言語学者・金田一秀穂が今「若者言葉」より気になっているもの 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

言語学者・金田一秀穂が今「若者言葉」より気になっているもの

週刊朝日
言語学者 金田一秀穂(きんだいち・ひでほ)1953年、東京都生まれ。83年、東京外国語大学大学院博士課程修了。日本語学専攻。中国大連外語学院、コロンビア大学などで日本語を教える。ハーバード大学客員研究員を経て、現在、杏林大学外国語学部教授。専門は日本語教育、言語行動論、意味論。近著に『このい「言い回し」で10倍差をつける』(小学館新書)。8月8日、『金田一家、日本語百年のひみつ』(朝日新書)が発売予定(撮影/写真部・工藤隆太郎)

言語学者 金田一秀穂(きんだいち・ひでほ)
1953年、東京都生まれ。83年、東京外国語大学大学院博士課程修了。日本語学専攻。中国大連外語学院、コロンビア大学などで日本語を教える。ハーバード大学客員研究員を経て、現在、杏林大学外国語学部教授。専門は日本語教育、言語行動論、意味論。近著に『このい「言い回し」で10倍差をつける』(小学館新書)。8月8日、『金田一家、日本語百年のひみつ』(朝日新書)が発売予定(撮影/写真部・工藤隆太郎)

金田一秀穂さん(左)と林真理子さん(撮影/写真部・工藤隆太郎)

金田一秀穂さん(左)と林真理子さん(撮影/写真部・工藤隆太郎)

 言語学者の金田一秀穂氏が、作家の林真理子氏と対談した。

*  *  *
金田一:僕、あんまり腹が立たないほうなんですが、昔すごく腹が立った発言があって。柳沢(伯夫)さんという厚生労働大臣をやってた人がいたでしょう。「女性は子どもを産む機械だ」と言った人です。

林:はい。

金田一:そこまでは「そういう考え方をする人もいるのか」ぐらいの気持ちで聞いてたんですが、国会で追及されたときに、「私は国語の力が十分ではない」と言ったんです。そしたら、周りが「へへへ」と笑うわけですよ。それにものすごく腹が立ったんです。政治家という、言葉で生きているような人、しかも大臣までやってる人に、そんなこと言ってほしくないですよね。ほんとは国語の成績だってよかったわけでしょう。

林:東大出てたりするわけですもんね。

金田一:言葉というものの価値を、政治家がバカにするなよ、と思ったんです。言葉尻をとらえることがいいことだとは思わないけど、この発言はあんまりだと思いましたね。

林:自分の母語に対して失礼ですよ。

金田一:だから、ものを書いてらっしゃる林さんのような方たちがきちっとしてくれるだろうと思って、安心してるんです。

林:私、会話の部分では「マジ?」とか書いたとしても、地の部分では絶対に使っちゃいけないと思ってますよ。

金田一:でも、そういうのが使えるようになると、またおもしろいかもしれないですよね。僕は話し言葉で使うものは、なるべく書き言葉でも使えるようにしようと思ってるんです。話し言葉と書き言葉の距離を、林さんのような方にどんどん縮めてほしいですね。

林:私、この間若い女性向けの小説を書いたんですけど、いまどきの女の子風の言い方で書いたら、「こんな言い方しません」って若い編集者から何度も直されて、恥ずかしかったです。でも、今の20代のリアルな言葉遣いを使うのもちょっと……。

金田一:それは難しいですよね。ライトノベルっていうんですか、やたら改行が多くてセリフばっかりの小説があるでしょう。僕、さすがについていけないんですけど、言葉を採集するという点では、とても役に立つんです。それから、これは道で聞いたんですけど、今の若い人たち、「パネェ」って言うんですよね。

林:どういう意味ですか。

金田一:「ハンパねえなー」って意味です。「ハンパない」というのは「とってもすごい」という意味らしくて、これもまた若者言葉ですね。

林:ハンパなく省略してますね(笑)。いま、ネットでも独特の言葉がありますよね。「キターーーー!!!」とか。

金田一:どんどん先にいっちゃってますよね。でも、わからなくていいんですよ。いまの時代に生きてる若者の同志としての隠語のようなものなんでしょう。「パネェ」で心地よく通じちゃってるわけだから、それが正しい言葉なんですよ。若い世代には若い世代の言葉があるし、その語彙で自分たちを表現し、相手を理解できるのであれば、それでいいじゃないって僕は思うんですね。

林:「パネェ」と言っている若者たちも、厳しい就職戦線を通って社会に出たら、そればっかり言ってられないわけですよね。

金田一:今の若者たちは、わりと使い分けが上手なんじゃないかと思うんですよ。ここは「パネェ」と言っちゃいけないとわかって、二重言語生活をすると思うんです。むしろビジネスで僕が気になっているのは、グダグダ敬語が多すぎること。僕は「週刊朝日さん」という言い方が大嫌いなんです。「さん」はいらないでしょう。人の名前じゃないんだから。

林 でも、同業者同士って、「読売さん」とか「毎日さん」って言いますよね。「三菱さん」とか「JALさん」とか。

金田一:そういうのダメですね。区役所や駅とか、「新宿さん」「渋谷さん」とか言い合っているらしいですよ。

林:それは可愛いかもしれない。「錦糸町さん」とか(笑)。

金田一:おもしろがってる分にはいいんですけど、丁寧にすればいいと思っていて、そうじゃないだろうと。若者言葉より気になりますね。

週刊朝日  2014年8月1日号より抜粋


トップにもどる 国内記事一覧

続きを読む


おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事
あわせて読みたい あわせて読みたい