「原発反対」とあるテレビ番組で言った司会者が問題になり、詫びを入れる事態となった。作家の室井佑月氏は、この件に関して疑問を投げかける。

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 朝のワイドショーの有名司会者が番組の中で「原発反対」という発言をし、問題となったみたいだ。司会者の方は、後日、番組内で、「選挙の争点の一つである原発問題について、司会者の立場としては中立性を欠く発言をしてしまいました」。そうお詫びすることになった。

 原発問題はたしかに今度の選挙の争点の一つだ。でも、選挙の争点であるというのは小さなこと、それ以上の国の大問題じゃない?

 別に司会者の方は、「わたしは原発反対だから××党を応援する」といったわけじゃないのだ。孫もいて不安に思うっていったぐらいで謝らなきゃいけないって、おかしくない?

 このことがあってからテレビでは、原発についてどう思うのか、具体的なコメントは良くないこととなった(はっきりいわれたわけではないので、言葉通りのニュアンスです)。

 衆議院選が近いからだというけれど、あたしは納得できない。不自然じゃん。

 選挙でどいつが受かろうが、どいつが落選しようが、たぶん誰も事故を起こした福島原発の心配を無くしたりできない。ってことは、いつ話題にしてもいいことなんじゃないの? むしろ、いつも話題にしなきゃいけないことなんじゃないの?

週刊朝日 2012年12月21日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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