小川さんがいちばん心を痛めているのは、今年1月に脳内出血で倒れ半身不随になった母親のこと。リハビリなどの介護は、父親任せになっている。


「平日は実家に帰る時間がなく、やっと休日に訪ねる程度しか関われません。父には申し訳ない気持ちでいっぱいです」
 小川さんだけではない。アラフォー世代にとって、介護の問題が働き方にも大きな影響を与えそうだ。

●次は私もリストラに

 鈴木めぐみさん(43歳、仮名)は、総合職として人材関連の会社に入社して、20年。会社は吸収合併を繰り返しながら名前や形態を変えてきたが、ずっとクリエーティブディレクターとして仕事をしてきた。
 いまや4人のチームを束ねるグループリーダーで、管理職になった。業界全体では仕事の単価は低くなったため、その分、量をこなす必要もあって、ノー残業デー以外は、ほとんど終電で帰宅する。
「大げさに言えば、24時間ずっと仕事のことを考えているという感じです。でも最近、このままずっと働かなければいけないのかって、思い悩むことも多くなりました」
 それはある騒動がきっかけだった。同じポジションにいた55歳の先輩社員が辞職に追い込まれ、会社を去っていったからだ。実質的なリストラで、鈴木さんも遅かれ早かれ、同じ目に遭うのではないか、と不安が付きまとう。
「経営陣が変わり、コスパばかり考えて、ものづくりに対する理解がなくなってしまったのです。明日は我が身。55歳でリストラされるよりも、早いうちに転職したほうがいいかな、と考えます」
 一方で、給料は少し下がったとはいえ、鈴木さん一人が生活していけるだけの金額は十分あり、仕事も次から次へと入ってきてやりがいがあるので「辞められない」とも。
 この業界は常に人手不足で、中途採用をしているが、年齢差別や男女差別は歴然としてある。女性だったら35歳くらいまでしか採らないし、子どもを産んで産休や育休を取る可能性のある女性や高学歴で優秀な仕事をしてきた人より、使いやすい若い男性を採る。実情が分かっているから転職を躊躇してしまう。

次のページ