待望の「ご来光」は雲間にわずかに差した程度。それでも、頂上で待ち構えた登山客は、現像的なあかね色の空に魅了されていた/7月1日(撮影/写真部・関口達朗)
待望の「ご来光」は雲間にわずかに差した程度。それでも、頂上で待ち構えた登山客は、現像的なあかね色の空に魅了されていた/7月1日(撮影/写真部・関口達朗)

 世界文化遺産に登録され、今年のはさらに多くの登山客を呼びそうな富士山。最近では特に中高年の富士登山者が増えているというが、気を付けなければならない点も多い。

 富士山で気をつけないといけないのが、高山病だ。低圧・低酸素に体が順応できずに発症する。初期症状として、「頭痛」「吐き気」「めまい」「耳鳴り」などがある。ヒマラヤなど海外の高山でしか起こらないと誤解している登山者も少なくないが、富士山5合目付近の酸素の量は平地の4分の3、山頂だと3分の2にまで減る。5合目はすでに「高山病ゾーン」だ。

 会社員の増本拓己さん(54)は今回初めて登った富士山で、高山病になった。夕刻、8合目の山小屋に到着する頃から頭が痛くなり、吐き気もしてきた。深夜2時30分ごろ、登頂に向けて山小屋を出たものの症状は回復せず、登頂を断念。5合目まで下りてくると、症状はうそのように消えた。

「いま思うと、心肺機能が落ちていたのかもしれません」

 ちなみに、増本さんが参加した40人近いツアーでは、4人が高山病になったという。症状が出たら無理は禁物。肺水腫や脳浮腫といった死につながる病気へと進む場合もあるので、どんな事情があっても、下山する判断が大切だ。アウトドアベンチャー企業「フィールド&マウンテン」(さいたま市)代表で、富士山ガイドとしても活躍する山田淳さん(34)は、高山病を防ぐ登山中の心構えとして(1)水をたくさん飲む(2)ゆっくり歩く(3)深呼吸する──の3点を挙げる。

「特に女性は、トイレに行く回数を減らすために水分をとらない傾向があるが、富士山はトイレが整備されているので、こまめな水分補給は重要です」

 祝賀ムードの中、けがや病気につながると心配されているのが、徹夜で山頂にアタックする「弾丸登山」だ。山梨県によれば、富士山の年間登山者の30%以上が弾丸登山との推計もある。山田さんは、とくに中高年の初心者は体に負担のかかる弾丸登山は控えるよう注意する。

「弾丸登山は登頂だけを目指して登るタイプ。ですが、初心者こそ、登山そのものを楽しんでほしい。富士山の魅力は、登山道や山頂からの景色です。関東平野を一望できたり、太平洋の海岸線が三重県の方まで見えたり…。日によっては、花火や、流れ星も見えます」

AERA 2013年7月22日号