初に連れていかれたのは近くの漫画喫茶。ここで待つように言われ、12時間近く経ち「住むところが確保できた」と連れていかれたのが、プレハブだった。

 Aさんは驚いたが、帰る家もお金もない。倉庫として使われていたと思われるプレハブには、工具類が置かれたまま。床にベッド用のマットレスが置かれ、そこで寝るように言われた。
 

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