現在、格納容器まで落ちているメルトダウンした福島第一原発の燃料。2月19日の参院予算委員会での質問で生活の党の森ゆうこ氏が、東電の廣瀬代表執行役社長に福島第一原発の現状を追求したが、テレビのコメンテーターとしても活躍中の作家、室井佑月氏は、その対応について言及した。

*  *  *

 本当に本当に大丈夫なのか。このままジャブジャブ注水して、海に汚染水を流しつづけるのも不安だし、なにより核燃料が、本来、核燃料を仕舞っとく場所じゃない所にあるのが不安だ。という不吉なことを考えていたら、森さんがズバッと聞いてくれた。

「これ(核燃料)が地面に到達したら、その後はどうなるんですか」

 廣瀬社長は「そのようなことはないと思っている」と前置きをつけたけど、「恐らく環境に大きな影響を及ぼすことが考えられます」と答えた。ぎゃっ。だとしたら、核燃料が今より下に落ちてゆくということは、考えられないことじゃなくて、考えたくないことなんじゃないのか。

 つい最近も、同じように思うことがあった。2月17日、福島県の佐藤知事が、放射線量の新たな安全基準策定を政府に要請した。「あくまでも(除染目標である)1ミリシーベルトを目指すが、苦慮している。達成できる数値を示してほしい」だって。つまり、基準値を上げろってことだ。あなたの県の子供たちに、ちらほら甲状腺のがんや異常が見つかってきているというのに。

 そのことは考えたくないこと? 人としてどうよ?

 話を戻して、その後、森さんの質問は、4号機を安全だという専門家の怪しさに及んだ。そして最後に安倍総理大臣に、「とても収束と言える状況ではないというのが、我々安倍政権の認識であります」といわせた。

 翌日、「首相・福島第一原発収束宣言撤回」と大ニュースになるのかと思った。が、ならなかった。国やメディアが携わっている多くの業界関係者が、この問題について考えたくないみたい。国民にも考えさせたくないみたい。

週刊朝日 2013年3月15日号

著者プロフィールを見る
室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

室井佑月の記事一覧はこちら