働く女性を支援するために打ち出された「育休3年」政策。だが恩恵を受けるはずの女性たちからは、「その政策ピンズレ」と厳しい声が相次いでいる。

 都内の人材会社に勤める女性(33)は、その朝、保育園に2歳の息子を送り届けると、園の前でパパママ仲間と熱く語り合った。

「わかってないよね、安倍さん」「1年でも居場所がなくなるのに、3年なんてありえない」

 話題は、前日に安倍首相が女性を活用する成長戦略の柱の一つに打ち出した「育休3年」。普段の朝は、忙しくて簡単に挨拶を交わす程度なのに、この日ばかりは語らずにはいられなかった。

 彼女自身、出産後は3カ月で職場復帰せざるを得なかった。職場の変革期で長く休めば取り残されると焦ったからだ。実家は遠方で育児を親に頼れないので、妊娠中からの「保活」で無認可保育園を確保。多忙な夫に平日頼るのは難しいので、効率的に仕事をこなし、夕方6時ごろに会社を出てダッシュで保育園にお迎えという毎日を繰り返して、必死に働き続けてきた。それなのに、安倍首相の会見の言葉はあまりに悠長で現実離れしているとしか思えなかった。

「3年間抱っこし放題での職場復帰を総合的に支援する」

 本当にそんなことが可能なのだろうか。

 外資系メーカーの管理職女性(40)も、育休は3年どころか3カ月。社内は、少ない管理職のポストを「椅子取りゲームみたいに取り合っている状態」。制度上とれる1年をまるまる休めば代替要員が入り、戻るポストがなくなる。産休中もメールで部下にアドバイスを続け、ポストを「死守」した。

 年度途中の復職だったため、保育園はどこも満員で、生後3カ月の子どもを受け入れてくれる施設は見つからなかった。近所に住む70代の両親や親族に午後8時ごろまで預け、自分は日中、社内の会議室や出張帰りの新幹線のトイレで搾乳した。

「何でここまでして働いているのか、と何度も思ったけど、せっかく積み上げたキャリアを維持し、かつ子どもの病気など突発的な休みを周りに許してもらうためには、人の何倍も頑張るしかないんです」

AERA 2013年5月20日号