ダンボールゴム銃を持つ今野さん。一見コワモテだが石巻屈指の愛されキャラ
ダンボールゴム銃を持つ今野さん。一見コワモテだが石巻屈指の愛されキャラ
世界一殺傷能力の低いダンボール銃。弾は輪ゴム
世界一殺傷能力の低いダンボール銃。弾は輪ゴム
子どもたちの心をつかんで離さないダイナミックな遊具
子どもたちの心をつかんで離さないダイナミックな遊具
東京の展示ではアクリルのプレートスタンドも
東京の展示ではアクリルのプレートスタンドも

 強化ダンボールを用いた梱包会社を経営しながら、依頼があれば遊具から、殺傷力ゼロのダンボール銃までなんでも作る。石巻に住む今野英樹さんは地元で「知らない人はいない」、というのは大げさだが、それに近い知名度の持ち主だ。

 今野さんは、依頼をそのまま受けるだけではなく、自分の意思をそこに描く。ダンボールを使った商品が世の中にたくさんある中で、「自分だからこそ、なにが提供できるか」をとことん突き詰める。さらに、人の役に立ちながら、同時に「インパクトとストーリー性」を持った「面白さ」があるかどうかにこだわる。

 例えば、彼が作ったダンボールの滑り台は、吠える恐竜の口から子どもが飛び出してくるかのように見える。子どもたちは我先にと駆け寄り、次々と滑り出してくる。
 また、縁日の射的用にと本物さながらのダンボール銃を作るだけでなく、銃を入れるアタッシュケースも強化ダンボールで作り上げてしまう。ケースを開き、スナイパーのごとく銃を取り出す。弾倉に込める(引っ掛ける)のは輪ゴムだが「弾」と呼ぶのがこの遊びのお約束だ。子どもだけではなく、大人も思わず「ニヤリ」としてしまう、このこだわりが今野さんの作品の魅力となっている。

 石巻にも大きな被害をもたらした東日本大震災では、直接の津波の被害は免れたものの、今野さんも被災者のひとりとなった。だが、持ち前の行動力を発揮し、避難所には強化ダンボールで作られたロッカーや間仕切りなどを。また、小学校の臨時教室にはやはりダンボールの机や椅子を作って提供した。

 強化ダンボールは強度だけでなく、加工の自由性が高い。その性質を活かして、現場で今、必要とされるものを作り続けてきた。
「必要があるから発想が生まれる」と話す今野さん。
 同じ紙皿を繰り返し使う被災生活で、しだいによれよれになっていく紙皿を支えるためにアクリルの支えを考案。落ち込みがちな被災生活を少しでも明るく楽しく過ごせるようなデザインを心がけ、お年寄りでも持ちやすいように、丸い穴を開けるなどのこだわりここでも発揮している。

 今野さんが、多彩なリクエストに応え、ものづくりに励むのには理由がある。震災後、生活のため石巻をやむなく離れる人は多い。だが、子どもたちや若者世代が石巻を離れてしまっては次世代の街づくりにもその影響が及ぶ。若い世代が生まれた町に誇りを持ち、石巻を離れないよう「自分たち大人が若い世代の憧れとなれるよう、仕事も日常も活き活きしていることが大事」だと考えている。地元企業を経営し、ユニークな品々で人を楽しませる。子どもたちにそういう姿を見てもらえるよう、今野さんはいつも笑顔で忙しく飛び回っているのだ。

関連URL
今野さんの作品など石巻で活動するアーティストの作品展
「石巻の手しごと展(於・南青山ギャルリーワッツ)」9月14日(日)~20(土)
https://www.facebook.com/#!/ishinomakinoteshigoto