では、A氏と佐村河内氏はどういう関係なのか。同書によると、テレビ制作会社に勤め、TBS「筑紫哲也NEWS23」担当だったA氏に、講談社の社員が07年、「すごい人がいる」と佐村河内氏を売り込んだ。講談社は同年、「あなたには、音楽以外にも伝えるべきものがある!」と編集者が佐村河内氏にはたらきかけ、自伝『交響曲第一番』を出版していた(同書から)。

 以来、A氏は取材を重ね、特集「音を喪(な)くした作曲家」を制作。08年9月、「NEWS23」で放送した。そして数年後、NHKに佐村河内氏の話を持ち込んだのだった。

 こうみると、佐村河内氏の認知度アップに、A氏は大きく貢献している。前述の著書でも、佐村河内氏を「音楽家としての疑いようがない才能に尊敬の念は高まるばかりでした」「兄と思ったり人生の師と思うようになりました」と礼賛している。A氏には取材の依頼に応じてもらえなかった。

AERA  2014年2月17日号より抜粋