「保護者には接客業の感覚で接します。『先生が暗かった』『挨拶してくれなかった』など園に投書があるから」と話す若い保育士も(撮影/写真部・岡田晃奈)
「保護者には接客業の感覚で接します。『先生が暗かった』『挨拶してくれなかった』など園に投書があるから」と話す若い保育士も(撮影/写真部・岡田晃奈)

 待機児童問題の解決に不可欠な保育士が、いま不足傾向にある。原因のひとつは、保護者との人間関係にあるようだ。

 朝の登園時間、子どもたちを迎えていた若い保育士が、慌てた様子で40代の主任保育士Aさんのもとに駆け付けた。ある母親が、子どもの太ももの黒ずみを見せながら、声を荒らげてこう詰め寄ったのだ。

「昨日お風呂で気づいたけど、保育士さんに叩かれてできたあざじゃないですか」

 だが、その子の黒ずみを見て、ピンときたAさんは、職員に「赤ちゃんの肌に使っても大丈夫なクレンジング用品を買ってきて」と、薬局に走ってもらった。母親の目の前で拭き取ると、黒ずみはするりと消えた。原因は、家で紙おむつに名前を書くときに使用した水性ペン。汗やおしっこでインクが移ったというわけだ。母親は気まずそうな表情で、謝りもせず去っていった。

「お母さんの前で証明できたので納得してもらえたが、もしうまく黒ずみを落とせなかったらどうなったことでしょう」

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